事前確定届出給与の賞与の手取りはいくらか — 賞与100万〜300万円で手元に残る実額と、支給日の振込額が違う理由(令和8年度)
「賞与を300万円と届け出たら、手元にはいくら残るのか」— 事前確定届出給与の額を決めるとき、最後に知りたいのはこの数字ではないでしょうか。月給30万円の社長が賞与100万〜300万円を上乗せしたときに1年で手元に残る実額を、弊所の試算で1行ずつ確かめます。
この記事の要点
- 月給30万円の社長が賞与100万円を上乗せすると、1年で手元に残るのは758,700円(額面の75.9%)。300万円なら2,338,950円(78.0%)で、賞与が大きいほど手取りの割合はむしろ上がる
- 賞与の手取りを減らすのは本人負担の社会保険料と、賞与で増える所得税・住民税。厚生年金の保険料は1か月あたり150万円の標準賞与額で頭打ちになり、超えた部分にかかる保険料は健康保険と支援金の分だけ
- 支給日に振り込まれる額は源泉所得税を仮に引いた額で、年末調整で精算される。住民税は賞与からは引かれず、翌年6月からの月給から天引きされる
まず結論 — 賞与100万〜300万円で、1年で手元に残る額
ここでいう賞与の手取りは、賞与の額面から、その賞与にかかる本人負担の社会保険料と、賞与を受け取ったことで増える所得税・住民税を引いた額です。月給30万円(年収360万円)の社長が年1回の賞与を事前確定届出給与として上乗せした場合を、弊所で試算しました。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 賞与の額 | 年収(月給30万円×12か月+賞与) | 増える社会保険料の本人負担(年額) | 増える所得税・住民税(年額) | 賞与の手取り(年額) | 手取りの割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 460万円 | 141,900円 | 99,400円 | 758,700円 | 75.9% |
| 150万円 | 510万円 | 212,850円 | 149,100円 | 1,138,050円 | 75.9% |
| 200万円 | 560万円 | 238,050円 | 221,100円 | 1,540,850円 | 77.0% |
| 250万円 | 610万円 | 263,250円 | 296,800円 | 1,939,950円 | 77.6% |
| 300万円 | 660万円 | 288,450円 | 372,600円 | 2,338,950円 | 78.0% |
表のとおり、手元に増えるのは賞与の額面の75.9〜78.0%です。大きい賞与ほど引かれる割合も上がりそうに思えますが、この帯では逆です。
割合は100万円と150万円が同じ75.9%で、賞与が大きくなるほど上がり、300万円では78.0%になります。理由は厚生年金の上限にあります。
賞与の厚生年金の保険料は1か月あたり150万円の標準賞与額までにしかかからず(厚生年金保険法24条の4)、それを超えた部分にかかるのは健康保険と子ども・子育て支援金の分だけです。一方の所得税は、弊所試算では賞与200万円から税率が5%の段から10%の段へ上がりますが、保険料が頭打ちになる効き目のほうが大きく、手取りの割合は上がります。
内訳 — 月給だけのときの手取りが土台になる
月給30万円だけのときの1年の手取りが土台です。弊所試算ではこうなりました。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 項目 | 金額(年額) |
|---|---|
| 額面(月30万円×12か月) | 3,600,000円 |
| 社会保険料の本人負担 | 510,840円 |
| 所得税(復興特別所得税を含む) | 45,300円 |
| 住民税(市区町村が決める税額の見込み) | 152,300円 |
| 手取り | 2,891,560円 |
賞与100万円を上乗せしたときの1年の手取りと、この2,891,560円との差が、最初の表の758,700円です。賞与の手取りを減らす3つを、同じ例で見ていきます。
- 社会保険料の本人負担 — 賞与の1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に、健康保険9.85%・子ども・子育て支援金0.23%・厚生年金18.3%(協会けんぽ東京・令和8年度)の半分ずつがかかります(健康保険法45条・厚生年金保険法24条の4)。弊所試算では賞与100万円で141,900円です。会社は本人負担分を賞与から天引きできます(健康保険法167条2項・厚生年金保険法84条2項)
- 所得税 — 賞与を含めた1年の給与で年税額が決まり、弊所試算では賞与100万円で33,600円増えます。支給日には別の計算で仮の額を天引きし、年末調整でその年の税額と精算します(所得税法190条)
- 住民税 — 前年の所得をもとに市区町村が決める税で、弊所試算では賞与100万円で65,800円増えます。賞与からは引かれず、翌年度に年税額の12分の1ずつ、6月から翌年5月まで月給から天引きされます(地方税法321条の5)
支給日に振り込まれる額は、表の手取りと同じではない
