健康保険料の計算方法 — 給与明細の額を標準報酬月額と料率(東京・令和8年度)から検算する手順、介護保険の上乗せ、賞与、会社と本人の折半
「給与明細の健康保険料、この額で合っているのだろうか」— そう思ったときに、ご自分で検算する手順を順に整理した記事です。協会けんぽ(東京都)の令和8年度の料率で月30万円の例を1行ずつ確かめながら、標準報酬月額の決まり方、介護保険の上乗せ、賞与の計算、会社との折半までを順に見ていきます。
この記事の要点
- 健康保険料は、標準報酬月額に料率を掛けた額を本人と会社が半分ずつ負担する。協会けんぽ東京都の令和8年度の健康保険料率は9.85%で、40〜64歳(国内の市町村に住所のある方)は介護保険料率1.62%が加わる
- 標準報酬月額は給与の額そのものではなく、等級表に当てはめた額。月30万円(29万円以上31万円未満)なら標準報酬月額は30万円で、健康保険料は全額29,550円・本人負担14,775円
- 賞与は等級表を使わず、1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に同じ料率を掛ける。健康保険には年度の累計573万円の上限がある。退職した月や育児休業等で保険料が免除される期間に払った賞与には、保険料がかからない
まず結論 — 式は1つ、入れる数字は「標準報酬月額」と「料率」の2つ
健康保険料は、各月の標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を掛けた額です(健康保険法156条1項)。ただし、前月から引き続き加入していた方が資格を失った月(退職した月など)の分は、保険料を算定しません(健康保険法156条3項)。その額を本人と会社が2分の1ずつ負担し(健康保険法161条1項)、給与明細に載る健康保険料は、この本人負担の分です。協会けんぽの料率は都道府県ごとに決まり(健康保険法160条1項)、東京都の令和8年度は9.85%です。
40〜64歳で国内の市町村に住所のある方(介護保険の第2号被保険者)は、これに介護保険料率1.62%を掛けた介護保険料額が合算されます(健康保険法156条1項1号・介護保険法9条2号)。協会けんぽの案内のとおり、令和8年4月分(5月納付分)からは全国一律の子ども・子育て支援金0.23%も加わりました。月30万円の例で、明細に出てくる保険料を全部並べると次の表になります。
| 保険料 | 料率 | 全額(月額) | 本人負担(月額) |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 9.85% | 29,550円 | 14,775円 |
| 介護保険(40〜64歳だけ) | 1.62% | 4,860円 | 2,430円 |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 690円 | 345円 |
| 厚生年金 | 18.3% | 54,900円 | 27,450円 |
本人負担の合計は、40歳未満なら月42,570円、40〜64歳なら月45,000円です。給与明細の控除の欄にある健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料を足して、この額と比べてみてください。合わないときは、次の順番で1つずつ確かめます。
給与明細の健康保険料を検算する順番
標準報酬月額を確かめる
入社・就任のときの資格取得の決定通知、毎年の算定基礎届の決定通知書(9月分から)、随時改定の通知のうち、いちばん新しいものの額を見る
料率を確かめる
協会けんぽの都道府県別の保険料率。令和8年度の東京都は9.85%で、40〜64歳(国内の市町村に住所のある方)は介護保険料率1.62%を足す。3月分から新しい料率
掛けて2で割る
標準報酬月額に料率を掛け、2で割る。1円未満の端数は、給与から控除するときは50銭以下を切り捨て、50銭を超えると切り上げ(会社と本人の特約があれば、その特約による)
明細の月と合わせる
給与から控除できるのは原則として前月分の保険料。4月に支払う給与の明細には3月分の保険料が載り、保険料の月と給与の月が1つずれる。退職するときは前月分とその月分をまとめて控除できる
料率と等級の仕組みはこのサイトの社会保険料ガイドに、報酬の額がどの等級に当たるかはこのサイトの標準報酬月額の境目の早見表にまとめています。
標準報酬月額 — 給与の額をそのまま掛けるのではない
健康保険料の計算に使うのは、毎月の給与の額そのものではなく「標準報酬月額」です。報酬月額を等級表に当てはめて決めた額で、健康保険は1級5.8万円から50級139万円までの50等級に分かれています(健康保険法40条1項)。
