持ち家の一部を仕事場にしている個人事業主の経費 — 建物の減価償却費・住宅ローンの利子・固定資産税を床面積で按分する方法と、事業に使う部分が1割を超えると住宅ローン控除が減る線
「持ち家だと家賃を払っていないから、仕事場の経費は何も無いのだろうか」— 自宅の一室で仕事をする個人事業主の方には、こうした思い込みが少なくないと見ています。家賃の代わりに按分できる主な4つの支出、建物の減価償却費の出し方、住宅ローン控除が減る線、売るときの注意を、条文と通達に沿って順に確かめていきましょう。
この記事の要点
- 持ち家の仕事場は、家賃の代わりに、建物の減価償却費・住宅ローンの利子・固定資産税・火災保険料のうち業務に使う部分(床面積の割合など)が必要経費になる。ローンの元本の返済と土地の代金は対象外(所得税法37条1項・45条1項1号・所得税法施行令96条1号)
- 住んでいた家を仕事場にした年は、取得価額から住んでいた期間の減価の額(耐用年数の1.5倍の年数で旧定額法に準じて計算)を引いた未償却残高を出し、その後は建物の耐用年数で定額法により償却して業務の割合を掛ける(所得税法施行令135条・85条・120条の2第1項)
- 住宅ローン控除は居住用の部分だけが対象。居住用の部分がおおむね90%以上なら全部を居住用として計算でき、それに満たないと居住用の床面積の割合の分だけ控除の計算に入る借入金が減り、床面積の2分の1以上が居住用でないと控除を受けられない(租税特別措置法施行令26条1項・7項1号・措置法通達(申告所得税関係)41-29)
まず結論 — 家賃の代わりに按分するのは4つ、元本と土地は対象外
自宅の一室を仕事場にしているとき、賃貸なら家賃の業務部分を必要経費にできます。ただし、生計を一にする配偶者その他の親族に払う家賃は、必要経費になりません。持ち家には家賃がありませんが、その代わりに建物にかかっている支出を按分します。仕事と生活の両方にかかわる支出(家事関連費)は、主たる部分が業務の遂行上必要で、必要な部分を明らかに区分できる場合に、その部分が必要経費になります(所得税法45条1項1号・所得税法施行令96条1号)。
| 支出 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 建物の減価償却費 | 業務に使う割合の分が必要経費 | 所得税法49条1項・所得税法施行令96条1号 |
| 住宅ローンの利子 | 仕事場にした後に払う利子のうち、業務に使う割合の分が必要経費 | 所得税法37条1項・所得税基本通達37-27 |
| 固定資産税 | 業務に使う部分が必要経費 | 所得税基本通達37-5 |
| 火災保険料・地震保険料 | 業務に使う割合の分が必要経費。地震保険料の居住用の分は地震保険料控除で引く | 所得税法施行令96条1号・所得税法77条1項 |
| 住宅ローンの元本の返済 | 返済額のうち経費にするのは利子の部分だけにし、元本の返済分は入れないようにしましょう | — |
| 土地の代金 | 土地は減価償却資産ではなく、減価償却費にならない | 所得税法施行令6条 |
割合の物差しには、仕事専用の部屋の床面積を建物全体の床面積で割った値を使うのが分かりやすいと考えています。区分の判定は、業務の内容・経費の内容・家族の構成・家屋の利用状況などを総合して行います(所得税基本通達45-1)。4つの支出に同じ割合を使い、毎年同じ物差しで通すことをお勧めします。物差しの選び方と残しておく書類は家事按分の記事にまとめています。
原則
自宅の建物にかかる減価償却費・利子・固定資産税・保険料は家事関連費で、原則として必要経費に算入しません。
所得税法45条1項1号
ただし
主たる部分が業務の遂行上必要で、必要な部分を明らかに区分できる場合は、その部分が必要経費になります(所得税法施行令96条1号)。業務に使う部分が50%以下でも、明らかに区分できればその部分を算入して差し支えありません。
所得税基本通達45-2
青色申告なら、取引の記録などに基づいて業務の遂行上直接必要だったことが明らかにされる部分も必要経費です。
所得税法施行令96条2号
建物の減価償却費の出し方 — 土地を外し、住んでいた期間の減りを引く
