小規模企業共済はいくらもらえるか — 掛金月額別の受取額の目安と、掛金で軽くなる税金・受け取り時の税金を通しで見る早見表
「小規模企業共済に入ると、結局いくら受け取れるのか」— 掛金の節税効果は知られていても、出口の受取額は意外と知られていません。共済金の種類・納付年数ごとの受取額の目安・掛金で軽くなる税金・受け取るときの税金を、中小機構の公表値と弊所の試算で通しで整理しました。
この記事の要点
- 請求の区分は4種類で、加入の立場と請求理由で決まる。個人事業主の死亡は共済金A、会社役員の死亡は共済金B。個人の老齢給付Bは65歳以上・納付180か月以上が必要
- 掛金月1万円を20年納めた場合の目安は、共済金A 2,786,400円・共済金B 2,658,800円・準共済金 2,419,500円・解約手当金 2,400,000円(中小機構の公表例)
- 事業所得600万円の個人事業主が月3万円を20年掛けると、掛金による負担減は年約11.0万円、一括で受け取るときの税金は0円。通しの手残りは約296.8万円増える結果です
減税の例は事業所得600万円・40歳未満の年の青色申告特別控除65万円を所得から引き、社会保険料控除・基礎控除・掛金控除・東京都江東区の令和8年度料率・令和8年分税制を固定した概算です。納付20年の受取例は、受取時に老齢給付Bの65歳以上・納付180か月以上を満たすと仮定し、付加共済金・控除の重複調整・年齢の推移を含めません。今からその年数が経てばBを受け取れるという予測ではありません。
受取額は「加入の立場と請求の理由」で4種類に分かれる
小規模企業共済は、個人事業主や小さな会社の役員が自分の退職金を積み立てる制度で、掛金は月1,000円から7万円まで500円刻みで選べます。受け取れる額は、掛金の額と納付月数のほかに、請求の理由で変わります。
| 種類 | 個人事業主・共同経営者 | 会社等役員 | 金額の確認 |
|---|---|---|---|
| 共済金A | 全事業の廃業・本人の死亡。共同経営者は事業主の廃業に伴う退任、本人の疾病・負傷による退任など | 会社等の解散 | 請求事由と納付月数に対応する基本共済金 |
| 共済金B | 老齢給付は年齢と納付月数の両方を満たす場合 | 疾病・負傷による退任、所定年齢以上の退任、本人の死亡、老齢給付 | 個人の老齢給付と役員の退任の条件を分ける |
| 準共済金 | 法人成りで加入資格がなくなる場合など | 解散・疾病・負傷によらず所定年齢未満で退任する場合 | 納付月数に対応する額で、常に元本と同額ではない |
| 解約手当金 | 任意解約・機構解約、共同経営者の任意退任、法人成りの一部のケース | 任意解約・機構解約 | 納付月数だけでなく掛金の増減区分も確認 |
※個人の老齢給付は65歳以上・納付180か月以上、役員の年齢による退任は65歳以上かを確認します。旧契約・過去の退任等は別の条件があります。区分を税額で自由に選べる表ではありません。
請求事由に該当していても、共済金A・Bは納付6か月未満、準共済金・解約手当金は納付12か月未満では受け取れません。共済金Bが公表額の表にあることだけで、個人が老齢給付の年齢と期間の要件を満たすとは判断しません。なお、個人事業を同じ事業の会社にするために金銭以外の資産を出資して廃業した場合(現物出資による法人成り)は、共済金Aではなく解約手当金になります。
納付年数ごとの受取額 — 掛金月1万円の公表例
中小機構が公表している、掛金月額1万円のときの受取額の例です。基本共済金の額は小規模企業共済法施行令の別表で決まっており、これに毎年度定められる付加共済金が上乗せされます。ただし、解約手当金には付加共済金は上乗せされません。
| 納付期間(掛金総額) | 共済金A | 共済金B | 準共済金 | 解約手当金 |
|---|---|---|---|---|
| 5年(60万円) | 621,400円 | 614,600円 | 600,000円 | 480,000円 |
| 10年(120万円) | 1,290,600円 | 1,260,800円 | 1,200,000円 | 1,020,000円 |