月30万円の給与は「29万円以上31万円未満」の幅に入り、標準報酬月額は同じ額の22級です(健康保険法40条1項)。幅の中ならどの額でも保険料は同じで、幅の境目を越えると次の等級の額になります。
報酬には、基本給だけでなく残業手当や各種の手当も、名称を問わず労働の対償として受けるものを含めます。ただし、3か月を超える期間ごとに受ける賞与と、臨時に受けるものは含めません(健康保険法3条5項)。残業の多い月が続くと報酬月額が上がり、標準報酬月額も上がることがあります。
| 時期 | 使う報酬 | 適用される期間 |
|---|---|---|
| 入社・就任のとき(資格取得時の決定) | 資格を取得した日の時点の報酬の額(月給なら、その月額。日給・時給などは、同じ事業所で同様の業務に就く人が前の1か月に受けた報酬の平均) | 次の定時決定か随時改定まで |
| 毎年の定時決定(算定基礎届) | 7月1日前の3か月(4〜6月)に受けた報酬の平均。報酬の支払いの基礎となった日数が17日(厚生労働省令で定める者は11日)未満の月は除く | その年の9月から翌年8月まで |
| 随時改定(月額変更届) | 昇給・降給のあとに続く3か月(各月とも支払いの基礎となった日数が17日以上)の報酬の平均が、今の標準報酬月額と2等級以上離れたとき | 3か月目の翌月から(変わった報酬を初めて受けた月から数えて4か月目) |
資格取得時の決定は健康保険法42条、定時決定は41条、随時改定は43条に定めがあります(健康保険法41条・42条・43条)。定時決定で決まった額はその年の9月から翌年8月まで使い(健康保険法41条2項)、途中で大きく変わったときだけ随時改定で改めます(健康保険法43条1項)。ただし、6月1日から7月1日までの間に資格を取得した方と、7月から9月までのいずれかの月から随時改定などで標準報酬月額が改定される(改定されるべき)方は、その年に限り定時決定を行いません(健康保険法41条3項)。
日本年金機構の案内では、厚生年金の標準報酬月額は今、1等級8.8万円から32等級65万円までの32等級に分かれています。
月30万円なら厚生年金でも同じ額(19級)で、保険料率18.3%を掛けた54,900円を折半します(厚生年金保険法81条3項・4項・82条1項)。
なお、厚生年金の上限は2027年9月から段階的に引き上げられ、2029年9月に75万円になる予定です。
料率 — 都道府県と年度で変わる(協会けんぽ東京都・令和8年度)
協会けんぽの健康保険料率は、都道府県の支部ごとに決められます(健康保険法160条1項)。東京都の令和8年度は9.85%で、令和7年度の9.91%から下がりました。新しい料率は3月分(4月納付分)から適用されます。協会けんぽの案内では、介護保険料率は全国一律で、令和8年度は1.62%です。
同じ案内のとおり、全国一律の子ども・子育て支援金0.23%は令和8年4月分(5月納付分)から加わりました。保険料額表でも、健康保険料と同じように全額と折半額が載っています。このほかに会社だけが負担する子ども・子育て拠出金(0.36%)があり、厚生年金の標準報酬月額に掛けて会社が納めます。本人の給与明細には出てきません。
健康保険組合に入っている会社は、組合ごとに料率が違います。規約で会社の負担割合を2分の1より多くしている組合もあります(健康保険法162条1項)。その増やした分は健康保険法に基づいて会社が負担すべき保険料なので、本人の給与としての課税は生じません。健康保険組合の会社の明細を検算するときは、協会けんぽの表ではなく、その組合の料率と負担割合で確かめます。
介護保険料 — 40歳から64歳までの上乗せ
40歳以上65歳未満の医療保険加入者のうち、市町村の区域内に住所のある方が介護保険の第2号被保険者で(介護保険法9条2号)、その方の健康保険料には介護保険料額が合算されます(健康保険法156条1項1号)。65歳からは市区町村が行う介護保険の第1号被保険者になり、健康保険料に合算する形ではなくなります(介護保険法9条1号・健康保険法156条1項2号)。
協会けんぽの保険料額表では、介護保険第2号被保険者に該当する場合の欄に、健康保険料と介護保険料を合わせた全額と折半額が載っています。給与ソフトが2つを分けて出すか合わせて出すかは製品によるので、明細の1行と表の1つの欄を見比べるときは、どの保険料が入っているかを先に確かめます。
賞与 — 等級表は使わず、1,000円未満を切り捨てた額に同じ料率
