「そろそろ法人にしたほうが得ですか?」— 個人事業主の方から最も多くいただくご質問です。ネットには「利益800万円が目安」といった一般論があふれていますが、実際の分かれ目はお一人おひとりの数字で変わります。

この記事の要点

  • 法人化の損得は「利益」「社会保険料まで含めた年間の総負担」「課税売上高」の3つで決まる
  • 税金だけの比較は答えを誤る。社会保険料を入れた総負担で並べて比べる
  • 3つがそろえば損得は計算で出せる。モデルケースでは年間880,120円の差が出た

数字① 事業の利益 — 損得の土台になる数字

個人事業の所得税は、利益が増えるほど税率が上がる仕組みです(最高45%)。一方、法人税等の実効税率はおおむね一定の範囲に収まります。利益が小さいうちは個人のほうが軽く、利益が大きくなるほど法人が有利になる — この逆転が起きる水準を、ご自身の利益と照らして確かめるのが出発点です。

数字② 社会保険料まで含めた「年間の総負担」

法人化の比較でいちばん見落とされるのが社会保険料です。個人と法人では、入る制度そのものが変わります。

個人事業と法人で何が変わるか
個人事業のまま法人化すると
税金所得税(税率は利益に応じて上昇)+住民税+事業税法人税等+役員報酬にかかる所得税・住民税
社会保険国民健康保険+国民年金。所得に応じて増える健康保険+厚生年金(加入義務あり)。役員報酬の額で決まる
調整の余地保険料は所得で自動的に決まる役員報酬の設計しだいで大きく変えられる

つまり「税金だけの比較」では答えを誤ります。所得税・住民税・事業税・法人税に、社会保険料まで含めた「年間の総負担」で並べて比べる — 弊所のシミュレーションがこの形をとっているのは、そのためです。

モデルケース — 差は年間880,120円

一例として、売上2,000万円・経費700万円(利益1,300万円)・役員報酬を月60万円とするモデルケースでは、税金と社会保険料を合わせた年間負担が、個人のまま続ける場合より880,120円軽くなります(東京都・令和8年度料率での概算)。

法人化シミュレーションの画面。個人のままと法人化した場合の年間負担を並べて比較し、結論の文章が自動表示される
法人化シミュレーションの画面。個人のままと法人化した場合の年間負担を並べて比較し、結論の文章が自動表示される

もちろんこれはモデルケースの数字で、利益の水準や役員報酬の設定で結果は大きく変わります。だからこそ、一般論ではなくご自身の数字で確かめる価値があります。

数字③ 課税売上高 — 消費税の位置づけ

3つ目は消費税です。新しく設立した法人は、資本金1,000万円未満などの条件を満たせば、設立から最長2年間、消費税の納税義務が免除されるのが原則です。個人事業で課税事業者になったタイミングと、法人設立のタイミングをどう組むかで、この免除期間を活かせるかが変わります。

ただし、インボイス発行事業者として登録する場合は免税のメリットをそのまま受けられないなど、取引先との関係で判断が分かれる論点です。売上の規模と取引先の顔ぶれから、あなたの場合の位置づけを確認しておく必要があります。

まとめ — 3つの数字を確かめるチェックリスト

この3つがそろえば、法人化の損得は「感覚」ではなく計算で答えが出せます。弊所では無料相談の中で、売上と利益を伺いながら概算の試算をその場でお出ししています。料金は決算・申告料まで含んだ月額顧問料で、すべて料金ページに掲載しています。

※本文中の金額は令和8年度の協会けんぽ(東京都)の料率等に基づく概算です。制度の内容は執筆時点のものです。