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消費税の申告方式シミュレーション(無料)の使い方 — 売上と経費を入れるだけで本則課税・簡易課税・2割特例の納税額を比べる、4つの入力と結果の読み方

本則課税・簡易課税・2割特例のどれで申告するのが一番軽いのでしょうか。インボイス登録をした個人事業主の方から、毎年のように受ける質問です。この問いにその場で答える無料の消費税の申告方式シミュレーション(登録もダウンロードも不要)を弊所のサイトに置いています。

この記事では、入れる数字・出てくる結果・読むときの注意を、売上660万円の例で順に説明します。

この記事の要点

  • 入力は「対象の年」「売上と経費」「事業の種類」「あなたの状況」の4つ。並んで出る方式ごとの納付見込額と引ける額を見比べるところから始めるようお勧めしています
  • 税込売上660万円・消費税のかかる経費220万円・第5種の例では、令和8年分は本則課税40万円・簡易課税30万円・2割特例12万円
  • 引ける額の出し方が方式ごとに違うだけで、売上の消費税は同じ。経費の少ない事業ほど特例と簡易課税が効く

このシミュレーションで分かること — 方式ごとの「引ける額」と納付額

消費税の納付額は、売上の消費税から「引ける額(仕入控除税額)」を引いて決まります。本則課税は実際に払った消費税を引き(消費税法30条)、簡易課税は売上の消費税に業種ごとのみなし仕入率を掛けた額を引きます(消費税法37条)。インボイス登録を機に課税事業者になった方は、届出なしで売上の消費税の2割だけを納める2割特例(令和8年分まで)と、その後継の3割特例(令和9年分・10年分)も使えます。ただし、3割特例を使えるのは個人事業者だけで、会社(法人)は使えません(平成28年改正法附則51条の3第1項)。

シミュレーションは、この3〜4方式の納付見込額を同じ画面に並べ、どれが一番軽いかと、その差額を出します。方式ごとの「引ける額」も表示するので、なぜ差が出るのかを1行ずつ確かめられます。

原則

本則課税で経費の消費税を引くには、災害などやむを得ない事情で保存できなかった場合を除き、帳簿と適格請求書などの保存が要ります。

消費税法30条7項

ただし

帳簿の保存だけで引ける取引が政令で定められています。

消費税法施行令49条1項

令和5年10月1日以後6年を経過する日までは、基準期間の課税売上高が1億円以下などの事業者が行う一定の少額の課税仕入れを、帳簿の保存だけで引ける少額特例があります。

平成28年改正法附則53条の2

弊所のシミュレーションの入力と結果の対応
入れるもの出てくるもの
対象の年(令和8年分 / 9年分 / 10年分)その年に使える特例(2割特例か3割特例か)
税込の年間課税売上高と、消費税がかかる年間経費(万円)3方式に共通の売上の消費税と、経費の消費税として本則課税で引ける額
事業の種類(第1種〜第6種)簡易課税のみなし仕入率と、簡易課税で引ける額
あなたの状況(インボイス登録を機に課税事業者になったか・基準期間の課税売上高)特例と簡易課税が使えるかどうか

使い方 — 4つの入力と3つの手順

弊所のシミュレーションの3ステップ

  1. 数字を入れる

    まず対象の年を選び、請求書の税込額を合計した年間売上と、消費税のかかる経費を万円で入れるようお勧めしています。事業の種類は簡易課税の区分(第1種〜第6種)から選びます

  2. 状況を答える

    インボイス登録を機に課税事業者になった方かどうかと、基準期間(個人事業者は前々年)の課税売上高の区分を選んで「試算する」を押します

  3. 結果を読む

    一番軽い方式と2番目との差額が結論に出ます。内訳を開くと、方式ごとの引ける額と納付額を確かめられます

経費の欄に入れるのは、消費税がかかる経費だけです。人件費・社会保険料・保険料・税金・借入の利息は消費税がかからないので、ここには入れないでください。金額を変えて何度でも試せます。経費の額を動かして分かれ目を探してみることをお勧めしています。

