役員への賞与を経費(損金)にするための届出制度 — それが事前確定届出給与です。この記事では、制度の趣旨と、この制度で社会保険料が下がる仕組み、実行前に知っておくべき注意点を整理します。
役員への賞与を経費(損金)にするための届出制度 — それが事前確定届出給与です。この記事では、制度の趣旨と、この制度で社会保険料が下がる仕組み、実行前に知っておくべき注意点を整理します。
この記事の要点
役員の給与は、原則として毎月同額のもの(定期同額給与)だけが経費になります。
利益が出たら期末に賞与を出して法人税を減らす、といった後出しの調整を防ぐためのルールです。
金額が1円でも違ったり支給日がずれたりすると全額が経費にならない厳しさは、「先に確定させる」というこの制度の性格から来ています。国税庁の通達は、届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合は原則としてその支給額の全額が損金不算入になるとし(法人税基本通達9-2-14)、年2回払いのうち1回でも届出と違えば、その職務執行期間の支給全体で判定するのが原則だという見解も示しています。
社会保険料は毎月の給与だけでなく賞与にもかかりますが、賞与には計算の上限があります。
厚生年金は1か月当たり150万円まで、健康保険は年度の累計573万円までしか賞与の保険料の計算対象になりません。同じ月に複数回支給した賞与は合算します。
そこで事前確定届出給与を使って「低い月給+年1回の大きな賞与」という払い方にすると、上限を超えた部分に社会保険料がかからなくなるのです。
同じ年間の報酬総額645.6万円を、2通りの払い方で比べてみましょう。
Aは毎月均等(月53.8万円)、Bは低い月給(月8万円)+年1回の賞与549.6万円という払い方です。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| A: 毎月均等 | B: 低い月給+賞与 | |
|---|---|---|
| 社会保険料(会社+本人) | 約185.5万円 | 約112.8万円 |
| 所得税+住民税 | 約52.1万円 | 約59.3万円 |
| 保険料+個人の税 | 約237.6万円 | 約172.1万円 |
社会保険料は年約72.8万円の減。保険料が下がる分、所得税・住民税と会社の法人税等は少し増えますが、差し引きでも実質約57.0万円の負担減です。同じ年収でも、払い方だけでここまで動くのは意外ではないでしょうか。
※会社負担の保険料が減る分だけ法人の経費も減るため、法人税等は約8.6万円増える計算です(法人の課税所得を500万円と仮定)。

効果の裏側には、次のリスクと負担があります。
メリットと引き換えに失うものを理解したうえで、実行するかどうかを判断することが大切です。
事前確定届出給与は、届出という手続きの厳格さと引き換えに効果が生まれる制度です。
※本記事の金額は、社長おひとり・基礎控除のみ・東京都の令和8年度料率での概算です。※将来の年金額や給付への影響もあわせてご説明したうえで、実行するかどうかをご判断いただきます。
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