青色申告と白色申告の違い — 65万円控除・赤字の繰越・家族への給与で変わる税額
「青色と白色、どちらで申告すればいいのか」— 開業したばかりの個人事業主の方に向けて、2つの申告の違いを、税額に効く3つの点に絞って整理します。青色にするための手続きと期限、令和9年分から変わる点も添えます。
この記事の要点
- 違いは3つ。青色申告特別控除(最大65万円)・赤字の3年間の繰越・家族への給与を実額で経費にできること
- 65万円の控除は、所得税率10%の段の人なら所得税と住民税を合わせて年約13万円軽くなる。白色にこの控除は無い
- 青色にするには承認申請書を3月15日まで(開業した年は開業から2か月以内)に出す。令和9年分からは65万円が75万円になり、電子申告が条件になる
まず結論 — 違いは3つ。帳簿の手間と引き換えに税額が変わる
青色申告は、事業所得・不動産所得・山林所得のある方が、税務署長の承認を受けて青色の申告書で申告する制度です(所得税法143条)。帳簿を備え付けて記帳する手間と引き換えに、次の表の取扱いを受けられます。
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 特別控除 | 65万円・55万円・10万円のいずれか | 無し |
| 赤字(純損失)の繰越 | 翌年以後3年間繰り越せる。前年分の税の還付(繰戻し)も可 | 原則無し(変動所得と被災事業用資産の損失を除く) |
| 家族への給与 | 届け出た額の範囲で実額を必要経費にできる(青色事業専従者給与) | 配偶者86万円・その他の親族50万円が上限(事業専従者控除) |
| 帳簿 | 65万円・55万円は複式簿記。10万円は簡易な帳簿でよい | 簡易な記帳でよいが、記帳と帳簿の保存の義務はある |
| 手続き | 承認申請書を期限までに提出 | 不要 |
白色にすれば帳簿がいらない、というわけではありません。白色申告の方にも記帳と帳簿書類の保存は義務づけられていて(所得税法232条)、収支内訳書を申告書に添えます。帳簿を付ける手間は白色でも無くならないので、同じ手間なら青色を選ぶ方がほとんどです。
65万円控除で税額はいくら変わるか
青色申告特別控除は、所得から差し引く控除です。控除した分だけ課税所得が減るので、軽くなる税額は「控除額×その人の税率」で決まります。所得税は課税所得の段ごとに率が上がり(所得税法89条)、住民税の所得割は一律10%です(地方税法35条・314条の3)。
| 課税所得の段 | 所得税率 | 所得税・復興特別所得税(年額) | 住民税(年額) | 合計(年額) |
|---|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 約33,000円 | 65,000円 | 約98,000円 |
| 195万円超330万円以下 | 10% | 約66,000円 | 65,000円 | 約131,000円 |
| 330万円超695万円以下 | 20% | 約133,000円 | 65,000円 | 約198,000円 |
| 695万円超900万円以下 | 23% | 約153,000円 | 65,000円 | 約218,000円 |
ご自身の課税所得は、どの段に当たるでしょうか。
令和8年分の控除額は、複式簿記の帳簿で55万円、そのうえで仕訳帳・総勘定元帳の電子帳簿保存かe-Taxでの送信をした方が65万円です。どちらも、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添えて、確定申告期限までに提出することが要件です。期限を過ぎて申告した年分は、帳簿がそろっていても10万円になります。控除できるのは、その年の事業所得・不動産所得の黒字の合計が上限で、所得が控除額より小さい年はその所得の額までしか引けません。
原則
青色申告特別控除の大きい区分は、事業所得・不動産所得を生ずべき事業を営む方が、帳簿を備え付けて一切の取引の内容を詳細に記録している(複式簿記の)場合に受けられます。
租税特別措置法25条の2
ただし
令和9年分以後は、複式簿記で記帳した方が確定申告書の提出期限までにe-Taxで申告書と貸借対照表・損益計算書を送ることが65万円の要件になります。さらに、仕訳帳と総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件で電子保存した方は75万円になります。
租税特別措置法25条の2
現金主義による所得計算の特例を選んでいる方は、複式簿記で記帳していても55万円の控除は受けられません。令和9年分以後にe-Taxで送っても、65万円の区分は受けられません。
租税特別措置法25条の2
不動産所得の方は、大きい区分の控除を受けるには、不動産所得を生ずべき事業を営んでいること、つまり貸付けが事業といえる規模であることが要ります(租税特別措置法25条の2)。小さな規模の貸付けだけなら10万円の控除になります。ただし、小さな規模の貸付けと事業所得を併せ持つ方は、事業所得が赤字でも、不動産所得と事業所得の合計を上限に、複式簿記の区分の控除を受けられます。
赤字の繰越 — 青色なら3年、白色は原則できない
開業した年や設備投資の年は赤字になることがあります。青色申告なら、その年の純損失を翌年以後3年間の所得から差し引けます(所得税法70条1項)。前年も青色で申告していれば、前年分の所得税の還付を受ける繰戻しも選べます(所得税法140条)。
