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事前確定届出給与の社会保険料の計算方法 — 月給と賞与で物差しが変わる仕組みを、年収600万円の3通りの払い方で検算

事前確定届出給与で役員に賞与を払うと、社会保険料の計算は月給とは別の物差しになります。何がどう変わるのかを、同じ年収600万円を3通りに払い分けた弊所の実額試算で、1行ずつ確かめていきます。

この記事の要点

  • 月給の保険料は「標準報酬月額×料率」、賞与の保険料は「標準賞与額×料率」。賞与には健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1か月当たり150万円の上限がある
  • 同じ年収でも、月給だけで払う場合と月給を抑えて賞与480万円に寄せる場合とで、社会保険料(会社+本人)は年約61.6万円減る
  • 税金まで含めた差は下の表で確認する。厚生年金は月給と賞与の両方が計算の基礎になり、傷病手当金等は別の物差しで考える。届け出たとおりに払わないと、賞与が損金にならない

住民税は、市区町村が前年の所得から決める税額を先回りして示した見込み額です。 本記事の金額は、40歳未満・協会けんぽ東京・令和8年度料率(子ども・子育て支援金を含む)・給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除のみ・A案で報酬と会社負担保険料を引いた後の法人所得500万円の前提での概算です。前提が変わると金額も変わります。

前提 — 税務では「事前確定届出給与」、社会保険では「賞与」

事前確定届出給与とは、役員の職務について「所定の時期に確定した額を支給する」と定め、その定めを税務署へ届け出たうえで支給する給与です(法人税法34条1項2号)。役員報酬が利益の操作に使われないよう、支給の約束を先に固定させておくのが制度の趣旨です。

一方、社会保険の側から見ると、年3回以下の支給は「賞与」として扱われ、月給とは別の計算になります(年4回以上は報酬扱い。性質の違う決算賞与は定例の賞与とは別に数えます)。この二つの物差しの違いが、社会保険料が下がる仕組みの正体です。

計算の手順 — 月給は標準報酬月額、賞与は標準賞与額

月給の保険料は、報酬月額を等級表に当てはめた「標準報酬月額」に料率を掛けて出します(健康保険法40条・厚生年金保険法20条)。等級には上限があり、厚生年金は月額65万円で頭打ちです。

試算表の月給の保険料は等級表に丸めない概算です。実際の手続きでは、健康保険と厚生年金それぞれの等級表で標準報酬月額を決めます。端数処理や加入期間も確認するため、表の概算と実際の請求額は異なる場合があります。

賞与の保険料は、次の手順で出します。

賞与にかかる社会保険料の出し方

  1. 標準賞与額を出す

    支給額の1,000円未満を切り捨てる(健康保険法45条・厚生年金保険法24条の4)

  2. 上限で頭打ちにする

    健康保険は年度(4月〜翌年3月)の累計573万円まで、厚生年金は1か月当たり150万円まで。同じ月に2回以上支給した賞与は合算する

  3. 料率を掛ける

    健康保険9.85%+子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金18.3%(協会けんぽ東京・令和8年度・40歳未満。いずれも労使合計の率)

  4. 会社と本人で分ける

    健康保険・支援金・厚生年金は労使折半(支援金の本人負担は0.115%。本人負担分と会社負担分には端数処理によるずれが出る)。子ども・子育て拠出金0.36%は会社だけが負担

賞与の厚生年金には150万円の上限がありますが、月給を低くすれば、どの年収でも年間の保険料が下がるわけではありません。今回の3案では、賞与に寄せた案ほど社会保険料が下がります。月給だけの案と賞与を組み合わせる案を、同じ加入条件で比べます。

実額 — 年収600万円を3通りに払い分けると

同じ年収600万円を、月給だけで払うA案、月給と賞与を配分するB案・C案の3通りで払った場合を見てみましょう。内訳は表の見出しのとおりです。

※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。

年収600万円の払い方別の社会保険料(弊所試算・金額はすべて年額)
項目A案 月50万円×12B案 月30万円+賞与240万円C案 月10万円+賞与480万円
月給にかかる保険料(会社+本人)1,724,400円1,034,640円344,880円
賞与にかかる保険料(会社+本人)0円521,820円763,740円
社会保険料の合計1,724,400円1,556,460円1,108,620円
うち本人負担851,400円769,050円549,450円
うち会社負担873,000円787,410円559,170円

※社長おひとり・40歳未満・協会けんぽ東京、令和8年度料率・令和8年分税制。給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を反映し、住民税はその所得に対応する翌年度の見込み額です。年収600万円・B案は賞与年1回、C案は賞与年1回の年額比較です。表に示した税・保険料だけの比較で、法人税等を含む実質差とは区別します。

