小規模企業共済とは、国の機関である中小機構が運営する、個人事業主と小規模な会社の役員のための積み立て型の退職金制度です。掛金は月1,000円から70,000円の範囲で決められ、全額が所得控除になります。受け取るときも退職所得控除や公的年金等控除で守られる一方、納付が12か月未満だと掛け捨て、任意解約は20年未満だと元本割れというデメリットもあります。このページでは、加入条件・節税の仕組み・いくらもらえるか・受け取り方と税金・借入枠としての使い方を、税理士・公認会計士が順に解説します。弊所が個人事業主・マイクロ法人のお客様に、まずご案内している制度です。
ここでは制度の要点と、意外と知られていない貸付制度、そして注意すべき点を、税理士・公認会計士が実務の目線でご説明します。ご自身の数字での試算は、無料のシミュレーションからどうぞ。
このページについて — 気になるところから読めます
要点 — 誰が・いくら・どう受け取る
業種によって人数の基準が変わります。建設業・製造業・運輸業・不動産業・農業・宿泊業・娯楽業などは常時使用する従業員20人以下、卸売業・小売業・宿泊業と娯楽業を除くサービス業は5人以下が目安です。個人事業主の共同経営者 (1人につき2人まで) も加入できます。給与所得者との兼業や、直接営利を目的としない法人の役員などは加入できません。
加入したあとに増やすことも減らすこともできます。前納すれば一定の前納減額金も受け取れます。無理のない額から始めて、利益が安定してから増やす決め方ができるのがこの制度の使いやすさです。
所得税法75条は、掛金について「その支払つた金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する」と定めています。生命保険料控除のような上限はなく、払った全額が所得から引かれます。税率の高い方ほど、同じ掛金でも軽くなる税額は大きくなります。
個人事業の廃止や会社の解散のときは共済金A、65歳以上で180か月以上納めた方の老齢給付や、疾病・負傷・65歳以上による役員の退任は共済金B です。法人成りして役員にならなかった場合などは準共済金になります。
| 事業所得 (掛金を引く前) | 掛金 月1万円 | 掛金 月3万円 | 掛金 月7万円 |
|---|---|---|---|
| 4,000,000円 | 18,200円 | 54,400円 | 126,900円 |
| 6,000,000円 | 36,500円 | 109,600円 | 228,700円 |
| 8,000,000円 | 36,500円 | 109,500円 | 255,600円 |
| 10,000,000円 | 40,200円 | 120,600円 | 274,200円 |
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同じ掛金でも、所得が高い方ほど軽くなる税額は大きくなります (適用される税率が高いためです)。あなたの数字ではシミュレーションでその場で確かめられます。
払い方 — 前納・増減額・申告
掛金は月払いだけではありません。払い方と手続きを知っておくと、資金繰りにも申告にも無理なく組み込めます。
加入後は口座振替です。初回の振替は加入申込みを行った月の翌々月で、毎月払いなら3か月分、半年払いなら6か月分、年払いなら12か月分がまとめて引き落とされます。1年以内の前納掛金も、払った年の所得控除の対象になります。利益が出た年は、この前納を使って所得控除の額を調整できます。
しおりは増額・減額に理由を求めていません。無理のない額から始めて、利益が安定してから増やす決め方ができます。掛止め (納付の一時停止) もありますが、こちらは「所得がなく掛金の納付が著しく困難なとき」「災害に遭遇し、または入院しているため掛金の納付が著しく困難なとき」に限られ、期間も6か月または12か月です。掛止めをした期間は、老齢給付に必要な共済契約期間 (15年) にも、退職所得控除額の計算期間にも入りません。
しおりは「掛金は、共済契約者ご自身の収入の中から納付していただきますので、事業上の損金または必要経費には算入できません」と定めています。役員が加入した掛金を会社が払って損金にする、という扱いはできません。あくまで契約者個人が自分の収入から払い、個人の所得から控除する制度です。経営セーフティ共済とはここが根本的に違います。
確定申告では小規模企業共済等掛金控除として申告します。個人事業主の方は確定申告で、給与所得のある会社役員の方は年末調整でも控除を受けられます。しおりは「領収書は、確定申告・年末調整で納付した掛金を所得から控除するときに添付を求められることがありますので、大切に保管してください」と案内しています。
個人事業主の方は、所得税の確定申告書の 2 か所に書きます (会社役員の方は年末調整の保険料控除申告書でも同じ控除を受けられます)。番号は下の表と対応しています。
確定申告書 第一表 — 所得から差し引かれる金額
