小規模企業共済シミュレーション(無料)の使い方 — 掛金と年数を入れるだけで節税額と受取額が分かる、6つの入力と結果の読み方
小規模企業共済に入ると、毎年いくら税金が軽くなり、将来いくら受け取れるのでしょうか。この2つを同じ画面で見比べられる無料の小規模企業共済シミュレーション(登録もダウンロードも不要)を弊所のサイトに置いています。この記事では、入れる数字・出てくる結果・読むときの注意を、事業所得600万円の個人事業主の例で順に説明します。
この記事の要点
- 入力は「立場」「所得」「年齢」「掛金月額」「納付年数」「受取り方」の6つ。入口(毎年軽くなる税)と出口(受取額と税)を並べて見るところから始めるようお勧めしています
- 弊所試算では、事業所得600万円・月3万円・20年の例で、軽くなる税は年約11.0万円。20年で掛金720万円を払い、一括受取なら税金0円で約797.6万円を受け取る
- 国民健康保険料は掛金で変わらない。軽くなるのは所得税と住民税だけ
このシミュレーションで分かること — 入口の節税と、出口の受取額
小規模企業共済の掛金は、払った年の所得から全額を控除できます(所得税法75条)。シミュレーションは、掛金を払わなかった場合と払った場合について、所得税と、市区町村が前年の所得をもとに決める住民税の見込み額を比べ、その差額を「軽くなる税」として毎年の欄に出します。
同時に、納付年数から共済金の目安と、受け取るときの税金・手取りを出口の欄に出します。掛金の総額と受取額を通しで比べられるので、「入口で軽くなる税」と「出口でかかる税」の両方を1つの画面で確かめられます。共済金の目安は基本共済金の額で、運用収入に応じて年度ごとに決まる付加共済金は含みません。
原則
掛金は全額が所得控除になり、所得税と住民税が軽くなります。
所得税法75条
ただし
国民健康保険料は基礎控除だけを引いた所得で決まるため、掛金を払っても変わりません。
国民健康保険法施行令29条の7
| 入れるもの(弊所の道具) | 出てくるもの(弊所の道具) |
|---|---|
| 立場(個人事業主 / 会社役員)と、事業所得または役員報酬(万円) | 掛金の有る無しで比べた所得税・住民税の差額(毎年軽くなる税) |
| 年齢(歳) | 介護保険料の有無と、老齢給付(共済金B)が使える年齢かどうか |
| 掛金月額(円)と納付年数(年) | 掛金の総額、共済金A・Bの目安、契約者貸付の借入枠の目安 |
| 受取り方(一括 / 分割10年 / 分割15年)と他の公的年金の見込み | 受け取るときの税金と手取り、払った額との差 |
使い方 — 6つの入力と3つの手順
弊所のシミュレーションの3ステップ
数字を入れる
まず立場と所得を入れ、掛金月額と納付年数はいまの家計で続けられる数字から始めるようお勧めしています。年齢は将来の受取り時の年齢の計算に使います
受取り方を選ぶ
一括受取か、10年・15年の分割受取かを選びます。分割を選ぶと、他の公的年金の見込みを足した税金で計算します
結果を読む
結論の1文と2本の帯グラフを見て、入口の「毎年軽くなる税」と出口の「受け取るときの税と手取り」を確かめます
掛金月額と納付年数を変えて何度でも試せます。月1万円・3万円・7万円のように並べて、家計に無理のない線を探してみることをお勧めしています。
結果の読み方 — 所得600万円・月3万円・20年で試すと
45歳・個人事業主・事業所得600万円・掛金月3万円・20年・一括受取で試算すると、入口と出口の数字は次のとおりです。65歳で掛金納付月数が180か月以上になるため、老齢給付の共済金Bを請求できる例です(小規模企業共済法9条1項)。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 項目(弊所試算) | 金額 |
|---|---|
| 掛金(年額) | 360,000円 |
| 軽くなる税(所得税と住民税の差額・年額) | 109,500円 |
| 掛金の実質負担(年額) | 250,500円 |
| 20年の掛金総額 | 7,200,000円 |
| 共済金Bの基本共済金の目安(65歳・20年後) | 7,976,400円 |
| 退職所得控除(20年分) | 8,000,000円 |
| 一括受取の手取り | 7,976,400円 |
入口では、年36万円の掛金で税金が年約11.0万円軽くなり、実質の負担は年約25.1万円です。
出口では、20年で払った720万円に対して共済金Bの目安が約797.6万円で、退職所得控除の範囲に収まるため一括受取の税金は0円です。
廃業したときに受け取る共済金Aは、同じ掛金でも少し多い約835.9万円が目安です。
受取り方で変わるもの — 一括は退職所得、分割は公的年金と同じ扱い
一括受取にすると、共済金は退職手当等とみなされ(所得税法31条・所得税法施行令72条3項3号)、退職所得として納付年数に応じた退職所得控除を引いた残りの2分の1に課税されます(所得税法30条2項)。分割受取にすると、公的年金等の雑所得として、公的年金等控除を引いた額に他の年金と合わせて課税されます(所得税法35条)。分割受取や併用は、請求事由が60歳以上で生じたことや共済金が一定額以上であることなどの要件を満たす場合に選べます。
ただし、前年以前に会社からの退職金など他の退職手当等を受けていると、政令で定める場合には退職所得控除がその分減ります(所得税法30条)。役員としての勤続が5年以下の分にかかる退職手当等(特定役員退職手当等)は、2分の1にする計算の対象になりません(所得税法30条2項)。
シミュレーションの「受取り方」を切り替えると、同じ掛金・年数でも出口の税金と手取りが変わります。どちらが有利かは受取額・他の退職金・他の年金で変わるので、両方を試して比べるようお勧めしています。
この試算に入っていないもの — 3つの注意
まとめ — 入口と出口を並べてから掛金を決める
小規模企業共済は、入口で軽くなる税と、出口でかかる税の両方を見て初めて損得が分かる制度です。弊所試算の例では、年約11.0万円の節税を20年続け、一括受取なら税金0円で約797.6万円を受け取ります。まずはご自身の所得と続けられる掛金で、入口と出口を並べてみましょう。加入の申込みは中小機構の窓口(金融機関・商工会など)で行い、掛金の設計に迷う点があれば、申込みの前にお気軽にご相談ください。
※本記事の金額は、個人事業主・45歳(介護保険料あり)・所得控除は基礎控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除のみ・東京都江東区の令和8年度の国民健康保険料・令和8年分の税制での概算です。共済金の額は中小機構の算定方法にもとづく目安で、実際の額は請求時の制度で確定します。
出典
- 中小機構 小規模企業共済とは
- 中小機構 小規模企業共済 共済金の額の算定方法
- 中小機構 小規模企業共済 加入資格
- 国税庁 小規模企業共済等掛金控除
- 国税庁 法人成りにより支給を受ける小規模企業共済契約の一時金の所得区分
- e-Gov法令検索 所得税法30条(退職所得)・31条(退職手当等とみなす一時金)・35条(雑所得)・75条(小規模企業共済等掛金控除)・89条(税率)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令72条(退職手当等とみなす一時金)
- e-Gov法令検索 地方税法39条(賦課期日)・294条(市町村民税の納税義務者等)
- e-Gov法令検索 小規模企業共済法9条(共済金)
- e-Gov法令検索 国民健康保険法施行令29条の7(市町村の保険料の賦課に関する基準)
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