小規模企業共済の掛金はいくらにするか — 月1,000円〜7万円の決め方、所得別の節税額、増額・減額と前納の使い方
小規模企業共済に入ると決めたあと、いちばん迷うのが掛金の額です。月1,000円から7万円まで選べますが、節税の効きは所得で変わり、途中で減らすと受取額に響くので、所得別の節税額を弊所の試算で示し、掛金を決める順番と増額・減額・前納の使い方を整理します。
この記事の要点
- 掛金は月1,000円〜7万円の500円単位で、払った額が所得控除になる(前納で戻る前納減額金はその分を差し引く)。所得500万円・月3万円なら所得税・住民税が年72,800円減る(弊所試算)
- 20年(240か月)続けるのが前提。途中で任意解約すると受取額は掛金の合計を下回り、減額した分は納付月数がそこで止まる
- 決める順番は、所得が落ちた年でも止めずに払える額を出す → 所得の帯で節税額を見る → 迷ったら低めに始めて利益が続いたら増額する
掛金の範囲と節税の仕組み — 月1,000円〜7万円、払った額が所得控除
掛金月額は1,000円以上500円単位で、1人7万円が上限です(小規模企業共済法4条2項)。払った掛金は、その年に支払った額が小規模企業共済等掛金控除として所得から引かれます(所得税法75条)。ただし前納して前納減額金を受け取った年は、所得控除として申告する掛金の額からその受取額を差し引きます。経費や損金には入れず、本人の所得控除として引きます。
節税額は、掛金の控除前後で所得税・住民税を計算し、その差で見ます。所得控除で税率の段階が変わる場合や課税される所得がなくなる場合もあるため、掛金に現在の税率を掛けるだけで確定額とは判断しません。所得500万円(青色申告特別控除65万円を引く前の事業所得・40歳未満の単身)の方で、掛金の額ごとに見ると次のとおりです。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 掛金月額 | 掛金(年額) | 所得税・住民税の負担減(年額) | 掛金の合計(20年間の累計) | 共済金B(20年間の累計を一括で受け取る額) | 受け取る年の所得税・住民税(年額) | 手残りの増え方(20年間の累計) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1万円 | 120,000円 | 24,300円 | 2,400,000円 | 2,658,800円 | 0円 | 744,800円 |
| 3万円 | 360,000円 | 72,800円 | 7,200,000円 | 7,976,400円 | 0円 | 2,232,400円 |
| 5万円 | 600,000円 | 121,300円 | 12,000,000円 | 13,294,000円 | 435,400円 | 3,284,600円 |
| 7万円 | 840,000円 | 160,700円 | 16,800,000円 | 18,611,600円 | 1,177,300円 | 3,848,300円 |
月3万円なら、年36万円の掛金で所得税・住民税が年72,800円減ります。
20年続けると掛金の合計720万円に対して共済金Bは約797.6万円で、受け取る年の税はかかりません。入口の節税と出口の増え方を合わせた手残りの増え方は、約223万円と試算しています。
所得別の節税額 — 税率の帯で効きが変わる
同じ掛金でも、所得が高いほど税率が高く、節税額は大きくなります。3つの所得の帯で、掛金の額ごとの節税額を並べます。
| 掛金月額 | 所得300万円の負担減(年額) | 所得500万円の負担減(年額) | 所得800万円の負担減(年額) |
|---|---|---|---|
| 1万円 | 18,100円 | 24,300円 | 36,500円 |
| 3万円 | 54,400円 | 72,800円 | 109,500円 |
| 7万円 | 126,000円 | 160,700円 | 255,600円 |
所得300万円の方が月7万円を払うと課税される所得がほぼ消え、節税額は年126,000円で掛金の15%にとどまります。
所得800万円なら同じ掛金で年255,600円、掛金の30%です。節税の効きは税率で決まるので、所得が低い年に無理をして上限まで払う必要はないと考えています。
なお、掛金は所得税・住民税の所得控除であり、国民健康保険料の計算では基礎控除以外の所得控除は引かれません(国民健康保険法施行令29条の7)。掛金を払っても国保の額は変わらないので、節税額は上の表の額だけで見積もるようお勧めしています。
増額・減額・前納の使い方 — 月1回・500円単位、前納は1か月あたり0.09%の減額
増額も減額も500円単位で月に1回までで、同じ月に2度は変えられません。払込は口座振替で、月払い・半年払い・年払いから選べます。前納すると、前納した月数1か月あたり掛金の1,000分の0.9が前納減額金として戻り、12か月を超える月数は12か月として計算されます。
決める順番 — 止めずに払える額 → 所得の帯 → 低めに始める
掛金の額は、次の順で決めるようお勧めしています。
1. 毎月の生活費と事業の運転資金を引いて、所得が落ちた年でも1年間止めずに払える額を出す
2. 所得の帯で節税額を見る。税率が低い帯では、掛金を上げても効きは小さい
3. 迷ったら低めで始め、利益が2年続いたら増額する。減額は元に戻せない部分が残る
個人事業を法人にして役員になるときの扱いは、続けるか受け取るかで変わります。法人成りで契約が解除されたとみなされたときの解約手当金は、政令が挙げる一時金に当たります(所得税法施行令72条3項3号)。この一時金は、退職金と同じ退職手当等とみなされます(所得税法31条3号)。法人化後の続け方は別の記事にまとめています。
いまの掛金が「所得が落ちた年でも払える額」かどうか、昨年の生活費と手元の資金で確かめてみてください。
まとめ — 所得の帯と、20年続けられるかで決める
掛金は所得の帯で節税額が、続けた月数で受取額が決まります。無理なく20年続けられる額から始め、利益が続いたら増額する順で決めてみてください。表の節税額を、ご自身の所得の帯に当てて確かめてみてください。
※本記事の節税額は、令和8年分の所得税・復興特別所得税と住民税(所得割10%)で、国民健康保険(江東区・令和8年度)と国民年金に加入する40歳未満の単身の方を前提にした弊所の試算です。共済金Bは中小機構の基本共済金の額によります。
この記事の内容、私の場合は? — 普段お使いの AI に相談
押すと、この記事の要点が質問文になって、選んだ AI に渡ります。
Gemini など、ほかの AI に貼り付けて使えます
AI によってはそのまま回答が始まります。回答は各 AI サービスによるもので、当事務所の見解ではありません。
※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。