減価償却の対象は建物とその附属設備で、土地は含まれません(所得税法施行令6条)。まず、購入時の契約書で建物の代金を確かめてください。土地と建物の代金が分かれていない契約書のときは、建物の代金の出し方を、償却を始める前に決めておくと安心です。
住んでいた家を仕事場にした場合、取得価額をそのまま償却し始めるのではありません。仕事場にした日に売ったものとみなして計算した取得費に相当する額を、その日の償却後の価額(未償却残高)とします(所得税法施行令135条)。
住んでいた期間の減価の額は、建物の法定耐用年数を1.5倍した年数(1年未満は切捨て)で旧定額法に準じて計算した1年分の額に、住んでいた年数(6か月以上は1年、6か月未満は切捨て)を掛けて出します(所得税法施行令85条)。ただし、こうして計算した額には限度額があり、住んでいた期間が長いと減価の額はその限度額で止まります(所得税法施行令85条)。その後の償却は、平成19年4月1日以後に取得した建物なら定額法です(所得税法施行令120条の2第1項1号)。木造の住宅なら法定耐用年数は22年なので、順番に当てはめると次のようになります。
築18年の木造の自宅(建物の取得価額3,000万円・法定耐用年数22年)の15%を仕事場にした年の計算
住んでいた18年分の減価の額を出す
耐用年数22年の1.5倍の33年の旧定額法の償却率0.031を使い、(3,000万円−3,000万円×10%)×0.031×18年=1,506.6万円
仕事場にした日の未償却残高を出す
3,000万円−1,506.6万円=1,493.4万円。これが、この先償却できる残りの額
1年分の減価償却費を出す
取得価額3,000万円×0.046(耐用年数22年の定額法の償却率)=138万円。年の途中からなら月割
業務に使う割合を掛ける
138万円×15%=20.7万円が、その年の必要経費(所得税法施行令96条1号)
住宅ローン控除が減る線 — 居住用がおおむね9割以上なら全部を居住用にできる
住宅ローン控除の対象になる家屋は、床面積の2分の1以上が専ら自分の居住の用に供されるものに限られます(租税特別措置法施行令26条1項)。控除を受けられるのは、その年の合計所得金額が2,000万円以下の年です(租税特別措置法41条1項)。ただし、小規模な住宅(小規模居住用家屋)の特例で控除を受けるときは、1,000万円以下の年に限られます(租税特別措置法41条16項)。
家屋に居住用以外の部分があるときは、借入金の年末残高に、床面積のうち居住用の部分の床面積が占める割合を掛けた額で控除を計算します(租税特別措置法施行令26条7項1号)。居住用の部分の面積の出し方は通達に算式があり(措置法通達(申告所得税関係)41-27)、こうして計算した居住用の部分がおおむね90%以上なら、全部を居住用として控除を受けられます(措置法通達(申告所得税関係)41-29)。
算式では、居住用だけに使う部分の床面積に、廊下・玄関など居住用と仕事用に併用している部分の床面積を、居住用だけの部分と仕事専用の部分の比で分けた居住用の分を足します。
つまり、算式で出した居住用の部分が家屋の床面積のおおむね90%以上(仕事場がおおむね1割以内)なら、全部を居住用として扱えるので、控除の計算に入る残高は減りません(措置法通達(申告所得税関係)41-29)。それに満たないときは、残高が、居住用の部分の床面積の割合を掛けた額に減ります(租税特別措置法施行令26条7項1号)。控除の割合は床面積で決まり、必要経費にした金額の大小では決まりません(租税特別措置法施行令26条7項1号)。
| 業務に使う割合 | 控除の計算に入る借入金の残高 | 必要経費にできる割合 |
|---|---|---|
| 10%以内(居住用がおおむね90%以上) | 全部を居住用として3,000万円のまま | 減価償却費・利子・固定資産税・保険料の10%分 |
| 15% | 3,000万円×85%=2,550万円 | 同じく15%分 |
| 50%超 | 控除を受けられない(床面積の2分の1以上が専ら居住用でないため) | 同じく50%超の分 |
仕事場が半分を超えると、そもそも控除の対象になる家屋に当たりません(租税特別措置法施行令26条1項)。事業所得がある方は控除の2年目以後も確定申告で控除を受けるので、控除額の計算明細書で居住用の割合を使って計算します。
売るときの3,000万円控除と、申告でつまずく点
