インボイス登録をきっかけに消費税の課税事業者になった個人事業主の方へ。消費税の納税額は、同じ売上でも申告の方式で数倍変わります。このページでは、売上別に2割特例 (令和8年分まで)・3割特例 (令和9・10年分)・簡易課税 (第1種〜第6種の業種区分別) の納税額を1行ずつ並べ、方式ごとに「売上にかかる消費税の何割を納めるか」までを、税理士・公認会計士が計算しました。本則課税は実際の課税仕入れの額で決まるため表にはせず、経費の実額を入れるシミュレーションに任せています。
免税事業者だった方がインボイス登録で課税事業者になった場合、令和8年分までは売上にかかる消費税の2割だけを納める「2割特例」が使えます。売上1,000万円 (税込) なら納税額は年181,700円です。簡易課税は業種区分で決まり、同じ売上で第1種 (卸売業) の90,800円から第6種 (不動産業) の545,300円まで開きます。2割特例を下回るのは第1種だけで、第2種 (小売業) は同額、サービス業の第5種は454,400円です。
2割特例は令和8年分で終わり、令和9年分と令和10年分は3割を納める「3割特例」に変わります (売上1,000万円なら年272,600円)。その先は簡易課税か本則課税を選ぶことになり、どちらが有利かは業種と経費の割合で決まります。ご自身の数字は、無料の消費税シミュレーションでその場で比べられます。
このページについて — 気になるところから読めます
売上は税込の年間売上です。2割特例と3割特例は「売上にかかる消費税の何割を納めるか」で決まるため経費に関係なく、簡易課税は業種区分のみなし仕入率で決まります。どちらも経費の実額を使わないため、売上が決まれば納税額が1つに決まります。
| 売上税込 | 2割特例令和8年分 | 3割特例令和9・10年分 | 簡易 第1種卸売業 | 簡易 第2種小売業 | 簡易 第3種製造・建設 | 簡易 第4種飲食店など | 簡易 第5種サービス業 | 簡易 第6種不動産業 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 90,800円 | 136,200円 | 45,300円 | 90,800円 | 136,200円 | 181,700円 | 227,100円 | 272,600円 |
| 700万円 | 127,100円 | 190,700円 | 63,500円 | 127,100円 | 190,700円 | 254,400円 | 318,000円 | 381,600円 |
| 800万円 | 145,300円 | 218,000円 | 72,600円 | 145,300円 | 218,000円 | 290,700円 | 363,500円 | 436,200円 |
| 1,000万円 | 181,700円 | 272,600円 | 90,800円 | 181,700円 | 272,600円 | 363,500円 | 454,400円 | 545,300円 |
| 1,200万円 | 218,000円 | 327,100円 | 108,900円 | 218,000円 | 327,100円 | 436,200円 | 545,300円 | 654,400円 |
| 1,500万円 | 272,600円 | 408,900円 | 136,200円 | 272,600円 | 408,900円 | 545,300円 | 681,700円 | 818,000円 |
前提: 基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、インボイス登録により課税事業者になった個人事業主。「簡易」は簡易課税の業種区分 (みなし仕入率は下の表)。本則課税は実際の課税仕入れの額で決まるため載せていません。国税と地方消費税の合計で、円未満の端数処理は申告書の計算の順序に合わせています。
令和8年分までは、簡易課税で2割特例を下回るのはみなし仕入率90%の第1種 (卸売業) だけで、第2種 (小売業) は2割特例と同額になります。令和9年分からの3割特例も同じ考え方で、第3種 (製造業・建設業など) とは同額、第1種と第2種なら簡易課税のほうが少なくなります。
本則課税の納税額は「売上にかかる消費税-実際に払った課税仕入れの消費税」で、経費の中身 (給与や社会保険料は課税仕入れに当たりません) と設備投資の有無で大きく動きます。前提を置いた1つの数字を並べると、ご自身の額と取り違えるもとになるため、表にはしていません。仕入れや外注が多い方は、経費の実額を入れて本則課税と簡易課税を比べられる消費税シミュレーションで確かめてください。
出典: 国税庁 2割特例の特設ページ / 国税庁 インボイス制度に関する令和8年度税制改正について (令和8年4月) / 国税庁タックスアンサー No.6505 簡易課税制度
消費税の納税額は「売上にかかる消費税-仕入れにかかる消費税」が原則 (本則課税) で、あとの3つは仕入れ側の消費税を実額でなく割合で置き換える方式です。
