事前確定届出給与を支給した期の法人の決算申告 — 申告書のどこに書くか (役員給与等の内訳書など)、届出どおりでなかった期の別表の加算、源泉と社会保険の年間の確かめ方
「届け出たとおりに賞与を払った。決算では、申告書のどこに何を書けばいいのか」— 事前確定届出給与を支給した期の決算を迎える社長に向けた記事です。申告書で賞与が出てくる3か所、届出どおりでなかった期の別表四の加算、源泉所得税と社会保険を年間で確かめる順番を、国税庁の様式に沿って整理しました。
この記事の要点
- 支給した賞与は、勘定科目内訳明細書の「役員給与等の内訳書」で役員ごとに「事前確定届出給与」の欄へ書く。「役員給与計」には毎月の報酬と賞与を合わせた額を書き、退職給与は別の欄
- 届け出た日・額と違う支給があった役員の賞与は原則として全額が損金にならず、別表四の「役員給与の損金不算入額」の行で加算する(処分は社外流出)。届出どおりに支給したほかの役員の賞与には影響しない
- 決算の前に、届出書の控えの付表1「事前確定届出給与等の状況」と通帳・賃金台帳、納付書の「役員賞与」欄、源泉徴収票の支払金額、賞与支払届と標準賞与額決定通知書の数字をそろえておく
まず結論 — 賞与が出てくるのは内訳書・別表四・概況説明書の3か所
法人税の確定申告書には、貸借対照表と損益計算書のほか、勘定科目内訳明細書と事業概況説明書を添付します(法人税法74条3項・法人税法施行規則35条1号・3号・5号)。事前確定届出給与を支給した期は、この添付書類と別表四に賞与の数字が出てきます。どこに何を書くかを表にまとめました。
| 書類 | 欄 | 書くこと |
|---|---|---|
| 勘定科目内訳明細書「役員給与等の内訳書」 | 「役員給与計」と、その内訳の「事前確定届出給与」 | 役員ごとに、その事業年度に支給した賞与の額。役員給与計には毎月の報酬と賞与を合わせた額を書く |
| 別表四 | 「役員給与の損金不算入額」の行(処分は「社外流出」) | 届出どおりでなかった役員の賞与や、不相当に高額な部分など、損金にならない額。届出どおりに支給し、不相当に高額な部分も無ければ、その賞与について書くものは無い |
| 法人事業概況説明書 | 「10 主要科目」の役員報酬、「18 月別の売上高等の状況」の人件費と源泉徴収税額 | 役員報酬は申告調整のあとの額を千円単位で。月別の表には賞与を払った月の支給総額と、その源泉徴収税額 |
書く順番は、内訳書で役員ごとの額を固め、届出どおりでなかった分があれば別表四へ、最後に概況説明書へ写す流れが迷いません。その前に、届出書の控えと実際の支給が合っているかを確かめておきます。控えの付表1の題名が「事前確定届出給与等の状況」で、届け出た支給日と支給額はここに書いてあります。
決算の前に賞与の数字をそろえる順番
付表1の控えを出す
届け出た支給日と支給額は、届出書に添えた付表1「事前確定届出給与等の状況」の控えにある。届出書の④欄には付表の番号だけが書かれている
通帳と賃金台帳で照らす
振り込んだ日と額が付表1と1日・1円も違わないかを見る。違う役員がいれば、その賞与は別表四で加算する側に回す
内訳書と概況説明書に写す
役員ごとの支給額を「事前確定届出給与」の欄へ、月別の表には賞与の月の支給総額と源泉徴収税額を書く
源泉と社会保険を年間で照らす
納付書の「役員賞与」欄・源泉徴収票の支払金額・標準賞与額決定通知書の額が、同じ賞与の額になっているかを見る
制度の全体像と届出の期限は事前確定届出給与ガイドにまとめています。届出書と付表1の欄ごとの書き方は届出書の書き方の記事にあります。この記事は、届け出て支給したあとの決算と申告の話に絞ります。
役員給与等の内訳書 — 「事前確定届出給与」の欄に、役員ごとの支給額を書く
