「法人化はいくらから得なのか、利益がいくらを超えたら法人にすべきか」「消費税やインボイスとの関係は」「合同会社と株式会社はどちらがよいか」— 個人事業主の法人化は、判断・時期・会社の形・手続きの4つが絡み合う意思決定です。このページは、その全体を1枚で見渡せるガイドです。考え方の整理と、あなたの数字でその場で確かめられる無料シミュレーションを、税理士・公認会計士がまとめました。
個人のまま続けた場合と法人化した場合の年間負担 (税金+社会保険料) の差は、売上・経費・役員報酬を入れるだけで無料で計算できます。
このページについて — 順番に読むと全体がつながります (気になるところからでも読めます)
STEP 1 — 利益の水準と 5 つの軸で見ます
個人事業の税金と国民健康保険は利益に連動して増えていきます。法人化すると利益を「役員報酬」と「法人に残す利益」に分けられるようになり、この配分しだいで税金と社会保険料の合計が変わります。利益がある水準を超えたところで個人と法人の負担が逆転する — これが「損益分岐点」です。
弊所の試算では、同じ前提 (40〜64歳・東京都の料率・経費なし) でも、利益500万円 (役員報酬 月25万円) では個人のままが年10.5万円軽く、利益800万円 (役員報酬 月40万円) では法人化が年24.3万円軽い結果になりました。分岐点は役員報酬の設計で動くため、一律の正解額はありません。
| 項目 | 個人のまま | 法人化した場合法人 + 社長 |
|---|---|---|
| 事業の利益 (売上 - 経費) | 13,000,000円 | 13,000,000円 |
| うち役員報酬 (月60万円 × 12か月) | - | 7,200,000円 |
| 国民健康保険 + 国民年金 | 1,345,040円 | - |
| 社会保険料 (本人負担) | - | 1,080,000円 |
| 社会保険料 (会社負担) | - | 1,105,920円 |
| 個人事業税 | 480,952円 | - |
| 所得税 | 1,768,600円 | 304,700円 |
| 住民税 | 1,011,900円 | 389,500円 |
| 法人税等 (赤字でもかかる均等割を含む) | - | 1,085,400円 |
| 年間の負担 合計 | 4,606,492円 | 3,965,520円 |
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この前提では、法人化で、税・保険料の負担が年間640,972円軽くなります。分岐点は役員報酬の設計で動くため、一律の正解額はありません。あなたの数字での答えは法人化シミュレーションでその場で出せます。
所得を法人へ移すと、所得税・住民税・法人税も同時に動きます。社会保険料の差だけで判断すると全体を見誤ります。
設立時の登録免許税などに加え、やめるときにも解散・清算の費用がかかります。何年続けるかで1年あたりに均して比べます。
健康保険の傷病手当金・出産手当金や厚生年金の上乗せが付く一方、国民年金基金・付加年金は使えなくなります。
国民健康保険は家族の人数分かかりますが、社会保険の被扶養者には保険料がかかりません。削減額そのものが家族構成で変わります。
法人へ移す事業には契約・請求・業務内容の区分という実体が必要です。ここが曖昧なまま数字だけで決めることはできません。
実額の目安は「法人化の損益分岐点」「法人化の損得早見表」で解説しています。あなたの数字での答えは法人化シミュレーションでその場で出せます。先にありがちなつまずきを知っておきたい方は「法人化で後悔する7つの典型パターン」をご覧ください。
STEP 2 — 消費税とインボイスの関係で決まります
法人化のタイミングに最も効くのは消費税です。新しく設立した法人は、資本金1,000万円未満なら最初の2期は原則として消費税が免税になります。ただしインボイス (適格請求書発行事業者) の登録を受けると、この免税は使えません。売上先が事業者中心か消費者中心かで、登録の要否 = 免税期間を活かせるかがほぼ決まります。
また、第1期開始から6か月間 (特定期間) の課税売上高が1,000万円を超えると、第2期から課税になります (給与等の支払額で判定する方法も選べます)。設立の時期と最初の事業年度の区切り方は、この判定も踏まえて決めます。
詳しくは「消費税の免税とインボイス — 法人化のタイミングに効く消費税の話」で解説しています。
