会社を作ったばかりで売上が少ないうちは、「配偶者の扶養に入ったままでいられないか」と考える社長もいます。役員報酬の決め方と扶養の関係を、社会保険と税に分けて整理します。
会社を作ったばかりで売上が少ないうちは、「配偶者の扶養に入ったままでいられないか」と考える社長もいます。役員報酬の決め方と扶養の関係を、社会保険と税に分けて整理します。
この記事の要点
「報酬が少なければ扶養のままでいられる」と思っていませんか。残念ながら、ここに大きな誤解があります。
健康保険・厚生年金は、法人の事業所を強制適用の対象にしています。社長1人の会社でも例外ではありません。
そして役員の扱いは、古くからの厚生省通知が決めています。法人の代表者や業務執行者であっても、法人から労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得させる(昭和24年7月28日保発第74号)。報酬の多い少ないは問われません。
家族の扶養(被扶養者)の判定でよく知られているのは、年収130万円未満などの収入基準です。それなら報酬月8万円(年96万円)の社長は入れそうに見えますが、そうはなりません。
会社の仕事をして報酬を受けている社長は、上の通知により、まず自分自身が自分の会社の被保険者になります。自分が被保険者である人は、家族の健康保険で被扶養者になることはできません。収入基準を満たしていても、その手前の「自分が被保険者かどうか」で決まってしまうのです。
実際の運用でも、報酬が低いことだけを理由に被保険者の資格を失わせる扱いはされていません(日本年金機構が公表している疑義照会回答)。報酬を月数万円まで下げても、「加入義務が消えて扶養に入れる」方向には働かない、ということです。
分かれ目は常勤かどうかではなく、労務の対償として報酬を受けているかどうかです。役員報酬を受け取っていなければ上の通知の前提が外れ、報酬に基づく被保険者に当たらず、社会保険に加入できません。
この状態であれば、配偶者の勤め先の健康保険で被扶養者になれる可能性が出てきます。認定の代表的な目安は年収130万円未満などの収入基準で、役員報酬以外の収入(不動産収入など)も含めて見られます。
ただし、被扶養者と認めるかどうかを判断するのは、配偶者が入っている健康保険の側(協会けんぽや健康保険組合)です。無報酬の実態(役員報酬を定めた議事録など)や、配偶者の収入で生計を立てている実態を確認されることもあり、「報酬ゼロなら必ず入れる」とまでは言い切れません。
扶養という言葉は2つの制度で使われていて、判定の仕組みが異なります。
| 項目 | 税(配偶者控除など) | 社会保険(被扶養者) |
|---|---|---|
| 見るもの | 年間の所得金額 | 収入の見込みと生計維持の実態 |
| 判定の場面 | 年末調整・確定申告 | 家族が入る健康保険への届出 |
| 効果 | 扶養する側の税金が下がる | 被扶養者の保険料負担がなくなる |
たとえば「社会保険の扶養には入れないが、報酬が低いので配偶者控除は受けられる」という組み合わせも起こります。どちらか一方の話だけで判断しないことが大事です。
ここまでは社長が扶養に「入る」話でしたが、実務で多いのはむしろ逆方向です。
社長が自分の会社で社会保険に入り、収入の少ない家族をその被扶養者にする形です。この場合、家族の分の保険料負担はかかりません。マイクロ法人の文脈でよく語られるのはこちらで、詳しくは下の関連記事で整理しています。
社長が家族の扶養に入れるかどうかは、役員報酬を受け取るかどうかでほぼ決まります。そして報酬をゼロにする選択には、扶養以外の影響(社会保険に入れないこと自体の影響)もあわせて付いてきます。
会社を作った直後の報酬設計は、扶養・保険料・税金をセットで考える必要があります。決める前に、ご自身の家族構成で一度試算してみてください。
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