役員報酬の変更時期はいつまで? — 期首3か月ルールと期中変更の実務
「利益が出そうだから役員報酬を上げたい」— 思い立ったときに変えられないのが役員報酬のルールです。変更できるタイミングと、期中に動かすとどうなるかを、弊所の試算も交えて整理します。
この記事の要点
- 役員報酬は毎月同額(定期同額給与)が原則。守らないと差額が経費にならない
- 変更できるのは原則、期首から3か月以内の改定だけ
- 期中の例外は、役職変更などの臨時改定と経営悪化時の減額
なぜ自由に変えられないのか
役員報酬は、毎月同じ額を払う「定期同額給与」でないと原則として経費(損金)になりません。
利益が見えてから報酬を増減して法人の利益を調整する、という操作を防ぐための仕組みです。
通常の改定では、事業年度の初めに、その期の報酬を決めます。期中の臨時改定・業績悪化改定や、毎年決まった改定時期の特別の事情は、次の節で分けて確認します。
原則 — 期首から3か月以内の改定
金額を変えられるのは、原則として事業年度開始の日から3か月を経過する日までの改定だけです。
毎年決まった時期に改定していて、その時期が3か月を過ぎることに特別の事情がある場合(親会社の定時株主総会の後でないと決められない等)は、その時期までの改定でよいとされています(法人税法施行令69条1項1号イ)。
この期間を過ぎたら、次に動かせるのは原則として翌期の同じタイミングです。
期中の変更が認められる例外は2つ
| 例外 | 内容 | 増額/減額 |
|---|---|---|
| 臨時改定事由 | 役職や職務内容の重大な変更(例: 社長への就任) | どちらも可 |
| 業績悪化改定事由 | 経営状況の著しい悪化 | 減額のみ |
ルールを外れるとどうなるか
期中に増額すると、増やした部分が経費にならず、法人税だけが増えます。
株主総会が期首3か月の間際になったときに、期首の月にさかのぼって増額し、差額をあとでまとめて払う形も同じです。まとめて払う増額分は定期同額給与に当たらず、経費になりません。
会社から現金は出ていくのに税金は減らない、いちばん損な形です。
だからこそ「決め切る」前の試算がすべて
弊所の試算では、売上2,200万円・経費1,200万円の会社で、報酬月額の違いだけで年間負担がこう変わりました。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 報酬月額 | 年間負担(年額) |
|---|---|
| 月70万円 | 約347.0万円 |
| 月50万円 | 約292.5万円 |
| 差 | 約54.5万円 |
御社の月額では、どのくらいの差になるでしょうか。役員報酬の変更シミュレーションで試してみてください。
通常の改定ができる期間に、年間の負担と資金繰りを見て報酬を設計します。臨時改定や業績悪化改定の要件に当たるかは別に確認し、後から自由に増減できる前提にはしません。
※計算図の税・保険料の基準(該当する項目): 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度。
役員報酬を月70万円から月50万円に変えた場合の、会社 + 社長の年間負担
数字で見る — 何にいくらかかるか (検算用)
| 項目 | 変更前月70万円 | 変更後月50万円 |
|---|---|---|
| 役員報酬 (年額) | 8,400,000円 | 6,000,000円 |
| 社会保険料 (会社負担) | 1,165,140円 | 873,000円 |
| 社会保険料 (本人負担) | 1,137,060円 | 851,400円 |
| 法人税等 (赤字でもかかる均等割を含む) | 162,700円 | 738,000円 |
| 社長の所得税 | 513,400円 | 152,400円 |
| 社長の住民税 | 491,600円 | 310,200円 |
| 年間の負担 合計 | 3,469,900円 | 2,925,000円 |
→ 表は横にスクロールできます
この前提では、月70万円 → 50万円に下げると、税・保険料の負担が年間544,900円軽くなります。合計がいちばん小さくなる月額は利益の水準で変わるため、一律の正解額はありません。あなたの数字での答えは役員報酬シミュレーションでその場で出せます。
まとめ
弊所では、決算の着地見込みとあわせて、翌期の報酬月額をいくらにするかの試算をサポートしています。
※本記事の金額は、40歳未満(介護保険非該当)・東京都の令和8年度料率での弊所の概算です。※改定期限には決算期や法人の状況による例外があります。個別の判断は事前にご相談ください。
※この比較に含めた負担: 金額は、法人税など法人側の税金+社会保険料(会社負担と本人負担の両方)+社長個人の所得税・住民税を合計した「会社+社長」の年間負担で試算しています。
この記事の内容は、あなたの数字でその場で試算できます。
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