結果の読み方 — 売上660万円・経費220万円・第5種で試すと

令和8年分・税込売上660万円・消費税のかかる経費220万円・第5種(サービス業)・インボイス登録を機に課税事業者になった方で試算すると、結果は次のとおりです。

※この表の試算年度: 令和8年の消費税制度。

方式ごとの納付見込額(弊所試算・令和8年分・国税と地方消費税の合計・金額はすべて1年あたり)
方式納付見込額(年額)
本則課税(実際に払った消費税を引く)40万円
簡易課税(第5種・みなし仕入率50%)30万円
2割特例(売上の消費税の2割を納める)12万円

売上の消費税は3方式とも同じで、違うのは引ける額だけです。方式ごとの引ける額を並べると、次のとおりです。

※この表の試算年度: 令和8年の消費税制度。

方式ごとに引ける額(弊所試算・令和8年分・国税分・金額はすべて1年あたり)
項目金額(年額)
売上の消費税(国税分・3方式で共通)468,000円
本則課税で引ける額(経費220万円に含まれる消費税)156,000円
簡易課税で引ける額(売上の消費税の50%)234,000円
2割特例で引ける額(売上の消費税の80%)374,400円

引ける額が大きいほど納付額は小さくなり、この例では2割特例が最も軽い結果です。あなたの事業では、消費税のかかる経費は売上の何割でしょうか。

対象の年を令和9年分に変えると、2割特例の欄が消えて3割特例に変わります。

※この表の試算年度: 令和9年の消費税制度。

同じ条件で令和9年分にした場合(弊所試算・国税と地方消費税の合計・金額はすべて1年あたり)
方式納付見込額(年額)
本則課税40万円
簡易課税(第5種)30万円
3割特例(売上の消費税の3割を納める)18万円

2割特例の12万円が3割特例では18万円になり、それでも簡易課税より12万円軽い計算です。令和10年分も同じ結果になります。

経費が売上を上回る年に試すと

大きな設備を買った年など、消費税のかかる経費が売上を上回ると、本則課税では引ききれなかった消費税が還付されます(消費税法52条1項)。ただし、住宅として貸す建物の取得にかかる消費税は引けないため(消費税法30条10項)、その分は還付になりません。同じ売上660万円で経費が770万円なら、結果はこうなります。

※この表の試算年度: 令和9年の消費税制度。

経費が売上を上回る年の比較(弊所試算・令和9年分・金額はすべて1年あたり)
方式金額(年額)
本則課税の納付額0円
本則課税の還付見込額10万円
簡易課税(第5種)30万円
3割特例18万円

簡易課税では引ける額が売上の消費税にみなし仕入率を掛けた額に決まっているため、還付は生じません(消費税法37条1項)。2割特例も売上の消費税の8割を引く仕組みなので同じです(平成28年改正法附則51条の2)。設備投資の予定がある年は本則課税も候補に入れて比べるようお勧めしています。

この試算に入っていないもの — 3つの注意

まとめ — 3方式を並べてから届出を決める

弊所試算の例では、方式の選び方だけで同じ売上でも納付額が3倍以上変わりました(本則課税40万円・2割特例12万円)。届出は前の年のうちに出す必要があり、後戻りもしにくい制度です。まずはご自身の売上・経費・業種で3方式を並べてみましょう。

本則課税の年に税抜1,000万円以上の高額特定資産を買うときや、課税事業者選択届出書を出して課税事業者になった最初の2年間に税抜100万円以上の設備を買うときは、3年間の縛りが加わります。3年先の設備投資まで見てから決めてみてください。届出書の様式と書き方も、シミュレーションの画面からそのまま確認できます。

※本記事の金額は、個人事業者・標準税率10%の売上と経費だけで計算した概算です(国税7.8%と地方消費税2.2%の合計・百円未満切捨て)。前提が変わると金額も変わります。

この記事の内容は、あなたの数字でその場で試算できます。

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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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