小規模企業共済は法人化後どうなる — 続け方と受け取りの選択肢
個人事業のあいだに小規模企業共済へ入っていた方が法人化するとき、「解約するしかないのか」と心配される方は少なくありません。結論からいえば、多くの場合は続けられます。続ける道と受け取る道を順に整理します。
この記事の要点
- 法人化後も、会社の役員として加入資格を満たせば、掛金の納付月数を通算して続けられる(申出は1年以内)
- 続けずに受け取るとき、役員に就任しない・会社が加入資格の範囲を超える場合は準共済金になる
- 続けられる立場のまま受け取ると解約手当金になり、納付が20年未満なら掛金の合計を下回る
結論 — やめる必要はない場合が多い
法人になったら共済は個人事業主の資格ごと失うのでは、と思われていないでしょうか。実は、小規模企業共済は個人事業主だけの制度ではなく、小さな会社の役員も加入対象です。目安は、常時使用する従業員が20人以下(商業と、宿泊業・娯楽業を除くサービス業は5人以下)の会社の役員で、合同会社では業務執行社員が対象になります。
法人成りして役員に就任し、その会社がこの範囲に収まるなら、「同一人通算」という手続きで、それまでの掛金納付月数を通算して契約を続けられます。長く掛けてきた実績を捨てずに済むわけです。
ただし通算の申出には期限があり、請求できる事由が生じてから1年以内とされています。また、中小企業退職金共済(中退共)などの被共済者になっている方は通算できません。医療法人・社会福祉法人・学校法人・NPO法人など、直接営利を目的としない法人の役員も加入できないため、これらの法人にしたときは続けられません。法人化の段取りを組む段階で、共済の扱いも一緒に決めておきましょう。
続けない場合 — 受け取るのは準共済金か解約手当金
法人化を機に受け取る場合、何を受け取るかは法人化後の立場で決まります。
| 法人化後の立場 | 受け取るもの |
|---|---|
| 会社の役員に就任しなかった | 準共済金 |
| 役員に就任したが、会社が加入資格の範囲を超えている | 準共済金 |
| 役員に就任し、加入資格の範囲にも収まる(続けられる) | 解約手当金 |
準共済金は、納付が18年6か月(222か月)までは掛金の合計と同じ額です。解約手当金は掛金の合計の80〜120%相当で、納付が20年(240か月)未満なら掛金の合計を下回ります(掛金月額を変えた方は、240か月以上でも下回ることがあります)。どちらも、納付が12か月未満だと受け取れません(掛け捨て)。
比べると、個人事業をやめる(廃業する)ときの共済金Aは、同じ例で621,400円です。中小機構は、事業をやめたときの共済金を高めに、任意性の高い解約手当金などを低めに設定しています。続けられる立場の方が急いで受け取ると、いちばん増えない形になりやすいのです。
任意解約は最後の選択肢
どの事由にも当てはめず自分の都合で解約したときも、解約手当金になります。額の決まり方は上と同じで、税金は一時所得(65歳以上なら退職所得)として扱われます。
法人化のタイミングで慌てて解約するのは、通算や共済金の請求と比べて不利になりやすい選び方です。
法人化後に続けるときの掛金と税金
掛金は月1,000円から7万円の範囲(500円単位)で、法人化後も変わらず選べます。掛金の全額が所得控除の対象になる点も同じで、役員個人の所得税・住民税の計算で控除します(会社の経費にするものではありません)。
受け取るときの税金は、受け取るものと受け取り方で変わります。一括で受け取る共済金は退職所得、分割で受け取る共済金は公的年金等の雑所得です。法人成りで受け取る準共済金・解約手当金も、契約が解除されたものとみなされて支給されるため退職所得になります(小規模企業共済法7条4項1号・所得税法施行令72条3項3号)。
出口の課税まで含めた設計は、退職金の考え方と合わせて検討するのがおすすめです。
注意 — 古い契約は扱いが異なることがある
ご自身の契約がどの扱いになるかは、まず加入時期を確かめてみてください。そのうえで、中小機構の窓口や税理士に確認してから動くと安心です。
まとめ — 法人化の段取りに「共済の扱い」を入れておく
小規模企業共済は、法人化しても多くの場合は通算して続けられます。受け取るにしても、就任の形で種類と金額が変わります。
法人化の前に決めておく3つ
加入時期と契約の扱いを確かめる
平成22年12月以前の加入など、扱いが異なる契約かどうかを先に見る
役員に就任するか・会社が加入資格の範囲に収まるかを決める
続けられるか、受け取るならどの種類かがここで決まる
続けるなら通算の申出、受け取るなら種類を確かめて請求する
通算の申出は請求できる事由が生じてから1年以内
法人化の準備リストに「共済をどうするか」の1行を足しておいてください。弊所でも、法人化の試算とあわせて出口までの設計をお手伝いしています。
出典
※本記事の共済金・準共済金・解約手当金の金額と制度の内容は、中小機構「小規模企業共済制度のしおり」(令和8年6月改訂版)の基本共済金などの例によります。金額は経済情勢等により変更されることがあります。個々の契約の扱いは加入時期などで異なるため、実行前にご確認ください。
※法人化の前に: 法人化すると、赤字の年でも法人住民税の均等割(年7万円ほど)が毎年かかります。増える事務も決算・申告や設立時の届出だけではありません。毎月の給与計算と源泉所得税の納付、年末調整、社会保険の算定基礎届など、個人事業には無かった手続きが毎年続きます。保険料や税金の差だけでなく、この固定費と手間まで含めてご判断ください。
この記事の内容、私の場合は? — 普段お使いの AI に相談
押すと、この記事の要点が質問文になって、選んだ AI に渡ります。
Gemini など、ほかの AI に貼り付けて使えます
AI によってはそのまま回答が始まります。回答は各 AI サービスによるもので、当事務所の見解ではありません。
※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。