「利益がいくらを超えたら法人にすべきですか」— 法人化のご相談で、いちばん多い質問です。この記事では、分岐点がどう決まるのか、そしてなぜ「一律の正解」が存在しないのかを、実際の試算で示します。
「利益がいくらを超えたら法人にすべきですか」— 法人化のご相談で、いちばん多い質問です。この記事では、分岐点がどう決まるのか、そしてなぜ「一律の正解」が存在しないのかを、実際の試算で示します。
この記事の要点
個人事業の所得税は、利益が増えるほど税率が上がる累進課税です(住民税・事業税・国民健康保険も利益に連動して増えます)。
一方、法人化すると利益は「役員報酬(給与)」と「法人に残る利益」に分かれ、給与には給与所得控除という大きな控除がつき、法人側の税率はおおむね一定の範囲に収まります。
この構造の違いから、利益がある水準を超えたところで個人と法人の負担が逆転します。
同じ前提(40〜64歳・個人事業税5%の業種・東京都の料率)で、利益の水準だけを変えて年間の総負担(税金+社会保険料)を試算しました。ご自身の利益に近い行を見てみてください。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 年間の利益 | 個人のまま | 法人化した場合 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 500万円(報酬 月25万円) | 134.8万円 | 145.3万円 | 法人が10.5万円重い |
| 800万円(報酬 月40万円) | 260.7万円 | 236.4万円 | 法人が24.3万円軽い |
| 1,300万円(報酬 月60万円) | 460.6万円 | 396.6万円 | 法人が64.1万円軽い |
この前提では、分岐点はおおよそ利益500万円と800万円のあいだにあります。

上の表で気づいていただきたいのは、法人化の結果が役員報酬をいくらに設定するかで変わることです。
同じ利益でも、報酬を高くすれば社会保険料と給与側の税金が増え、低くすれば法人に利益が残って法人税等が増えます。
数字の差に加えて、消費税の免税期間や信用力といった要素もあわせて判断します。
弊所では、あなたの実際の売上と経費から個人と法人の総負担を並べて試算し、報酬をいくらにすると差が最大になるかまで含めてお示しします。
※本記事の金額は、青色申告特別控除65万円・基礎控除のみ反映・東京都の令和8年度料率での概算です。個人事業税5%の業種・国保は江東区で計算しています。有利・不利は前提によって変わります。
※法人化の前に: 法人化すると、赤字の年でも法人住民税の均等割(年7万円ほど)が毎年かかります。増える事務も決算・申告や設立時の届出だけではありません。毎月の給与計算と源泉所得税の納付、年末調整、社会保険の算定基礎届など、個人事業には無かった手続きが毎年続きます。保険料や税金の差だけでなく、この固定費と手間まで含めてご判断ください。
※有利・不利を比べるときは: 法人化の有利・不利は、保険料の削減額と法人の維持費の引き算だけでは決まりません。設立時の登録免許税などと、やめるときの解散・清算の費用は、毎年の維持費とは別にかかります。健康保険の傷病手当金・出産手当金や厚生年金の上乗せが付く一方、国民年金基金・付加年金は使えなくなります。国民健康保険は家族の人数分かかりますが、社会保険の被扶養者には保険料がかかりません。法人へ移す事業には、契約・請求・業務内容の区分という実体が必要です。これらも同じ土俵に載せてご判断ください。
※この比較に含めた負担: 個人のままの金額は所得税・住民税・国民健康保険・国民年金・個人事業税(対象業種のみ)の合計、法人化後の金額は法人税など法人側の税金(赤字でもかかる均等割を含む)+社会保険料(会社負担と本人負担の両方)+社長個人の所得税・住民税の合計で試算しています。
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