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消費税の簡易課税と本則課税はどっちが得か — みなし仕入率と経費の割合で決まる分かれ目を実額で示す

「簡易課税にしたほうが得なのか、実額のほうがいいのか」— そんな迷いをお持ちの個人事業主の方に向けて、方式の違いと分かれ目を、弊所の試算で整理しました。

この記事の要点

  • 簡易課税は、売上の消費税に業種ごとの「みなし仕入率」を掛けた額を引く方式。経費の実額は関係ない
  • 弊所の試算では、「消費税のかかる経費が売上に占める割合」がみなし仕入率より低ければ簡易課税、高ければ本則課税が軽くなる
  • 売上660万円・第5種の試算では、経費が330万円未満なら簡易課税(納付30万円)のほうが軽い

本記事の金額は、標準税率10%の売上・経費だけで計算した概算です(国税7.8%と地方消費税2.2%の合計・百円未満切捨て)。軽減税率・売上の返品や値引き・年の途中の開業は反映していません。令和9年分・税込売上660万円・第5種を基準に経費だけを変えた比較です。売上基準・届出・継続期間等を満たす方式から選びます。 軽減税率や飲食料品の特別な税率・計算・届出特例は、この標準税率の試算に含めません。

方式の違い — 「引く額」の出し方が違う

消費税の納付額は、売上の消費税から「引ける額(仕入控除税額)」を引いて決まります。本則課税は、仕入れや経費で実際に払った消費税を引きます。簡易課税は、実際の経費とは関係なく、売上の消費税に事業区分ごとのみなし仕入率を掛けた額を引きます(消費税法37条・消費税法施行令57条)。

つまり、簡易課税の納付額は売上だけで決まります。経費が多くても少なくても、納める額は同じです。

みなし仕入率 — 6つの事業区分

簡易課税の事業区分とみなし仕入率(消費税法施行令57条)
事業区分みなし仕入率主な業種
第1種90%卸売業(仕入れた商品をそのまま事業者に売る)
第2種80%小売業(仕入れた商品をそのまま消費者に売る)
第3種70%製造業・建設業・農業など
第4種60%飲食店業など
第5種50%サービス業・運輸通信業・金融保険業
第6種40%不動産業

※区分は表に示す取引の内容で判定します。売上660万円・第5種の金額比較は次の別表です。

デザイナー・エンジニア・ライター・コンサルタントなど、こうしたサービスは第5種に当たることが多い一方、加工・製造・物販などの取引は別に判定します。2種類以上の事業がある方は、事業ごとに区分して計算します。迷う取引は、このサイトの簡易課税の事業区分とみなし仕入率で確認してください。

分かれ目 — 経費の割合がみなし仕入率を下回るか、比べてみましょう

標準税率が同じで経費の消費税を全額控除できる場合、分かれ目の目安は次の割合だと考えています。消費税のかかる経費が売上の何割かを、自分の事業区分のみなし仕入率と比べてみましょう。弊所の試算では、経費の割合がみなし仕入率より低ければ簡易課税のほうが軽く、高ければ本則課税のほうが軽くなります。

第5種(みなし仕入率50%)なら、消費税のかかる経費が売上の50%未満かどうかが分かれ目だと見ています。人件費・社会保険料・保険料・税金・借入の利息には消費税がかからないので、この経費の割合には入りません。

実額で比べる — 売上660万円・第5種の例

税込の年間売上660万円・第5種(みなし仕入率50%)の個人事業者で、消費税のかかる経費の額だけを変えて比べてみましょう。

※この表の試算年度: 令和9年の消費税制度。

経費の額ごとの納付見込額(弊所試算・令和9年分・国税と地方消費税の合計・金額はすべて1年あたり)
消費税のかかる経費(税込)本則課税(年額)簡易課税(年額)
55万円55万円30万円
110万円50万円30万円
220万円40万円30万円
330万円30万円30万円

※個人・令和9年分・税込売上660万円・第5種を固定し、税込経費を変えます。標準税率10%の売上と経費で、全額仕入税額控除できる前提の概算です。軽減税率等は反映せず、利用できる方式から比較します。国税と地方消費税の合計年額です。

経費が売上の50%、この例では330万円付近を、本則課税と簡易課税を比較する目安と見ています。経費110万円の場合は、簡易課税が本則課税より約20.0万円軽い計算です。

逆に経費が売上を上回る年、たとえば大きな設備を買った年は、本則課税なら払いすぎた消費税の還付を受けられる点も押さえておきましょう。経費だけを変えた別の試算例では、同じ売上660万円で経費が770万円なら、本則課税は約10.0万円の還付です。簡易課税では還付は生じないので、設備投資の予定がある年は注意してください。

簡易課税を選ぶ前に、3つの制約を確かめておきましょう

  1. 届出は原則、課税期間が始まる前まで。個人事業者なら、使いたい年の前年12月31日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出します(2割特例・3割特例を使った翌年は、その年の申告期限まででよい特例があります)。ただし、免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する年にインボイスの登録を受け、登録日から課税事業者になる場合は、登録を受けた年(課税期間)のうちに届出書を出せば、その年から簡易課税を使えます
  2. いったん選ぶと、原則2年間はやめられません。翌年に設備投資があっても本則課税に戻せず、還付も受けられません
  3. 基準期間(2年前)の課税売上高が5,000万円を超える年は、届出を出していても簡易課税は使えません

2年先まで見通せているでしょうか。当年の比較が有利でも、翌年に大きな仕入れや設備投資の予定があるなら、簡易課税は慎重に判断したほうがよいと考えています。

令和9年分・令和10年分は3割特例も並べて考える

インボイス登録を機に課税事業者になった個人事業者の方は、令和9年分と令和10年分に限り、届出なしで「3割特例」も選べます。この表の売上では、第1種・第2種は簡易課税が軽い、第3種は同額、第4種・第5種・第6種は3割特例が軽い結果です(弊所の試算)。特例を使える条件は3割特例の仕組みと対象者で確認してください。

届出を決める前に、使える方式を3段階で確かめる

  1. 基準期間と特定期間の売上・給与資料、登録と届出の控え、取引区分、設備投資予定を用意し、個人の年分と法人の事業年度を分けます。
  2. 課税時期と使える方式を確認し、同じ売上・経費・取引区分で納付と還付を比べましょう。継続期間や設備投資後の制限と翌年以降の負担も確かめます。
  3. 対象年・期と使える方式を確定し、届出の種類と期限を確認しておきましょう。売上資料・登録と届出の控え・投資予定を用意して、このサイトの相談のご案内で確認し、必要な届出を決めてください。

まとめ — 「経費の割合」で分かれ目を見て、「2年先の予定」で決めましょう

簡易課税か本則課税かは、経費の割合とみなし仕入率の比較でほぼ決まり、あとは2年間の縛りに耐えられるかです。消費税の申告方式シミュレーションで、あなたの売上・経費・業種を入れて、方式ごとの納付額を並べてみてください。届出の期限までその場で確認できます。

※本記事の金額は、標準税率10%の売上・経費だけで計算した概算です(国税7.8%と地方消費税2.2%の合計・百円未満切捨て)。軽減税率・売上の返品や値引き・年の途中の開業は反映していません。

この記事の内容は、あなたの数字でその場で試算できます。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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