パソコン・車・設備を買った年の確定申告 — 一括で経費にできる線 (10万円・20万円・青色の特例は30万円から40万円へ) と減価償却の計算、中古の耐用年数
「仕事用のパソコンを買い替えたけれど、今年の申告でどう扱えばいいのだろう」— そんな迷いの声は少なくありません。答えは買った物の値段で分かれます。取得価額が10万円未満のもの(使える期間が1年未満のものも同じ)は使い始めた年の必要経費になり(所得税法施行令138条1項)、それ以上は原則として減価償却で何年かに分けて落とします(所得税法49条1項)。ただし、20万円未満の一括償却と、青色申告の少額減価償却資産の特例という2つの近道があります。
この記事の要点
- 取得価額10万円未満は買った年の全額が必要経費になり(所得税法施行令138条1項)、20万円未満は3年で3分の1ずつ落とす一括償却資産を選べます(所得税法施行令139条1項)。青色・白色は問いません
- 青色申告の個人事業主は、令和8年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を、年300万円まで使い始めた年の全額経費にできます(租税特別措置法28条の2第1項)。令和8年3月31日までの取得は30万円未満が線です
- それ以上は定額法で耐用年数に分けて落とし、使い始めた年は月割です(所得税法施行令125条・132条1項)。中古は見積もった年数か簡便法の年数で償却できます(減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項)
まず結論 — 取得価額で4つに分かれる
| 取得価額 | 落とし方 | 使える人・条件 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 使い始めた年に全額を必要経費 | 青色・白色とも。使える期間が1年未満のものは10万円以上でも同じ。貸付け用の資産は除く | 所得税法施行令138条1項 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年で3分の1ずつ(月割なし) | 青色・白色とも。申告書に明細を添付 | 所得税法施行令139条1項・2項 |
| 10万円以上40万円未満(令和8年3月31日までの取得は30万円未満) | 使い始めた年に全額を必要経費。年300万円まで | 青色申告で常時使用する従業員が400人以下。明細書を添付 | 租税特別措置法28条の2第1項・3項・租税特別措置法施行令18条の5第1項 |
| 上のどれも使わない・使えない | 定額法で耐用年数に分けて必要経費。使い始めた年は月割 | 届出をしなければ定額法 | 所得税法施行令120条の2第1項・125条・132条1項 |
値段の判定は、通常1単位として取引される単位で行います。応接セットのようにテーブルと椅子を1組で取引するものは1組で、1枚では機能しないカーテンは部屋ごとの合計で見ます。消費税を含めて見るかどうかは経理の方式で決まり、税込経理なら税込の額、税抜経理なら税抜の額で判定します。免税事業者の経理方式は税込経理なので、税込の額で見ます。
20万円未満の一括償却 — 3年で3分の1ずつ、月割はない
では、2つの近道はどう違うのでしょうか。1つ目の一括償却資産は、取得価額10万円以上20万円未満の資産を一括して、使い始めた年から3年間、合計額の3分の1ずつを必要経費にする方法です(所得税法施行令139条1項)。青色・白色を問わず使えます。使い始めた月に関係なく3分の1なので、年末に買った資産ほど定額法との差が大きくなります。
原則
一括償却資産は、使い始めた年以後3年間の各年に、取得価額の合計額の3分の1ずつを必要経費に入れます。
所得税法施行令139条1項
ただし
使い始めた年分の確定申告書に、一括償却対象額を記載した書類を添付し、計算に関する書類を保存している場合に限られます。
所得税法施行令139条2項
貸付け(主要な業務として行うものを除く)の用に供した資産は、10万円未満の全額経費も一括償却も使えません。
所得税法施行令138条1項・139条1項
一括償却資産にした資産は、途中で売ったり捨てたりしても、残りの額をその年に一度に必要経費にすることはできず、3年の均等償却を続けます。ただし、法人成りなどで事業をやめ、その事業を引き継ぐ人もいないときは、まだ必要経費にしていない残りの額を、廃業した年分の必要経費に入れます。買い替えの早いパソコンで一括償却を選ぶときは、この点も頭に入れておきましょう。
青色申告の特例 — 30万円未満の線が、令和8年4月1日以後の取得から40万円未満に
2つ目は、青色申告の人だけが使える少額減価償却資産の特例です。対象は青色申告書を提出する個人事業主で、常時使用する従業員が400人以下の人です(租税特別措置法28条の2第1項・租税特別措置法施行令18条の5第1項)。令和11年3月31日までに取得して業務に使った取得価額40万円未満の資産を、使い始めた年に全額必要経費にできます(租税特別措置法28条の2第1項)。令和8年3月31日までに取得した資産は、国税庁の案内のとおり30万円未満が線です。
1年に使えるのは取得価額の合計で300万円までで、開業した年と廃業した年は300万円を12で割って業務を営んでいた月数を掛けた額が上限です(租税特別措置法28条の2第1項)。確定申告書に少額減価償却資産の取得価額の明細書を添付した場合に限って使えます(租税特別措置法28条の2第3項)。10万円未満の資産と一括償却資産にしたもの、貸付け用の資産は対象から外れます(租税特別措置法28条の2第1項・租税特別措置法施行令18条の5第2項)。
線が30万円か40万円かは、使い始めた日ではなく取得した日で決まります。たとえば令和8年3月に納品されて4月に使い始めた35万円のパソコンは、取得が3月なので特例の対象になりません。年度の切り替わりに大きな買い物をするときは、納品の日付を領収書と一緒に残しておきましょう。
定額法と耐用年数 — 20万円以上は何年で落とすか、中古と家事按分
近道を使わない資産、たとえば白色申告の人の20万円以上の資産や、40万円以上の車は、減価償却で落とします。個人事業主が償却方法の届出をしていなければ定額法で、取得価額に耐用年数ごとの償却率を掛けた額が1年分の償却費です(所得税法施行令125条2号・120条の2第1項1号)。年の途中で使い始めた年は、その年分の償却費を12で割り、使い始めた月から12月までの月数を掛けます(所得税法施行令132条1項1号)。