C案の賞与は480万円で、厚生年金の標準賞与額は上限の150万円で頭打ちとなります。

健康保険は年度累計の上限の範囲内で賞与全額を計算します。社会保険料の合計はA案より約61.6万円減る結果です。

B案の賞与は240万円で、厚生年金は上限の150万円で頭打ちです。月給30万円の部分にも月々の保険料がかかり、B案の社会保険料はC案より多い結果です。C案のように月給を極端に抑える配分は、下の注意点の影響が大きく、避けた方がよいとする見方もあります。

なお、産前産後・育児休業中に支給した賞与は要件を満たせば保険料が免除され、資格を失った月に払う賞与は保険料の対象になりません。

下がった分だけ、税金と将来の年金は動く

保険料が減ると社会保険料控除や会社の損金も変わりますが、もともとの課税所得や税率によって、税金の増減は異なります。A案との本人の所得税・住民税の差は、B案が約1.7万円増える、C案が約6.1万円増えるです。

法人税等の差はB案が約2.0万円増える、C案が約7.3万円増えるです。保険料の差から税負担の差を引いて実質の差を求めています。差し引きの実質は、次の表で確認します。

※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。

税金まで含めた実質の差(弊所試算・金額はすべて年額・A案との比較)
項目A案B案C案
社会保険料の合計(会社+本人)1,724,400円1,556,460円1,108,620円
本人の所得税・住民税462,600円479,300円523,700円
A案との法人税等の差(A案で報酬と会社負担保険料を引いた後の法人所得500万円の前提)0円19,700円72,500円
A案と比べた実質の差—131,540円482,180円

※社長おひとり・40歳未満・協会けんぽ東京、令和8年度料率・令和8年分税制。給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を反映し、住民税はその所得に対応する翌年度の見込み額です。年収600万円・B案は賞与年1回、C案は賞与年1回の年額比較です。A案で報酬と会社負担保険料を引いた後の法人所得500万円の法人税等の差を含む実質差です。

※住民税は、市区町村が前年の所得から決める税額を先回りして示した見込み額です。

届出どおりに払えなかったときの国税庁の考え方

国税庁は、複数回の支給を定めた場合、その職務執行期間の支給の全部が定めどおりかどうかで判定するとしています。先の支給を届出どおり払い、次の支給を減額した例では、原則としてその期間の支給全部が損金不算入で、翌事業年度の分だけが定めと違ったときはその分だけを損金不算入として差し支えない、という整理です。

また、ある役員だけ届出額と違う支給をしても、届出どおりに支給した他の役員の給与まで損金不算入になることはない、としています。届出の要件は役員ごとに見る、ということですね。

払い方を決める前に、資金と手続きを3段階で確かめる

  1. 決算期・利益見込み・生活費・月別資金繰り表を用意し、年収総額、月給、賞与額と支給日を候補ごとに書き出します。
  2. 同じ年収で税と保険料を比べ、賞与までの生活費不足、支給日の現預金、将来の年金・給付、借入への影響を別に確かめます。
  3. 支給額と日を守れる候補を残し、決議日・職務執行開始日・決算期から届出期限を確認します。資金繰り表と候補を用意し、決議・届出・支給・記録保存の予定を決めます。

まとめ — 「賞与の上限」が効く仕組みと、その裏側をセットで見る

事前確定届出給与の社会保険料は、賞与の標準賞与額の上限と、月給・賞与の配分で変わります。今回の3案では、賞与に寄せた案ほど社会保険料が下がります。税負担の差と、将来の年金・給付への影響は分けて確認します。あなたの年収と払い方では、実質の差はどのくらいでしょうか。

事前確定届出給与シミュレーションでは、年収と月給の組み合わせを変えて、社会保険料・税金・法人税等まで含めた実質の差を確かめられます。実行する場合は届出の期限や記載内容の確認が欠かせませんので、必ず事前にご相談ください。

※本記事の金額は、40歳未満・協会けんぽ東京・令和8年度料率(子ども・子育て支援金を含む)・所得控除は給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除のみ・A案で報酬と会社負担保険料を引いた後の法人所得500万円の前提での概算です。前提が変わると金額も変わります。

※合同会社の場合: 本文の「株主総会の決議」は株式会社の場合の手続きです。合同会社の業務は、社員が2人以上なら、定款に別段の定めがある場合を除き社員の過半数で決めます(会社法590条2項)。業務を執行する社員を定款で定め、その社員が2人以上あるときは、定款に別段の定めがある場合を除き業務執行社員の過半数で決めます(会社法591条1項)。定款を変更して報酬に関する定めを置く場合は、定款に別段の定めがある場合を除き総社員の同意が必要です(会社法637条)。いずれの場合も、同意書・決定書の形で日付と内容を書面に残します。税務の届出などで「株主総会等の決議」が求められる場面では、合同会社ではこの決定・同意がこれに当たります(法人税法施行令69条3項)。

この記事の内容は、あなたの数字でその場で試算できます。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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