| 15年(180万円) | 2,011,000円 | 1,940,400円 | 1,800,000円 | 1,665,000円 |
| 20年(240万円) | 2,786,400円 | 2,658,800円 | 2,419,500円 | 2,400,000円 |
※中小機構が公表する掛金月1万円の例です。請求事由で区分が決まり、付加共済金と受取時の税を含まない金額です。事業所得600万円の税額例とは別です。
掛金月額を増やせば受取額も増えますが、途中で増額した分は増額前の掛金と分けてそれぞれの納付月数で計算して合計するため、単純に同じ倍率にはなりません。共済金Aなら20年で掛金総額の約1.16倍、共済金Bで約1.11倍です。途中で掛金を増減しない任意解約の例は20年(240か月)で掛金総額と同額になります。増減した掛金区分の納付月数が足りなければ、加入期間全体がこの年数以上でも元本を下回る場合があります。
掛金で軽くなる税金 — 全額が所得控除になる
払った掛金は、その年の所得から全額を差し引けます(所得税法75条・小規模企業共済等掛金控除)。年の掛金の上限は84万円(月7万円)で、所得税と住民税の両方で控除されます。事業所得600万円の個人事業主(40歳未満)について、掛金月額ごとに20年間の通しの数字を並べました。
掛金だけを変え、20年間の減税と出口の税を並べる
事業所得600万円の個人事業主について、20年間の掛金・減税と、受取時に老齢給付の条件を満たすと仮定した共済金Bの一括受取の税金を並べます。条件をそろえ、掛金月額だけを変えています。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 掛金月額 | 掛金総額(20年間の累計) | 入口の所得税・住民税の負担減(年額) | 入口の負担減の合計(20年間の累計) | 共済金Bの受取額(20年間の累計を一括) | 受取時の所得税・住民税(受け取る年の年額) | 入口から出口までの手残り増(20年間の累計) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1万円 | 240万円 | 約3.7万円 | 73.0万円 | 約265.9万円 | 0円 | 約98.9万円 |
| 3万円 | 720万円 | 約11.0万円 | 219.2万円 | 約797.6万円 | 0円 | 約296.8万円 |
| 5万円 | 1,200万円 | 約18.0万円 | 360.4万円 | 約1,329.4万円 | 約43.5万円 | 約446.3万円 |
| 7万円 | 1,680万円 | 約22.9万円 | 457.4万円 | 約1,861.2万円 | 約117.7万円 | 約520.8万円 |
※個人事業主の事業所得600万円、掛金を途中で増減せず20年間納付し、共済金Bを一括で受け取るモデルです。共済金Bの請求事由に該当することが前提で、他の共済金や任意解約へ自由に置き換えられるものではありません。65歳以上・納付180か月以上の老齢給付を受取時に満たすと仮定します。積立期の税額の年齢帯をそのまま受取時の年齢として使わず、個別の加入資格・請求事由を別に確認します。
※積立期の年額は40歳未満・東京都江東区の令和8年度保険料・令和8年分の税制、青色申告特別控除65万円を所得から引き、社会保険料控除・基礎控除・掛金控除を反映した概算です。その年額の減税額を20倍する固定条件の比較で、年齢の推移を含む個人の将来予測ではありません。将来20年間の税額や受取額を保証するものではありません。
※受取額は基本共済金Bの目安で、付加共済金を含みません。受取時は納付20年の退職所得控除800万円を使い、他の退職所得との控除の重複調整がない前提です。掛金総額・入口の減税は20年分、受取額と出口税は一括受取時の金額です。
この条件の出口税は、掛金月額ごとに次のとおりです。
- 月1万円: 0円
- 月3万円: 0円
- 月5万円: 約43.5万円
- 月7万円: 約117.7万円
入口から出口までの手残り増は、受取額から出口税と掛金総額を引き、入口の負担減の20年間合計を足した額です。表示済みの年額を20倍せず、丸め前の計算結果から求めています。