| 欄 | 何を書くか | 記載例・注意 |
|---|---|---|
| ① ⑭ 小規模企業共済等掛金控除 | その年に払った掛金の合計 (iDeCo の掛金があれば合算) | 月 30,000円なら 360,000。上の ⑬ 社会保険料控除は国民健康保険・国民年金の欄 |
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確定申告書 第二表 — 控除の内訳
| 欄 | 何を書くか | 記載例・注意 |
|---|---|---|
| ② ⑬⑭ 社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除の内訳 | 保険料等の種類に「小規模企業共済掛金」、支払保険料等の計にその年の掛金の合計 | 中小機構から届く「小規模企業共済掛金払込証明書」の金額 |
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出典: 国税庁 確定申告書 第一表・第二表 (令和7年分以降用・PDF)
受取り — 一括か分割か・税金
この制度がよくできているのは、掛けている間だけでなく、受け取るときにも税の優遇が用意されている点です。受け取り方は一括・分割 (年金) ・その併用の3つから選べ、それぞれ課税のされ方が変わります。
納付年数に応じた退職所得控除 (20年までは1年あたり40万円、20年を超える分は1年あたり70万円) を引き、残った金額の2分の1だけが課税対象になります。控除の枠に収まれば税金はかかりません。給与や事業所得と切り離して計算される分離課税である点も有利に働きます。
共済金300万円以上・受取開始時に60歳以上という要件を満たすと、10年または15年にわたって年6回 (1月・3月・5月・7月・9月・11月) 受け取れます。受け取る額には公的年金等控除があり、65歳以上なら最低でも年110万円が引かれます。総受取額は一括より増えますが、他の公的年金と合算して課税される点に注意が必要です。
掛金納付月数が12か月以上あれば受け取れます。222か月 (18年6か月) までは掛金合計額、223か月以降は共済金B の91%相当額です。税法上は退職所得として扱われます。
自分の都合で解約した場合の解約手当金は、掛金納付月数に応じて掛金合計額の80%から120%相当額です。240か月 (20年) 未満だと掛金合計額を下回ります。税法上も退職所得ではなく一時所得の扱い (65歳以上で任意解約する場合は退職所得の扱い) になるため、65歳より前にやめると税の面でも不利になります。
どの受け取り方が有利かは、受け取る金額・ほかの退職金・ほかの年金によって変わります。小規模企業共済シミュレーションでは、一括と年金10年・15年の3通りで、税額と手取りを並べて確認できます。
借入 — 掛金がそのまま借入枠に
加入をためらう理由でいちばん多いのが「共済に入れたお金は、いざというとき使えないのではないか」というご心配です。実際には、払い込んだ掛金の範囲内 (掛金納付月数に応じて掛金の7割から9割) で事業資金などを借りられる制度があります。掛金は使えなくなるお金ではなく、事業の信用枠に変わっているとお考えください。
もっとも使われるのが一般貸付けです。上限2,000万円・下限10万円、利率は年1.5% (しおり時点。最新の利率は中小機構のページでご確認ください)、期間は借入額に応じて6か月から60か月、担保も保証人も要りません。利用できるのは掛金を12か月以上納めてからで、枠の判定は毎年4月末と10月末に行われます。
目的に応じた貸付けも用意されています。いずれも一般貸付けの資格を持っていることが前提で、利率は年0.9%・上限1,000万円・下限50万円です (複数を合わせて借りる場合の上限は2,000万円)。
借りられる枠の目安はシミュレーションの画面でも確認できます。
注意点 — 12 か月・20 年・受け取る順序
有利な制度ですが、始め方と終わり方を誤ると効果が大きく減ります。弊所がご案内するときに、必ずお伝えしている4点です。
共済金も解約手当金も受け取れず、払った掛金は戻りません。始める前に、1年間は続けられる金額かどうかをご確認ください。
解約手当金は掛金納付月数に応じて掛金合計額の80%から始まります。長く続けるほど有利になる設計なので、月1,000円まで下げられることを踏まえ、減らせる余地を残した金額で始めるのが安全です。
退職所得控除は、前年以前4年内に他の退職金を受け取っていると調整されます。確定拠出年金 (iDeCo) の一時金を先に受け取った場合の調整対象は9年内に広がり (令和8年1月1日以後に受け取る分から)、退職金を先に受け取って後から確定拠出年金の一時金を受け取る場合は19年内です。受け取る順序と間隔で税額が大きく変わるため、複数の退職金・一時金がある方は実行前にご相談ください。
