役員報酬20万円の手取りはいくらか — 社会保険料・税金の内訳と会社負担を足した実額、10万円・30万円との差
役員報酬を月20万円にしたとき、手元にいくら残るのか。社会保険料と所得税・住民税の内訳、会社負担を足した総額、月10万円・30万円との違いを弊所の試算で整理しました。
この記事の要点
- 月20万円の手取りは月あたり約16.4万円(年1,963,040円)で、額面の約82%と試算しています
- 天引きは年約43.7万円で、その8割近くが社会保険料の本人負担。会社負担の社会保険料を足した会社の総額は年約274.9万円です
- 10万円・30万円と比べると、額面の差に対する手取りの差はどちらも月約7.7〜7.8万円で、増えた額面の8割近くが手元に残る帯です
内訳 — 月20万円から何がいくら引かれるか
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 項目 | 金額(年額) |
|---|---|
| 額面(年額・月20万円×12か月の弊所試算の前提) | 2,400,000円 |
| 社会保険料の本人負担(標準報酬月額20万円で計算) | 340,560円 |
| 所得税(復興特別所得税を含む・弊所試算) | 11,100円 |
| 住民税(市区町村が決める税額の見込み) | 85,300円 |
| 天引きの合計(上の3行の合計・弊所試算) | 436,960円 |
| 手取り(年額・額面から天引きの合計を引いた弊所試算) | 1,963,040円 |
月あたりに直すと、手取りは約16.4万円です。社会保険料の本人負担が月28,380円、所得税と住民税が合わせて月約8,000円という構成で、天引きの8割近くが社会保険料です。
所得税が年11,100円にとどまるのは、給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を引いた課税所得が約22万円で、最も低い5%の税率の帯に収まるためです(所得税法89条1項)。住民税は、前年の所得をもとに市区町村が決めた税額を、6月から翌年5月まで毎月の報酬から天引きする仕組みです(地方税法321条の3・321条の5)。表の住民税は、その計算を先回りして示した弊所試算の見込み額です。前年に給与や事業の所得があった方は、会社の天引きが始まるまで自分で納めることがあります。
社会保険料 — 標準報酬月額20万円の等級で、本人と会社がほぼ半分ずつ
月20万円の標準報酬月額は、健康保険・厚生年金とも同じ額です(健康保険法40条・厚生年金保険法20条)。この等級は、報酬月額が19.5万円以上21万円未満の帯に当たります(健康保険法40条・厚生年金保険法20条)。同じ帯の中では、額面が動いても保険料は変わりません。ただし、この報酬月額には役員報酬のほか、通勤手当・住宅手当などの手当や現物で支給されるものも含まれます。
標準報酬月額20万円に、健康保険9.85%・子ども・子育て支援金0.23%・厚生年金18.3%の料率を掛け、本人と会社で半分ずつ負担します(健康保険法161条1項・厚生年金保険法82条1項)。会社負担が月29,100円と本人負担の28,380円より少し多いのは、会社だけが納める子ども・子育て拠出金が厚生年金の標準報酬月額にかかるためです(子ども・子育て支援法69条・70条)。
標準報酬月額は、毎年7月1日の時点で4月から6月に受けた報酬の平均をもとに見直され、その年の9月から翌年8月まで使われます(健康保険法41条・厚生年金保険法21条)。ただし、6月1日から7月1日までに資格を取得した方と、7月から9月のいずれかの月から随時改定などで標準報酬月額が改定される方は、その年の7月の見直し(定時決定)の対象になりません(健康保険法41条・厚生年金保険法21条)。
10万円・30万円と並べる — 額面10万円の差と手取りの差
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 額面(月額・弊所試算の前提) | 社会保険料の本人負担(月額) | 所得税+住民税(月額) | 手取り(月額) | 手取りの割合 | 社会保険料の会社負担(月額) | 会社が用意する額(月額) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 10万円 | 13,906円 | 417円 | 85,677円 | 85.7% | 14,259円 | 114,259円 |
| 20万円 | 28,380円 | 8,033円 | 163,587円 | 81.8% | 29,100円 | 229,100円 |
| 30万円 | 42,570円 | 16,467円 | 240,963円 | 80.3% | 43,650円 | 343,650円 |
額面を10万円上げたときの手取りの増え方は、下の段でも上の段でも月約7.7〜7.8万円とほぼ同じです。一方で会社が用意する額は月約11.5万円ずつ増え、手取りの1.5倍のペースだと試算しています。
10万円の帯では、弊所試算では課税所得がゼロで所得税がかからず、住民税は均等割と森林環境税を合わせた年5,000円だけです。手取りの割合が上の2つの帯で少しずつ下がるのは、所得税と住民税の所得割が生じ、課税所得に応じて増えていくためだと見ています。
