国民健康保険の脱退はいつまでに — 会社を作って協会けんぽに入った月の保険料の月割り・手続き・二重払いの還付
「会社を作って協会けんぽに入ったが、国民健康保険はいつ、どうやってやめるのか」— 個人事業主から法人の社長になった方に向けた記事です。国民健康保険の資格が無くなる日、脱退の届出の期限と方法、保険料の月割りの決まり、届出が遅れたときの二重払いの戻し方を整理します。
この記事の要点
- 会社の健康保険の被保険者になると、国民健康保険の被保険者ではなくなる(国民健康保険法6条1号)。資格が無くなる日は会社の保険の資格を取った日の翌日で、令和10年4月1日以後は当日。ただし届出は自動ではなく、世帯主が市区町村へ出す。江東区は原則14日以内
- 保険料は月割りで、会社の保険に入った月の前月分までかかる。その月からは会社の健康保険料が給与から引かれる
- 届出が遅れても資格を失う日は変わらないが、届出まで国保料の請求が続く。二重に払った分は届出後に戻る。遡って減額できる期間には限りがある
まず結論 — 資格は自動で無くなる。届出は自分でする
法人の事業所は、常時従業員を使用していれば健康保険と厚生年金保険の適用事業所になります(健康保険法3条3項2号・厚生年金保険法6条1項2号)。法人から労務の対償として報酬を受けている社長も、法人に使用される者として被保険者になります(昭和24年7月28日保発第74号)。日本年金機構も、事業主のみの場合を含めて法人の事業所を新規適用届の対象として案内しているので、社長1人の会社でも役員報酬を払い始めたら加入の手続きをします。
社長は会社に使用されるに至った日から健康保険の被保険者になり(健康保険法35条)、国民健康保険の被保険者ではなくなります(国民健康保険法6条1号)。国民健康保険の資格が無くなる日はその翌日で、令和10年4月1日以後は改正で当日になります。
| 段階 | 日付・期限 | 根拠・出所 |
|---|---|---|
| 会社の健康保険の資格を取る | 会社に使用されるに至った日 | 健康保険法35条 |
| 会社が年金事務所へ届け出る | 事実の発生から5日以内(新規適用届・被保険者資格取得届) | 日本年金機構 |
| 国民健康保険の資格を失う | 会社の健康保険の資格を取った日の翌日(令和10年4月1日以後は当日) | 法律の定め(下の「資格の日付」の節) |
| 世帯主が市区町村へ届け出る | 原則14日以内(江東区)。窓口・マイナポータル・郵送 | 国民健康保険法9条・江東区 |
| 保険料の精算 | 会社の保険に入った月の前月分まで。変更の通知は、資格の喪失などの異動があった翌月の15日ごろ | 江東区 |
資格を失う日は届出の日ではなく、会社の健康保険の資格を取った日を基準に法律で決まります。届出が遅れても、この日は動きません。ご自身の場合、会社の保険の資格を取った日はいつになるでしょうか。
資格の日付 — 「使用されるに至った日」の翌日に国保の資格が無くなる
原則
会社の健康保険の被保険者になった人は、国民健康保険の被保険者にはなりません。
国民健康保険法6条1号
ただし
資格を失っても、世帯主は市区町村に届出をしなければなりません。届出は自動ではなく、会社の手続きとは別に自分で行います。
国民健康保険法9条
会社の健康保険の被扶養者になった配偶者や子も同じ扱いで、国民健康保険の被保険者ではなくなります。被扶養者になれない家族(収入の要件を超える配偶者など)は、国民健康保険に残ります。
国民健康保険法6条
会社から労務の対償として報酬を受ける家族の役員は、本人が会社の健康保険の被保険者になり、国民健康保険の被保険者ではなくなります。
昭和24年7月28日保発第74号・国民健康保険法6条1号
役員会に出るだけで役員への連絡調整や職員の指揮監督をしない役員や、出席ごとの報酬・実費しか受けない役員は、基本的に被保険者になりません(保保発0318第1号・年管管発0318第1号)。家族を役員にするときは、会社での仕事の中身と報酬の払い方も確かめておきましょう。
国民健康保険の資格を失う日は、今は会社の健康保険の被保険者になった日の翌日です。令和10年4月1日以後は、改正でその日の当日に変わります。
会社の側の手続きは、事実の発生から5日以内の新規適用届と被保険者資格取得届です。この届出が年金事務所で処理されると、会社に資格取得の決定通知が届き、あとから資格情報のお知らせ(または資格確認書)が交付されます。
保険料の月割り — 会社の保険に入った月の前月分まで
国民健康保険料は年度(4月から翌年3月)の額を月割りで計算し、月の末日に資格がある月の分がかかります。江東区の案内では、会社の保険に入った日の前月分まで国民健康保険料がかかり、入った月からは会社の健康保険料に切り替わります。
※この表の試算年度: 保険料は令和8年度の計算前提(所得税の試算ではありません)。
| 前年の所得(年額) | 40歳未満(年額) | 40〜64歳(年額) |
