社会保険料は「もう一つの税金」— 税金だけ見ていると損をする理由
節税の話は好きなのに、社会保険料は「決まりだから仕方ない」と思っていませんか。実は役員報酬にかかる負担では、税金より社会保険料のほうが重いことが珍しくありません。
この記事の要点
- 役員報酬には約3割の社会保険料がかかる(会社負担+本人負担の合計)
- 月70万円の報酬では、税金約100万円に対し社会保険料は約231万円。社会保険料は税金の約2.3倍です (弊所試算)
- 税金と違い、社会保険料は「報酬の設計」で正面から調整できる
本記事の金額は、社長おひとり・40歳未満・協会けんぽ東京の令和8年度料率、令和8年分です。給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を反映し、健保と厚年それぞれの標準報酬月額で計算しています。40〜64歳は介護保険1.62%が加わります。
給与には約3割の保険料がかかっている
役員報酬(給与)にかかる社会保険料の料率は、健康保険9.85%+介護保険1.62%+子ども・子育て支援金0.23%+厚生年金18.3%+子ども・子育て拠出金0.36%。内訳は次の表のとおりです。
※計算図の税・保険料の基準(該当する項目): 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度。
| 制度 | 料率 | 負担のしかた | 標準報酬月額の下限〜上限 |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 9.85% | 会社と本人で半分ずつ | 58,000円〜1,390,000円 |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 会社と本人で半分ずつ | 健康保険と同じ基準 |
| 介護保険 (40〜64歳のみ) | 1.62% | 会社と本人で半分ずつ | 健康保険と同じ基準 |
| 厚生年金 | 18.30% | 会社と本人で半分ずつ | 88,000円〜650,000円 |
| 子ども・子育て拠出金 | 0.36% | 会社のみ | 厚生年金と同じ基準 |
| 合計 (40〜64歳の場合) | 30.36% | - | - |
→ 表は横にスクロールできます
合計はおよそ3割。原則として会社と本人が半分ずつ負担します (子ども・子育て拠出金だけは会社のみ)。
合計すると約30.4%(40〜64歳・協会けんぽ東京・令和8年度)にもなります。40歳未満は介護保険を除いた約28.7%です。
健保と厚年は原則としてそれぞれ50%が会社負担で、会社だけが負担する拠出金は別です。ひとり社長の場合は会社のお金も自分のお金ですから、実質はすべて自分の負担です。
税金より重い、という現実
役員報酬 月70万円(年840万円)のひとり社長で、税金と社会保険料を並べてみます。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 負担の種類 | 年間の金額 |
|---|---|
| 所得税+住民税 | 約100.3万円 |
| 社会保険料(会社+本人) | 約231.4万円 |
※社長おひとり・40歳未満・協会けんぽ東京、令和8年度料率・令和8年分税制。給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を反映し、住民税はその所得に対応する翌年度の見込み額です。月70万円の年額で、社会保険料は会社と本人の合計です。
※計算図の税・保険料の基準(該当する項目): 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度。
役員報酬を月70万円から月50万円に変えた場合の、会社 + 社長の年間負担
数字で見る — 何にいくらかかるか (検算用)
| 項目 | 変更前月70万円 | 変更後月50万円 |
|---|---|---|
| 役員報酬 (年額) | 8,400,000円 | 6,000,000円 |
| 社会保険料 (会社負担) | 1,165,140円 | 873,000円 |
| 社会保険料 (本人負担) | 1,137,060円 | 851,400円 |
| 法人税等 (赤字でもかかる均等割を含む) | 162,700円 | 738,000円 |
| 社長の所得税 | 513,400円 | 152,400円 |
| 社長の住民税 | 491,600円 | 310,200円 |
| 年間の負担 合計 | 3,469,900円 | 2,925,000円 |
→ 表は横にスクロールできます
この前提では、月70万円 → 50万円に下げると、税・保険料の負担が年間544,900円軽くなります。合計がいちばん小さくなる月額は利益の水準で変わるため、一律の正解額はありません。あなたの数字での答えは役員報酬シミュレーションでその場で出せます。
税金と違い「設計」で動かせる
所得税は稼いだ結果に対して自動的に決まりますが、社会保険料は役員報酬の決め方そのもので変わります。
たとえば報酬を月70万円から50万円に見直した場合を見てみましょう。
さらに賞与の上限を使う「事前確定届出給与」という方法もあります。詳しくは事前確定届出給与の仕組みでご説明しています。
注意 — 安ければよいわけではない
だからこそ「何を優先するか」を決めたうえで、税金と社会保険料をひとつの家計として設計することが大切です。
※本記事の金額は、社長おひとり・40歳未満(介護保険非該当)・給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を反映・協会けんぽ東京の令和8年度料率での概算です。40〜64歳は介護保険1.62%が加わります。
※法人化の前に: 法人化すると、赤字の年でも法人住民税の均等割(年7万円ほど)が毎年かかります。増える事務も決算・申告や設立時の届出だけではありません。毎月の給与計算と源泉所得税の納付、年末調整、社会保険の算定基礎届など、個人事業には無かった手続きが毎年続きます。保険料や税金の差だけでなく、この固定費と手間まで含めてご判断ください。
※有利・不利を比べるときは: 法人化の有利・不利は、保険料の削減額と法人の維持費の引き算だけでは決まりません。設立時の登録免許税などと、やめるときの解散・清算の費用は、毎年の維持費とは別にかかります。国民健康保険は家族の人数分かかりますが、社会保険の被扶養者には保険料がかかりません。法人へ移す事業には、契約・請求・業務内容の区分という実体が必要です。これらも同じ土俵に載せてご判断ください。
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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。