役員報酬の変更 | 時期と手続き
役員報酬は、
いつまでに変えるか。
役員報酬 (毎月同額の給与 = 定期同額給与) は、いつでも自由に変えられる給与ではありません。変えられる時期の決まり、決めるときの手続き (株主総会の決議・合同会社は社員の同意)、変えたあとの社会保険の届出までを、税理士・公認会計士が1枚にまとめました。

期限の日付から、
いくらに変えるかは、会社の利益と毎月の生活費で決まります。45分の無料相談で、あなたの数字で手取りと保険料を試算し、決める日と支給を始める月の段取りまでお伝えします。
佐々木 俊代表 | 税理士・公認会計士
役員報酬を変えられる時期
事業年度の開始から3か月
- 期限
- 6月30日までに決める
- 期限の後
- 臨時改定事由などに当たらないと、経費にならない部分が出る
- 変えたら
- 原則2等級以上の差なら、4か月目から保険料が変わる (月額変更届)
- 期限
- 3月31日までに決める
- 期限の後
- 臨時改定事由などに当たらないと、経費にならない部分が出る
- 変えたら
- 原則2等級以上の差なら、4か月目から保険料が変わる (月額変更届)
| 決算月 | 事業年度の開始 | 改定の期限 |
|---|---|---|
| 1月決算 | 2月1日 | 4月末日 |
| 2月決算 | 3月1日 | 5月末日 |
| 4月決算 | 5月1日 | 7月末日 |
| 5月決算 | 6月1日 | 8月末日 |
| 6月決算 | 7月1日 | 9月末日 |
| 7月決算 | 8月1日 | 10月末日 |
| 8月決算 | 9月1日 | 11月末日 |
| 9月決算 | 10月1日 | 12月末日 |
| 10月決算 | 11月1日 | 1月末日 |
| 11月決算 | 12月1日 | 2月末日 |
変えられる時期
原則は事業年度の開始から3か月以内
毎月同額の給与 (定期同額給与) の金額を変えて、変更後の額をそのまま経費 (損金) にできるのは、原則として事業年度の開始の日から3か月を経過する日までにした改定だけです (法人税法施行令69条1項1号イ)。3月決算の会社なら、4月1日から6月30日までに決めた改定がこれに当たります。
それ以外の時期の変更は、役員の職制上の地位の変更や職務の内容の重大な変更といったやむを得ない事情 (臨時改定事由)、または経営の状況が著しく悪化したこと (業績悪化改定事由。減額に限る) に当たる場合を除き、経費にならない部分が生じます。一時的な資金繰りの都合による減額は、業績悪化には当たりません。毎年決まった時期に改定していて、その時期が3か月を過ぎることに特別の事情がある場合 (親会社の定時株主総会の後でないと決められない等) は、その時期までの改定でよいとされています。
通常の改定 (期首から3か月以内) や、臨時改定事由・業績悪化改定事由による改定があった年は、改定の前と後で期間を区切り、それぞれの期間の各支給時期の支給額が同額なら、それぞれが定期同額給与として経費になります (国税庁の質疑応答事例)。これらに当たらない時期の増額では、増額前の額に上乗せした部分が経費になりません。改定後の額を決議のあとの最初の支給日から払うか、その次の支給日から払うかは会社が決めてよく、どちらの場合も議事録に「いつの支給分から」を書いておきます。
手続きの面では、役員の報酬は定款に定めがなければ株主総会の決議で決めます (会社法361条)。合同会社には株主総会が無く、業務は定款に別段の定めがなければ社員の過半数で決めます (会社法590条2項)。報酬は社員全員の利害に関わるので、社員全員の同意書の形で残しておくと安心です。決議・同意は決めた日に書面にしておくことが、あとから「いつ・いくらに決めたか」を示す記録になります。税務署への届出は要りません (届出が要るのは、賞与を経費にする事前確定届出給与のほうです)。
出典: e-Gov 法令検索 法人税法施行令69条 (定期同額給与の範囲等)
出典: 国税庁タックスアンサー No.5211 役員に対する給与 (平成29年4月1日以後支給決議分)
出典: 国税庁 質疑応答事例 定期給与の額を改定した場合の損金不算入額 (定期同額給与)
出典: 国税庁 質疑応答事例 役員の分掌変更に伴う増額改定 (定期同額給与) — 臨時改定事由の例
