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個人事業主の国民健康保険料を安くする方法 — 控除で下がるもの・下がらないもの、国保組合、法人化の実額

「iDeCoも生命保険も入れたのに、国民健康保険料は下がらなかった」— 個人事業主の方の国保の疑問は、保険料の計算に使う所得の取り方で説明がつきます。何が効いて何が効かないかを、江東区の令和8年度の実額で整理します。

この記事の要点

  • 国民健康保険料の所得割は「基礎控除だけを引いた所得」にかかる(基礎控除は前年の合計所得金額2,400万円以下なら43万円)。iDeCo・小規模企業共済・生命保険料・ふるさと納税などの所得控除は、所得税を下げても国保には効かない
  • 国保は所得に連動し、保険料だけを下げる手段はほとんど無い。効くのは所得そのものを下げる3つで、必要経費を漏れなく計上する・青色申告特別控除65万円を取る(青色申告の承認が前提)・経営セーフティ共済の掛金を必要経費にする(解除後2年以内に再加入した掛金は除く)。所得565万円が500万円になれば、40〜64歳で年約8.5万円下がる
  • その先は、保険料の決め方が違う国保組合か、法人を作って健康保険・厚生年金に移る形。法人化は保険料だけでなく税・費用・保障も一緒に動くので、年間の合計で比べる

まず結論 — 国保は「基礎控除後の所得」で決まる。所得控除は効かない

国民健康保険料の所得割は、前年の総所得金額等から基礎控除を引いた額を基準に計算します(国民健康保険法施行令29条の7第2項4号)。基礎控除は住民税と同じで、前年の合計所得金額が2,400万円以下なら43万円です(地方税法314条の2第2項)。合計所得金額がこれを超えると控除額は段階的に減り、2,500万円を超えると控除はありません(地方税法314条の2第2項)。所得税の計算で引ける社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・寄附金控除は、この基準の計算に入りません。

だから、iDeCoの掛金を増やしても、ふるさと納税をしても、国保は1円も下がりません。では、何をすれば下がるのでしょうか。答えは、所得控除ではなく「所得そのもの」を下げることです。 江東区の令和8年度の保険料は、所得に対して次のように決まります。

※この表の試算年度: 保険料は令和8年度の計算前提(所得税の試算ではありません)。

所得別の国民健康保険料と、国民年金を足した額(弊所試算・江東区・令和8年度・加入者1人・年額)
前年の所得(年額)国保のみ・40歳未満(年額)国保のみ・40〜64歳(年額)国保+国民年金・40〜59歳(年額)
300万円約33.9万円約41.9万円約63.4万円
500万円約55.1万円約67.9万円約89.4万円
565万円約61.9万円約76.4万円約97.9万円
700万円約76.2万円約93.2万円約114.7万円
1,000万円約95.8万円約112.8万円約134.3万円

保険料には医療分・後期高齢者支援金分・介護分・子ども・子育て支援金分の区分ごとに上限(賦課限度額)があるので、所得がさらに大きくなると、ある額からは増えません(国民健康保険法施行令29条の7)。

効くのは所得を下げること — 必要経費・青色申告特別控除・経営セーフティ共済の3つ

所得を下げる正攻法は3つです。1つ目は必要経費の計上漏れを無くすことです。

2つ目は青色申告特別控除で、青色申告の承認を受けて事業を営む方が、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添えて期限内にe-Taxで申告すれば、65万円を所得から引けます(租税特別措置法25条の2)。ただし、収入と経費を実際にお金が出入りした年で計算する小規模事業者の現金主義の特例(所得税法67条1項)を受けている方は、65万円の控除を受けられず、引けるのは10万円までです(租税特別措置法25条の2)。白色申告の方は、先に青色申告の承認を受ける手続が要ります。

3つ目は経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。掛金は事業所得の必要経費になるので(租税特別措置法28条1項2号)、所得そのものが下がり、国保にも効きます。ただし、共済契約を解除したあと再び加入した場合、解除の日から2年を経過する日までに払う掛金は必要経費になりません(租税特別措置法28条2項)。一方、小規模企業共済やiDeCoの掛金は所得控除なので(所得税法75条)、所得税・住民税には効いても国保には効きません。