STEP 3 — 合同会社か株式会社か
設立費用の中心になる登録免許税は、株式会社が資本金の1,000分の7 (15万円に満たないときは15万円)、合同会社が資本金の1,000分の7 (6万円に満たないときは6万円) です。株式会社はこれに加えて公証人による定款の認証が必要ですが、合同会社には認証がありません。ひとりで事業を行う法人では、設立費用と維持の手間を抑えられる合同会社を選ぶ方が多くなっています。
一方、株式会社には知名度と、出資と経営を分けられる仕組みという利点があります。取引先や採用の面で会社の形が意味を持つ事業か、将来の増資や事業承継まで見据えるかで選び方が変わります。税金と社会保険料の扱いは、どちらの形でもほぼ同じです。
STEP 4 — 設立前・設立・設立後の順に
役員報酬をいくらにするか、資本金をいくらにするか、決算月をいつにするか。どれも設立後には簡単に変えられない項目です。税・社会保険料・消費税への影響を先に試算してから登記に進みます。
定款を作り (株式会社は公証人の認証も)、法務局で設立登記をします。登記が完了すると法人番号が付き、銀行口座の開設や契約の巻き直しに進めます。
社会保険の新規適用届は5日以内 (社長1人でも加入義務)、税務署への法人設立届出書は2か月以内、青色申告の承認申請と役員報酬の決定は実質3か月以内。期限の短い順に片付けます。
届出の一覧と期限は「法人化した年にやることリスト」で解説しています。
3 つとも国税庁の様式に記入して、納税地の税務署へ出します (e-Tax でも可)。番号は下の表と対応しています。書き方は記載要領のとおりで、迷う欄は無料相談でご一緒に確認します。
法人設立届出書 — 設立の日から 2 か月以内
| 欄 | 何を書くか | 記載例・注意 |
|---|---|---|
| ① 会社の基本情報 | 提出先 (納税地の税務署)・法人番号 (13 桁。まだ指定されていなければ空欄)・本店所在地と納税地 (登記どおり)・法人名・代表者の住所と氏名・設立時の資本金・組織区分 | 組織区分 (名称) は株式会社が 01、合同会社が 28 |
| ② 設立年月日・事業年度 | 登記簿の登記年月日と、定款で定めた会計期間。右端の「消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日」は、設立時の資本金が 1,000万円以上のときだけ設立年月日を書く | 資本金 1,000万円未満なら右端は空欄 |
| ③ 事業の目的・支店等 | 定款の事業の目的のうち主なものと、現に営んでいる (営む予定の) 事業。支店・出張所・工場等は登記の有無を問わず全部 | 支店が無ければ空欄 |
| ④ 設立の形態 | 個人事業を法人にしたなら区分1 に「1」(区分2 は、個人のときの納税地が代表者の住所と同じなら 1・違えば 2 と区分4 にその住所)。個人事業からでない新規の設立は区分1 に「5」を書き、区分4 に「新規設立」などその内容を書く | 合併・分割・現物出資による設立は 2〜4 |
| ⑤ 事業開始 (見込み) 年月日・給与支払事務所の届出・添付書類 | 事業を始めた (始める見込みの) 年月日。「給与支払事務所等の開設届出書」を出す (出した) なら 1・出さないなら 2。添付書類は 1 (定款等の写し) | 役員報酬を払う会社は開設届出書も要るので通常は 1 |
| ⑥ 関与税理士 | 税理士に依頼している場合、その氏名と事務所所在地 | 依頼していなければ空欄 |
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出典: 国税庁 C1-4「内国普通法人等の設立の届出」案内ページ (様式・記載要領)
青色申告の承認申請書 — 設立の日から 3 か月を経過した日と第 1 期の終了日の早いほうの前日まで
| 欄 | 何を書くか | 記載例・注意 |
|---|---|---|
| ① 会社の基本情報 | 法人設立届出書と同じ内容 (提出先・法人番号・納税地・法人名・代表者・事業種目・資本金) | — |
| ② 青色申告を始める事業年度 | 自 = 第 1 期の初日 (設立の日)、至 = 最初の決算日 | 3月決算で 5月10日設立なら「自 令和8年5月10日 至 令和9年3月31日」 |
| ③ 項番 1〜6 | 設立の第 1 期から青色申告にする会社は、項番 2 の「該当の場合に 1 を記載」に 1 と設立の日を書く。他の項番は空欄 | 項番 1・3〜6 は取消し後の再申請や連結納税に関する欄 |