出典: 国税庁 役員給与に関するQ&A (平成20年12月・平成24年4月改訂) — Q2 定時株主総会で改定した給与をいつの支給分から払うか
出典: 法人税基本通達 9-2-12の2 (特別の事情があると認められる場合)・9-2-12の3 (職制上の地位の変更等)・9-2-13 (経営の状況の著しい悪化に類する理由)
出典: e-Gov 法令検索 会社法361条 (取締役の報酬等)・590条 (業務の執行)
報酬の額そのものの決め方・手取り・標準報酬月額はこのサイトの「役員報酬ガイド」に、賞与で払う形 (事前確定届出給与) の制度と手続きは「事前確定届出給与 (賞与の届出)」にまとめています。
よくある失敗
さかのぼり・後追い作成・社会保険とのずれ
決議より前の月にさかのぼって増やした分は経費になりません
3月決算の会社が6月の定時株主総会で4月にさかのぼって増額し、4〜6月分の差額をまとめて払う形は、その一括支給分が定期同額給与に当たらず経費になりません (国税庁の質疑応答事例)。改定後の額は、決議のあとの支給分から適用します。
議事録の日付はさかのぼらせないでください
議事録は決めた日に作る書面です。期首3か月に間に合わなかった改定を、日付を戻して間に合ったことにするのはやめましょう。決めたその場で作り、会社に保管します (株主総会議事録は総会の日から10年間、本店に備え置きます — 会社法318条)。
議事録の適用開始の月と、月額変更届の変動月は対応します
報酬月額を変えて3か月の平均が従来の標準報酬月額と原則2等級以上ずれると (3か月とも支払基礎日数が17日以上のとき)、随時改定の対象になり月額変更届を出します。さかのぼって昇給した場合は差額を支給した月が変動月とされ、議事録の適用開始月とずれて記録どうしのつじつまが合わなくなります。
定時株主総会と同じ日に決めるなら、議案を1つ足します
決算の承認と同じ日に報酬を決める会社は、定時株主総会の議事録に「役員報酬額改定の件」の議案を足すことをお勧めします。議事録の道具で作った文面 (報酬の議案だけ) を定時株主総会議事録に使うときは、他の議案を書き足して議案番号を直してください。
変えたあとの手続き
給与計算・社会保険の月額変更届・税務署
議事録 (同意書) は、会社の中で決めたことの記録です。決めたあとは、給与計算を新しい額に切り替え、社会保険の随時改定に当たるかを確かめましょう。事前確定届出給与と違い、税務署へ出す届出はありません。
決議のあとの支給分から新しい月額で払います
改定後の額は決議のあとの支給分から。源泉所得税も新しい額で税額表を引き直してください。社会保険料の本人負担分は、標準報酬月額が改定されるまで従来の額のまま天引きします。
2等級以上ずれるなら月額変更届を出します
変動月から3か月の平均で標準報酬月額が従来と2等級以上ずれ、その3か月とも報酬の支払基礎日数が17日以上あるなら「被保険者報酬月額変更届」を、3か月分の支給が済んでから速やかに出します。改定後の標準報酬月額は変動月から4か月目の分に反映されます。ただし、標準報酬月額の上限・下限にまたがる等級の変更は、1等級の差でも随時改定の対象になります (日本年金機構「随時改定」)。
届出はありません。議事録を保管します
定期同額給与の改定に税務署への届出はありません。議事録 (同意書) を会社で保管し、税務調査で「いつ・いくらに決めたか」を示せるようにしておきましょう。期首3か月を過ぎた改定は、臨時改定事由・業績悪化改定事由に当たらない限り経費にならない部分が生じます。
変更後の負担は数字で確かめます
変更後の月額で会社と社長を合わせた年間の負担がどう変わるかは、このサイトの役員報酬の変更シミュレーションで、あなたの数字を入れてその場で確かめられます。
出典: 国税庁タックスアンサー No.5211 役員に対する給与 (平成29年4月1日以後支給決議分)
役員の就任・退任にともなう報酬の決定、非常勤役員への報酬、使用人兼務役員の給与、期の途中の減額が業績悪化改定事由に当たるかどうかの個別の判断、取締役会設置会社の手続き、確定申告書の提出期限の延長の指定を受けている法人 (期限の月数が変わります) は、このサイトのこのページでは扱っていません。個別の判断は無料相談でご相談ください。
よくある質問
よく聞かれること
Q役員報酬はいつまでに変えれば経費になりますか?
