事前確定届出給与を届け出たものの、資金繰りが苦しくなり「今年は払えないかもしれない」という場面は起こり得ます。このとき取れる道は3つあり、選び方と手順を間違えると支給額の全額が損金不算入になります。整理してお伝えします。
事前確定届出給与を届け出たものの、資金繰りが苦しくなり「今年は払えないかもしれない」という場面は起こり得ます。このとき取れる道は3つあり、選び方と手順を間違えると支給額の全額が損金不算入になります。整理してお伝えします。
この記事の要点
事前確定届出給与は、届け出た日付・金額のとおりに支給することが前提の制度です。法人税基本通達9-2-14は、届出額と実際の支給額が異なる場合、原則としてその支給額の全額が損金不算入になるとしています。
「減った分だけ損金にならない」のではありません。100万円の届出に対して80万円だけ支給すると、その80万円全体が損金不算入です。中途半端な減額支給が、一番損の大きい選択になります。
では、払えそうにないときはどう動けばよいのでしょうか。道は3つあります。
賞与そのものを取りやめる道です。支給しなければ損金算入の問題は起きず、社会保険料もかかりません。
大事なのは手順です。支給日が来る前に、株主総会や取締役会(合同会社では総社員の同意や社員の決定)で不支給(役員側から見れば辞退)を決議し、議事録・決定書などの書面を残します。所得税基本通達28-10では、支給期が来る前に辞退の意思を明示して辞退した場合に限り、その給与に課税しないものとされています。支給日を過ぎてからの辞退では、源泉徴収の問題が残る可能性があります。
役員の地位や職務内容の大きな変更(臨時改定事由)や、経営の状況が著しく悪化した場合(業績悪化改定事由)には、届出の内容を変更する道があります(法人税法施行令69条5項)。
変更届出にも期限があります。業績悪化による減額なら、変更の決議をした日から1か月を経過する日まで。ただし、その前に変更前の支給日が来るときは、支給日の前日までです。
注意したいのは、「業績悪化」のハードルです。単に利益が前年より減った程度ではなく、経営が著しく悪化したといえる事情が求められます。使えるかどうかはケースごとの判断になるため、この道を考える段階でご相談いただくのが安全です。
資金繰りがつくなら、届出どおり支給するのが原則の道です。損金算入の要件を守れるだけでなく、翌年以降の設計も乱れません。
3つの道を並べると、こうなります。
| 道 | 損金の扱い | 押さえるべき期限 |
|---|---|---|
| 届出どおり支給 | 損金算入できる | 届出した支給日そのもの |
| 全額不支給(辞退) | 支給がないので問題が生じない | 支給日が来る前の決議・辞退 |
| 変更届出で減額 | 変更後の内容で損金算入できる | 事由ごとの変更届出期限 |
| 減額してそのまま支給 | 原則、支給額の全額が損金不算入 | - |
使えます。翌年の分は翌年の決議と届出であらためて設計します。ただし、毎年のように届出と違う結果になっていると、そもそも支給の見込みが立たない設計になっている可能性があります。金額の決め方から見直すのがおすすめです。
株主総会(取締役会設置会社では取締役会の場合もあります)で決議し、議事録を残します。合同会社では、総社員の同意や社員の決定を同意書・決定書の形で残します。役員本人の辞退届もあわせて残しておくと、支給日前に辞退の意思を明示した記録になります。
事前確定届出給与のつまずきは、支給日を過ぎてからでは打てる手がほとんどありません。まずは今年の支給日と資金繰りの見通しを並べてみてください。不安があるなら、不支給の決議か変更届出かを早めに選ぶことが大切です。判断に迷ったら、支給日が来る前にご相談ください。
※本記事は原則的な取り扱いの整理です。不支給・減額の可否や源泉徴収の扱いは事実関係によって結論が変わるため、個別の判断は必ず事前にご確認ください。
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