| ④ 参考事項 | 帳簿組織の状況 (帳簿の名前・形態・記帳の時期)、特別な記帳方法 (会計ソフトなら 2)、税理士の関与度合 | 例: 「総勘定元帳・仕訳帳 / 会計ソフト / 毎日」「2」「総勘定元帳の記帳から一切の事務」 |
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出典: 国税庁 C1-19「青色申告書の承認の申請」案内ページ (様式・記載要領)
給与支払事務所等の開設届出書 — 開設の日から 1 か月以内
| 欄 | 何を書くか | 記載例・注意 |
|---|---|---|
| ① 事務所開設者 | 本店所在地・電話番号・法人名・法人番号・代表者氏名 | 法人設立届出書と同じ内容 |
| ② 届出内容 | 届出書種別は 1 (開設)。開設年月日は事務所を設けた日 (設立の日など)。給与支払を開始する年月日は、開設した月に給与を払わないときだけ書く | 開設月から役員報酬を払うなら開始日は空欄でよい |
| ③ 届出の内容及び理由 | 1 (開業又は法人の設立) | その他の内容は空欄 |
| ④ 給与支払事務所等について | 「開設・異動前」の列に名称・所在地・責任者氏名。従事員数は役員と従業員の人数 | 社長 1 人なら 役員 1 人・従業員 0 人 |
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出典: 国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」案内ページ (様式・記載要領)
補足 — 全部を法人にしない選択肢
事業のすべてを法人へ移すのではなく、一部の事業だけを小さな法人に移し、個人事業と並走させる形もあります。いわゆるマイクロ法人 (個人事業との二刀流) です。社会保険の入り方が変わるため、所得水準によっては全部を法人化するより負担を抑えられる場合がありますが、事業の分け方に実体が必要で、誰にでも合う形ではありません。
マイクロ法人の考え方・弊所のサポート内容は、専門ページ「マイクロ法人の税理士」にまとめています。
全員に共通の分岐点はありません。弊所の試算では、同じ前提でも利益500万円なら個人のままが有利、800万円なら法人化が有利という結果になりましたが、役員報酬の設計や家族構成で分岐点は動きます。法人化シミュレーションで、あなたの売上・経費からその場で確かめられます。
入ります。法人は社長1人だけの会社でも健康保険・厚生年金への加入が義務で、年金事務所への新規適用届の期限は事実発生から5日以内です。国民健康保険・国民年金からの切り替えで保険料が大きく変わるため、法人化の損得計算にあらかじめ含めておく必要があります。
ひとりで事業を行う法人なら、設立費用を抑えられる合同会社を選ぶ方が多いです。登録免許税は株式会社が最低15万円、合同会社が最低6万円で、合同会社には定款認証もありません。一方、知名度や出資と経営の分離が意味を持つ事業なら株式会社に利点があります。税金と社会保険料の扱いはほぼ同じです。
原則として、資本金1,000万円未満の新設法人は最初の2期の消費税が免税です。ただしインボイス (適格請求書発行事業者) の登録を受けると免税にはなりません。売上先が事業者中心で登録が前提になる方は、この免税期間を活かせない前提で損得を計算する必要があります。
赤字の年でも法人住民税の均等割 (年7万円ほど) がかかること、毎月の給与計算・源泉所得税の納付・年末調整・社会保険の手続きなど事務が増えること、やめるときに解散・清算の費用と手間がかかることです。メリットの試算と同じ土俵に載せて判断することをおすすめしています。
後悔の声で多いのは、役員報酬を年度の途中で変えられないこと、赤字でも均等割と社会保険料の負担が続くこと、事務の増加を見込んでいなかったことです。典型例と防ぎ方は記事「法人化で後悔する7つの典型パターン」にまとめています。実行前の試算で、その多くは防げます。
このテーマを、1本ずつ記事で詳しく解説しています。
無料相談の中で、売上と利益を伺いながら概算の試算をその場でお出しできます。数字を見てから、ゆっくりご検討ください。
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用意した質問文がそのまま渡ります。回答は各 AI サービスによるもので、当事務所の見解ではありません。