支給日に振り込まれるのは、賞与から本人負担の社会保険料と源泉所得税を引いた額です。この源泉所得税は年税額の前払いで、年末調整でその年の給与全体の税額と精算されます(所得税法190条)。表の手取りは精算が済んだあとの額なので、支給日の振込額とは一致しません。
原則
賞与の源泉所得税は、前月の給与(社会保険料控除後)と扶養親族等の数で決まる率を、賞与(社会保険料控除後)に掛けて求めます。
所得税法186条1項
ただし
賞与(社会保険料控除後)が前月の給与(社会保険料控除後)の10倍を超えるときは、賞与の6分の1と前月の給与の合計を月額表に当てはめ、前月の給与だけの税額との差を6倍します。
所得税法186条2項・所得税基本通達186-4
前月に給与の支払が無いときは、賞与(社会保険料控除後)の6分の1を月額表に当てはめた税額を6倍します。
所得税法186条1項
10倍を超えるときと前月に給与の支払が無いときの計算は、賞与の計算期間が6か月を超えるなら、6分の1・6倍ではなく12分の1・12倍で行います。
所得税法186条1項
月給30万円の例では、弊所試算では賞与が300万円のときだけ、賞与(社会保険料控除後)が前月の給与(社会保険料控除後)の10倍を超えて月額表の計算になります。年1回の賞与で計算期間が6か月を超えるなら、その計算は12分の1・12倍です。どの計算でも支給日の税額は仮の額で、年末調整を通れば、最終の税額は表の「増える所得税・住民税」のうち所得税の分に落ち着きます。
住民税は賞与の月には引かれませんが、翌年6月からの月給の天引きがその分だけ増えます。賞与の月の手取りが多く見えても、翌年の月給の手取りが減る分まで含めて見たのが、最初の表の「賞与の手取り」です。
届け出る前に見ておくこと — 損金の要件・将来の年金・毎月の生活費
手取りの計算は、届け出た額がそのまま損金になることが前提です。次の4つを先に確かめておきましょう。
将来の年金も見ておきます。老齢厚生年金の額は標準報酬月額と標準賞与額をもとに計算されるので(厚生年金保険法43条1項)、賞与で受け取った分も年金に反映されます。ただし標準賞与額は1か月あたり150万円で頭打ちなので(厚生年金保険法24条の4)、それを超えた部分は年金の計算にも入りません。
まとめ — 割合は上がるが、払える額を届け出る
賞与の手取りは額面の75.9〜78.0%で、割合は賞与が大きいほど上がりますが、届け出た額を支給日にそのまま払えることが前提です。
下のシミュレーションで月給と賞与の配分を動かし、保険料・税金・手取りを並べて確かめてみてください。届け出る額と支給月の資金繰りは、実行の前にご相談ください。
※本記事の金額は、社長おひとり・40歳未満(介護保険なし)・所得控除は給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除のみ・協会けんぽ東京の令和8年度料率・令和8年分の税制での概算です。住民税は市区町村が翌年に決める税額を先回りして示した見込み額で、支給日の源泉所得税は年末調整で精算されるため計算に入れていません。
出典
- 協会けんぽ 令和8年度保険料率のお知らせ
- 協会けんぽ 令和8年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
- 日本年金機構 賞与にかかる保険料の計算
- 日本年金機構 従業員に賞与を支給したときの手続き
- 国税庁 賞与に対する源泉徴収(No.2523)
- 国税庁 役員に対する給与(No.5211)
- 国税庁 定めどおりに支給されたかどうかの判定(事前確定届出給与)
- e-Gov法令検索 健康保険法45条(標準賞与額の決定)・167条(保険料の源泉控除)
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法24条の4(標準賞与額の決定)・43条(老齢厚生年金の額)・84条(保険料の源泉控除)
- e-Gov法令検索 所得税法183条(源泉徴収義務)・186条(賞与に係る徴収税額)・190条(年末調整)
- e-Gov法令検索 法人税法34条(役員給与の損金不算入)
- e-Gov法令検索 法人税法施行令70条(過大な役員給与の額)
- e-Gov法令検索 地方税法321条の5(給与所得に係る特別徴収税額の納入の義務等)
※合同会社の場合: 本文の「株主総会の決議」は株式会社の場合の手続きです。合同会社の業務は、社員が2人以上なら、定款に別段の定めがある場合を除き社員の過半数で決めます(会社法590条2項)。業務を執行する社員を定款で定め、その社員が2人以上あるときは、定款に別段の定めがある場合を除き業務執行社員の過半数で決めます(会社法591条1項)。定款を変更して報酬に関する定めを置く場合は、定款に別段の定めがある場合を除き総社員の同意が必要です(会社法637条)。いずれの場合も、同意書・決定書の形で日付と内容を書面に残します。税務の届出などで「株主総会等の決議」が求められる場面では、合同会社ではこの決定・同意がこれに当たります(法人税法施行令69条3項)。
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