小規模企業共済は、国の機関である中小機構が運営する、個人事業主と小規模な会社の役員のための退職金制度です。掛金は全額が所得控除になり、受け取るときも退職所得控除や公的年金等控除で守られます。弊所が個人事業主・マイクロ法人のお客様に、まずご案内している制度です。
ここでは制度の要点と、意外と知られていない貸付制度、そして注意すべき点を、税理士・公認会計士が実務の目線でご説明します。ご自身の数字での試算は、無料のシミュレーションからどうぞ。
業種によって人数の基準が変わります。建設業・製造業・運輸業・不動産業・農業・宿泊業・娯楽業などは常時使用する従業員20人以下、卸売業・小売業・宿泊業と娯楽業を除くサービス業は5人以下が目安です。個人事業主の共同経営者 (1人につき2人まで) も加入できます。給与所得者との兼業や、直接営利を目的としない法人の役員などは加入できません。
加入したあとに増やすことも減らすこともできます。前納すれば一定の前納減額金も受け取れます。無理のない額から始めて、利益が安定してから増やす決め方ができるのがこの制度の使いやすさです。
所得税法75条は、掛金について「その支払つた金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する」と定めています。生命保険料控除のような上限はなく、払った全額が所得から引かれます。税率の高い方ほど、同じ掛金でも軽くなる税額は大きくなります。
個人事業の廃止や会社の解散のときは共済金A、65歳以上で180か月以上納めた方の老齢給付や、疾病・負傷・65歳以上による役員の退任は共済金B です。法人成りして役員にならなかった場合などは準共済金になります。
この制度がよくできているのは、掛けている間だけでなく、受け取るときにも税の優遇が用意されている点です。受け取り方は一括・分割 (年金) ・その併用の3つから選べ、それぞれ課税のされ方が変わります。
納付年数に応じた退職所得控除 (20年までは1年あたり40万円、20年を超える分は1年あたり70万円) を引き、残った金額の2分の1だけが課税対象になります。控除の枠に収まれば税金はかかりません。給与や事業所得と切り離して計算される分離課税である点も有利に働きます。
共済金300万円以上・受取開始時に60歳以上という要件を満たすと、10年または15年にわたって年6回 (1月・3月・5月・7月・9月・11月) 受け取れます。受け取る額には公的年金等控除があり、65歳以上なら最低でも年110万円が引かれます。総受取額は一括より増えますが、他の公的年金と合算して課税される点に注意が必要です。
掛金納付月数が12か月以上あれば受け取れます。222か月 (18年6か月) までは掛金合計額、223か月以降は共済金B の91%相当額です。税法上は退職所得として扱われます。
自分の都合で解約した場合の解約手当金は、掛金納付月数に応じて掛金合計額の80%から120%相当額です。240か月 (20年) 未満だと掛金合計額を下回ります。税法上も退職所得ではなく一時所得の扱いになるため、税の面でも不利になります。
どの受け取り方が有利かは、受け取る金額・ほかの退職金・ほかの年金によって変わります。小規模企業共済シミュレーションでは、一括と年金10年・15年の3通りで、税額と手取りを並べて確認できます。
加入をためらう理由でいちばん多いのが「共済に入れたお金は、いざというとき使えないのではないか」というご心配です。実際には、払い込んだ掛金の範囲内 (掛金納付月数に応じて掛金の7割から9割) で事業資金などを借りられる制度があります。掛金は使えなくなるお金ではなく、事業の信用枠に変わっているとお考えください。
もっとも使われるのが一般貸付けです。上限2,000万円・下限10万円、利率は年1.5% (しおり時点。最新の利率は中小機構のページでご確認ください)、期間は借入額に応じて6か月から60か月、担保も保証人も要りません。利用できるのは掛金を12か月以上納めてからで、枠の判定は毎年4月末と10月末に行われます。
目的に応じた貸付けも用意されています。いずれも一般貸付けの資格を持っていることが前提で、利率は年0.9%・上限1,000万円・下限50万円です (複数を合わせて借りる場合の上限は2,000万円)。
借りられる枠の目安はシミュレーションの画面でも確認できます。
有利な制度ですが、始め方と終わり方を誤ると効果が大きく減ります。弊所がご案内するときに、必ずお伝えしている4点です。
共済金も解約手当金も受け取れず、払った掛金は戻りません。始める前に、1年間は続けられる金額かどうかをご確認ください。
解約手当金は掛金納付月数に応じて掛金合計額の80%から始まります。長く続けるほど有利になる設計なので、月1,000円まで下げられることを踏まえ、減らせる余地を残した金額で始めるのが安全です。
退職所得控除は、前年以前4年内に他の退職金を受け取っていると調整されます。確定拠出年金 (iDeCo) の一時金を先に受け取った場合の調整対象は9年内に広がり (令和8年1月1日以後に受け取る分から)、退職金を先に受け取って後から確定拠出年金の一時金を受け取る場合は19年内です。受け取る順序と間隔で税額が大きく変わるため、複数の退職金・一時金がある方は実行前にご相談ください。
共済金は、共済事由が生じた時点の制度にもとづいて計算されます。運用実績によって上乗せ (付加共済金) が付くこともあり、制度改正で変わることもあります。試算の金額は、方向をつかむための目安としてご覧ください。
掛金でいくら税金が軽くなるか、将来いくら受け取れて手取りはいくらになるか、いくらまで借りられるか。この3つを1つの画面で確認できます。入力した数字がサーバーへ送信されることはありません。
※本ページの制度の内容は、中小機構「小規模企業共済制度のしおり」(2023年11月版) にもとづいています。最新の取り扱いは中小機構のご案内をご確認ください。個別のご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。
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