自宅を売ったときは、譲渡所得から3,000万円を引く特例があります(租税特別措置法35条1項)。この特例の対象は、居住用に使っていた部分に限られます。店舗や事務所を兼ねた家屋は、居住用の部分を通達の算式で判定します(措置法通達(山林所得・譲渡所得関係)31の3-7・35-6)。
居住用の部分がおおむね90%以上なら、全部を居住用として扱って差し支えないとされています(措置法通達(山林所得・譲渡所得関係)31の3-8)。ここでも、1割の線が同じように働きます。
仕事場の部分の売却益には特例が無く、取得費は必要経費にした償却費の累計を引いた額になります(所得税法38条2項1号)。仕事場の割合を大きくするほど、売るときの税金は増える方向に働くと考えておきましょう。
仕事場の割合は、経費の増え方と控除の減り方を並べてから決めることをお勧めします。ご自宅の仕事部屋は、床面積の何%でしょうか。持ち家の按分と減価償却を含めて確定申告をまとめて任せたい方は、確定申告のご依頼のページで進め方をご覧ください。準備の抜けを確かめたい方は個人事業主の決算・確定申告準備診断を、毎年の按分と償却を続けて見てほしい方は個人事業主の税務顧問のページをご覧ください。
出典
- e-Gov法令検索 所得税法37条(必要経費)・38条(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)・45条(家事関連費等の必要経費不算入等)・49条(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)・77条(地震保険料控除)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令6条(減価償却資産の範囲)・85条(非事業用資産の減価の額の計算)・96条(家事関連費)・120条の2(減価償却資産の償却の方法)・135条(非事業用資産を業務の用に供した場合の償却費の計算の特例)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法35条(居住用財産の譲渡所得の特別控除)・41条(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行令26条(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)
- 国税庁 措置法通達(申告所得税関係)41-27(店舗併用住宅等の居住部分の判定)・41-29(自己の居住の用に供される部分の床面積若しくは土地等の面積又は増改築等に要した費用の額)
- 国税庁 措置法通達(山林所得・譲渡所得関係)31の3-7(店舗兼住宅等の居住部分の判定)・31の3-8(店舗等部分の割合が低い家屋)
- 国税庁 措置法通達(山林所得・譲渡所得関係)35-6(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱いの準用)
- 国税庁 所得税基本通達37-5(固定資産税等の必要経費算入)
- 国税庁 所得税基本通達37-27(業務用資産の取得のために要した借入金の利子)
- 国税庁 所得税基本通達45-1(主たる部分等の判定等)・45-2(業務の遂行上必要な部分)
- 国税庁 質疑応答事例「非業務用資産を業務の用に供した場合」(木造住宅の取得価額3,000万円・耐用年数22年の計算例)
- 国税庁 質疑応答事例「店舗併用住宅を新築した場合」(住宅借入金等特別控除の対象になる借入金の計算)
- 国税庁タックスアンサー No.2109 新築家屋等を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却
- 国税庁タックスアンサー No.2215 固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合
- 国税庁タックスアンサー No.3452 店舗併用住宅を売ったときの特例
※本記事の計算例は国税庁の計算例の数字を借りて考え方を示したもので、実際の償却率と耐用年数は建物の構造と取得の時期で変わります。
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