法人の利益は「役員報酬で個人に移す」か「法人に残す」かの二択です。この記事では、どちらが得かを実際の試算で示し、最後に効いてくる「出口」の話まで整理します。
この記事の要点
- 報酬で取り切ると、社会保険料と所得税の累進で今の負担が最大になる
- 弊所試算では、利益1,300万円を報酬月100万円で取り切ると、月60万円の場合より年約102万円重い
- 法人に残した利益は、退職金で受け取ると出口の税負担が大きく下がる
実際に比べてみると
売上2,000万円・経費700万円(利益1,300万円)の会社で、役員報酬を月60万円にする場合と月100万円にする場合を試算しました。
| 報酬 月60万円(残す) | 報酬 月100万円(取り切る) | |
|---|---|---|
| 社会保険料(会社+本人) | 約218.6万円 | 約285.9万円 |
| 法人税等 | 約108.5万円 | 約7万円(均等割のみ) |
| 社長の所得税+住民税 | 約70.0万円 | 約206.2万円 |
| 年間の総負担 | 約397.1万円 | 約499.2万円 |
月100万円では報酬と会社負担の保険料で利益を使い切り、法人はわずかに赤字になります(それでも均等割7万円はかかります)。
差は年約102万円。取り切るほど、社会保険料と所得税の累進が重くのしかかります。

では残せば勝ちなのか — 「出口」の問題
法人に残した利益にかかる法人税等は、弊所試算の実効税率でおおむね21〜34%の範囲に収まります。
問題は、残したお金が法人のものだということです。
将来それを個人が受け取るとき(配当・給与・退職金)にもう一度課税が待っています。これが「出口」の問題です。
出口の本命は退職金
退職金には、ほかの受け取り方にない2つの優遇があります。
- 退職所得控除 — 勤続年数×40万円(20年を超える部分は年70万円)までが課税対象から外れる
- 2分の1課税 — 控除後の残りも、原則その半分にしか課税されない
例えば勤続20年なら控除は800万円。800万円までの退職金なら所得税はかかりません。
さらに、支払う退職金は原則として法人側でも経費(損金)になります。
注意点 — 出口設計にも限度がある
役員としての勤続が5年以下の場合、2分の1課税は使えません。
不相当に高額な退職金は法人の経費として認められないため、勤続や功績に見合った金額設計が必要です。
そして退職金は最後に1回きり。毎年の報酬設計と出口の設計は、長期の計画として一体で考えます。
まとめ — 「今の税率」と「出口の税率」の合計で決める
報酬で取るか法人に残すかは、今年の負担だけでなく、出口まで含めた合計で比べて初めて答えが出ます。
弊所では、毎年の報酬設計から退職金の出口までを一体で試算し、長期の手取りが最大になる形をご提案します。
※本記事の金額は、40〜64歳(介護保険該当)・東京都の令和8年度料率・社長おひとりの前提での概算です。※退職金の税制は2026年8月時点の法令に基づきます。