役員給与等の内訳書は、勘定科目内訳明細書の14番目の様式です。役員ごとに役職名・氏名・代表者との関係・常勤か非常勤かを書き、「役員給与計」と、その内訳として「使用人職務分」と「使用人職務分以外」(定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与・その他)、別に「退職給与」の欄が並びます。
国税庁の記録要領(e-Taxの留意事項)では、「役員給与計」には役員給与の金額と賞与の金額を、「事前確定届出給与」の欄には使用人職務分以外の事前確定届出給与の金額を記録するとされています。毎月の報酬は「定期同額給与」の欄(法人税法34条1項1号)で、どちらにも当たらない給与は「その他」の欄です。下の段の「人件費の内訳」には、役員給与の総額と、そのうち代表者とその家族の分を書きます。
内訳書は、その事業年度の確定申告書に添付する書類です(法人税法74条3項・法人税法施行規則35条)。3月決算なら4月から翌年3月までに支給した賞与を書き、翌期の6月に支給する賞与は翌期の内訳書に書きます。暦年で集計する源泉徴収票とは期間が違うので、合計額が一致しなくても誤りではありません。
届け出た額と違う額を支給した賞与は、事前確定届出給与に当たりません(法人税法34条1項2号・法人税基本通達9-2-14)。この場合は「事前確定届出給与」の欄ではなく「その他」の欄に書くことになると考えています。別表四については、次の節で見ていきます。
届出どおりでなかった期 — 別表四の「役員給与の損金不算入額」で加算する
原則
届け出た支給額と実際の支給額が異なる賞与は事前確定届出給与に当たらず、原則としてその支給額の全額が損金になりません。
法人税法34条1項2号・法人税基本通達9-2-14
ただし
届出どおりに支給した賞与でも、不相当に高額な部分の金額は損金になりません。
法人税法34条2項
届け出た額と違う額を支給した役員がいても、届出どおりに支給したほかの役員の賞与まで損金にならなくなるわけではありません。国税庁の見解では、事前確定届出給与の規定は個々の役員の給与について定めたものなので、ほかの役員の給与には影響しないとされています。
同じ役員に複数回の支給を定めたときは、国税庁の見解では、その職務執行期間の支給の全部が定めどおりかで判定します。当期の支給は定めどおりで翌期の支給だけが違ったときは、当期に届出どおり支給した分は損金に算入して差し支えないとされています。
損金にならない賞与の額は、別表四の加算の欄にある「役員給与の損金不算入額」の行に書きます。令和7年4月1日以後に終了する事業年度分の様式では7の行で、処分は「社外流出」の「その他」の欄です。別表四の記載の仕方では、費用として経理した金額のうち損金の額に算入されないものについて、その名称と金額を加算の欄に書くとされています。
帳簿では賞与を役員報酬として費用にしたまま、申告書の上だけで利益に足し戻す形です。損金にならない賞与の分だけ所得の金額が増えるので(法人税法34条1項)、法人税等も増えます。増える額の目安は、届出を忘れたときの記事の表で確かめてみてください。
源泉所得税の年間の確かめ方 — 納付書の「役員賞与」欄・年末調整・源泉徴収票
賞与を支払う際に源泉徴収した所得税は、翌月10日までに納めます(所得税法183条1項)。納付書(所得税徴収高計算書)には「役員賞与」の欄があり、国税庁の記載のしかたでは、支払年月日・人員・支給額・税額のほか、その賞与の支払が確定した年月日をここに書くとされています。賞与の税額の計算と納期の特例は、源泉徴収と仕訳の記事で整理しています。
年末調整では、その年に支払うべきことが確定した給与等の全部で年税額を計算し、毎月と賞与で引いた源泉所得税の合計との差を精算します(所得税法190条)。ただし、その年の給与等の金額が2,000万円を超える役員は年末調整の対象になりません(所得税法190条)。賞与の分を年末調整の計算から落とすと、年税額が合わなくなります。源泉徴収簿に賞与の行を入れたかを、先に確かめてみてください。
