経営セーフティ共済の掛金を経費にする申告書の書き方 — 法人は別表十(八)・旧別表十(七)の明細書と告示番号、個人は必要経費算入の明細書、前納した年の按分
「掛金は払ったけれど、申告書のどこに書くのか」と決算のたびに迷う方に向けて、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の掛金を損金・必要経費にするための明細書の書き方を、法人と個人事業主に分けて整理します。検索の多い告示番号の欄と、前納した年の扱いにも先に答えを置きました。
この記事の要点
- 掛金は払っただけでは経費にならない。法人は別表十(八)のⅢと適用額明細書、個人事業主は必要経費算入に関する明細書を確定申告書に添えて初めて損金・必要経費になる(租税特別措置法66条の11第3項・28条3項)
- 告示番号の欄は空欄のまま。経営セーフティ共済の掛金に告示番号は無い。適用額明細書に書く条項は第66条の11第1項、区分番号は00374
- 前納は、期間が1年以内なら払った期にまとめて損金・必要経費になる(措置法通達66の11-3・措置法通達(申告所得税関係)28-3)
- 1年を超える前納は払った期にまとめては落とせない。中小機構の加入者必携では、各事業年度末に期間の経過に応じて損金・必要経費に算入できるとされている
掛金は「払う」だけでは経費にならない — 明細書の添付が条件
経営セーフティ共済の掛金は、法人なら支出した事業年度の損金、個人事業主なら支出した年分の事業所得の必要経費になります(租税特別措置法66条の11第1項2号・28条1項2号)。ただし、この取扱いは「明細書を添付した申告書」に限って適用される特例です。確定申告書に損金算入(必要経費算入)の明細書の添付が無い場合は、特例が適用されません(租税特別措置法66条の11第3項・28条3項)。
会計ソフトで掛金を経費の科目に入れて決算書を作っただけでは、申告の側の条件を満たしていません。決算書と申告書は別の書類で、申告書に明細書を添えて初めて経費として認められる仕組みです(租税特別措置法66条の11第3項・28条3項)。
| 立場 | 添える書類 | 根拠 |
|---|---|---|
| 法人 | 別表十(八)のⅢの特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書と、「適用額明細書」の2枚 | 租税特別措置法66条の11第3項・租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律3条1項 |
| 個人事業主 | 特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書の1枚。適用額明細書は要らない | 租税特別措置法28条3項 |
法人の明細書の様式は、中小機構の加入者必携にも載っています。国税庁の令和8年4月1日以後に終了する事業年度分の一覧では別表十(八)に番号が変わっていますが、掛金を書くⅢの区画と欄の番号(23〜27)は同じです。古い解説で別表十(七)と書かれていても、今の様式では別表十(八)を使います。
法人の書き方 — 別表十(八)のⅢの5つの欄と告示番号
別表十(八)は、社会保険診療報酬・肉用牛の売却・特定の基金・特定業績連動給与の4つの明細が1枚に収まった様式です。国税庁の記載の仕方では、Ⅲは法人が特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例の適用を受ける場合に記載するとされています。経営セーフティ共済の掛金はこのⅢの区画だけを使い、Ⅰ・Ⅱ・Ⅳは空欄のままで構いません。
別表十(八)と適用額明細書の作り方
別表十(八)を開く
令和7年4月1日以後に終了する事業年度の様式。Ⅰ・Ⅱ・Ⅳは空欄のまま
Ⅲの5つの欄を埋める
基金に係る法人名・基金の名称・告示番号・当期に支出した額・損金に算入した額
適用額明細書に写す
条項「第66条の11第1項」、区分番号「00374」、適用額は別表十(八)の27欄の金額
| 欄 | 法人: 別表十(八)のⅢ | 個人事業主: 必要経費算入に関する明細書 |
|---|---|---|
| 基金に係る法人名 | 独立行政法人中小企業基盤整備機構(23欄) | 独立行政法人中小企業基盤整備機構(①) |
| 基金の名称 | 中小企業倒産防止共済事業(24欄) | 中小企業倒産防止共済事業(②) |
| 告示番号 | 空欄のまま(25欄) | 空欄のまま(③) |
| 支出した額 | 当期に支出した負担金等の額(26欄)。その事業年度に払った掛金の合計で、1年以内の前納分を含む | 当年に支出した負担金等の額(④)。その年に払った掛金で、前納金を含む |
| 経費にした額 | 同上のうち損金の額に算入した金額(27欄)。通常は26欄と同じ額で、適用額明細書の適用額に写す | 同上のうち必要経費に算入した額(⑤) |
基金の名称には、中小機構のよくある質問の記載例のとおり「中小企業倒産防止共済事業」と書きます。制度名の「中小企業倒産防止共済」と書く形でも、指している基金は同じと考えています。
告示番号の欄には何も書きません。告示番号があるのは、財務大臣が指定して告示する基金です(租税特別措置法施行令39条の22第4項)。経営セーフティ共済の掛金は法律に直接書かれているので(租税特別措置法66条の11第1項2号)、告示番号そのものがありません。中小機構の加入者必携も、告示番号の記入は不要と案内しています。
欄の位置を番号つきの様式の画像で確かめたい方は、経営セーフティ共済ガイドの様式の案内で、別表十(八)と適用額明細書の2枚を見られます。
適用額明細書 — 条項・区分番号・適用額の3つを写す
法人が租税特別措置法の特例で所得を減らすときは、その特例を書いた適用額明細書を法人税の申告書に添付する義務があります(租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律3条1項)。添付しないまま申告すると、その事業年度はその特例の適用が無いものとされます(租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律3条2項)。経営セーフティ共済の掛金の損金算入もこの特例の1つなので、別表十(八)とは別に、適用額明細書が必ず要ります。
