個人事業主の税理士費用はいくらか — 確定申告だけ頼む場合と記帳込みの顧問の相場、売上規模で変わる理由、料金が上がる条件
「税理士に頼むと、いくらかかるのか」— 個人事業主の方から最初に聞かれる問いです。公開されている料金の目安を整理し、売上の規模で金額が変わる理由と、見積もりを取るときに確かめておきたい点をまとめました。
この記事の要点
- 税理士の料金に公的な定価はなく、事務所ごとに決めている。このサイトが調べた公開情報の中心は、確定申告だけなら売上500万円未満で年5万〜10万円、記帳込みで年間を任せると売上1,000万円未満で年20万〜35万円と見ています
- 金額を動かすのは、売上とともに増える取引(仕訳)の数、消費税の申告の有無、記帳をどちらが行うか、所得の種類の数で、同じ「月2万円」でも年間の合計は大きく違うと見ています
- 比べるときは、月額に12を掛け、確定申告料・消費税の申告料・年末調整などの別料金を足した年間の合計で見ることをお勧めします。頼む範囲と仕訳の数を先に伝えると、見積もりの精度が上がると考えています
まず結論 — 定価はなく、「申告だけ」と「記帳込みの年間」で桁が違う
このサイトが調べた範囲では、税理士の報酬の額を定めた法令は見当たりません。税理士の業務は税務代理・税務書類の作成・税務相談で(税理士法2条1項)、記帳の代行や決算書の作成はそれに付随する業務として行えます(税理士法2条2項)。どこまで頼むかで仕事の量が変わるので、料金も「申告書を作るだけ」と「日々の記帳から年間を通して見る」とで大きく違うと考えています。
数字の出どころは、会計事務所と税理士法人が2026年に公開している相場の解説3本です。事務所によって幅があるので、ご自身の見積もりを読むための物差しとして使ってください。弊所の実額はこのサイトの税理士費用の専門ページに、確定申告だけのご依頼の料金は確定申告のご依頼のページに載せています。
売上の規模で変わる理由 — 売上とともに増える「仕訳の数」と「申告の種類」
では、何が金額を動かすのでしょうか。公開されている料金表が売上の規模で段を分けているのは、売上が増えるほど取引の件数が増え、記帳と確認の手間や、消費税・決算で確かめる点も増えるからと考えています。同じ売上でも、月に10件の振込で完結する仕事と、毎日の現金売上とカード決済が混ざる仕事とでは、作業の量がまるで違います。
もう1つの段差が消費税です。消費税の申告が加わると、年5万〜10万円ほどの申告料が別にかかる事務所が多いと見ています。
原則
基準期間(個人事業主は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると、その基準期間の翌々年から課税事業者になり、所得税の確定申告とは別に消費税の申告書を出します。
消費税法基本通達1-4-1・消費税法45条1項
ただし
インボイスの登録をしている方は、売上の額にかかわらず登録日から課税事業者です。
消費税法基本通達1-4-1の2
前々年が1,000万円以下でも、前年1月1日から6月30日まで(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えると、その特定期間の翌年から課税事業者になります。
消費税法9条の2
開業したばかりで基準期間の売上が無い年でも、課税事業者を選んだ場合や、特定期間の売上・相続・高額特定資産の取得による特例に当たる場合は、納税義務が免除されません。
消費税法基本通達1-4-6
課税事業者になった年でも、国内の課税売上げなどが無く、納める消費税額も無いときは、消費税の申告書を出す必要はありません。
消費税法45条1項
特定期間の判定は、国外事業者でなければ、課税売上高の代わりに同じ期間に支払った給与等の額で行うこともできます(消費税法9条の2第3項)。どちらで判定するかは事業者が選べるので、特定期間の売上が1,000万円を超えても、給与等の支払額が1,000万円以下なら、この判定では課税事業者になりません(消費税法9条の2)。個人事業主が前年の1月から6月に1,000万円を超える給与を払うことは多くないので、申告料が加わる時期を決めるのは、多くの場合は前々年の売上とインボイスの登録と見ています。
| 条件 | 何が増えるか |
|---|---|
| 基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超える | 翌々年分から消費税の申告書を確定申告とは別に出す(消費税法45条1項・消費税法基本通達1-4-1)。インボイスの登録をしていれば登録日から |
| 取引(仕訳)の数が多い | 記帳と確認の件数がそのまま増える。現金の売上やカード決済の多い業種は高くなりやすいと見ています |
| 記帳を税理士に任せる | 領収書・通帳の記録から帳簿を作る作業が加わる。帳簿の備付けと記録は本人の義務で、任せても義務の主体は変わらない(所得税法148条1項・232条1項) |
| 所得の種類が複数ある | 不動産所得や副業の雑所得の計算が加わり、料金が上がりやすいと見ています |
