法人に利益を残す vs 報酬で取り切る — 退職金という出口まで考えた設計
法人の利益は「役員報酬で個人に移す」か「法人に残す」かの二択です。この記事では、どちらが得かを実際の試算で示し、最後に効いてくる「出口」の話まで整理します。
この記事の要点
- 報酬で取り切ると、社会保険料と所得税の累進で今の負担が最大になる
- 弊所試算では、利益1,300万円を報酬月100万円で取り切ると、月60万円の場合より年約101.9万円重い
- 法人に残した利益は、退職金で受け取ると出口の税負担が大きく下がる
本記事の金額は、40歳(介護保険該当)・東京都の令和8年度料率・社長おひとりの前提での概算です。※退職金の税制は2026年8月時点の法令に基づきます。
実際に比べてみると
売上2,000万円・経費700万円(利益1,300万円)の会社を例に取ります。
役員報酬を月60万円にする場合と月100万円にする場合を、並べて比べてみましょう。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 報酬 月60万円(残す) | 報酬 月100万円(取り切る) | |
|---|---|---|
| 社会保険料(会社+本人) | 約218.6万円 | 約285.9万円 |
| 法人税等 | 約108.5万円 | 約7万円(均等割のみ) |
| 社長の所得税+住民税 | 約69.4万円 | 約205.5万円 |
| 年間の総負担 | 約396.6万円 | 約498.5万円 |
※役員報酬・会社負担保険料控除前の利益1,300万円を固定し、月60万円と月100万円を比較します。40歳・社長おひとり・協会けんぽ東京・令和8年度、会社と本人の税・保険料の年額です。
月100万円の例では、利益から報酬と会社負担の保険料を引いた残りは年-44.4万円で、法人税等は年約7.0万円です。
赤字の場合も均等割7万円はかかります。
差は年約101.9万円重い。取り切るほど、社会保険料と所得税の累進が重くのしかかります。
※計算図の税・保険料の基準(該当する項目): 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度。
役員報酬を月70万円から月50万円に変えた場合の、会社 + 社長の年間負担
数字で見る — 何にいくらかかるか (検算用)
| 項目 | 変更前月70万円 | 変更後月50万円 |
|---|---|---|
| 役員報酬 (年額) | 8,400,000円 | 6,000,000円 |
| 社会保険料 (会社負担) | 1,165,140円 | 873,000円 |
| 社会保険料 (本人負担) | 1,137,060円 | 851,400円 |
| 法人税等 (赤字でもかかる均等割を含む) | 162,700円 | 738,000円 |
| 社長の所得税 | 513,400円 | 152,400円 |
| 社長の住民税 | 491,600円 | 310,200円 |
| 年間の負担 合計 | 3,469,900円 | 2,925,000円 |
→ 表は横にスクロールできます
この前提では、月70万円 → 50万円に下げると、税・保険料の負担が年間544,900円軽くなります。合計がいちばん小さくなる月額は利益の水準で変わるため、一律の正解額はありません。あなたの数字での答えは役員報酬シミュレーションでその場で出せます。
では残せば勝ちなのか — 「出口」の問題
弊所試算で法人の所得の各段階に使う実効税率は、均等割を別にすると約21.4%〜33.6%です。法人全体の負担率は、所得の段階ごとの税額と均等割を合わせて確認します。
出口の本命は退職金
退職金には、ほかの受け取り方にない2つの優遇があります。
- 退職所得控除 — 勤続年数×40万円(20年を超える部分は年70万円)までが課税対象から外れる
- 2分の1課税 — 控除後の残りも、原則その50%にしか課税されない
さらに、支払う退職金は原則として法人側でも経費(損金)になります。
注意点 — 出口設計にも限度がある
退職金は、毎年の報酬のように受け取るものではありません。退職の事実・時期・金額等を確認し、毎年の報酬設計と出口の設計を、長期の計画として一体で考えます。
まとめ — 「今の税率」と「出口の税率」の合計で決める
報酬で取るか法人に残すかは、今年の負担だけでなく、出口まで含めた合計で比べて初めて答えが出ます。御社なら、どちらに傾くでしょうか。
弊所では、毎年の報酬設計から退職金の出口までを一体で試算し、長期の手取りが最大になる形をご提案します。
出典
※本記事の金額は、40歳(介護保険該当)・東京都の令和8年度料率・社長おひとりの前提での概算です。※退職金の税制は2026年8月時点の法令に基づきます。
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