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小規模企業共済とは 「出口で課税されるから意味ない」は本当か、掛金の節税と受け取り時の税金を通しで検証

コラム

「掛金を控除しても、受け取るときに課税されるなら意味がない」— 小規模企業共済について、そんな声を聞くことがあります。入口(掛金の所得控除)と出口(共済金の税金)を通しで並べて、どこまで本当かを弊所の実額試算で確かめます。

この記事の要点

  • 掛金は全額が所得控除。事業所得600万円の個人事業主が月3万円を掛けると、所得税・住民税が年約11万円軽くなる
  • 一括で受け取る共済金は退職所得扱い。20年積み立てた例では退職所得控除800万円に収まり、受け取り時の税金は0円。掛金の大きい役員の例でも、通しでは手残りが増える
  • 「意味ない」に近づくのは、65歳未満で任意解約する場合(一時所得扱い・240か月未満は元本割れ)など。出口の形で答えが変わる

制度の中身 — 経営者と個人事業主のための「自分で積み立てる退職金」

小規模企業共済は、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する、小規模企業の経営者・役員・個人事業主のための退職金制度です。掛金は月1,000円〜7万円の範囲で500円単位で決められ、加入後の増額・減額もできます。

共済金は、廃業や役員の退任などのときに受け取ります。受け取る事由によって共済金A・共済金B・準共済金・解約手当金の4種類に分かれ、納付月数や請求事由によって受取額が変わります。受け取り方は一括・分割・併用から選べますが、分割と併用には請求の事由が60歳以上で生じたときで共済金が300万円以上などの要件があります。

小規模企業共済の基本
項目内容
運営中小機構(国の機関)
加入できる人常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下。ただし宿泊業・娯楽業は20人以下)の個人事業主や会社の役員など。会社員や事業専従者、医療法人・学校法人・NPO法人・社会福祉法人などの役員、登記されていない相談役・顧問は加入できない
掛金月1,000円〜7万円(500円単位)。全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)
受け取り方一括(退職所得扱い)・分割(公的年金等の雑所得扱い・60歳以上などの要件あり)・併用
任意解約一時所得扱い(65歳以上は退職所得扱い)。法人成りに伴う受け取りは通常の任意解約と区別し、加入資格・請求事由・加入時期に応じた所得区分を中小機構の案内で確認する。12か月未満は掛け捨て、240か月未満は掛金合計額を下回る
貸付制度納付12か月以上などの要件のもと、掛金の7〜9割の範囲(10万円〜2,000万円)で事業資金を借りられる

老齢給付として共済金Bを受け取るには、65歳以上で掛金納付月数が180か月以上必要です。この要件を満たせば、事業を続けたまま請求できます。65歳以上の任意解約が退職所得になる取扱いとは、請求事由も受取額も別です。

入口 — 掛金は全額が所得控除。ただし国保と事業税は動かない

従業員数の要件は加入時のものです。加入後に従業員が増えて人数の要件を超えても、契約は続けられます。

掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から引かれます(所得税法75条。旧第二種共済契約の掛金は除きます)。事業所得600万円の個人事業主が月3万円を掛けると、弊所の試算では所得税・住民税が年約11万円軽くなりました。

所得が高い方ほど、同じ掛金で軽くなる税額は大きくなります。所得と掛金の組み合わせごとの目安は、次の早見表で確かめてみましょう。

※計算図の税・保険料の基準(該当する項目): 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度。

掛金でいくら税が軽くなるか — 所得と掛金の早見表 (年間)
事業所得 (掛金を引く前)掛金 月1万円掛金 月3万円掛金 月7万円
4,000,000円18,200円54,400円126,900円
6,000,000円36,500円109,600円228,700円
8,000,000円36,500円109,500円255,600円
10,000,000円40,200円120,600円274,200円

→ 表は横にスクロールできます

同じ掛金でも、所得が高い方ほど軽くなる税額は大きくなります (適用される税率が高いためです)。あなたの数字ではシミュレーションでその場で確かめられます。

前提: 個人事業主・39歳以下 (介護保険分なし)。軽くなるのは所得税 + 住民税です (国民健康保険料は掛金では変わりません。掛金の所得控除は国民健康保険料の計算に使われないためです)。所得控除は青色申告特別控除650,000円・社会保険料控除・基礎控除と掛金だけを入れた概算で、金額は目安です。