| 従業員や家族に給与を払っている | 源泉徴収・年末調整・法定調書の事務が加わる(所得税法190条) |
| 申告期限の直前に頼む | 2〜3月は申告の繁忙期で、受け付けない・割増になる事務所があると見ています |
表の条件のうち、消費税と給与の2つは「仕事が増える」というより「別の申告・手続きが1つ増える」ものなので、料金表でも別の行になっていることが多いと見ています。見積もりでは、この2つが含まれているかを最初に確かめます。
確定申告だけ頼む場合 — 何を渡し、何を自分でするか
確定申告だけを頼む形では、日々の記帳はご自身で行い、会計ソフトのデータと控除の証明書を渡して申告書を作ってもらう形が多いと見ています。帳簿を備え付けて取引を記録する義務は、青色申告なら所得税法148条、白色申告でも232条で、納税者本人にあります(所得税法148条1項・232条1項)。申告書も、本人が税務署長に提出するものです(所得税法120条1項)。
記帳が済んでいない状態で領収書の束を渡すなら、記帳の作業が加わるので「申告だけ」の料金には収まらないと考えておきましょう。公開情報でも、未整理の資料には整理の料金が上乗せされる例が示されています。申告の期限は翌年3月15日なので(所得税法120条1項)、2〜3月に持ち込むと受け付けない事務所もあり、年内のうちに相談しておくと選べる事務所が広がると考えています。
記帳込みで年間を任せる場合 — 月額と確定申告料を足して比べる
月額の顧問料に、記帳の代行・月々の質問への返事・申告書の作成のどこまでが含まれるかは事務所で違うので、最初に確かめてください。公開情報では、個人事業主の月額は1万〜3万円、確定申告料は月額の4〜6か月分が目安と見ています。月額だけで比べず、12か月分に確定申告料と消費税の申告料を足した年間の合計で並べることをお勧めします。
見積もりを取るときの順番
頼む範囲を決める
申告書の作成だけか、記帳も含めて年間を任せるか。消費税の申告と年末調整が要るかも書き出す
仕訳の数と売上を伝える
月の仕訳の数、通帳とカードの数、現金売上の有無、所得の種類(事業・不動産・副業)
含まれるものと別料金を聞く
確定申告料・消費税の申告料・年末調整・記帳代行・質問への返事の範囲・解約の条件
年間の合計で並べる
月額に12を掛け、別料金を足す。税込か税抜かをそろえてから比べる
月々の連絡をチャットやメールで済ませ、面談を画面共有で行う事務所は、訪問型より月額が低いことが多いと見ています。頼み方の違いは、このサイトのオンラインの税理士の進め方の記事で整理しています。クラウド会計を使うときの料金の見方は、このサイトのクラウド会計と税理士の費用の記事に書きました。
頼む・頼まないの分かれ目 — 浮く金額と、自分で持つもの
申告書は本人が税務署長に提出するもので(所得税法120条1項)、税理士に頼むことは義務ではありません。国税庁の確定申告書等作成コーナーで自分で作って出すこともできます。頼まずに浮くのは上の目安の金額そのものですが、記帳と申告にかける時間と、誤りがあったときの責任をご自身で持つことになる点も合わせて考えてください。
税理士費用が見合うかは、青色申告の特典を取りこぼしていないか、経費の計上漏れがないか、消費税の計算方式の選び方で考えるのが現実的と考えています。売上がいくらになったら頼むべきか、という一律の線は無いと考えています。頼む時期の目安は、このサイトの税理士はいつから必要かの記事に書きました。
個人事業主の方の顧問として弊所が行うことと料金は、このサイトの個人事業主の税務顧問のページにまとめています。見積もりを比べるときの物差しとして、この記事の目安と手順を使ってみてください。
※相場の数字は、会計事務所・税理士法人が2026年に公開している目安をこのサイトが読み取ったもので、全国の平均でも弊所の料金でもありません。税込か税抜かは各社の表示のままです。
出典
- e-Gov法令検索 税理士法2条(税理士の業務)・52条(税理士業務の制限)
- e-Gov法令検索 所得税法120条(確定所得申告)・148条(青色申告者の帳簿書類)・190条(年末調整)・204条(源泉徴収義務)・232条(事業所得等を有する者の帳簿書類の備付け等)
- e-Gov法令検索 消費税法45条(課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告)
- 国税庁 消費税法基本通達1-4-1(納税義務が免除される課税期間)・1-4-1の2(適格請求書発行事業者の納税義務)
- 国税庁タックスアンサー No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
- 国税庁タックスアンサー No.2070 青色申告制度
- 国税庁タックスアンサー No.2020 確定申告
- 国税庁タックスアンサー No.2110 事業主がしなければならない源泉徴収
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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。