役員報酬をゼロにできるか — 社会保険の扱いと向く場面・注意点
会社を作ったばかりで売上が読めない時期などに、「役員報酬をゼロ(無報酬)にしてもよいのか」というご質問をよくいただきます。結論としてゼロにすること自体はできますが、社会保険の扱いが大きく変わるため、向く場面は限られます。
この記事の要点
- 役員報酬をゼロにすること自体はできる。決め方は通常の役員報酬と同じ
- 無報酬だと会社の健康保険・厚生年金には入れないのが原則的な取り扱い
- 立ち上げ期や、別の勤務先で社会保険に入っている場合など、向く場面は限られる
ゼロにすること自体はできる
役員報酬は、事業年度ごとに株主総会など(合同会社では総社員の同意や社員の決定)で決めます。その金額を「ゼロ(支給しない)」と決めることも可能です。
無報酬だと社会保険はどうなるか
社会保険(健康保険・厚生年金)は、法人から報酬を受けて働く役員を加入対象にしています。報酬の実態がない無報酬の役員は、被保険者になれないのが原則的な取り扱いです。
その場合、ご自身の医療保険と年金は、次のいずれかで確保することになります。
- 国民健康保険(保険料は前年の所得に応じて決まる)+国民年金(保険料は年約21.5万円・令和8年度)に自分で入る
- 家族が入っている社会保険の被扶養者になる(収入などの認定条件を満たす場合。被扶養者には保険料がかかりません)
- 別の勤務先で社会保険に入っている場合は、その勤務先の社会保険がそのまま続く
「最低水準で入る」場合との比較
社会保険に入る前提で報酬を最も低い水準にした場合と比べてみましょう。
※この表の試算年度: 保険料は令和8年度の計算前提(所得税の試算ではありません)。
| 項目 | 役員報酬ゼロ | 報酬月4.5万円で入る場合 |
|---|---|---|
| 会社の社会保険 | 入れない(原則的な取り扱い) | 入る |
| 保険料の負担 | 会社の社会保険料はゼロ。国民健康保険(前年の所得に応じて決まる)と国民年金(年約21.5万円)を自分で納める | 健康保険+厚生年金の保険料が会社+本人の合計で月22,267円(年約26.7万円)。所得が増えても、ほぼこの水準で固定 |
| 公的年金の記録 | 国民年金のみ | 厚生年金の上乗せが積み上がる |
向く場面と注意点
注意点:
- 生活費をどこから出すかを先に決めておく必要があります。会社のお金は、報酬を通さずに自由に引き出せるものではありません
- 報酬がゼロでも、法人住民税の均等割(年7万円ほど)など会社の維持費は毎年かかります
- 融資や住宅ローンの審査では、役員報酬が無いと返済能力の説明が難しくなることがあります
- あとから報酬を出したくなっても、変更できるタイミングには決まりがあります
まとめ — 「例外的な設計」として慎重に
ご自身の状況は、上の「向く場面」に当てはまっていたでしょうか。役員報酬ゼロは、使える場面では有効ですが、社会保険・年金・生活資金・信用への影響が連動して動く、例外的な設計です。
弊所では、報酬ゼロを含めた複数パターンで、会社と個人をあわせた負担と手取りを試算してからお決めいただいています。実行の際は、必ず事前にご相談ください。
※本記事の金額は、協会けんぽ東京・令和8年度料率・40歳未満の概算です。月22,267円には、会社だけが負担する子ども・子育て拠出金(月約300円)を含みます。被保険者資格の最終判断は、報酬や働き方の実態を見て年金事務所が行います。
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