書くのは3か所です。国税庁の適用額明細書の記載の手引(令和8年4月1日以後終了事業年度分)の別表十(八)のページでは、条項の欄は「第66条の11第1項」、区分番号の欄は「00374」、適用額の欄は別表十(八)の「27」欄の金額とされています。手引の48ページに、別表十(八)の27欄に記載がある場合の書き方として、この3つが並んでいます。
個人事業主の書き方 — 必要経費算入に関する明細書を1枚添える
個人事業主は、特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書を確定申告書に添付します(租税特別措置法28条3項)。様式は国税庁のホームページにあり、欄は上の表の5つです。基金に係る法人名と基金の名称は法人と同じで、告示番号は空欄、当年に支出した額には前納金を含めた支払額を書きます。
適用額明細書は、法人税の申告書を出す法人に添付が義務づけられているものです(租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律3条1項)。個人の確定申告には要りません。
前納した年の書き方 — 1年以内は全額、1年を超える分は期間で配分
前納した掛金のうち、払った期の損金・必要経費になるのは、前納の期間が1年以内のものです(措置法通達66の11-3・措置法通達(申告所得税関係)28-3)。前納の期間が1年を超えるものはこの特例の掛金に当たらず、中小機構の案内では、各事業年度末に期間の経過に応じて損金(個人は必要経費)に算入するとされています。
原則
前納した掛金は、前納の期間が1年以内なら、支出した日の属する事業年度(個人は年分)の損金・必要経費になります。
措置法通達66の11-3
ただし
前納の期間が1年を超える前納は、払った期にまとめて算入できる掛金に当たりません。
措置法通達66の11-3
共済契約を解約したあと再び契約した場合、解約の日から2年を経過する日までに支出する掛金は損金・必要経費になりません。
租税特別措置法66条の11第2項・28条2項
この2年の決まりは令和6年10月1日以後の解約に適用されるもので、中小機構の制度のしおりにも同じ注記があります。
一方、決算月に1年を超える月数分を前納した場合は、払った期にまとめては落とせません。各期末に経過した月の分だけを算入する形になるので、決算対策として前納するなら、毎年の決算前に1年分ずつ前納する形をお勧めしています。申出の期限や決算月との段取りは、前納の記事に書きました。
前納で厚くした損金が解約のときにどう課税されるかは、申告書の書き方とは別に確かめておくことをお勧めしています。経営セーフティ共済シミュレーションに掛金の月額と解約の年にぶつける損金を入れて、積立の期間に軽くなる税と出口で増える税を通しで確かめてみてください。
添付を忘れたときの救済と、よくある誤解
明細書を付け忘れた申告書を出してしまったときは、添付が無かったことについて税務署長がやむを得ない事情があると認める場合に限り、あとから明細書を提出すれば特例が適用されます(租税特別措置法66条の11第3項・28条3項)。認められるかどうかは税務署の判断なので、この但書きを当てにせず、申告のたびに2枚(個人は1枚)の添付を確かめる運用をお勧めしています。
手元の申告書の控えを開いて、法人なら別表十(八)のⅢと適用額明細書、個人なら必要経費算入に関する明細書が入っているかを、一度確かめてみてください。掛金を経費にする条件は、仕訳ではなく申告書の添付書類で決まります(租税特別措置法66条の11第3項・28条3項)。
出典
- e-Gov法令検索 租税特別措置法66条の11(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例)・28条(特定の基金に対する負担金等の必要経費算入の特例)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行令39条の22(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例・財務大臣の指定と告示)
- e-Gov法令検索 租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律3条(適用額明細書の提出義務)
- 国税庁 租税特別措置法関係通達(法人税編) 66の11-3(中小企業倒産防止共済事業の前払掛金)
- 国税庁 租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて 28-3(中小企業倒産防止共済事業の前払掛金)
- 国税庁 法人税申告書別表等一覧(令和8年4月1日以後終了事業年度等分)
- 国税庁 別表十(八)の記載の仕方(PDF)
- 国税庁 適用額明細書の記載の手引(令和8年4月1日以後終了事業年度分)
- 国税庁 適用額明細書の記載の手引 別表十(八)の欄に記載がある場合(手引の48ページ・PDF)
- 国税庁 適用額明細書の記載の手引(令和7年4月1日以後終了事業年度分)
- 中小機構 よくあるご質問 掛金を損金に算入するためには、どうすればよいですか
- 中小機構 よくあるご質問 個人事業主が掛金を必要経費に算入するには、どうすればよいですか
- 中小機構 よくあるご質問 『適用額明細書』は、個人事業主も添付が必要ですか
- 中小機構 中小企業倒産防止共済 加入者必携(PDF) 掛金の税法上の取扱い・掛金の確定申告(様式)
- 中小機構 経営セーフティ共済 制度のしおり(令和8年1月改訂版・PDF)
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