売上1,000万円の個人事業主の消費税はいくら払うか — 本則課税・簡易課税・2割特例の納税額を実額で比べる
「売上が1,000万円を超えると消費税がかかる」とは聞くけれど、実際に年にいくら納めるのか。個人事業主の方に向けて、税込1,100万円(税抜1,000万円)の売上を例に、本則課税・簡易課税・2割特例の納税額を弊所の実額試算で並べ、方式を選ぶ物差しを整理します。
この記事の要点
- 税込1,100万円のサービス業(第5種)が課税事業者なら、本則課税は課税仕入れしだいで年454,400円〜818,000円、簡易課税は年500,000円
- 売上1,000万円以下のままインボイス登録で課税事業者になった方は、令和8年分は2割特例で年200,000円、令和9・10年分は3割特例で年300,000円
- 選べる方式は「課税事業者になった理由」で決まり、額は「経費の中の課税仕入れの割合」で決まる。届出の期限を過ぎると、その年は選べない
まず前提 — この記事の「売上1,000万円」は税込1,100万円
この記事では、年間の売上を税込1,100万円(税抜1,000万円・消費税分100万円)とします。消費税は売上に含まれる消費税分をもとに計算するので、税込か税抜かで納税額が変わってしまうためです。
業種はサービス業(簡易課税の第5種・みなし仕入率50%)、消費税のかかる経費(課税仕入れ)は税込200万円・400万円・600万円の3通りで見ます。令和8年分・標準税率10%の売上と経費だけの計算です。
なお、課税事業者になるかどうかの判定(前々年の課税売上高が1,000万円を超えたか)は、別の記事で整理しています。すでに課税事業者になった年に納める額をこの記事で扱い、判定の話は別の記事に分けています。
前々年の売上が1,000万円を超えた年 — 選べるのは本則課税と簡易課税
前々年の課税売上高が1,000万円を超えて課税事業者になった方が選べるのは、本則課税と簡易課税の2つです。2割特例と3割特例は、この場合は使えません。
※この表の試算年度: 令和8年の消費税制度。
| 課税仕入れ(税込) | 本則課税(年額) | 簡易課税(年額) |
|---|---|---|
| 200万円 | 818,000円 | 500,000円 |
| 400万円 | 636,200円 | 500,000円 |
| 600万円 | 454,400円 | 500,000円 |
本則課税は、売上の消費税から実際に払った課税仕入れの消費税を引く方式なので、課税仕入れが増えるほど納める額が減ります。簡易課税は売上の消費税の50%を仕入れ分とみなすので、課税仕入れがいくらでも500,000円のままです。
第5種なら課税仕入れが税込550万円前後を分かれ目と試算していて、それより課税仕入れが少ない方には簡易課税、多い方には本則課税をお勧めしています。
1,000万円以下のままインボイス登録した年 — 2割特例で年200,000円
売上が1,000万円以下で本来は免税のところ、取引先から求められてインボイス(適格請求書発行事業者)の登録をし、課税事業者になった方も多いはずです。前々年の売上で判定する場合と違って時間差はなく、登録日から課税事業者になります。
この場合は、売上にかかる消費税の2割だけを納める2割特例が令和8年分まで使えます。事前の届出は要らず、確定申告書に使う旨を付記するだけで、その年ごとに選べます。
※この表の試算年度: 令和8年の消費税制度。
| 申告方式 | 納付見込額(年額) |
|---|---|
| 2割特例(令和8年分) | 200,000円 |
| 簡易課税(第5種) | 500,000円 |
| 本則課税(課税仕入れ400万円) | 636,200円 |
2割特例は令和8年分で終わり、令和9年分と令和10年分は売上の消費税の3割を納める3割特例に変わります。同じ税込1,100万円なら3割特例の納付額を年300,000円と試算しています。
方式の選び方 — 簡易課税は前年末までの届出が原則
方式を決める順番は、次のとおりです。
方式を決める順番
課税事業者になった理由を確かめる
前々年の売上が1,000万円超か、インボイス登録か。登録なら令和8年分は2割特例が使える
課税仕入れを数える
経費のうち消費税のかかったものだけを税込で合計する
簡易課税と比べる
売上の消費税×(1−みなし仕入率)と、売上の消費税−課税仕入れの消費税を並べる
届出の期限を確かめる
簡易課税は前年末までの選択届出書が原則。2割特例・3割特例は届出不要
資金を分ける
納める額を毎月取りおき、翌年3月末の納付に備える
簡易課税は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の方が届出をして選ぶ方式で、いったん選ぶと2年間は続けます(消費税法37条)。届出の期限は年によって違うので、ここで一度ご自身の年の期限を確かめてみてください。
原則
簡易課税を使うには、使いたい年の前年12月31日が期限の選択届出書を出しておく必要があります。
消費税法37条1項
ただし
2割特例を使った翌課税期間に簡易課税へ移る場合は、その翌課税期間の確定申告書の提出期限までに届出書を出せば、その課税期間の初日の前日に出したものとみなされます。
平成28年改正法附則51条の2第6項
この届出の特例は、2割特例の創設時(令和5年度税制改正)からあるもので、当初の期限は翌課税期間中(その課税期間の末日まで)でした。令和8年度税制改正は、その期限を翌課税期間の確定申告の期限まで延ばし、3割特例からの移行にも広げました。翌課税期間が令和8年10月1日以後に終了する場合に適用されるので、個人事業主は令和8年分以後の移行から新しい期限になります。
もう一つ、免税事業者がインボイス登録を受けて課税事業者になる年は、令和11年9月30日までの登録なら、登録日の属する課税期間中に届出書を出せばその年から簡易課税を使えます。登録した年の12月31日までに出せば、その年の申告から簡易課税にできる特例です。
まとめ — 額より先に「選べる方式」を確かめる
同じ税込1,100万円の売上でも、簡易課税・本則課税・2割特例のどれになるかで、納める額は年20万円台から年80万円台まで開きました。額を決めるのは売上の大きさより、方式と課税仕入れの割合だとお伝えしています。
下のシミュレーションでは年分・売上・経費・業種を入れると4つの方式の納付見込額が並びますので、届出を決める前にご自身の数字で試すようお勧めしています。届出の期限は年によって違いますので、課税事業者になる見込みが出た時点でお早めにご相談ください。
※本記事の金額は弊所試算で、標準税率10%の売上・経費だけで計算した令和8年分の概算です(国税7.8%と地方消費税2.2%の合計・百円未満切捨て)。軽減税率や年の途中の開業、インボイスの無い相手からの仕入れは反映していません。
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