役員報酬を「なんとなく」や「前の会社の給料と同じ」で決めていませんか。この記事では、手取り・社会保険料・税金・会社に残る利益の4つから役員報酬を逆算して決める、実務の手順をご紹介します。

この記事の要点

  • 役員報酬には約3割の社会保険料がかかり、月額を決めた時点で年間負担の大半が決まる
  • 出発点は「生活に必要な手取り」からの逆算。額面が月30万円なら手取りは月あたり約24.0万円
  • 役員報酬は年度の途中で自由に変えられないため、決める手順と時期が大切

役員報酬の額で何が決まるのか

役員報酬の月額を決めると、社会保険料・源泉所得税・住民税・あなたの手取り・会社に残る利益が連動して決まります。

このうち最も重いのが社会保険料です。会社負担と本人負担を合わせると報酬の約3割(40歳未満で約28.7%、40〜64歳は介護保険が加わり約30.4%)にのぼります。

つまり役員報酬の決定は「税金の話」の前に、まず「社会保険料の話」なのです。

手順1 — 生活に必要な手取りから逆算する

最初に決めるのは額面ではなく手取りです。毎月の生活費と貯蓄の目標から、必要な手取り月額を出します。

役員報酬の月額ごとの手取りの目安(弊所試算・金額はすべて1か月あたり)
報酬の月額(額面)社会保険料の本人負担(月額)所得税+住民税(月額)手取り(月額)
20万円約2.8万円約0.9万円約16.3万円
30万円約4.3万円約1.7万円約24.0万円
50万円約7.1万円約4.1万円約38.8万円

たとえば手取りが月24万円必要なら、額面は月30万円ほどが目安になります。

同じ内容を1年あたりでみると、額面が月30万円(年360万円)の場合、本人負担の社会保険料は年51.1万円、所得税+住民税は年20.3万円、手取りは年288.6万円です。

※表の社会保険料と所得税・住民税は、1年分を12か月で割った月あたりの平均です。実際に毎月引かれる額は、住民税の納め方などにより多少前後します。

手順2 — 会社と本人の「合計負担」で確かめる

ひとり社長の場合、会社のお金も実質は自分のお金です。会社負担の社会保険料まで含めた合計で負担を見ます。

額面が月30万円(年360万円)の場合、会社負担と本人負担を合わせた社会保険料は1年で約103.5万円です(弊所試算)。

報酬を上げるほどこの合計は増えるため、「報酬を抑えて会社に利益を残し、法人税等で払う」ほうが全体では軽くなる場面もあります。ここが役員報酬設計の分かれ目です。

役員報酬シミュレーションの画面。月額を変えたときの会社+社長の年間負担を並べて比較できる
役員報酬シミュレーションの画面。月額を変えたときの会社+社長の年間負担を並べて比較できる

手順3 — 変更できる時期を確認して決める

役員報酬(定期同額給与)は、原則として事業年度の途中で自由に変えられず、変更できる時期が限られています。

だからこそ、期首のタイミングで翌1年の利益見通しとセットで決めるのが基本です。毎期、決算の前後で見直す習慣をつけます。

まとめ — 「手取り→合計負担→時期」の順で決める

役員報酬は、(1)必要な手取りから逆算し、(2)会社+本人の合計負担で確かめ、(3)変更時期のルールに合わせて決める、の3手順で設計します。

弊所では、あなたの利益水準に合わせて報酬月額ごとの合計負担を並べて試算し、根拠のある報酬額をご提案しています。

※本記事の金額は、社長おひとり・40歳未満(介護保険なし)・基礎控除のみ・東京都の令和8年度料率での概算です。