役員報酬 (毎月同額の給与 = 定期同額給与) は、いつでも自由に変えられる給与ではありません。変えられる時期の決まり、決めるときの手続き (株主総会の決議・合同会社は社員の同意)、変えたあとの社会保険の届出までを、税理士・公認会計士が 1 枚にまとめました。
変更の決議を残す株主総会議事録 (合同会社は総社員の同意書) は、このページ下部でその場で Word 形式で作成できます。通常の改定として扱える期限 (事業年度の開始から 3 か月) と、社会保険の随時改定の対象になる月も同時に確かめられます。
このページについて — 気になるところから読めます
報酬の額そのものの決め方・手取り・標準報酬月額は「役員報酬ガイド」に、賞与で払う形 (事前確定届出給与) の議事録と届出は「事前確定届出給与・議事録ひな形」にまとめています。
決まり — 期首 3 か月のルール
毎月同額の給与 (定期同額給与) の金額を変えて、変更後の額をそのまま経費 (損金) にできるのは、原則として事業年度の開始の日から 3 か月を経過する日までにした改定だけです (法人税法施行令69条1項1号イ)。3 月決算の会社なら、4 月 1 日から 6 月 30 日までに決めた改定がこれに当たります。
それ以外の時期の変更は、役員の職制上の地位の変更や職務の内容の重大な変更といったやむを得ない事情 (臨時改定事由)、または経営の状況が著しく悪化したこと (業績悪化改定事由。減額に限る) に当たる場合を除き、経費にならない部分が生じます。一時的な資金繰りの都合による減額は、業績悪化には当たりません。毎年決まった時期に改定していて、その時期が 3 か月を過ぎることに特別の事情がある場合 (親会社の定時株主総会の後でないと決められない等) は、その時期までの改定でよいとされています。
通常の改定 (期首から 3 か月以内) や、臨時改定事由・業績悪化改定事由による改定があった年は、改定の前と後で期間を区切り、それぞれの期間の各支給時期の支給額が同額なら、それぞれが定期同額給与として経費になります (国税庁の質疑応答事例)。これらに当たらない時期の増額では、増額前の額に上乗せした部分が経費になりません。改定後の額を決議のあとの最初の支給日から払うか、その次の支給日から払うかは会社が決めてよく、どちらの場合も議事録に「いつの支給分から」を書いておきます。
手続きの面では、役員の報酬は定款に定めがなければ株主総会の決議で決めます (会社法361条)。合同会社には株主総会が無いので、社員の決定 (総社員の同意) で決め、同意書の形で残します。決議・同意は決めた日に書面にしておくことが、あとから「いつ・いくらに決めたか」を示す記録になります。税務署への届出は要りません (届出が要るのは、賞与を経費にする事前確定届出給与のほうです)。
出典: e-Gov 法令検索 法人税法施行令69条 (定期同額給与の範囲等)
出典: 国税庁タックスアンサー No.5211 役員に対する給与 (平成29年4月1日以後支給決議分)
出典: 国税庁 質疑応答事例 定期給与の額を改定した場合の損金不算入額 (定期同額給与)
出典: 国税庁 質疑応答事例 役員の分掌変更に伴う増額改定 (定期同額給与) — 臨時改定事由の例
出典: 国税庁 役員給与に関するQ&A (平成20年12月・平成24年4月改訂) — Q2 定時株主総会で改定した給与をいつの支給分から払うか
出典: 法人税基本通達 9-2-12の2 (特別の事情があると認められる場合)・9-2-12の3 (職制上の地位の変更等)・9-2-13 (経営の状況の著しい悪化に類する理由)
落とし穴 — 決めた日と支給の月をそろえる
3 月決算の会社が 6 月の定時株主総会で 4 月にさかのぼって増額し、4〜6 月分の差額をまとめて払う形は、その一括支給分が定期同額給与に当たらず経費になりません (国税庁の質疑応答事例)。改定後の額は、決議のあとの支給分から適用します。
議事録は決めた日に作る書面です。期首 3 か月に間に合わなかった改定を、日付を戻して間に合ったことにはできません。決めたその場で作り、会社に保管します (株主総会議事録は総会の日から 10 年間、本店に備え置きます — 会社法318条)。
報酬月額を変えて 3 か月の平均が従来の標準報酬月額と 2 等級以上ずれると、随時改定の対象になり月額変更届を出します。さかのぼって昇給した場合は差額を支給した月が変動月とされ、議事録の適用開始月とずれて記録どうしのつじつまが合わなくなります。
決算の承認と同じ日に報酬を決める会社は、定時株主総会の議事録に「役員報酬額改定の件」の議案を足します。下の道具で作った文面 (報酬の議案だけ) を定時株主総会議事録に使うときは、他の議案を書き足して議案番号を直してください。
手続きの道具 — 議事録 (同意書) を作る
変更後の月額を決めたら、手続きは 3 つです。このページでは手続き 1 の議事録 (合同会社は総社員の同意書) を Word 形式で作り、通常の改定として扱える期限と、手続き 3 の社会保険の随時改定の対象になる月を自動で計算します。税務署への届出はありません。
株主総会 (合同会社は総社員の同意) で「誰を・いくらに・いつの支給分から」を決め、議事録を作ります。ここで作れます。
改定後の額は決議のあとの支給分から。給与計算の源泉所得税は新しい額で税額表を引き直します。
変更後 3 か月の平均で標準報酬月額が 2 等級以上ずれるなら、年金事務所へ月額変更届。対象の月はここで自動計算します。
※ダウンロードした Word ファイルは自由に直せます。株主の一部が欠席した / 改定の対象でない役員も出席した / 議長が代表取締役以外、という会社は、該当箇所を書き換えてください。監査役がいる会社は、監査役の報酬を取締役とは別の議案に分けてください (会社法387条)。押印は代表者印 (会社実印) が一般的です。
