「届け出た支給日に振込が間に合わなかった」「資金繰りで一部しか払えなかった」— そんなとき賞与はどう扱われるのか。事前確定届出給与の「定めのとおり」の意味と、ずれたときの結果、ずれを防ぐ実務を整理しました。
「届け出た支給日に振込が間に合わなかった」「資金繰りで一部しか払えなかった」— そんなとき賞与はどう扱われるのか。事前確定届出給与の「定めのとおり」の意味と、ずれたときの結果、ずれを防ぐ実務を整理しました。
この記事の要点
事前確定届出給与は、役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭を交付する旨の定めに基づいて支給する給与です(法人税法34条1項2号)。通達では、支給時期・支給金額が事前に確定し、実際にもその定めのとおりに支給される給与に限られる、と示されています(法人税基本通達9-2-14)。
つまり「そのとおり」には、金額だけでなく日付も含まれます。届け出た支給日と違う日に払えば、金額が合っていても「所定の時期どおりの支給」といえるかが問題になり、原則として定めのとおりの支給には当たりません。
届け出た支給額と実際の支給額が違う場合、その給与は事前確定届出給与に当たらず、損金になりません。一部だけ払った場合も、払った分が損金になるのではなく、実際に支給した額の全額が損金不算入になります。支給を受けた役員個人の側では、通常どおり給与として所得税がかかります。
全く支給しなかった場合は、損金に計上する給与そのものがありません。届け出た額を未払いの賞与として計上する処理は税務上の危険が大きいため、支給しないと決めたなら決議と届出の手続きで整理します。
なお、振込が支給日に間に合わない、一部しか払えないという場面で、支給日までに支給の決議を済ませ、支給日に未払金として損金経理したうえで後日速やかに支払えば、届出どおりの支給として損金算入を保てる、という実務上の考え方もあります。ただし、国税庁は事前確定届出給与を、支給時期・支給金額が事前に確定し、実際にもその定めのとおりに支給される給与に限られると解しています(法人税基本通達9-2-14)。未払いのまま支払が長引けば、届出どおりの支給と認められず否認される危険が大きくなります。やむを得ずこの形をとるときは、支給日の前にご相談ください。また、届出どおりに支給した場合でも、職務の内容に照らして不相当に高額な部分は別に損金算入が制限されます(法人税法34条2項)。
一方で、事前確定届出給与に当たるかどうかは役員ごとに判定します。ある役員の支給が届出と違っても、届出どおりに支給した他の役員の賞与は損金に算入できます。
役員給与は、定時株主総会から次の定時株主総会までの職務の対価と考えられます。そのため支給が複数回あるときは、その職務執行期間をひとつの単位として「定めのとおりか」を判定します。
| 実際の支給 | 扱い |
|---|---|
| 12月も翌6月も届出どおり | 2回とも損金 |
| 12月は一部だけ、翌6月は満額 | 2回分の全額が損金不算入 |
| 12月は届出どおり、翌6月(翌事業年度)は一部だけ | 翌事業年度に支給した分だけ損金不算入。12月分は損金のまま |
3つ目のケースは、翌事業年度の支給が直前の事業年度の所得に影響しないことから認められる扱いです。ただし「事業年度をまたげば前の分は守られる」と安易に考えず、届出どおりの支給を前提に資金を用意しておくのが基本です。
賞与の支給時期を、使用人の盆暮れの賞与と同じ時期にし、毎期継続して同じ時期に支給しているなど、支給時期が一般的に合理的に定められていれば、職務執行期間の途中で支給する形でも損金算入できます。届出書には支給時期をその時期とした理由を書く欄があり、入金が集中する月に置くこと自体は問題ありません。
大切なのは、決めた日に確実に支給できる日を選ぶことです。売上の入金日の翌日を支給日にするなど、入金が遅れたら払えない日付は避けます。
経営状況が著しく悪化した場合や臨時改定事由がある場合は、期限内に変更の届出をする道もあります(法人税法施行令69条5項)。変更届出の期限は事由で異なります。臨時改定事由ならその事由が生じた日から1か月を経過する日、業績悪化改定事由による減額なら変更の決議をした日から1か月を経過する日です。ただし業績悪化の場合、決議の後に最初に来る届出済みの支給日がその1か月より前にあるときは、その支給日の前日が期限になります。ここでいう業績悪化改定事由は経営状況の著しい悪化を指し、一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標に達しなかったことは含まれません(法人税基本通達9-2-13)。要件は厳しく個別の判断が要るため、当てはまりそうな時点で早めにご相談ください。
届出どおりに支給できるかどうかは、支給額の大きさと支給日の置き方で決まります。あなたの会社の資金繰りで、決めた日に決めた額を確実に払えるでしょうか。まずは下のシミュレーションで、月給と賞与の配分による負担の違いを確かめたうえで、無理のない支給額と支給日を設計してみてください。実行の際は、届出の前にご相談いただくのが安心です。
※本記事は金銭で支給する一般的なケースの取り扱いです。支給の一部を辞退した場合の未払計上の扱いなど、個別の場面では結論が変わることがあります。
※合同会社の場合: 本文の「株主総会の決議」は株式会社の場合の手続きです。合同会社には株主総会がなく、業務に関する事項は社員(出資者)の決定で決めます(社員が2人以上なら原則その過半数・一人会社なら本人の決定 — 会社法590条)。役員報酬のような重要事項は定款の定めか総社員の同意で決め、定款の変更には原則として総社員の同意が必要です(同637条)。いずれの場合も、同意書・決定書の形で日付と内容を書面に残します。税務の届出などで「株主総会等の決議」が求められる場面では、合同会社ではこの決定・同意がこれに当たります(法人税法施行令69条3項)。
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