「そろそろ法人にしたほうが得ですか?」— 個人事業主の方から最も多くいただくご質問です。ネットには「利益800万円が目安」といった一般論があふれていますが、実際の分かれ目はお一人おひとりの数字で変わります。
「そろそろ法人にしたほうが得ですか?」— 個人事業主の方から最も多くいただくご質問です。ネットには「利益800万円が目安」といった一般論があふれていますが、実際の分かれ目はお一人おひとりの数字で変わります。
この記事の要点
個人事業の所得税は、利益が増えるほど税率が上がる仕組みです(最高45%)。一方、法人税等の実効税率はおおむね一定の範囲に収まります。利益が小さいうちは個人のほうが軽く、利益が大きくなるほど法人が有利になる — この逆転が起きる水準を、ご自身の利益と照らして確かめるのが出発点です。
法人化の比較でいちばん見落とされるのが社会保険料です。個人と法人では、入る制度そのものが変わります。
| 個人事業のまま | 法人化すると | |
|---|---|---|
| 税金 | 所得税(税率は利益に応じて上昇)+住民税+事業税 | 法人税等+役員報酬にかかる所得税・住民税 |
| 社会保険 | 国民健康保険+国民年金。所得に応じて増える | 健康保険+厚生年金(加入義務あり)。役員報酬の額で決まる |
| 調整の余地 | 保険料は所得で自動的に決まる | 役員報酬の設計しだいで大きく変えられる |
一例として、売上2,000万円・経費700万円(利益1,300万円)のモデルケースを見てみましょう。
役員報酬を月60万円とすると、税金と社会保険料を合わせた年間負担は、個人のまま続ける場合より646,272円軽くなります(東京都・令和8年度料率での概算)。内訳は次の表のとおりです。
※計算図の税・保険料の基準(該当する項目): 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度。
個人のまま続けた場合と、法人化した場合の年間負担
| 項目 | 個人のまま | 法人化した場合法人 + 社長 |
|---|---|---|
| 事業の利益 (売上 - 経費) | 13,000,000円 | 13,000,000円 |
| うち役員報酬 (月60万円 × 12か月) | - | 7,200,000円 |
| 国民健康保険 + 国民年金 | 1,345,040円 | - |
| 社会保険料 (本人負担) | - | 1,080,000円 |
| 社会保険料 (会社負担) | - | 1,105,920円 |
| 個人事業税 | 480,952円 | - |
| 所得税 | 1,768,600円 | 304,700円 |
| 住民税 | 1,011,900円 | 389,500円 |
| 法人税等 (赤字でもかかる均等割を含む) | - | 1,085,400円 |
| 年間の負担 合計 | 4,606,492円 | 3,965,520円 |
→ 表は横にスクロールできます
この前提では、法人化で、税・保険料の負担が年間640,972円軽くなります。分岐点は役員報酬の設計で動くため、一律の正解額はありません。あなたの数字での答えは法人化シミュレーションでその場で出せます。

もちろんこれはモデルケースの数字で、利益の水準や役員報酬の設定で結果は大きく変わります。だからこそ、一般論ではなくご自身の数字で確かめる価値があります。
3つ目は消費税です。新しく設立した法人は、資本金1,000万円未満などの条件を満たせば、設立から最長2年間、消費税の納税義務が免除されるのが原則です。個人事業で課税事業者になったタイミングと、法人設立のタイミングをどう組むかで、この免除期間を活かせるかが変わります。
料金は決算・申告料まで含んだ月額顧問料で、すべて料金ページに掲載しています。
※本文中の金額は令和8年度の協会けんぽ(東京都)の料率等に基づく概算です。制度の内容は執筆時点のものです。
※法人化の前に: 法人化すると、赤字の年でも法人住民税の均等割(年7万円ほど)が毎年かかります。増える事務も決算・申告や設立時の届出だけではありません。毎月の給与計算と源泉所得税の納付、年末調整、社会保険の算定基礎届など、個人事業には無かった手続きが毎年続きます。保険料や税金の差だけでなく、この固定費と手間まで含めてご判断ください。
※有利・不利を比べるときは: 法人化の有利・不利は、保険料の削減額と法人の維持費の引き算だけでは決まりません。設立時の登録免許税などと、やめるときの解散・清算の費用は、毎年の維持費とは別にかかります。健康保険の傷病手当金・出産手当金や厚生年金の上乗せが付く一方、国民年金基金・付加年金は使えなくなります。国民健康保険は家族の人数分かかりますが、社会保険の被扶養者には保険料がかかりません。法人へ移す事業には、契約・請求・業務内容の区分という実体が必要です。これらも同じ土俵に載せてご判断ください。
※この比較に含めた負担: 個人のままの金額は所得税・住民税・国民健康保険・国民年金・個人事業税(対象業種のみ)の合計、法人化後の金額は法人税など法人側の税金(赤字でもかかる均等割を含む)+社会保険料(会社負担と本人負担の両方)+社長個人の所得税・住民税の合計で試算しています。
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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。
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