白色申告の方は、赤字を翌年に繰り越せないのが原則です。例外は、変動所得の損失と災害などによる被災事業用資産の損失で、この2つは白色でも繰り越せます(所得税法70条2項)。
家族への給与 — 青色は実額、白色は上限つきの控除
配偶者や親族に仕事を手伝ってもらっている方は、ここの差が大きく出ます。なお、不動産所得の方は、青色事業専従者給与も事業専従者控除も、貸付けが事業として行われている場合に限って使えます。
青色申告では、生計を一にする15歳以上の家族が事業に専ら従事しているとき、届け出た金額の範囲で、労務の対価として相当な額を必要経費にできます(所得税法57条1項)。届出書は、その年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した方は開業から2か月以内)に出します(所得税法57条2項)。新たに専従者ができたときも、その日から2か月以内が期限です。
白色申告では、実際に払った額ではなく、配偶者は86万円、その他の親族は50万円を上限とする事業専従者控除になります。上限は「専従者控除前の事業所得を専従者の数に1を足した数で割った額」との低い方です(所得税法57条3項)。
原則
家族への給与を経費(控除)にした年は、その家族は同一生計配偶者や扶養親族から除かれ、配偶者控除や扶養控除の対象にはできません。
所得税法2条1項33号・34号
ただし
「専ら従事」しているかは、その年を通じて6か月を超えて従事したかで判定し、白色の事業専従者はこの基準だけで見ます。青色事業専従者に限り、年の途中の開業・廃業・休業などの理由があるときは、従事できる期間の2分の1を超えて従事していれば足ります。
所得税法施行令165条1項
学生である期間や他に職業を持っている期間は、専ら従事することの妨げにならないと認められる場合を除き、6か月や2分の1の判定で専ら従事した期間に含めません。
所得税法施行令165条2項
青色にする手順と期限 — 令和8年分に間に合ったか、令和9年分からか
青色申告を始める3段階
承認申請書を出す
青色にしたい年の3月15日まで。その年の1月16日以後に開業した方は開業から2か月以内(所得税法144条)
帳簿を整える
65万円・55万円は複式簿記。会計ソフトで銀行やカードの明細を取り込めば、仕訳帳と総勘定元帳は自動で作られる
期限内に申告する
貸借対照表と損益計算書を添え、e-Taxで送れば65万円。紙で出すと55万円
令和8年分(2027年3月に申告する分)を青色にするには、2026年3月16日(3月15日が日曜のため翌日・国税通則法10条2項)までに承認申請書を出している必要がありました。まだ出していない方は、令和9年分からが青色の始まりになります。
まとめ — 帳簿を付けるなら青色。申請の期限だけは逃さない
青色と白色の税額の差で大きいのは、65万円の控除・赤字の繰越・家族への給与の3つです。帳簿の手間は白色でも無くならないので、事業を続ける方には青色をお勧めします。
申告の方法を決めたら、次は帳簿と資料の準備です。何が残っているかを確かめるには、弊所の個人事業主の決算・確定申告準備診断ツールをお勧めします。開業届と一緒に出す承認申請書も、この機会に確かめてみてください。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2070 青色申告制度
- 国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除
- 国税庁 タックスアンサー No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
- 国税庁 タックスアンサー No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
- 国税庁 質疑応答事例 年の中途で事業に従事した親族に係る青色事業専従者給与
- 国税庁 質疑応答事例 白色事業専従者が他に給与所得を有する場合
- 国税庁 質疑応答事例 青色事業専従者である妻
- 国税庁 質疑応答事例 業務的規模の不動産所得と赤字の事業所得がある場合の青色申告特別控除
- e-Gov法令検索 所得税法2条(定義)・57条(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)・70条(純損失の繰越控除)・89条(税率)・140条(純損失の繰戻しによる還付の請求)・143条(青色申告)・144条(青色申告の承認の申請)・232条(事業所得等を有する者の帳簿書類の備付け等)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令165条(親族が事業に専ら従事するかどうかの判定)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法25条の2(青色申告特別控除)
- e-Gov法令検索 地方税法35条・314条の3(所得割の税率)
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱 個人所得課税(青色申告特別控除の見直し)
※本記事は令和8年4月1日現在の法令等によります。65万円の控除で軽くなる税額の表は、控除額に所得税の税率(復興特別所得税を上乗せ)と住民税の所得割の率を掛けた概算です。
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