事前確定届出給与の議事録の書き方 — 株主総会議事録と合同会社の同意書の記載例、届出書との関係
事前確定届出給与を使うと決めたとき、最初に作る書類が株主総会の議事録(合同会社は総社員の同意書)です。この記事では、議事録に何を書くか・記載例・届出書との関係を整理し、議事録・同意書と届出書の作成もご案内します。
この記事の要点
- 議事録には「誰に・いつ・いくら」を確定した日付と金額で書く。幅のある書き方(12月中に・上限100万円)は使えない
- 届出期限は決議日だけで決めない。職務執行開始日が先ならその開始日と、会計期間開始日・新設法人かを合わせて確認する
- 合同会社には株主総会がない。定款と決定手続きを確認し、実務上は社員全員の同意を記名押印した同意書として残す
役員が少人数の小規模な会社の一般的な議事録例です。取締役会・監査役会・種類株式の有無で記載事項が変わります。期限は決議日・職務執行開始日・会計期間開始日・新設法人かを合わせて確認します。
なぜ議事録が要るのか — 会社法上の決定と、税務上の損金の要件
取締役の報酬・賞与は、定款に定めがなければ株主総会の決議で決めます(会社法361条1項)。株主総会の議事は議事録に残し、総会の日から10年間、本店に備え置く決まりです(会社法318条)。社長ひとりの会社でも、この決まりは同じです。
税務では、事前確定届出給与に関する届出書に「株主総会等の決議をした日」と「決議をした機関」を書く欄があり、決議の存在が届出の前提になっています。通常の期限は、決議日(職務執行開始日が先ならその開始日)から1か月と、会計期間開始日から4か月のいずれか早い日です(法人税法施行令69条4項)。議事録の決議日と職務執行開始日を、会計期間と一緒に確認します。申告期限の延長の特例を受けている通算法人のうち一定の場合に該当するもの(延長の指定を受けている法人を除く)は、後者が5か月です(法人税法施行令69条)。申告期限の延長の指定を受けている内国法人は、指定に係る月数に3を加えた月数です(同条4項1号)。設立時に開始する職務について定めた新設法人は、設立日から2か月までです。臨時改定と変更届出、やむを得ない事情を税務署長が認める場合は通常の期限とは分けて確認します。具体的な数え方は提出期限の記事で確認できます。
| どんな年か | いつまでに届け出るか | 3月決算の会社の例 |
|---|---|---|
| ふつうの年株主総会などで、賞与の支給日と金額を決めた年 | 決めた日から1か月後までただし、事業年度が始まった日 (3月決算なら4月1日) から4か月後のほうが早いときは、そちらまで | 6月25日に決めた→ 計算上は7月25日、提出できる最終日は7月27日 |
| 会社を作った1年目設立と同時に役員の仕事が始まる場合 | 会社を作った日から2か月後まで設立した年だけの決まりです | 設立の日から数えます |
| 役職が変わるなどの事情があった年役職や職務内容の重大な変更などの臨時改定事由により、新たに賞与の支給日・額を定めた場合 | 上の期限と、その事情が起きた日から1か月後の、遅いほうまでこの場合だけ「遅いほう」です。期限が延びる向きに働きます。その役員に直前の職務で事前確定届出給与の定めがあった場合は除きます (法人税法施行令69条4項2号)。届出済みの定めを変更する場合は、別の変更届出期限です (同条5項) | 事情が起きた日から数えます |
→ 表は横にスクロールできます
社長ひとりの会社でも、賞与の支給日と金額を決めたら議事録に残しておくと安心です。期限を過ぎた年は、原則としてこの方法は使えません。届出がなかったことにやむを得ない事情があると税務署長が認めるときは、期限までに届け出たものとして扱われます (法人税法施行令69条)。
議事録に書く6つの実務上の項目
株主総会議事録の法定の記載事項は会社法施行規則72条3項に定められています。次のリストは、小規模な会社で金銭の支給を決議する際の実務上の記載例です。法定事項をそのまま並べたものではありません。遠隔で出席した場合の方法、該当する意見・発言の概要、出席した取締役以外の役員等は、法令と会社の機関設計に応じて追加します。
- 開催日時と場所(遠隔出席がある場合は出席方法も記録する)
- 出席した取締役等の氏名と、決議を確認できる株主・議決権の状況
- 議長がいる場合は議長の氏名
- 議案の内容 — 支給を受ける役員の氏名・役職、支給日、支給額
- 議事の経過の要領と結果(承認可決したこと)
- 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
税務では、議案の内容に「誰に・いつ・いくら」を確定して記録することが要です。