通しの手残り増は、受取額から受け取り時の税金と実質の負担(掛金から軽くなった税を引いた額)を引いたものです。掛金ごとの出口税は上の表のとおりで、受取額と退職所得控除の差によって変わります。手残りの差と、途中で使えなくなる資金を一緒に見ます。
受け取るときの税金 — 一括なら退職所得、分割なら公的年金と同じ扱い
所得税法31条3号は、確定給付企業年金の一時金に類する一時金として政令で定めるものも退職手当等とみなしており、小規模企業共済契約に基づいて支給される共済金はその政令に挙げられています(所得税法施行令72条3項3号)。死亡によらず共済金・準共済金を一括で受け取る場合は退職所得扱いで、中小機構の案内の税法上の取扱いもこの区分です。一般の計算は退職所得控除後の額の2分の1に税率を当てます(所得税法30条2項)。
短期の退職手当等の特則や他の退職所得との控除調整は別に確認します。死亡により遺族が受け取る共済金は、同じ退職所得の試算に当てはめません。退職所得控除は納付年数20年までは1年あたり40万円で、20年なら800万円です。
ただし、退職所得控除はその年に受け取る退職手当等の収入合計に対して適用し、共済金と他の退職金に別々に使うものではありません(所得税法30条2項)。同じ年に会社の役員退職金など他の退職所得があると、控除の枠を分け合い、共済金にかかる税金が増えることがあります。
掛金を増やした例では、次のとおりです。
- 月5万円の例: 共済金Bは約1,329.4万円、退職所得控除は800万円です。共済金が控除の枠を超えるため、受け取り時の税金は約43.5万円です。
- 月7万円の例: 共済金Bは約1,861.2万円、退職所得控除は800万円です。共済金が控除の枠を超えるため、受け取り時の税金は約117.7万円です。
この表は一般の退職所得の計算を使う例です。受取時の年齢・請求事由・他の退職所得も合わせて、共済の入口と出口の課税を確認してください。
受取方法は3種類で、一括・分割・一括と分割の併用です。分割で受け取ると公的年金等の雑所得として扱われ、公的年金等控除を差し引いて計算します。ただし、分割受取りと一括・分割の併用は、共済金Aか共済金Bで、請求事由が生じた日に60歳以上(死亡を除く)という要件があります。さらに、共済金の額が分割なら300万円以上、併用なら330万円以上であることも必要です。
併用では一括分30万円以上・分割分300万円以上も確認します。
掛金と受取時期を決める前に、入口と出口を3段階で確かめる
- 共済の契約・納付履歴、加入時期、請求理由、今後の利益と現預金を用意し、掛金と受取時期の候補を書き出します。
- 受給区分を確かめ、同じ掛金と期間で掛金総額、入口の減税累計、受取額、出口の税、税引後の手残りを並べます。他の退職金や受取時期との関係も確認します。
- 使える受取区分と資金を残せる時期に絞って候補を試します。契約・納付履歴・利益見込みを用意し、相談のご案内で確認してから掛金と受取時期を決めます。
まとめ — 「いくらもらえるか」は掛金・年数・請求の理由で決まる
受取額の目安は請求の理由と納付期間で変わり、上の公表例の共済金Bは掛金総額の約1.11倍で、それに加えて積立期の節税が毎年積み上がります。手残りを大きくするには、自分の立場と請求事由で受け取れる区分を確認すること、退職所得控除の範囲を意識して掛金と受け取り方を設計することが要点です。小規模企業共済シミュレーションでは、掛金・年数・受け取り方を変えて通しの数字をその場で確かめられます。あなたの掛金なら、20年の納付と、受取条件を満たす時点ではいくら手元に残るでしょうか。
※本記事の弊所試算は、事業所得600万円・40歳未満・青色申告特別控除65万円を所得から引き、社会保険料控除・基礎控除・掛金控除を反映・東京都江東区の令和8年度料率・令和8年分税制・共済金Bの一括受け取りを前提の概算です。受取額は基本共済金の額で、付加共済金は含みません。
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