「従業員を雇っていないのだから、社会保険は入らなくてもよいのでは」— 法人化を考える方から必ず出る質問です。この記事では、一人社長の加入義務の線引きと、未加入のままでいるリスク、負担を設計でコントロールする考え方を整理します。
「従業員を雇っていないのだから、社会保険は入らなくてもよいのでは」— 法人化を考える方から必ず出る質問です。この記事では、一人社長の加入義務の線引きと、未加入のままでいるリスク、負担を設計でコントロールする考え方を整理します。
この記事の要点
健康保険・厚生年金は、法人の事業所を強制適用の対象にしています。従業員の人数は関係ありません。
役員報酬を受け取る社長が1人いるだけの会社でも、加入義務があります。年金事務所への新規適用届の期限は、事実発生から5日以内です。
個人事業には「常時使用する従業員が5人未満の事業所は適用外(業種による)」という枠がありますが、法人にはこの枠がありません。法人化した瞬間に、社会保険の世界のルールが変わります。
なお、役員報酬がゼロ(無報酬)の場合など、報酬の実態がなければ被保険者になれないことはありますが、それは「報酬を得て働いているのに入らない」こととは別の話です。
役員報酬を払いながら加入手続きをしていない状態は、義務違反です。
年金事務所からの加入の案内や調査を受けたとき、さかのぼって加入し、過去の保険料をまとめて納めることを求められる場合があります。数年分の保険料が一度に来ると、資金繰りへの影響は深刻です。
また、未加入の期間は厚生年金の記録も積み上がりません。目先の保険料を避けた分だけ、将来の年金を削っていることになります。
保険料の負担が重いと感じるなら、取るべき道は未加入ではなく、役員報酬の設計です。
社会保険料は役員報酬の月額に連動します。報酬月4.5万円なら会社+本人で年約26.7万円、月30万円なら年約103.5万円(いずれも40歳未満・弊所試算)。同じ会社でも、報酬の決め方で保険料は数倍変わります。
生活に必要な手取り・将来の年金・国保時代との比較を並べて、自分の状況に合う水準を決める — これが現実的で、かつ制度の枠内にある唯一の対応です。
法人化すると、社会保険は入るかどうかを選ぶものではなく、いくらの報酬で入るかを設計するものになります。
弊所では、法人化の試算の中で社会保険料を織り込み、加入手続き(新規適用届)の段取りまでサポートしています。
※本記事の金額は、東京都の令和8年度料率での概算です。加入の要否の最終判断は、働き方の実態を見て年金事務所が行います。
※法人化の前に: 法人化すると、赤字の年でも法人住民税の均等割(年7万円ほど)が毎年かかります。増える事務も決算・申告や設立時の届出だけではありません。毎月の給与計算と源泉所得税の納付、年末調整、社会保険の算定基礎届など、個人事業には無かった手続きが毎年続きます。保険料や税金の差だけでなく、この固定費と手間まで含めてご判断ください。
※有利・不利を比べるときは: 法人化の有利・不利は、保険料の削減額と法人の維持費の引き算だけでは決まりません。保険料だけでなく、所得税・住民税・法人税も同時に動きます。設立時の登録免許税などと、やめるときの解散・清算の費用は、毎年の維持費とは別にかかります。健康保険の傷病手当金・出産手当金や厚生年金の上乗せが付く一方、国民年金基金・付加年金は使えなくなります。国民健康保険は家族の人数分かかりますが、社会保険の被扶養者には保険料がかかりません。これらも同じ土俵に載せてご判断ください。
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