あなたの会社の議事録には、支給日と支給額が確定した形で書かれているでしょうか。
記載例 — 臨時株主総会の議案部分
議案の部分は、たとえば次のように書きます。
- 第1号議案 取締役に対する事前確定届出給与の件
- 議長は、取締役○○に対し、令和8年12月10日に金1,500,000円を支給したい旨を述べ、その理由を説明した。
- 出席株主は審議の結果、全員一致でこれを承認可決した。
同じ人に年2回払う例では、支給日と金額の組を各回分書きます。回数を増やすこと自体で損金算入が保証されるわけではなく、複数回の届出と支給の扱いを合わせて確認します。毎月の役員報酬(定期同額給与)は別の定めなので、この議案とは分けて記録します。定時株主総会で決算の承認と同じ日に決めた会社は、決算承認の議案に続けて書きます。
合同会社の場合 — 総社員の同意書
合同会社には株主総会がありません。業務は、定款に別段の定めがなければ社員の過半数で決めます(会社法590条2項)。報酬の定めは定款と会社の決定手続きを確認します。実務上は、社員全員の同意を記名押印した「総社員の同意書」として残す方法を案内しています。すべての合同会社に、全社員の記名押印が一律に義務付けられるという意味ではありません。
税法上の「株主総会等」には、社員総会その他これに準ずるものが含まれるため(法人税法施行令69条3項)、同意書で確認する決定日と職務執行開始日を、会計期間開始日と合わせて期限の計算へ使います。日付を入れ、決定した事実と職務の期間を後から確認できるようにします。合同会社では決定の日付があいまいになりがちなので、同意書の日付を必ず入れる点にご注意ください。
議事録のあとにやること — 届出書と付表1
議事録は会社の中の記録で、税務署へは別に「事前確定届出給与に関する届出書」と「付表1」を出します。議事録で決めた支給日と支給額を、そのまま付表1に書き写す関係です。
議事録から支給までの3段階
決議して議事録を作る
支給日と支給額を確定した形で書く(合同会社は総社員の同意書)
届出書と付表1を税務署へ出す
決議日・職務執行開始日・会計期間開始日と、新設・延長等の条件から期限を確認して提出する
決めたとおりに支給する
日付も金額も届出のとおりに払う
Q. 議事録は税務署に出しますか
原則として、税務署へ出すのは届出書と付表で、議事録そのものを出す決まりはありません。ただし、届出書の「その他参考となるべき事項」の欄に定めの内容に関する事項を書くときは、その記載に代えて定めの写し(決議した議事録や同意書)を添付するよう国税庁の記載要領が求めています。税務調査で決議の日付を確かめられることもあるため、届出書の控えと一緒に保管しておきます。
Q. 決議したあとに支給額を変えたくなったら
事前確定届出給与として損金に算入できるのは、所定の時期に確定した額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与です(法人税法34条1項2号)。届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合はこの給与に当たらず、原則としてその支給額の全額が損金不算入となります(法人税基本通達9-2-14)。支給が複数回ある場合は同じ職務執行期間の支給の全部で判定するのが原則ですが、期をまたぐときは当期に定めどおり支給した分と翌期の違反を分ける照会例があるため、職務執行期間と支給事実を個別に確認します。国税庁の照会例の出典は文末に掲げています。役員の地位の変更などの臨時の事由や、経営状況が著しく悪化した場合には、それぞれの条件と期限を満たす変更の届出があります(法人税法施行令69条5項)。単なる資金繰りの都合だけで使えるものではありません。手続きの分岐は不支給・減額したいときの記事で整理しています。当てはまるかどうかは個別の判断になるので、変えたくなった時点で早めにご相談ください。
まとめ — 議事録はその場で作れます
議事録の決議日・職務執行開始日と内容が、届出の期限と付表1の記載につながります。議事録・同意書と届出書の作成では、会社名・決議日・支給日・支給額を入れるだけで、株主総会議事録(合同会社は総社員の同意書)をWord形式で作り、届出期限も自動で計算できます。まずは支給額の設計を事前確定届出給与シミュレーションで確かめてから、議事録づくりへ進んでみてください。実行の際は、届出の前に一度ご相談いただくのが安心です。
※本記事の記載例は、役員が少人数の小規模な会社の一般的な形です。取締役会や監査役会を置いている会社、種類株式のある会社などは、記載事項が変わることがあります。
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