※期限の後の改定でも、役員の職制上の地位の変更などの臨時改定事由、または経営の状況の著しい悪化 (業績悪化改定事由。減額に限る) に当たる場合は扱いが変わります。毎年決まった時期に改定していて、その時期が期首から 3 か月を過ぎることに特別の事情がある場合 (親会社の定時株主総会の後でないと決められない等) も同じです。期の途中で就任した役員の報酬は、就任のときに決めた額を毎月同額で支給するのが通例です — いずれも無料相談でご確認ください。
※随時改定の対象になるのは、固定的賃金 (役員報酬の月額) が変わり、変動月から 3 か月の平均で標準報酬月額が従来と 2 等級以上ずれ、その 3 か月とも報酬の支払基礎日数が 17 日以上あるときです。1 等級の差なら原則として届出は無く、次の定時決定 (算定基礎届) で見直されます。ただし、標準報酬月額の上限または下限にかかる等級の変わり方 (最上位・最下位の等級との間の動き) は、1 等級の差でも随時改定の対象になります。
※このひな形は、役員が1〜数名の小規模な会社の一般的な形です。取締役会や監査役会を置いている会社、種類株式のある会社などは、記載事項が変わることがあります。
※株主総会議事録は書面または電磁的記録で作成し、総会の日から10年間、本店に備え置きます (会社法318条)。
※合同会社の場合: 本文の「株主総会の決議」は株式会社の場合の手続きです。合同会社には株主総会がなく、業務に関する事項は社員(出資者)の決定で決めます(社員が2人以上なら原則その過半数・一人会社なら本人の決定 — 会社法590条)。役員報酬のような重要事項は定款の定めか総社員の同意で決め、定款の変更には原則として総社員の同意が必要です(同637条)。いずれの場合も、同意書・決定書の形で日付と内容を書面に残します。税務の届出などで「株主総会等の決議」が求められる場面では、合同会社ではこの決定・同意がこれに当たります(法人税法施行令69条3項)。
手続きの案内 — 決めたあとに何をするか
上で作った議事録 (同意書) は、会社の中で決めたことの記録です。決めたあとは、給与計算を新しい額に切り替え、社会保険の随時改定に当たるかを確かめます。事前確定届出給与と違い、税務署へ出す届出はありません。
改定後の額は決議のあとの支給分から。源泉所得税は新しい額で税額表を引き直します。社会保険料の本人負担分は、標準報酬月額が改定されるまで従来の額のまま天引きします。
変動月から 3 か月の平均で標準報酬月額が従来と 2 等級以上ずれ、その 3 か月とも報酬の支払基礎日数が 17 日以上あるなら「被保険者報酬月額変更届」を、3 か月分の支給が済んでから速やかに出します。改定後の標準報酬月額は変動月から 4 か月目の分に反映されます。
定期同額給与の改定に税務署への届出はありません。議事録 (同意書) を会社で保管し、税務調査で「いつ・いくらに決めたか」を示せるようにしておきます。期首 3 か月を過ぎた改定は、臨時改定事由・業績悪化改定事由に当たらない限り経費にならない部分が生じます。
変更後の月額で会社と社長を合わせた年間の負担がどう変わるかは、役員報酬の変更シミュレーションで、あなたの数字を入れてその場で確かめられます。
出典: 国税庁タックスアンサー No.5211 役員に対する給与 (平成29年4月1日以後支給決議分)
役員の就任・退任にともなう報酬の決定、非常勤役員への報酬、使用人兼務役員の給与、期の途中の減額 (業績悪化改定) の可否、取締役会設置会社の手続き、確定申告書の提出期限の延長の指定を受けている法人 (期限の月数が変わります) は、このページの対象外です。個別の判断は無料相談でご確認ください。
原則として、事業年度の開始の日から3か月を経過する日までにした改定です (法人税法施行令69条1項1号イ)。3月決算なら4月1日から6月30日までに決めた改定がこれに当たります。それ以外の時期の変更は、役員の地位や職務内容の重大な変更 (臨時改定事由) や経営状況の著しい悪化 (業績悪化改定事由) に当たる場合を除き、経費 (損金) にならない部分が生じます。
必要です。役員の報酬は定款に定めがなければ株主総会の決議で決めるものと定められており (会社法361条)、株主が自分ひとりの会社でも、決議の記録が「いつ・いくらに決めたか」を示す書面になります。合同会社では総社員の同意書 (一人会社なら本人の決定書) が同じ役目を果たします。決めた日に作り、株主総会議事録は総会の日から10年間、本店に備え置きます。
毎月同額の給与 (定期同額給与) の改定に、税務署への届出はありません。届出が必要なのは、賞与を経費にするための事前確定届出給与です。議事録は提出せず会社で保管し、税務調査で求められたときに示せるようにしておきます。
報酬月額を変えて、変動月から3か月の平均が従来の標準報酬月額と2等級以上ずれると (その3か月とも支払基礎日数が17日以上あることも条件)、随時改定の対象になり、変動月から4か月目の分から標準報酬月額が変わります。年金事務所へ月額変更届を出します。1等級の差なら原則として届出はなく、次の定時決定 (算定基礎届) で見直されます (ただし標準報酬月額の上限または下限にかかる等級の変わり方は、1等級の差でも随時改定の対象です)。
減額の改定も、原則は事業年度の開始から3か月以内です。それ以後の減額は、経営の状況が著しく悪化したなどの業績悪化改定事由に当たる場合に限られ、一時的な資金繰りの都合は当たりません。事由に当たらない減額は、経費にならない部分が生じることがあります。判断に迷うときは事前にご相談ください。
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