「利益がいくらを超えたら法人にすべきか」「消費税やインボイスとの関係は」「合同会社と株式会社はどちらがよいか」— 個人事業主の法人化は、判断・時期・会社の形・手続きの4つが絡み合う意思決定です。このページは、その全体を1枚で見渡せるガイドです。考え方の整理と、あなたの数字でその場で確かめられる無料シミュレーションを、税理士・公認会計士がまとめました。
個人のまま続けた場合と法人化した場合の年間負担 (税金+社会保険料) の差は、売上・経費・役員報酬を入れるだけで無料で計算できます。
個人事業の税金と国民健康保険は利益に連動して増えていきます。法人化すると利益を「役員報酬」と「法人に残す利益」に分けられるようになり、この配分しだいで税金と社会保険料の合計が変わります。利益がある水準を超えたところで個人と法人の負担が逆転する — これが「損益分岐点」です。
弊所の試算では、同じ前提 (40〜64歳・東京都の料率) でも、利益500万円では個人のままが年7.6万円軽く、利益800万円では法人化が年23.0万円軽い結果になりました。分岐点は役員報酬の設計で動くため、一律の正解額はありません。
所得を法人へ移すと、所得税・住民税・法人税も同時に動きます。社会保険料の差だけで判断すると全体を見誤ります。
設立時の登録免許税などに加え、やめるときにも解散・清算の費用がかかります。何年続けるかで1年あたりに均して比べます。
健康保険の傷病手当金・出産手当金や厚生年金の上乗せが付く一方、国民年金基金・付加年金は使えなくなります。
国民健康保険は家族の人数分かかりますが、社会保険の被扶養者には保険料がかかりません。削減額そのものが家族構成で変わります。
法人へ移す事業には契約・請求・業務内容の区分という実体が必要です。ここが曖昧なまま数字だけで決めることはできません。
実額の目安は「法人化の損益分岐点」「法人化の損得早見表」で解説しています。あなたの数字での答えは法人化シミュレーションでその場で出せます。
法人化のタイミングに最も効くのは消費税です。新しく設立した法人は、資本金1,000万円未満なら最初の2期は原則として消費税が免税になります。ただしインボイス (適格請求書発行事業者) の登録を受けると、この免税は使えません。売上先が事業者中心か消費者中心かで、登録の要否 = 免税期間を活かせるかがほぼ決まります。
また、第1期開始から6か月間 (特定期間) の課税売上高が1,000万円を超えると、第2期から課税になります (給与等の支払額で判定する方法も選べます)。設立の時期と最初の事業年度の区切り方は、この判定も踏まえて決めます。
詳しくは「消費税の免税とインボイス — 法人化のタイミングに効く消費税の話」で解説しています。
設立費用の中心になる登録免許税は、株式会社が資本金の1,000分の7 (15万円に満たないときは15万円)、合同会社が資本金の1,000分の7 (6万円に満たないときは6万円) です。株式会社はこれに加えて公証人による定款の認証が必要ですが、合同会社には認証がありません。ひとりで事業を行う法人では、設立費用と維持の手間を抑えられる合同会社を選ぶ方が多くなっています。
一方、株式会社には知名度と、出資と経営を分けられる仕組みという利点があります。取引先や採用の面で会社の形が意味を持つ事業か、将来の増資や事業承継まで見据えるかで選び方が変わります。税金と社会保険料の扱いは、どちらの形でもほぼ同じです。
役員報酬をいくらにするか、資本金をいくらにするか、決算月をいつにするか。どれも設立後には簡単に変えられない項目です。税・社会保険料・消費税への影響を先に試算してから登記に進みます。
定款を作り (株式会社は公証人の認証も)、法務局で設立登記をします。登記が完了すると法人番号が付き、銀行口座の開設や契約の巻き直しに進めます。
社会保険の新規適用届は5日以内 (社長1人でも加入義務)、税務署への法人設立届出書は2か月以内、青色申告の承認申請と役員報酬の決定は実質3か月以内。期限の短い順に片付けます。
届出の一覧と期限は「法人化した年にやることリスト」で解説しています。
事業のすべてを法人へ移すのではなく、一部の事業だけを小さな法人に移し、個人事業と並走させる形もあります。いわゆるマイクロ法人 (個人事業との二刀流) です。社会保険の入り方が変わるため、所得水準によっては全部を法人化するより負担を抑えられる場合がありますが、事業の分け方に実体が必要で、誰にでも合う形ではありません。
マイクロ法人の考え方・弊所のサポート内容は、専門ページ「マイクロ法人の税理士」にまとめています。
全員に共通の分岐点はありません。弊所の試算では、同じ前提でも利益500万円なら個人のままが有利、800万円なら法人化が有利という結果になりましたが、役員報酬の設計や家族構成で分岐点は動きます。法人化シミュレーションで、あなたの売上・経費からその場で確かめられます。
入ります。法人は社長1人だけの会社でも健康保険・厚生年金への加入が義務で、年金事務所への新規適用届の期限は事実発生から5日以内です。国民健康保険・国民年金からの切り替えで保険料が大きく変わるため、法人化の損得計算にあらかじめ含めておく必要があります。
ひとりで事業を行う法人なら、設立費用を抑えられる合同会社を選ぶ方が多いです。登録免許税は株式会社が最低15万円、合同会社が最低6万円で、合同会社には定款認証もありません。一方、知名度や出資と経営の分離が意味を持つ事業なら株式会社に利点があります。税金と社会保険料の扱いはほぼ同じです。
原則として、資本金1,000万円未満の新設法人は最初の2期の消費税が免税です。ただしインボイス (適格請求書発行事業者) の登録を受けると免税にはなりません。売上先が事業者中心で登録が前提になる方は、この免税期間を活かせない前提で損得を計算する必要があります。
赤字の年でも法人住民税の均等割 (年7万円ほど) がかかること、毎月の給与計算・源泉所得税の納付・年末調整・社会保険の手続きなど事務が増えること、やめるときに解散・清算の費用と手間がかかることです。メリットの試算と同じ土俵に載せて判断することをおすすめしています。
このテーマを、1本ずつ記事で詳しく解説しています。
無料相談の中で、売上と利益を伺いながら概算の試算をその場でお出しできます。数字を見てから、ゆっくりご検討ください。