軽減と減免 — 所得が少ない年は均等割が7割・5割・2割減る

所得が少ない年は、所得割ではなく均等割の側が減ります。線は3つで、世帯の所得の合計が43万円以下なら7割、43万円に加入者1人につき31万円を足した額以下なら5割です(国民健康保険法施行令29条の7第6項3号)。

2割の線は、43万円に加入者1人ごとに57万円を足した額です(国民健康保険法施行令29条の7第6項3号)。給与や年金の所得がある方が2人以上いる世帯は、1人増えるごとに10万円を足して判定します。判定には、世帯主と加入者全員の所得が分かっている必要があります。

子どもの分も軽くなります。未就学児の均等割は5割減り(国民健康保険法施行令29条の7第6項6号・7号)、18歳までの子どもは子育て支援金分の均等割が全額減ります(国民健康保険法施行令29条の7第6項10号・11号)。

災害で大きな損害を受けたときや、事業の休廃止で収入が著しく減ったときなどは、申請による減免の制度があります(国民健康保険法77条)。江東区では、利用できる資産や能力を活用しても保険料の支払いが難しい世帯が対象で、非自発的失業による軽減とは重ねて申請できません。減免の上限は、世帯の保険料の総額のおおむね5割です。

国保組合 — 同業の組合に入れる方は、保険料の決め方そのものが違う

国民健康保険組合は、同種の事業や業務に従事する方で、組合の地区内に住所がある方を組合員として作られます(国民健康保険法13条1項)。組合員になれば区の国保の対象から外れ(国民健康保険法6条)、保険料は組合が規約で定めた方法で決めます(国民健康保険法81条)。保険料の決め方は組合ごとに違うので、加入できる組合があるなら、その規約の保険料と上の表を比べる価値があります。

法人化 — 健康保険・厚生年金に移すと「所得」ではなく「報酬と賞与」で決まる

法人を作って役員報酬を受け取ると、健康保険・厚生年金の被保険者になり、国保の対象から外れます(国民健康保険法6条1号)。保険料は所得ではなく、標準報酬月額と、賞与を出したときは標準賞与額にもそれぞれ料率をかけて決まり、本人と会社が半分ずつ負担します(健康保険法156条1項・161条1項・厚生年金保険法82条1項)。役員報酬を低く決めれば保険料も低くなりますが、利益を賞与で受け取れば、その賞与にも保険料がかかります。

※この表の試算年度: 保険料は令和8年度の計算前提(所得税の試算ではありません)。

役員報酬の月額別の健康保険・厚生年金の保険料(弊所試算・協会けんぽ東京都・令和8年度・40〜64歳・年額)
役員報酬(月額)本人と会社の合計(年額)
月4.5万円約27.8万円
月10万円約36.4万円
月20万円約72.9万円

保険料だけを見れば、上の2つの表のとおり、個人のままは所得で、法人は報酬月額(賞与を出せば標準賞与額も)で決まります。法人化を考えるときは、保険料の差だけで決めず、税と保険料を合わせた年間の負担で比べることをお勧めします。

法人化で国保と税がどう変わるかは、このサイトの法人化シミュレーターに所得と役員報酬を入れて確かめてみてください。このサイトの試算は、税と保険料を合わせた年間の負担で、個人のままと法人化を比べます。社会保険料を下げる形には、役員報酬の決め方や事業の実態など、あとから直しにくい論点があるので、実行の際は必ず事前にご相談ください。

※有利・不利を比べるときは: 法人化の有利・不利は、保険料の削減額と法人の維持費の引き算だけでは決まりません。設立時の登録免許税などと、やめるときの解散・清算の費用は、毎年の維持費とは別にかかります。健康保険の傷病手当金・出産手当金や厚生年金の上乗せが付く一方、国民年金基金・付加年金は使えなくなります。これらも同じ土俵に載せてご判断ください。

※この比較に含めた負担: 個人のままの金額は所得税・住民税・国民健康保険・国民年金・個人事業税(対象業種のみ)の合計、法人化後の金額は法人税など法人側の税金(赤字でもかかる均等割を含む)+社会保険料(会社負担と本人負担の両方)+社長個人の所得税・住民税の合計で試算しています。

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