役員報酬62,999円の意味 — 社会保険料が最低のまま手取りを増やせる上限額
マイクロ法人の役員報酬を調べていると、「62,999円」という不思議に細かい金額を目にしませんか。この数字の根拠と、よく知られた月4.5万円との違い、そして1円超えたときに何が起きるかまでを実額で整理しました。
この記事の要点
- 62,999円は、健康保険の標準報酬月額が最低の58,000円で計算される報酬月額の上限(63,000円未満)
- 社会保険料は月4.5万円のときと同じ月22,267円のまま、手取りが年約21.6万円増える
- 63,000円に1円届くと等級が1つ上がり、かえって手取りが月約503円減る
62,999円の正体 — 等級表の「区切りの1円手前」
社会保険料は、報酬の額そのものではなく「標準報酬月額」という区分で決まります。報酬月額がいくらからいくらまでならこの区分、という早見表(保険料額表)があり、同じ区分の中なら保険料は同じです。
- 健康保険: 報酬月額が63,000円未満なら、最低の標準報酬月額58,000円で計算される
- 厚生年金: 報酬月額が93,000円未満なら、最低の標準報酬月額88,000円で計算される
月4.5万円と比べる — 保険料は同じで、手取りだけが増える
マイクロ法人の役員報酬では「月4.5万円」がよく知られていますが、社会保険料はどちらの金額でも変わりません。違うのは手取りです。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 項目 | 月4.5万円の場合 | 月62,999円の場合 |
|---|---|---|
| 役員報酬 | 540,000円 | 755,988円 |
| 社会保険料(本人負担) | 131,702円 | 131,702円 |
| 給与にかかる所得税・住民税 | 0円 | 0円 |
| 手取り | 約40.8万円 | 約62.4万円 |
保険料は1円も変わらず、手取りは年約21.6万円増えます。
所得税がかからないのは、年収755,988円が給与所得控除74万円と基礎控除104万円(令和8年分)の範囲に収まるためです。住民税も、単身であれば非課税の目安に収まります(扶養の人数やお住まいの自治体によって変わります)。
63,000円との差 — 1円で等級が1つ上がる
では、区切りを1円でも超えるとどうなるでしょうか。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 項目 | 月62,999円の場合 | 月63,000円の場合 |
|---|---|---|
| 健康保険の標準報酬月額 | 58,000円 | 68,000円 |
| 社会保険料(会社+本人) | 22,267円 | 23,275円 |
| うち本人負担 | 10,975円 | 11,479円 |
| 手取り | 約52,024円 | 約51,521円 |
たった1円の差で健康保険の等級が1つ上がり、保険料は会社+本人で月1,008円増え、手取りはむしろ月約503円減ります。
62,999円という一見細かすぎる数字は、この区切りから逆算した結果というわけです。
ぎりぎりを狙うときの注意 — 判定は「手当込み」の報酬月額
また、標準報酬月額は毎年4〜6月の報酬の平均をもとに見直されます(定時決定)。ぎりぎりを狙うなら、手当まで含めた支給額の設計と、その維持がセットです。
62,999円が正解とは限らない人
月62,999円(年約75.6万円)だけで生活できる方は多くありません。この設定は、生活費を個人事業の稼ぎでまかなう「二刀流」の形が前提です。
そのうえで、次に当てはまる方は、最低額にこだわらないほうがよいこともあります。
- 法人に利益が大きく残る方 — 報酬を下げるほど法人税等が増えるため、会社+社長の合計負担が最小になる報酬額は別にある
- 将来の年金や、傷病手当金・出産手当金などの給付を厚くしたい方 — 保険料の安さは給付の薄さと表裏一体
- 住宅ローンや融資を控えている方 — 所得が低く見えるため、審査で不利に働くことがある
まとめ — 根拠は明快。使うかどうかは設計しだい
役員報酬の月額を変えると会社+社長の負担がどう動くか、まずは下のシミュレーションで試してみてください。
※本記事の保険料は、令和8年度の協会けんぽ(東京都)の保険料額表(標準報酬月額58,000円・厚生年金88,000円)と料率で計算した概算です。40〜64歳の方は介護保険料が加わり、月62,999円の場合の社会保険料は月23,207円(会社+本人)になります。税額は単身・給与収入のみ・基礎控除と社会保険料控除のみ反映の概算です。
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