免税事業者だった方がインボイス登録で課税事業者になった場合に使える経過措置で、事前の届出は要らず、申告のときに選べます。基準期間 (2年前) の課税売上高が1,000万円を超える年や、特定期間 (前年の1月から6月) の課税売上高 (給与等の支払額で判定してもかまいません) が1,000万円を超える年など、もともと課税事業者になる年には使えません。令和5年10月より前から自分で課税事業者を選んでいた場合や、本則課税の年に税抜1,000万円以上の高額な設備を買ったあとの3年間、課税期間を短縮している年も対象外です。簡易課税の届出を出している年でも、2割特例が使える年はどちらか有利なほうを申告のときに選べます (簡易課税をやめる届出は要りません)。終了時期と、その後の選び方は「消費税の2割特例はいつまで使えるか」へ。
2割特例の後継で、対象となる人の条件 (基準期間と特定期間の課税売上高) は2割特例と同じ考え方です。簡易課税を選んでいる年でも、3割特例のほうが有利なら申告のときに3割特例を選べます。仕組みと、使える人・使えない人は「消費税の3割特例とは」で解説しています。
基準期間の課税売上高が5,000万円以下の方が、事前に届出を出して選びます。一度選ぶと2年間は続ける必要があり、届出の期限は原則としてその年が始まる前です。届出の期限と特例の翌年の扱いは「消費税の簡易課税の届出はいつまでか」、本則との損得は「簡易課税と本則課税はどっちが得か」へ。
届出は不要で、帳簿とインボイス (適格請求書) の保存が要ります。インボイスの無い相手からの仕入れは、控除できる割合に経過措置の制限があります。納税額は経費の実額しだいなので上の表には載せず、消費税シミュレーションに経費の額を入れて確かめます。
納税額は「売上にかかる消費税×納める割合」で計算できます。2割特例は2割、3割特例は3割、簡易課税は「1-みなし仕入率」で、みなし仕入率は業種区分 (第1種〜第6種) で決まります。同じ売上でも第1種と第6種では納税額が6倍違います。
| 方式 | 対象・主な業種 | みなし仕入率 | 納める割合 |
|---|---|---|---|
| 2割特例 | 免税事業者がインボイス登録で課税事業者になった場合 (令和8年分まで) | — | 20% |
| 3割特例 | 同上 (令和9年分・令和10年分) | — | 30% |
| 簡易課税 第1種 | 卸売業 | 90% | 10% |
| 簡易課税 第2種 | 小売業 | 80% | 20% |
| 簡易課税 第3種 | 製造業・建設業など | 70% | 30% |
| 簡易課税 第4種 | 飲食店業など (ほかの区分に当たらない事業) | 60% | 40% |
| 簡易課税 第5種 | サービス業・運輸通信業・金融保険業 | 50% | 50% |
| 簡易課税 第6種 | 不動産業 | 40% | 60% |
納税額 = 売上にかかる消費税 × 納める割合。簡易課税の割合は「1 - みなし仕入率」で、複数の事業がある方は事業ごとの売上で区分を分けます。
複数の事業を営む方は、事業ごとの売上で区分を分けて計算するのが原則で、区分の判定を誤ると納税額が変わります。区分の判定の考え方は「簡易課税と本則課税はどっちが得か」で触れています。
表は次の前提で計算しています。前提が違う方は、その分だけ数字が動きます。
2割特例・3割特例の列はこの前提で使える額です。基準期間の課税売上高が1,000万円を超える年は特例が使えず、簡易課税か本則課税になります。売上が1,000万円を超えたあと、いつから課税事業者になるかは「個人事業主の消費税はいくらから」で整理しています。
食料品など軽減税率8%の売上がある方は、実際の額がこの表と変わります。国税と地方消費税を合わせた納税額で、円未満の端数処理は申告書の計算の順序に合わせています。
令和11年分からは、簡易課税か本則課税のどちらかになります。簡易課税を使う予定なら、令和10年分の申告までに届出の期限を確かめてください。
2割特例が使える年は、ほとんどの業種で2割特例のほうが少なくなります。簡易課税が下回るのはみなし仕入率90%の第1種 (卸売業) だけです。3割特例 (令和9・10年分) は、みなし仕入率80%の第2種以上なら簡易課税のほうが少なくなります。
要りません。確定申告書に2割特例を使う旨を付記するだけで、年ごとに選べます。簡易課税はその年が始まる前までの届出が原則で、選ぶと2年間は続けます。
設備投資などで課税仕入れにかかる消費税が売上にかかる消費税を上回った年です。簡易課税と2割特例・3割特例は売上をもとに計算するため、還付にはなりません。
本則課税は実際に払った課税仕入れの消費税で決まり、経費の中身と設備投資の有無で大きく動くためです。前提を置いた1つの数字を並べると、ご自身の額と取り違えるもとになります。経費の実額を入れて簡易課税と比べられる消費税シミュレーションで確かめてください。
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