源泉徴収票は、その年に支払の確定した給与等について役員ごとに作り、翌年1月31日までに税務署へ提出し、本人にも交付します(所得税法226条1項)。国税庁の手引では、「支払金額」の欄にはその年に支払の確定した給与等の総額を書き、作成日の時点で未払いのものがあればその額を内書きするとされています。
役員の分は、令和7年分の手引では、年末調整をした給与でその年の支払金額が150万円を超えるものが税務署への提出の対象です。2027年1月1日施行の改正後の所得税法施行規則93条2項では、この150万円の区分は無くなり、提出を要しないのは年の中途で退職した人への支払金額が30万円以下のときだけになります。
| 書類 | 見る欄 | そろえる数字 |
|---|---|---|
| 付表1の控え「事前確定届出給与等の状況」 | 支給時期・支給額 | 通帳の振込日と、賃金台帳の支給額 |
| 所得税徴収高計算書(納付書) | 「役員賞与」の欄 | 賞与を払った月の支給額・人員・税額と、支払の確定した日 |
| 源泉徴収票 | 「支払金額」 | その年に支払の確定した月給と賞与の合計(未払いがあれば内書き) |
| 役員給与等の内訳書 | 「事前確定届出給与」「役員給与計」 | 事業年度に支給した賞与の額と、月給を合わせた額 |
| 賞与支払届の控え | 賞与額 | 支給した賞与の額 |
| 標準賞与額決定通知書 | 標準賞与額 | 賞与額の千円未満を切り捨てた額(上限あり) |
源泉徴収票の合計を税務署に出す法定調書合計表では、給与の人員を実人員で書きます。手引には、納付書に書いた人員の累計を書かないようにという注意があります。賞与の月の納付書は人員が重なって数えられやすいので、合計表を作るときに見直してみてください。
社会保険の年間の確かめ方 — 賞与支払届と標準賞与額決定通知書
事業主は賞与を支払った日から5日以内に、被保険者賞与支払届を日本年金機構(健康保険組合に入っている会社は組合にも)に出します(健康保険法48条・健康保険法施行規則27条1項・厚生年金保険法27条・厚生年金保険法施行規則19条の5第1項)。届出に基づいて、その月の標準賞与額が決まります。
原則
標準賞与額は、その月に受けた賞与額の千円未満を切り捨てた額です。
健康保険法45条1項・厚生年金保険法24条の4第1項
ただし
健康保険は、4月から翌年3月までの年度の累計が573万円を超える分の標準賞与額が0になります。
健康保険法45条1項
厚生年金は、その月の標準賞与額が150万円を超えるときは150万円になります。
厚生年金保険法24条の4第1項
社会保険で賞与として扱うのは3か月を超える期間ごとに受けるもので、それより短い間隔で受けるものは報酬として毎月の保険料の計算に入り、賞与の上限は使えません。
健康保険法3条5項・6項
届出をすると、日本年金機構から標準賞与額決定通知書が届きます。この通知書の額が、届け出た賞与額の千円未満を切り捨てた額(上限に当たる役員は上限の額)になっているかを、付表1の控えと並べて照らしてみてください。決定された標準賞与額は、本人にも知らせます。先ほどの例の150万円は、厚生年金の1か月の上限と同じ額なので、厚生年金の標準賞与額は上限いっぱいです。
賞与を払わなかった月の届出も忘れがちです。日本年金機構に登録した賞与支払予定月に誰にも賞与を払わなかったときは、賞与支払届の代わりに賞与不支給報告書を出します。予定月の翌月までに届出がないと、翌々月に催告状が届きます。
翌期の届出へ — 付表1の「支給額」欄に、今期の実績をそのまま書く
付表1「事前確定届出給与等の状況」には、今回届け出る支給予定分のほかに、支給済分を書く欄があります。国税庁の記載要領では、職務執行期間開始の日の属する会計期間について、「届出額」の欄に前回以前の届出で届け出た支給時期と支給額を、「支給額」の欄にその実際の支給時期と支給額を書くとされています。つまり決算で照らした今期の実績は、翌期の届出書の付表1にそのまま写す数字です。