15万円・25万円など間の金額は、役員報酬の手取り早見表に同じ条件で5万円刻みで並べてあります。候補が2つ以上あるときは、早見表で隣り合う行を見比べてみてください。
会社の側から見る — 用意する総額は年約274.9万円
弊所試算では、会社が用意するのは、額面240万円に会社負担の社会保険料約34.9万円を足した約274.9万円です。この報酬を出すには少なくとも同額以上の粗利が要り、会社に利益を残すならさらに上乗せが要ると見ています。
毎月同額で払う役員報酬(定期同額給与)は損金になるため(法人税法34条1項1号)、法人側の税金はその分減ります。役員報酬の改定は、原則として会計期間の開始から3か月以内に行い、改定の前後それぞれの期間では毎月同じ額を払います(法人税法施行令69条1項1号イ)。
原則
期首から3か月以内の改定なら、改定の前後それぞれの期間で毎月同じ額を払っていれば、定期同額給与として損金になります。
法人税法34条1項1号・法人税法施行令69条1項1号イ
ただし
業績が良いからと期の途中で増額すると、増額前の額に上乗せした部分は損金になりません。業績を理由にした増額は臨時の改定事由にも業績悪化による減額にも当たらず、定期同額給与などのどれにも当たらない給与の額は損金に算入されないためです。
法人税法34条1項1号・法人税法施行令69条1項1号
職制上の地位の変更や職務の内容の重大な変更といった臨時の改定事由による改定は、期の途中でも定期同額給与の扱いが続きます。
法人税法施行令69条1項1号ロ
定期同額給与に当たる報酬でも、その額のうち不相当に高額な部分の金額は損金になりません。
法人税法34条2項
報酬を低く抑えた分の利益は法人に残り、法人の所得として法人税の対象になります(法人税法22条1項)。報酬で取るか法人に残すかは、法人に利益を残す場合との比較にまとめています。
月20万円という水準で見ておきたいこと
月20万円は、設立したばかりで売上の見通しが立たない時期や、配偶者の収入や貯えで生活費をまかなえる方が選びやすい水準だと見ています。手取りだけでなく、次の点も一緒に見ておくと判断がぶれません。
月20万円では課税所得が約22万円しかないので、生命保険料控除などを足しても所得税はほとんど変わりません。負担の大半を占める社会保険料は、標準報酬月額に料率を掛けて決まるので、所得控除を増やしても変わりません。
同じ年収240万円でも、月給を抑えて賞与(事前確定届出給与)に寄せると社会保険料の計算が変わります。仕組みと注意点は、毎月払いと賞与払いの比較にまとめています。
まとめ — 額面20万円は「手取り16.4万円・会社の負担275万円」の設計
役員報酬20万円は、社長の手取りが月約16.4万円、会社が用意する額が年約274.9万円という設計です。この水準で生活費と会社の利益の両方を回せるでしょうか。
ご自身の年齢と数字で確かめるときは、手取りシミュレーションで月額を細かく動かしてみてください。手取りと会社負担が並んで出るので、会社に残る利益との釣り合いも同時に見られます。
※本記事の金額は、社長おひとり・40歳未満(介護保険なし)・所得控除は給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除のみ・協会けんぽ東京の令和8年度料率・令和8年分の税制での概算です。40〜64歳は介護保険料が加わり、手取りは少し減ります。月あたりの金額は年額を12か月で割った平均で、実際の振込額とは異なる場合があります。
出典
- 協会けんぽ 令和8年度保険料率のお知らせ
- 協会けんぽ 令和8年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
- 国税庁 給与所得控除
- 国税庁 社会保険料控除
- 国税庁 所得税の税率
- 東京都主税局 個人住民税(所得割・均等割・森林環境税・特別徴収)
- 国税庁 質疑応答事例「定期給与の額を改定した場合の損金不算入額(定期同額給与)」
- e-Gov法令検索 健康保険法40条(標準報酬月額)・41条(定時決定)・99条(傷病手当金)・161条(保険料の負担及び納付義務)
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法20条(標準報酬月額)・21条(定時決定)・43条(年金額)・82条(保険料の負担及び納付義務)
- e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法69条(拠出金の徴収及び納付義務)・70条(拠出金の額)
- e-Gov法令検索 地方税法321条の3(給与所得に係る特別徴収)・321条の5(特別徴収の方法)
- e-Gov法令検索 所得税法28条(給与所得)・89条(税率)
- e-Gov法令検索 法人税法22条(各事業年度の所得の金額の計算)・34条(役員給与の損金不算入)
- e-Gov法令検索 法人税法施行令69条(定期同額給与の範囲等)
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