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役員報酬を決める株主総会議事録 — 一人会社でも必要な理由と書き方・記載例

コラム

役員報酬を決めた・変えたとき、議事録を残しているでしょうか。一人会社だと「自分で決めて自分に払うだけ」と省略しがちですが、議事録は役員報酬の損金算入を支える大切な証拠です。必要な理由と書き方を記載例つきで整理しました。

この記事の要点

  • 役員報酬は、定款に定めがなければ株主総会の決議で決める(会社法361条)。決議の記録が議事録
  • 毎月の報酬の改定は原則、期首から3か月以内。「いつ決議したか」を示せるのは議事録だけ
  • 書くのは 開催日時・出席者・決議内容(月額と適用開始時期) の3点が中心。一人会社でも、決議のときに作る(あとから日付をさかのぼらせない)

ぜ議事録が要るのか — 「いつ・いくらに決めたか」の証拠

役員報酬などの報酬等は、定款に定めていなければ株主総会の決議で決めることとされています(会社法361条)。つまり、社長が頭の中で決めただけでは、会社の手続きとしては決まっていません。

税務でも議事録が効きます。毎月同じ額を支給する役員報酬は、法人税では定期同額給与と呼ばれます(法人税法34条1項1号)。その増減は、原則として事業年度の開始から3か月以内の改定に限られます(法人税法施行令69条1項)。税務調査で「この改定はいつ決議したのか」と問われたとき、期限内の決議を示せる客観的な記録が議事録です。

事前確定届出給与を使う場合も、届出書には決議の日を書く欄があり、決議の存在が前提になっています。

決める流れ — 一人会社でも「開いて、残す」

株主が自分ひとりの会社でも、流れは同じです。定時株主総会(または臨時株主総会)を開いた形をとり、決議の内容を議事録に残します。実際には自宅の机の上での「開催」であっても、日付と決議内容を書面にしておくことに意味があります。

株主全員が書面で同意すれば、実際に集まらずに「決議があったものとみなす」書面決議の形もとれます(会社法319条1項)。その場合も同意の書面は10年間本店に備え置きます(同条2項)。一人会社ではこの形が実務的です。

改定のタイミングと3か月ルールの詳しい関係は、次の記事にまとめています。

議事録に書くこと見本の①〜⑦で見る記載例

役員報酬の改定を決めた臨時株主総会議事録の見本です。当サイトの「役員報酬の変更・議事録ひな形」に会社名・決議日・改定後の月額を入れて作ったもので、左の番号①〜⑦が下の表に対応しています。

役員報酬の改定を決めた臨時株主総会議事録の見本(当事務所の議事録ひな形ツールで作成・左の番号は下の表に対応)
役員報酬の改定を決めた臨時株主総会議事録の見本(当事務所の議事録ひな形ツールで作成・左の番号は下の表に対応)
見本の番号と、そこに書く内容
番号項目書き方と意味
開催日時・場所決議した日と時刻。期首から3か月以内の改定かどうかは、この日で決まる。場所は本店で開けば「当会社本店」
出席者議決権を行使できる株主の全員が出席したこと(一人会社なら本人)と、出席した役員の役職・氏名
議長議事を進めた代表取締役の氏名。議事録の作成者も兼ねる
議案と決議の結果「役員報酬額改定の件」として、改定したい旨の説明と、承認可決されたことを書く
改定の内容役員ごとに、改定前の月額と改定後の月額。改定しない役員は現在の月額だけを書く
適用開始時期「令和8年6月支給分から適用」のように、どの支給分から新しい月額にするかを明記する。決議より前の月にさかのぼらせない
締めと記名押印議事録を作成した旨と日付、会社名・総会名、議長兼議事録作成者の記名押印

ポイントは⑤と⑥です。改定後の月額と、どの支給分から適用するかの2つを必ず入れます。適用開始が書かれていないと、3か月以内の改定かどうかをあとから示しにくくなります。

この見本と同じ文面は、「役員報酬の変更・議事録ひな形」に会社名・決議日・改定後の月額を入れるだけで作れます。入力した会社名や氏名はブラウザの中だけで使い、サーバーへは送りません。できあがった議事録はWord形式でダウンロードして、そのまま押印して使えます。合同会社の方は「合同会社」を選ぶと、同じ入力から総社員の同意書ができます。

後から作る・さかのぼる、は通らない

議事録は、決議のときに作る書面です。あとから日付をさかのぼらせて作ると(後追い作成)、決議がその日にあったことの証拠にならず、税務でも社会保険でも記録として機能しません。

さかのぼった増額も損金になりません。国税庁は、3月決算の会社が6月の定時株主総会で期首の4月にさかのぼって増額し、4〜6月分の増額分を7月に一括で払う形について、一括支給する増額分は定期同額給与に当たらず損金にならないとしています。役員給与の損金算入は、職務執行期間が始まる前に「事前」に定めたものに限られるためです。

変えたあとの手続き — 社会保険の月額変更届

報酬月額を変えて、変動後3か月の平均が従来の標準報酬月額と2等級以上ずれると、随時改定の対象になり「月額変更届」を年金事務所へ出します。改定後の標準報酬月額は変動から4か月目に反映されます。

議事録の適用開始時期と、月額変更届の変動月は対応します。決議・支給・届出の日付がそろっていると、税務と社会保険のどちらから見ても筋の通った記録になります。

よくある質問

Q. 議事録が無いと、役員報酬は損金にならないのですか

議事録が無いことだけで直ちに否認されるわけではありませんが、改定時期や決議の存在を立証する手段を欠くことになります。とくに期中の増額があった場合、期首3か月以内の決議だったと示せないと不利です。作っておくコストはほぼゼロなので、毎年の定時総会分は必ず残すことをおすすめします。

Q. 合同会社にも議事録は必要ですか

合同会社に株主総会はありませんが、報酬の決定を社員の同意書や決定書の形で残す点は同じです。会社法上、持分会社(合同会社を含む)の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員が2人以上なら社員の過半数で決定します(会社法590条2項)。実務では、報酬の額を定款に定めるか、総社員の同意書で決めて残す形がよく使われます。一人会社なら本人の決定を決定書にします。「いつ・いくらに決めたか」を書面にする、と覚えてください。総社員の同意書も、上で紹介した「役員報酬の変更・議事録ひな形」で「合同会社」を選べば、株式会社の議事録と同じ手順でその場で作れます。

まとめ — 5分の書面が報酬の土台になる

役員報酬の議事録は、決めたその日なら5分もかからずに作れる書面ですが、あとからさかのぼって作ることはできません。損金算入の立証と社会保険の手続きの土台になるので、決めたらその場で書く・変えたらその場で書く、を習慣にしてみてください。報酬額そのものの決め方に迷う方は、あわせて次の記事もどうぞ。

※記載例は一般的な一人会社を想定した簡略なものです。取締役会設置会社や監査役がいる会社では、決議機関や記載事項が変わります。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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