| 資産 | 耐用年数 | 根拠 |
|---|---|---|
| パソコン(サーバー用のものを除く) | 4年 | 減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一 |
| 軽自動車(総排気量0.66リットル以下の小型車) | 4年 | 減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一 |
| 普通乗用車(貨物自動車・報道通信用などを除くその他の自動車) | 6年 | 減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一 |
中古で買った資産は、法定耐用年数ではなく、使える期間を見積もった年数で償却できます(減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項1号)。見積もりが難しいときは簡便法が使えます(減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項2号)。ただし、使えるようにするための修理や改造(資本的支出)の額が取得価額の50%を超えるときは、簡便法は使えません(減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項)。
法定耐用年数の一部を過ぎた資産は「法定耐用年数−経過年数+経過年数×20%」、全部を過ぎた資産は「法定耐用年数×20%」で、1年未満の端数は切り捨て、2年未満なら2年です(減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項2号・5項)。
もともと家で使っていた車やパソコンを事業に使い始めたときは、買った値段そのままではなく、使っていなかった期間の減価の額を引いた残りから償却を始めます(所得税法施行令135条)。この減価の額は、取得価額(設備費・改良費を含む)を基に、法定耐用年数の1.5倍の年数(1年未満は切り捨て)で旧定額法に準じて計算した額に、使っていなかった期間の年数を掛けて求めます(所得税法施行令85条1項・2項1号)。その期間に1年未満の端数があるときは、6か月以上なら1年とし、6か月未満なら切り捨てます(所得税法施行令85条2項2号)。
ただし、同種の減価償却資産が償却累積額による償却費の特例の対象に当たるときは、計算した額がそのまま減価の額にはならず、その特例で区分ごとに定められた金額が限度になります(所得税法施行令85条1項)。
申告書での手続き — 近道には添付書類がいる
一括償却資産も青色の特例も、確定申告書に書類を付けるのが条件です。一括償却資産は一括償却対象額を記載した書類を添付し(所得税法施行令139条2項)、翌年以後も必要経費にした年の申告書に計算の明細書を添付します(所得税法施行令139条3項)。青色の特例は、少額減価償却資産の取得価額の明細書の添付が条件です(租税特別措置法28条の2第3項)。会計ソフトを使うなら、固定資産を登録するときに一括償却か特例かを選んでおきましょう。
10万円・20万円・40万円の線は、買う前に知っていれば買い方も変えられます。領収書の宛名と日付、何に使うかのメモを残しておけば、申告のときに迷いません。経費になるかどうかの線引きそのものは、このサイトの確定申告の経費の線引きの記事に書きました。
買った物の整理を含めて申告の準備がどこまでできているかは、弊所の個人事業主の決算・確定申告準備診断ツールをお勧めします。申告を頼むときの料金と進め方は、このサイトの確定申告のページで確かめてみてください。
※計算例は仕組みを示すためのもので、実際の償却費は資産ごとの取得価額・耐用年数・使い始めた月で変わります。年の表記は令和8年分の申告を前提にしています。
出典
- e-Gov法令検索 所得税法45条(家事関連費等の必要経費不算入等)・49条(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令85条(非事業用資産の減価の額の計算)・96条(家事関連費)・120条の2(減価償却資産の償却の方法)・125条(減価償却資産の法定償却方法)・132条(年の中途で業務の用に供した減価償却資産等の償却費の特例)・135条(非事業用資産を業務の用に供した場合の償却費の計算の特例)・138条(少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入)・139条(一括償却資産の必要経費算入)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法28条の2(中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行令18条の5(中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例)
- e-Gov法令検索 減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条(中古資産の耐用年数等)・別表第一(機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表)
- e-Gov法令検索 地方税法341条(固定資産税に関する用語の意義)
- e-Gov法令検索 地方税法施行令49条(法第三百四十一条第四号の資産)
- 国税庁タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし
- 国税庁タックスアンサー No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)
- 国税庁タックスアンサー No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却
- 国税庁タックスアンサー No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示
- 国税庁タックスアンサー No.5404 中古資産の耐用年数
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