役員報酬10万円の手取りはいくらか — 社会保険料の最低ラインと、所得税がかからない理由・会社負担を足した実額(令和8年度)
役員報酬を月10万円にしたとき、手元にいくら残るのか。社会保険料と税金の内訳、会社負担を足した総額、月15万円・20万円との違いを弊所の試算で整理しました。会社を作った直後や、他に収入がある方が選びやすい水準です。
この記事の要点
- 月10万円の手取りを月あたり約8.6万円(年1,028,126円)、額面の約86%と試算しています
- 天引きは年約17.2万円で、そのほとんどが社会保険料の本人負担。所得税は役員報酬のほかに所得がなければ0円で、住民税は均等割と森林環境税の年5,000円だけ(前年に給与以外の所得があれば、その分の住民税も天引きに乗ることがある)
- 会社負担の社会保険料を年約17.1万円、会社が用意する総額を年約137.1万円と試算しています
内訳 — 月10万円から何がいくら引かれるか
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 項目 | 金額(年額) |
|---|---|
| 額面(年額・月10万円×12か月の弊所試算の前提) | 1,200,000円 |
| 社会保険料の本人負担(標準報酬月額9.8万円で計算) | 166,874円 |
| 所得税(弊所試算) | 0円 |
| 住民税(均等割と森林環境税・市区町村が決める税額の見込み) | 5,000円 |
| 天引きの合計(上の3行の合計・弊所試算) | 171,874円 |
| 手取り(年額・額面から天引きの合計を引いた弊所試算) | 1,028,126円 |
月あたりに直すと、手取りは約8.6万円です。天引きは社会保険料の本人負担が月13,906円で、税金は住民税の均等割と森林環境税を12か月で割った月約400円だけです。
住民税は会社が計算する税ではなく、前年の所得をもとに市区町村が決めた税額を、6月から翌年5月まで毎月の報酬から天引きするもの(特別徴収)です(地方税法321条の3・321条の5)。前年に事業や不動産などの所得があった方は、その所得割額も給与からの天引きに加えられることがあります(地方税法321条の3第2項)。表の金額は、その計算を先回りして示した弊所試算の見込み額です。
社会保険料 — 標準報酬月額9.8万円の等級と、下限の8.8万円
月10万円は、協会けんぽの保険料額表では標準報酬月額9.8万円の等級に当たります(健康保険法40条・厚生年金保険法20条)。この標準報酬月額に、健康保険9.85%・子ども・子育て支援金0.23%・厚生年金18.3%の料率を掛け、本人と会社で半分ずつ負担します。
この記事の表は、協会けんぽの保険料額表の等級(標準報酬月額9.8万円)で計算しています。
標準報酬月額は、毎年7月1日の時点で4月から6月に受けた報酬の平均をもとに見直され、その年の9月から翌年8月まで使われます(健康保険法41条・厚生年金保険法21条)。
税金 — 所得税は0円、住民税は均等割だけ
弊所試算では、年収120万円の役員報酬から給与所得控除を引いた給与所得は46万円で、そこから基礎控除を引くと課税所得は0になります。
このため、原則として所得税はかかりません。ただし、これは役員報酬のほかに所得がない場合の話です。ほかに所得がある方は、それを合わせた所得で課税所得が決まるため、所得税がかかることがあります。給与所得控除と基礎控除の額は、令和8年分の税制のものです。
住民税も所得割は0で、定額の均等割(区市町村民税3,000円・都民税1,000円)と森林環境税1,000円だけがかかります(地方税法310条・38条)。
税金は合わせて年5,000円にとどまり、この帯の天引きはほとんどが社会保険料だと試算しています。
15万円・20万円と並べる
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 額面(月額・弊所試算の前提) | 社会保険料の本人負担(月額) | 所得税+住民税(月額) | 手取り(月額) | 手取りの割合 | 社会保険料の会社負担(月額) |
|---|---|---|---|---|---|
| 10万円 | 13,906円 | 417円 | 85,677円 | 85.7% | 14,259円 |
| 15万円 | 21,285円 | 3,317円 | 125,398円 | 83.6% | 21,825円 |
| 20万円 | 28,380円 | 8,033円 | 163,587円 | 81.8% | 29,100円 |
額面が5万円上がるごとに、手取りは4万円弱ずつ増えると試算しています。増えた額面の約8割が手元に残る帯で、弊所試算で税金が本格的にかかり始めるのは月15万円を超えたあたりからです。
※表の月あたりの金額は、弊所試算の1年分を12か月で割った平均です。
会社の側から見る — 用意する総額は年約137.1万円
弊所試算では、会社が用意するのは、額面120万円に会社負担の社会保険料約17.1万円を足した約137.1万円です。報酬を低くした分の利益は会社に残り、法人の所得として法人税の対象になります(法人税法22条1項)。
毎月同額で払う役員報酬(定期同額給与)は損金になるため(法人税法34条1項1号)、法人側の税金はその分減ります。役員報酬は原則として事業年度の初めから3か月以内に決め、その後1年間は毎月同じ額を払います(法人税法施行令69条1項1号イ)。
月10万円という水準で見ておきたいこと
月10万円は、他に収入がある方や、会社の利益がまだ読めない時期に選ばれやすい水準です。手取りだけでなく、次の点も一緒に見ておくと判断がぶれません。
まとめ — 額面10万円は「手取り8.6万円・会社の負担137万円」の設計
役員報酬10万円は、社長の手取りが月約8.6万円、会社が用意する額が年約137.1万円という設計です。この水準が会社の利益と生活の両方に見合うでしょうか。
下の手取りシミュレーションでは、月額を細かく動かしながら手取りと会社負担を並べて確かめられます。10万円・15万円・20万円と並べて、ご自身の年齢と数字で試してみましょう。
※本記事の金額は、社長おひとり・40歳未満(介護保険なし)・所得控除は給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除のみ・東京都の令和8年度料率・令和8年分の税制での概算です。40〜64歳は介護保険料が加わり、手取りは少し減ります。
出典
- 協会けんぽ 令和8年度保険料率のお知らせ
- 協会けんぽ 令和8年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
- 国税庁 給与所得控除
- 国税庁 基礎控除
- 国税庁 所得税の税率
- 東京都主税局 個人住民税(所得割・均等割・森林環境税・特別徴収)
- e-Gov法令検索 健康保険法40条(標準報酬月額)・41条(定時決定)・99条(傷病手当金)
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法20条(標準報酬月額)・21条(定時決定)・43条(年金額)
- 国税庁 相続税法基本通達3-20(弔慰金等の取扱い)
- e-Gov法令検索 地方税法38条(均等割の税率)・310条(均等割の税率)・321条の3(給与所得に係る特別徴収)・321条の5(特別徴収の方法)
- e-Gov法令検索 法人税法34条(役員給与の損金不算入)
- e-Gov法令検索 法人税法施行令69条(定期同額給与の範囲等)
この記事の内容は、あなたの数字でその場で試算できます。
役員報酬の手取りシミュレーションで実際にあなたの数字で試す→この記事の内容、私の場合は? — 普段お使いの AI に相談
押すと、この記事の要点が質問文になって、選んだ AI に渡ります。
Gemini など、ほかの AI に貼り付けて使えます
AI によってはそのまま回答が始まります。回答は各 AI サービスによるもので、当事務所の見解ではありません。
※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。