|---|---|---|
| 300万円 | 約33.9万円 | 約41.9万円 |
| 500万円 | 約55.1万円 | 約67.9万円 |
年額の12分の1が1か月分の目安です。所得500万円・40歳未満の方なら、脱退の届出が3か月遅れて請求が続くと、約13.8万円をいったん納めてから戻してもらう形になります。
届出の手続き — 14日以内に、窓口・マイナポータル・郵送のどれかで
国民健康保険の脱退(江東区の場合)
会社の手続きを終える
年金事務所へ新規適用届と被保険者資格取得届を出し、資格取得の決定通知を受け取る
書類をそろえる
新しい保険の資格情報のお知らせ・資格確認書など(脱退する方全員分)、これまで使っていた資格確認書か資格情報のお知らせ、本人確認書類、マイナンバーの分かるもの
届け出る
区役所の窓口か出張所、マイナポータルの電子申請、郵送のいずれかで。原則14日以内
通知と精算
資格の喪失などの異動があった翌月の15日ごろに保険料の変更通知が届く。納め過ぎた分は還付され、未納の分は納付書で納める
届出をしないままにすると、資格が無くなったあとも保険料の請求が続きます。請求が続いても資格は無いので、古い保険証や資格確認書は使わないでください。
届出が遅れたとき — 二重払いは戻るが、遡れる期間に限りがある
届出が遅れて納め過ぎた国民健康保険料は、届出のあとに減額されて戻ります。ただし、遡って減額できる期間には限りがあります。国税庁の文書回答事例では、市区町村が国民健康保険料の減額の決定をできるのは、その年度の最初の保険料の納期の翌日から2年を経過した日より前に限られる、と整理されています(国民健康保険法110条の2)。
原則
国民健康保険料を徴収し、または還付を受ける権利は、2年で時効により消滅します(国民健康保険法110条)。保険料を減らす賦課決定も、その年度の最初の納期の翌日から2年を過ぎるとできません。
国民健康保険法110条の2第1項
ただし
被保険者の責めに帰することのできない事由で、健康保険との適用関係の調整が要ると分かった場合は、2年を過ぎても、調整に必要と認められる期間まで保険料を減らす賦課決定ができます。
国民健康保険法110条の2第2項
保険料の徴収の告知や督促があると時効は更新され、そこから改めて2年を数えます。
国民健康保険法110条2項
会社の健康保険料を徴収する権利の時効も2年で、徴収できる時から2年を過ぎた分は消えますが、納入の告知や督促があれば時効は更新されます。
健康保険法193条1項・2項
被保険者に責めがないのに二重払いが残った場合に、自治体が寄附として保険料相当分を返還したときは、見舞金に類するものとして非課税で差し支えないとする国税庁の文書回答(平成31年1月25日)があります。戻ってきたお金を所得に入れる必要はありません。
まとめ — 会社の手続きが済んだら、その足で区役所へ
会社の健康保険に入ると国民健康保険の資格は法律で決まった日に無くなりますが、届出は自分で14日以内に行い、保険料は会社の保険に入った月の前月分までです。届出が遅れても資格を失う日は変わりませんが、請求が続き、戻せる期間にも限りがあります。年金事務所の手続きが終わったら、その足で区役所の窓口かマイナポータルで届け出てみてください。
法人化した年は、国民健康保険から協会けんぽへの切り替えのほかに、国民年金から厚生年金への切り替え、住民税の納め方の変更も重なります。弊所では、法人化した年の1年分の手続きを暦にして一緒に確かめています。
出典
- 江東区 職場の健康保険に加入したとき(国民健康保険から社会保険等へ切替)
- 江東区 国民健康保険料が変更になるとき
- 江東区 国民健康保険料の計算方法(令和8年度)
- 東京都保健医療局 国民健康保険の加入・喪失手続
- 日本年金機構 新規適用の手続き
- 国税庁 文書回答事例(別紙) 健康保険料と国民健康保険料の二重払いについて地方公共団体が被保険者に保険料相当分を返還した場合の課税関係について
- e-Gov法令検索 国民健康保険法6条(適用除外)・8条(資格喪失の時期)・9条(届出等)・76条(保険料)・110条(時効)・110条の2(賦課決定の期間制限)
- e-Gov法令検索 健康保険法3条(定義)・35条(資格取得の時期)・193条(時効)
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法6条(適用事業所)
- 厚生労働省 法人の代表者又は業務執行者の被保険者資格について(昭和24年7月28日保発第74号)
※本記事の保険料は、江東区の令和8年度の料率で、単身・前年の所得のみを前提にした弊所の概算です。届出の方法と必要な書類は、お住まいの市区町村の案内で確かめてください。
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