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家族に給与を払って経費にする青色申告の専従者給与 — 届出の期限・金額の決め方・配偶者控除との比較、白色の専従者控除86万円

「妻に経理を手伝ってもらっているので、給料を払って経費にしたい」— そんな相談を、個人事業主の方から確定申告の前によく受けます。生計を一にする家族に払った給与は、原則として必要経費になりません(所得税法56条)。例外が青色申告の「青色事業専従者給与」と、白色申告の「事業専従者控除」です(所得税法57条1項・3項)。使えるかどうかは、届出の期限と「専ら従事」の条件で決まります。

この記事の要点

  • 青色申告なら、生計を一にする15歳以上の家族で事業に専ら従事する人に、届出の範囲内で払った労務の対価として相当な給与が必要経費になります(所得税法57条1項)
  • 届出書の期限は、経費にしたい年の3月15日です。その年の1月16日以後に開業したときは開業の日から、新しく専従者ができたときはその日から2か月以内に出します(所得税法57条2項・所得税法施行規則36条の4第3項)
  • 専従者給与を受けた配偶者は配偶者控除・配偶者特別控除の対象から外れます(所得税法2条1項33号・83条の2第1項)。白色申告は届出なしで、配偶者86万円・ほかの家族50万円を上限に控除できます(所得税法57条3項)

まず結論 — 青色の専従者給与・白色の専従者控除・配偶者控除の3択

家族の働きを税金に反映させる形は3つです。青色申告なら実際に払った給与を必要経費にし、白色申告なら決まった額を控除し、どちらも使わなければ配偶者控除などを受ける形です。3つは同時には使えません。

3つの形の比べ方
形事業主の側で引ける額条件家族の側
青色事業専従者給与届出の範囲内で実際に払った、労務の対価として相当な額(所得税法57条1項)青色申告・15歳以上・原則6か月超の専従・期限内の届出(所得税法57条1項・2項・所得税法施行令165条1項)給与所得になる。配偶者控除・扶養控除の対象から外れる(所得税法2条1項33号・34号)
白色の事業専従者控除配偶者86万円・ほかの家族50万円と、控除前の所得を専従者の数に1を足した数で割った額の低い方(所得税法57条3項)白色申告・15歳以上・6か月超の専従。届出は不要で申告書に記載(所得税法57条3項・5項・所得税法施行令165条1項)控除額が給与の収入とみなされる(所得税法57条4項)
給与を払わず配偶者控除38万円(本人の合計所得金額900万円以下の場合)(所得税法83条1項1号)配偶者の合計所得金額が62万円以下(所得税法2条1項33号)配偶者に給与の手続きなし

どれが得かは、事業の黒字の大きさと、配偶者がほかに収入を持っているかで変わります。給与を払えば事業主の所得が税率の高い部分から減りますが、配偶者控除は使えなくなり、配偶者の側に給与の源泉徴収と住民税の手続きが付きます。青色申告と白色申告の違い全体は、このサイトの青色申告と白色申告の違いの記事にまとめています。

届出の期限 — 3月15日か、開業・専従から2か月以内

では、届出はいつまでに出せばよいのでしょうか。青色事業専従者給与は、期限までに届出書を出した青色申告者が、届出書に書いた方法と金額の範囲内で払ったものだけが必要経費になります(所得税法57条1項・2項)。

原則

必要経費にしたい年の3月15日までに、専従者の氏名・職務の内容・給与の金額・支給期などを書いた届出書を、納税地の所轄税務署長に出します。

所得税法57条2項・所得税法施行規則36条の4第1項

ただし

その年の1月16日以後に新しく事業を始めたときは、始めた日から2か月以内です。

所得税法57条2項

その年の1月16日以後に新しく専従者ができたときは、専従者ができた日から2か月以内に届出書を出します。

所得税法施行規則36条の4第3項

届出に書いた給与の金額の基準を変えるときは、遅滞なく、変える内容と理由を書いた書類を出します。

所得税法施行令164条2項・所得税法施行規則36条の4第2項

金額の決め方 — 「相当な額」の物差しと、配偶者側の税金

専従者給与の額に法律の上限はありませんが、必要経費になるのは労務の対価として相当な額までです(所得税法57条1項)。相当かどうかは、従事した期間・労務の性質と提供の程度、ほかの使用人や同種同規模の事業の給与の状況、事業の種類・規模・収益の状況で見ます(所得税法施行令164条1項)。休業中など仕事をしていない期間に払った給与は、労務の対価としての性質がないので必要経費になりません。

受け取る配偶者の側では、専従者給与は給与所得になります(所得税法57条1項)。給与の収入が360万円以下なら給与所得控除は少なくとも69万円あり(所得税法28条3項1号)、その分だけ一家の所得は目減りします。事業主には給与の源泉徴収義務があり(所得税法183条1項)、年末調整も行います(所得税法190条)。給与を払い始めたら、給与支払事務所の開設の届出書を1か月以内に出します(所得税法230条)。

配偶者控除との比較 — どちらが得かの分かれ目

配偶者控除は、令和8年分では配偶者の合計所得金額が62万円以下のときに受けられ、本人の合計所得金額が900万円以下なら38万円です(所得税法2条1項33号・83条1項1号)。

専従者給与を払うと、額の大小にかかわらず配偶者は同一生計配偶者から外れ、配偶者控除も配偶者特別控除も使えません(所得税法2条1項33号・83条の2第1項)。つまり、専従者給与が配偶者控除の額を超えなければ、事業主の控除は増えません。

実際に払う額が年38万円を大きく超え、配偶者がほかに収入を持っていないときに、この形は効いてきます。一方で、源泉徴収・年末調整・給与支払報告書の手間が毎年付くので、額が小さいなら配偶者控除のままの方が楽です。家族への給与を払うと法人にしたときにどうなるかは、このサイトの専従者給与は法人化でどうなるの記事に書きました。

白色申告の専従者控除 — 届出なし・86万円が上限・申告書に書く

白色申告には届出の制度がなく、専従者がいれば決まった額を必要経費とみなします(所得税法57条3項)。みなす額は、配偶者なら86万円、ほかの家族なら1人50万円と、この控除をする前の所得を専従者の数に1を足した数で割った額のどちらか低い方です(所得税法57条3項)。配偶者1人なら、控除前の所得が172万円に満たないと上限まで引けず、所得の半分が控除額になります。

原則

事業専従者控除は、確定申告書にこの控除を受ける旨と控除額に関する事項を書いた場合に使えます。

所得税法57条5項

ただし

申告書を出さなかったこと・記載がなかったことにやむを得ない事情があると税務署長が認めるときは、記載がなくても控除を適用できることがあります。

所得税法57条6項

控除を受けた配偶者や家族は、控除額が給与の収入とみなされ(所得税法57条4項)、同一生計配偶者や扶養親族からは外れます。

所得税法2条1項33号・34号

ほかに源泉徴収される給与がある専従者は、みなし給与と合わせて確定申告が要ります。

所得税法57条4項・121条1項

家族に給与を払う形は、届出の期限を守り、仕事の中身と金額の根拠を残しておけば、毎年使える仕組みです。届出を出すかどうかは、その年の黒字の見込みと配偶者の収入を並べて、3月15日より前に決めてみてください。確定申告を頼むときの料金と進め方は、このサイトの確定申告のページにまとめています。

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