翌期の議事録(合同会社は総社員の同意書)・届出書・付表1は、このサイトの事前確定届出給与の書類のページで同じ入力から作れます。決算と申告だけを税理士に頼む場合も、届出書の控え・納付書・賞与支払届の控えをそろえて渡すと話が早く進みます。用意する資料の目安は法人の決算申告だけのご依頼のページにまとめてあります。
決算の時点で、申告書の3か所と年間の照合が済んでいれば、事前確定届出給与の期の申告はほかの期と変わりません。翌期に月給と賞与の配分を変えるなら、月給の改定は原則として事業年度の開始から3か月以内に決め(法人税法施行令69条1項1号イ)、賞与は新しい届出の期限までに届け出ます。配分の変更を考えている方は、決算の数字が出た時点で早めにご相談ください。
※記載例は、金銭で支給する一般的な事前確定届出給与を、届出どおりに支給した例です。株式や新株予約権で支給する場合、使用人兼務役員の使用人分の賞与、健康保険組合の独自の手続きには触れていません。
出典
- 国税庁 事前確定届出給与に関する届出(C1-23)(届出書・付表1と記載要領)
- 国税庁 付表1(事前確定届出給与等の状況(金銭交付用))の記載要領等(支給済分の「届出額」と「支給額」の欄)
- 国税庁 事前確定届出給与に関する届出書の記載要領等(④欄には付表の一連番号)
- 国税庁 法人税の申告(法人税申告書別表等)(勘定科目内訳明細書・法人事業概況説明書の様式)
- 国税庁 e-Tax 勘定科目内訳明細書(14 役員給与等の内訳書)のレコードの内容及び留意事項(令和6年3月1日以後終了事業年度分)
- 国税庁 別表四 所得の金額の計算に関する明細書(令和7年4月1日以後終了事業年度分)
- 国税庁 別表四の記載の仕方
- 国税庁 法人事業概況説明書の記載要領(主要科目・月別の売上高等の状況)
- 国税庁 納付書の記載のしかた(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)(役員賞与の欄)
- 国税庁 令和7年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引「支払金額」欄
- 国税庁 同手引 給与所得の源泉徴収票を提出する必要がある方(役員は支払金額150万円超)
- 国税庁 同手引 給与所得の源泉徴収票合計表(人員は納付書の人員の累計にしない)
- 日本年金機構 従業員に賞与を支給したときの手続き(賞与支払届・標準賞与額決定通知書・賞与不支給報告書)
- 日本年金機構 年間の標準賞与額の累計額が573万円を超えたとき
- 国税庁 法人税基本通達9-2-14(事前確定届出給与の意義)
- 国税庁 質疑応答事例 定めどおりに支給されたかどうかの判定(事前確定届出給与)
- 国税庁 質疑応答事例 届出書を提出している法人が特定の役員に記載額と異なる支給をした場合の取扱い
- e-Gov法令検索 法人税法34条(役員給与の損金不算入)・74条(確定申告)
- e-Gov法令検索 法人税法施行規則35条(確定申告書の添付書類)
- e-Gov法令検索 法人税法施行令69条(定期同額給与の範囲等)
- e-Gov法令検索 所得税法183条(源泉徴収義務)・190条(年末調整)・226条(源泉徴収票)
- e-Gov法令検索 健康保険法3条(定義)・45条(標準賞与額の決定)・48条(届出)
- e-Gov法令検索 健康保険法施行規則27条(賞与額の届出)
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法24条の4(標準賞与額の決定)・27条(届出)
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法施行規則19条の5(賞与額の届出)
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