共済金は、共済事由が生じた時点の制度にもとづいて計算されます。運用実績によって上乗せ (付加共済金) が付くこともあり、制度改正で変わることもあります。試算の金額は、方向をつかむための目安としてご覧ください。
使い分け — 経営セーフティ共済と
名前が似ているため混同されがちですが、小規模企業共済と経営セーフティ共済 (中小企業倒産防止共済)は別の制度です。両方に加入することもできます。
小規模企業共済は経営者個人が自分の収入から払い、個人の所得控除になります。経営セーフティ共済は法人または事業が払い、法人の損金または事業所得の必要経費になります。
ここが最大の違いです。小規模企業共済は一括なら退職所得控除、分割なら公的年金等控除が使えます。経営セーフティ共済の解約手当金にその優遇はなく、全額がそのまま益金または事業所得の収入金額になります。だから経営セーフティ共済は、解約する年に役員退職金などの損金をぶつける設計が欠かせません。
個人の手取りを増やしながら退職金を作るなら小規模企業共済。法人で利益が出ていて、数年内に役員退職金の予定があり、売掛金の焦げ付きにも備えたいなら経営セーフティ共済です。どちらを先にするかは資金繰り次第のため、両方の試算をお持ちしたうえでご相談いただくのが確実です。
試算 — あなたの数字で確かめる
掛金でいくら税金が軽くなるか、将来いくら受け取れて手取りはいくらになるか、いくらまで借りられるか。この3つを1つの画面で確認できます。計算はすべてお使いのブラウザの中だけで行われます。入力した数字がお客様の情報と結び付くことはありません。
※本ページの制度の内容は、中小機構「小規模企業共済制度のしおり」(令和8年4月改訂版) にもとづいています。最新の取り扱いは中小機構のご案内をご確認ください。個別のご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。
できます。小規模企業共済の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」、iDeCo の掛金も同じ枠で全額が所得控除になり、どちらも上限まで使えます。個人事業主の場合、小規模企業共済は月70,000円まで、iDeCo は月68,000円まで (国民年金基金または付加保険料との合算枠) が上限です。違いは、小規模企業共済が国の機関の制度で事業資金の貸付制度がある点です。ただし元本が必ず守られるわけではなく、廃業・老齢による受け取り (共済金A・共済金B) は掛金を上回る一方、任意解約は240か月 (20年) 未満だと掛金合計額を下回り、12か月未満は掛け捨てです。iDeCo は自分で運用商品を選び、原則60歳まで引き出せません。資金繰りに不安がある段階では、貸付制度のある小規模企業共済から始めるのが安全です。
節税額から逆算して上限まで掛けるのはおすすめしません。この制度は納付が12か月未満だと掛け捨て、任意解約は240か月 (20年) 未満だと元本割れするため、続けられるかどうかが最も重要です。掛金は月1,000円まで下げられるので、減らす余地を残した金額から始め、利益が安定してから増額するのが確実です。
掛金の減額はいつでもできます (月1,000円まで)。掛止め (一時的な停止) の制度もあり、その期間は掛金納付月数に算入されません。解約せずに減額や掛止めで乗り切るのが基本です。任意解約は240か月未満だと元本割れするうえ、受け取る解約手当金が退職所得ではなく一時所得の扱い (65歳以上で任意解約する場合は退職所得の扱い) になるため、65歳より前にやめると税の面でも不利になります。
設立した法人の役員になり、その法人が加入資格の範囲内であれば、それまでの掛金納付月数を通算して加入を続けられます。ただし自動ではなく、通算申出書兼契約申込書による所定の手続きが必要で、申出の期間は請求事由が生じてから1年以内です。役員にならなかった場合などは準共済金として受け取ることになり、掛金納付月数が222か月 (18年6か月) までは掛金合計額、223か月以降は共済金Bの91%相当額です。税法上は退職所得として扱われます。法人成りのタイミングは、共済の取り扱いも含めてご相談ください。
目的が違うため、優先順位はご事業の段階で変わります。小規模企業共済は経営者個人の退職金づくりで、掛金は個人の所得控除、受け取るときも退職所得控除などで守られます。経営セーフティ共済は事業のお金で、掛金は法人の損金または事業の必要経費ですが、解約時は全額が課税されます。個人の手取りを増やしながら退職金を作るなら小規模企業共済、法人で利益が出ていて数年内に役員退職金の予定があるなら経営セーフティ共済が噛み合います。両方に加入することもできます。
できます。前納すると一定割合の前納減額金を受け取れます。1年以内の前納であれば、支払った年にその全額が所得控除の対象になるため、利益が出た年の調整にも使えます。掛金の払込方法は月払・半年払・年払から選べます。
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