出口 — 一括で受け取る共済金は退職所得。20年で控除800万円

一括で受け取る共済金は、税法上は退職金と同じ「退職所得」として扱われます(所得税法31条3号・所得税法施行令72条3項3号)。退職所得は、受け取った額から退職所得控除を引いた残りの2分の1にだけ税金がかかります(所得税法30条2項)。

退職所得控除は、勤続年数20年以下なら1年あたり40万円、20年を超える部分は1年あたり70万円です(同条3項)。20年積み立てれば800万円まで税金がかからない計算になります。

先ほどの個人事業主と、役員報酬月50万円の会社役員が掛金の上限の月7万円を掛けた場合を、20年後に一括で受け取るまで通して見てみましょう。

※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。

積立から一括受け取りまでを通した手残り(弊所試算・掛金と軽くなった税は20年間の合計、受取額と受け取り時の税は受け取る1年の金額)
項目個人事業主(事業所得600万円・掛金3万円)会社役員(役員報酬50万円・掛金7万円)
受け取り時の扱い退職所得(控除の範囲内)退職所得(控除を超えた分の2分の1に課税)
掛金の総額(20年分)720万円1,680万円
積立期に軽くなった所得税・住民税の合計約219.2万円約306.6万円
実質の負担(掛金−軽くなった税)約500.8万円約1,373.4万円
受け取る共済金の目安(一括)約797.6万円約1,861.2万円
退職所得控除(20年)800万円800万円
受け取り時の所得税・住民税0円約117.7万円
通しの手残り増(共済金−受け取り時の税−実質の負担)約296.8万円約370.0万円

個人事業主の例では、共済金が退職所得控除の800万円に収まるため、受け取り時の税金は0円です。入口で軽くなった約219.2万円がそのまま残ります。

役員の例では共済金が控除を超えるので、受け取り時に約117.7万円の税金がかかります。それでも入口で軽くなった約306.6万円のほうが大きく、通しの手残りは約370.0万円増えました。出口で課税されることは事実ですが、本稿の前提では「意味がない」とは言えない結果です。

この比較に含めた負担は所得税・住民税です。国民健康保険料や社会保険料は掛金で変わらないため、差額には影響しません(掛金を払うために役員報酬を増やせば、その分の社会保険料は増えます)。

「意味ない」に近づくケースと、出口の注意点

長く続けて、廃業や退任という「退職」の形で一括受け取りに持ち込めるかどうか。ここが、この制度を活かせるかどうかの分かれ目です。

まとめ — 入口の控除と出口の2分の1課税をセットで見る

小規模企業共済の出口で課税されるのは本当です。ただ、本稿の2例では入口の控除と出口の課税を通しても手残りが増えました。他の退職金との控除調整や解約の時期、将来の税制改正によって結果は変わりますので、あなたの掛金と年数でも確かめてみましょう。

下のシミュレーションでは、立場・所得・掛金・年数・受け取り方を入れると、今の節税額・将来の受取額・受け取り時の税金を通しで確かめられます。加入や掛金の変更は、廃業・退任の時期の見通しとあわせて事前にご相談ください。

※本記事の金額は、個人事業主は事業所得600万円・39歳以下・東京都江東区の令和8年度料率・所得控除は青色申告特別控除65万円・社会保険料控除・基礎控除と掛金控除のみ、会社役員は役員報酬月50万円・40歳未満・協会けんぽ東京・所得控除は給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除と掛金控除のみの概算です。共済金は中小機構の共済金の目安表(掛金月額1万円・共済金B)を掛金に比例させた概算で、受け取り時の税金は退職所得控除後の2分の1に所得税(復興特別所得税を含む)と住民税をかけて計算しています。

※所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の前提です。積立期の給与・事業所得に対する住民税は、その所得に対応する翌年度の見込み額です。20年間の所得・掛金・税制を現在の前提に固定した比較であり、将来20年間の税額や受取額を保証するものではありません。

この記事の内容は、あなたの数字でその場で試算できます。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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