原則として、事業年度の開始の日から3か月を経過する日までにした改定です (法人税法施行令69条1項1号イ)。3月決算なら4月1日から6月30日までに決めた改定がこれに当たります。それ以外の時期の変更は、役員の地位や職務内容の重大な変更 (臨時改定事由) や経営状況の著しい悪化 (業績悪化改定事由) に当たる場合を除き、経費 (損金) にならない部分が生じます。
Q一人会社でも議事録は必要ですか?
必要です。役員の報酬は定款に定めがなければ株主総会の決議で決めるものと定められており (会社法361条)、株主が自分ひとりの会社でも、決議の記録が「いつ・いくらに決めたか」を示す書面になります。合同会社の業務は定款に別段の定めがなければ社員の過半数で決めます (会社法590条2項) が、報酬は社員全員の同意書 (一人会社なら本人の決定書) の形で残しておくと安心です。決めた日に作り、株主総会議事録は総会の日から10年間、本店に備え置きます。
Q役員報酬を変えたら、税務署へ何か出しますか?
毎月同額の給与 (定期同額給与) の改定に、税務署への届出はありません。届出が必要なのは、賞与を経費にするための事前確定届出給与です。議事録は提出せず会社で保管し、税務調査で求められたときに示せるようにしておきます。
Q社会保険料はいつから変わりますか?
報酬月額を変えて、変動月から3か月の平均が従来の標準報酬月額と2等級以上ずれると (その3か月とも支払基礎日数が17日以上あることも条件)、随時改定の対象になり、変動月から4か月目の分から標準報酬月額が変わります。年金事務所へ月額変更届を出します。1等級の差なら原則として届出はなく、次の定時決定 (算定基礎届) で見直されます (ただし標準報酬月額の上限・下限の近くでは、日本年金機構の随時改定の表にある報酬月額の条件を満たす場合に限り、1等級の差でも対象になります。例: 厚生年金で従前の報酬月額が66万5,000円以上の方が、変更後3か月の平均が63万5,000円未満になって62万円の等級に下がるとき)。
Q期の途中で報酬を下げることはできますか?
減額の改定も、原則は事業年度の開始から3か月以内です。それ以後の減額は、役員の地位や職務内容の重大な変更 (臨時改定事由) か、経営の状況が著しく悪化したなどの業績悪化改定事由に当たる場合に限られ、一時的な資金繰りの都合は業績悪化に当たりません。事由に当たらない減額は、経費にならない部分が生じることがあります。判断に迷うときは事前にご相談ください。
無料相談
報酬の設計から決算まで、相談できます

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いつ・いくらに変えるかを、会社の数字で決めたい方へ
月額は、会社の利益と毎月の生活費から決めます。45分の無料相談で、あなたの数字で手取りと保険料を試算し、決める日と支給を始める月の段取り、記帳・決算・申告までの進め方をお伝えします。
- 会社の利益と生活費を踏まえた、役員報酬の設計
- 役員報酬・源泉所得税・社会保険料の会計処理
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