経営セーフティ共済の前納 — 最大いくらまで・申出の期限・決算月との関係
決算が近づいて「経営セーフティ共済の掛金を前納して損金を増やしたい」と考えた方に、いくらまで・いつまでに・どう申し出るかを、中小機構の案内と税務の決まりから整理していきましょう。前納の上限と申出の期限、決算月との段取り、翌年以降の続け方の順に見ていきます。
この記事の要点
- 前納で払った期の損金にできるのは、前納の期間が1年以内の分まで。掛金月額20万円なら1年分の240万円が上限
- 申出は、前納したい月の5日までに中小機構へ書類が届くこと。決算月に引き落としたいなら、その前月のうちに申し出る
- 前納分は毎月の掛金に充当され、終わると月払いに戻る。翌年も前納したいなら毎年申し出る
前納の仕組み — 先に払って、毎月の掛金に充てていく
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の掛金は月5,000円から20万円までで、総額800万円が上限です。掛金の前納は、加入時か契約の途中で、先払いする月数分の掛金をまとめて払い込む仕組みです。
前納した掛金は、中小機構が毎月の掛金に充当していきます。充当が終わると、次の申出が無い限り毎月の引き落としに戻ります。
前納には、上限の800万円に達するまでに掛金月額の2か月分以上の枠が残っていることが必要です。800万円に達すると、払い込みは自動的に止まります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申出の期限 | 前納したい月の5日(土日祝日なら翌営業日)までに中小機構へ書類が到着すること |
| 申し出られる時期 | 前納したい月の前月から |
| 払い方 | 口座からの引き落とし。振り込みは加入時だけ |
| 前納の条件 | 上限800万円まで、掛金月額の2か月分以上の枠が残っていること |
| 充当が終わったら | 次の申出が無ければ毎月の引き落としに戻る |
| 未納の掛金があるとき | 前納金からは充当されず、別に請求される |
損金になるのは「1年以内」の前納まで
掛金は、法人なら支出した事業年度の損金、個人事業主なら必要経費になります(租税特別措置法66条の11・28条)。前納した掛金のうち損金になる掛金に当たるのは、前納の期間が1年以内のものまでです(措置法通達66の11-3)。
掛金月額20万円の会社には、1年分の240万円までを払った期の損金にできる上限とお伝えしています。2年分をまとめて払っても、1年を超える分は払った期の損金にはなりません。個人事業主の方にも同じ考え方で、1年分までの前納をお勧めしています。
原則
前納した掛金は、前納の期間が1年以内なら、支出した事業年度の損金になる掛金に当たります。
措置法通達66の11-3
ただし
共済契約を解約した場合は、解約の日から2年を経過する日までに支出する掛金は損金・必要経費になりません。
租税特別措置法66条の11第2項・28条2項
確定申告書に損金算入(必要経費算入)の明細書の添付が無いと、税務署長がやむを得ない事情を認めた場合を除き、特例は適用されません。
租税特別措置法66条の11第3項・28条3項
この2年間の決まりは令和6年10月1日以後の解約に適用されるもので、前納した掛金も支出した掛金として同じ扱いです。解約と再加入を繰り返して損金を作る使い方は、この改正で閉じられたとお伝えしています。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 項目 | 金額(年額) |
|---|---|
| 1年分の掛金(前納額) | 2,400,000円 |
| 軽くなる法人税等 | 530,800円 |
課税所得500万円の法人が決算月に1年分を前納すると、その期の法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税を合わせて約53.1万円軽くなります。出ていく現金に対して、戻ってくる税金はその2割ほどという関係です。
個人事業主の場合 — 税金だけでなく国保と事業税も動く
個人事業主の掛金は必要経費なので、所得そのものが下がります。所得で決まる国民健康保険料と個人事業税も一緒に軽くなる点まで含めて見るようお勧めしています。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 項目 | 金額(年額) |
|---|---|
| 1年分の掛金(前納額) | 1,200,000円 |
| 所得税・住民税 | 270,400円 |
| 国民健康保険料 | 148,686円 |
| 個人事業税 | 57,143円 |
| 合計 | 476,229円 |
軽くなる負担は120万円の前納に対して約47.6万円で、法人の例より率が高く見えます。国民健康保険料と個人事業税が所得に連動して下がる分が乗っているためです。
決算月との段取り — 前月に申し出て、決算月に引き落とす
決算月に前納の引き落としを間に合わせる段取りを、3月決算の会社の例で見てみましょう。
決算月(3月)に1年分を前納するなら
- 2月前納の申出書を中小機構へ送る
- 3月5日中小機構に書類が到着
- 3月中前納掛金の引き落とし
- 4月以降前納分を毎月の掛金に充当。翌年も前納するなら翌年2月に再び申出
3月5日までに届かないと3月の引き落としにはならず、当期の損金にできません。2月中に送ってください。
中小機構の案内でも、決算月が3月末の会社が3月に12か月分を前納する例が示されています。毎年度、決算月の前月までに前納を申し出て、年度内の損金に最大限算入する形です。
掛金月額20万円でこれを続けると、36か月(3年)は毎年度12か月分を前納し、4年目は残る4か月分(80万円)を前納して800万円の上限に達します。納付月数が40か月に達すると、解約時に解約手当金を100%の支給率で受け取れます。
翌年以降の続け方 — 前納は毎年申し出る
前納は、1回申し出れば自動で続くわけではありません。充当が終わると毎月の引き落としに戻るので、翌年も決算月に前納したいなら、毎年その前月までに申し出ます。
掛金の増額と前納を同時に行いたいときは、それぞれの締切日までに手続きをすると、増額後の掛金月額で前納できます。決算前に月額を上げて1年分を前納する形が、これに当たります。
まとめ — 「1年分・5日・前月」の3つを押さえる
前納で当期の損金にできるのは1年分まで、引き落としの条件は前納したい月の5日までの書類到着、申出は前月から。この3つを押さえれば、決算月の前納は確実に間に合います。あなたの会社の決算月なら、申出書を送るのは何月でしょうか。
下のシミュレーションに掛金と積立の月数、解約する年にぶつける損金を入れて、積立期に軽くなる税と出口で増える税を通しで確かめるようお勧めしています。前納の額と時期は、決算の見通しとあわせて事前にご相談ください。
※本記事の金額は、法人は掛金を引く前の課税所得500万円・均等割7万円を含む法人側の税金(法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税)、個人は事業所得600万円・40〜64歳・東京都江東区の令和8年度料率・個人事業税5%の業種での概算です。解約する年の所得や損金で結果が大きく変わるので、ご自身の数字で試すようお勧めしています。
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