賞与の保険料は、原則として標準報酬月額ではなく標準賞与額に料率を掛けます。標準賞与額は、その月に受けた賞与の額から1,000円未満を切り捨てた額です(健康保険法45条1項)。料率と折半は毎月の給与と同じで、介護保険料と子ども・子育て支援金も同じように掛かります(健康保険法156条1項)。
原則
標準賞与額は、その月に受けた賞与の額の1,000円未満を切り捨てた額です。
健康保険法45条1項
ただし
健康保険では、4月から翌年3月までの年度の累計が573万円を超えるときは、573万円に達するまでの分で標準賞与額を決め、その年度のそれ以降の賞与の標準賞与額は0になります。
健康保険法45条1項
厚生年金は年度の累計ではなく、その月に受けた賞与の標準賞与額が150万円を超えるときは150万円とされます。
厚生年金保険法24条の4第1項
社会保険で賞与として扱うのは3か月を超える期間ごとに受けるものです。それより短い間隔で受けるものは報酬として毎月の保険料の計算に入ります。
健康保険法3条5項・6項
前月から引き続き加入していた方が資格を失った月(退職した月など)の分は保険料を算定しないので、その月に払った賞与には保険料がかかりません。
健康保険法156条3項
日本年金機構の案内では、育児休業等で保険料が免除される期間に払った賞与にも、保険料はかかりません。これらの賞与と資格を失った月の賞与も標準賞与額を決め、年度の累計額に含めます。
役員賞与が上限に当たる例の実額は、このサイトの賞与の社会保険料の上限の記事に書いています。
会社と本人の折半 — 明細の額と納入告知書の額の関係
保険料は本人と会社が2分の1ずつ負担し(健康保険法161条1項)、会社が本人の分を給与から控除して、自分の分と合わせて納めます(健康保険法161条2項・167条1項)。給与から控除できるのは原則として前月分の保険料なので、3月分から変わった料率は、4月に支払う給与の明細から反映されます(健康保険法167条1項)。ただし、退職などで使用されなくなるときは、前月分とその月分の保険料を最後の給与からまとめて控除できます(健康保険法167条1項)。
個人事業主の方が入る国民健康保険は、標準報酬月額と料率ではなく、世帯の被保険者ごとに算定した基礎賦課額などの合算額として市区町村が賦課する別の仕組みです(国民健康保険法施行令29条の7第1項)。計算のしかたは国民健康保険の専門ページにまとめています。
給与計算を会社で行っている社長は、料率が変わる3月分と、算定基礎届で標準報酬月額が変わる9月分の年2回、明細の額を検算してみてください。社会保険料全体の仕組みと会社負担の見方は社会保険料ガイドで、報酬の額ごとの会社負担の実額は会社負担の早見表の記事で確かめられます。
※金額は協会けんぽ東京都・令和8年度の料率で、標準報酬月額30万円の例です。健康保険組合の料率と負担割合、厚生年金基金に加入している方の免除保険料率は、このサイトの早見表と本文では扱っていません。
出典
- 協会けんぽ 令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます
- 協会けんぽ 令和8年度の都道府県毎の保険料率
- 協会けんぽ 令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部・PDF)
- 日本年金機構 厚生年金保険の保険料(標準報酬月額・標準賞与額・保険料率)
- 日本年金機構 従業員に賞与を支給したときの手続き
- 厚生労働省 厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて
- 国税庁 質疑応答事例 健康保険料の事業主負担(2分の1以上の負担)による経済的利益
- e-Gov法令検索 健康保険法3条(定義)・40条(標準報酬月額)・41条〜43条(決定と改定)・45条(標準賞与額の決定)・156条(被保険者の保険料額)・160条(保険料率)・160条の2(子ども・子育て支援金率)・161条(保険料の負担及び納付義務)・162条(事業主の負担割合の特例)・167条(保険料の源泉控除)
- e-Gov法令検索 介護保険法9条(被保険者)
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法20条(標準報酬月額)・24条の4(標準賞与額の決定)・81条(保険料)・82条(保険料の負担及び納付義務)
- e-Gov法令検索 国民健康保険法施行令29条の7(保険料の賦課額)
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