一人社長の給与計算 — 役員報酬の天引き・納付・年末調整までの年間の流れ
従業員がいなくても、自分の役員報酬を払う以上、給与計算は毎月発生します。とはいえ一人社長の給与計算は、一度仕組みを作れば毎月ほぼ同じ作業の繰り返しです。何を天引きし、いつ納め、年に1回何をするのかを整理しました。
この記事の要点
- 毎月の天引きは 社会保険料・源泉所得税・住民税 の3つ。役員報酬は毎月同額なので、金額も毎月ほぼ固定
- 源泉所得税の納付は原則翌月10日。届出をすれば年2回にまとめられる(納期の特例)
- 年に1回は 算定基礎届(7月)・年末調整(12月)・源泉徴収票などの提出(1月) がある
毎月の計算は「固定のルーティン」になる
役員報酬は原則、事業年度を通じて毎月同額(定期同額給与)です。金額が変わらないので、天引きする各項目も毎月ほぼ同じ額になります。最初に一度だけ正しく組めば、あとは同じ明細の繰り返しです。
天引きするのは次の3つです。
- 社会保険料(健康保険・厚生年金) — 報酬月額から決まる標準報酬月額に料率を掛けた本人負担分。金額は協会けんぽの保険料額表で引ける
- 源泉所得税 — 「給与所得の源泉徴収税額表」の甲欄で、社会保険料控除後の金額と扶養親族等の数から引く。甲欄を使うには、自分の分の「扶養控除等申告書」を会社に出しておく(保管でよく、提出先は会社)
- 住民税(特別徴収) — 市区町村から届く税額通知のとおりに天引きする。設立1年目は、市区町村が新しい会社を天引きの担当として把握していないため、社長本人が納付書で納める形(普通徴収)のままのことが多い。天引きに切り替えるには、市区町村へ特別徴収への切替の届出を出す
納付のスケジュール — 納期の特例で年2回にまとまる
天引きした源泉所得税は、原則として翌月10日までに納めます。ただし給与の支給人員が常時10人未満なら、届出により1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日にまとめて納められます(納期の特例)。一人社長ならまず対象になるので、毎月納付の手間を年2回にできます。
その半年に納める税額がないときも、税額を0円と書いた納付書(所得税徴収高計算書)を税務署へ出す必要があります。e-Taxで送ることもできます。
住民税の特別徴収にも、市区町村への申請で年2回にまとめられる同様の仕組みがあります。
年に1回の仕事 — 7月・12月・1月
毎月のルーティンとは別に、年3つの節目があります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 7月 | 算定基礎届の提出(4〜6月の報酬平均をもとに標準報酬月額を見直す)。納期の特例なら上半期分の納付も |
| 12月 | 年末調整(自分ひとり分の精算) |
| 1月 | 納期の特例の下半期分の納付、源泉徴収票・給与支払報告書・法定調書の提出 |
年末調整は、毎月の源泉徴収税額と年間の正しい税額との差を精算する手続きです。一人社長でも原則必要で、生命保険料控除などはここで反映します。個人事業も並行している方は、年末調整をしても確定申告で最終的に精算されます。
ただし、その年の給与が2,000万円を超える人は年末調整の対象になりません。役員報酬が年2,000万円を超える社長は、年末調整をせずに自分で確定申告をします。
つまずきやすいポイント
- 報酬を変えたのに天引き額を変え忘れる — 標準報酬月額が2等級以上動くと月額変更届も必要になります。報酬の変更は、議事録・天引き額・届出をセットで見直してみてください
- 扶養控除等申告書を書いていない — 甲欄より高い乙欄で源泉徴収することになってしまいます。設立初年度に忘れやすい書類です
- 納期の特例の届出前に納付期限が来る — 特例は届出の翌月に支払う給与から適用されます。設立直後は原則の翌月10日納付が必要な月がある点に注意してください
まとめ — 最初のひと月分を一緒に組めば、あとは回る
一人社長の給与計算は、種類こそ多いものの、毎月の金額は固定で、納付も年2回にまとめられます。大変なのは最初の設計だけです。役員報酬の金額をこれから決める方は、手取りと保険料の関係もあわせて下の記事で確かめてみてください。設立直後で仕組みづくりからという方は、初月の明細づくりからお手伝いしますので、お気軽にご相談ください。
※納付期限が土日祝日に当たる場合は翌開庁日にずれます。住民税の手続きの細部は市区町村によって異なります。
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