確定申告で引ける所得控除の集め方 — 国民年金・健康保険の保険料、共済の掛金、iDeCo、生命保険の控除証明書と、申告書に書く場所、白色申告でも同じ
「払った国民年金や共済の掛金は、どこまで申告で引けるのだろうか」— そんな質問を、初めて自分で確定申告をする個人事業主の方から受けます。個人事業主の保険料や掛金は事業の必要経費ではなく、所得から差し引く「所得控除」として申告書に書きます。社会保険料控除(所得税法74条1項)・小規模企業共済等掛金控除(所得税法75条1項)・生命保険料控除(所得税法76条1項)・地震保険料控除(所得税法77条1項)の4つが、個人事業主によく出る控除です。証明書を集めて欄を間違えなければ、青色でも白色でも同じ額が引けます。
この記事の要点
- 国民年金と国民健康保険の保険料は、払った全額が社会保険料控除です。生計を一にする家族の分を払ったときも、払った本人の控除になります(所得税法74条1項・2項2号・5号)
- 小規模企業共済の掛金とiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は、全額が小規模企業共済等掛金控除です。社会保険料控除とは別の欄に書きます(所得税法75条1項・2項1号・2号)
- 生命保険料控除は新契約で一般・介護医療・個人年金の区分ごとに上限4万円、合計12万円まで。地震保険料控除は上限5万円です(所得税法76条1項・4項・77条1項)。所得控除は青色・白色に関係なく同じです
まず結論 — 4つの控除と証明書の対応表
| 払ったもの | 控除の種類 | 控除額 | 証明書・確かめる書類 |
|---|---|---|---|
| 国民年金の保険料(家族の分を含む) | 社会保険料控除(所得税法74条2項5号) | 払った全額 | 日本年金機構の控除証明書を申告書に添付または提示(所得税法施行令262条1項2号) |
| 国民健康保険の保険料 | 社会保険料控除(所得税法74条2項2号) | 払った全額 | 証明書の添付は要らない。区の通知・領収証・口座の明細で額を確かめる |
| 小規模企業共済の掛金 | 小規模企業共済等掛金控除(所得税法75条2項1号) | 払った全額 | 中小機構の掛金控除証明書を添付または提示(所得税法施行令262条1項3号) |
| iDeCoの掛金 | 小規模企業共済等掛金控除(所得税法75条2項2号) | 払った全額 | 掛金の証明書を添付または提示(所得税法施行令262条1項3号) |
| 生命保険・介護医療保険・個人年金保険の保険料 | 生命保険料控除(所得税法76条1項) | 新契約は区分ごとに上限4万円、合計12万円(所得税法76条4項) | 保険会社の控除証明書を添付または提示(所得税法施行令262条1項4号) |
| 地震保険料 | 地震保険料控除(所得税法77条1項) | 上限5万円 | 保険会社の控除証明書を添付または提示(所得税法施行令262条1項5号) |
控除額の計算で迷うのは生命保険料控除だけで、ほかの3つは払った額をそのまま(地震保険料は5万円を上限に)書きます。難しいのは計算より、証明書を期限までにそろえることです。では、それぞれの証明書はいつ、どこから届くのでしょうか。
社会保険料控除 — 国民年金は証明書、国民健康保険は額の確認
社会保険料控除は、自分の分だけでなく、生計を一にする配偶者や親族が負担すべき保険料を払ったときも、払った人の控除になります(所得税法74条1項)。対象には国民健康保険の保険料(国民健康保険税)、国民年金の保険料、国民年金基金の掛金、介護保険料などが入ります(所得税法74条2項2号・3号・5号)。
原則
社会保険料控除の額は、その年に実際に払った額(給与や年金から引かれた額を含む)の全額です。
所得税法74条1項
ただし
国民年金の保険料と国民年金基金の掛金は、金額を証する書類を申告書に添付するか、提出のときに提示します。
所得税法施行令262条1項2号
生計を一にする子の国民年金保険料を親が払ったときは、子ではなく払った親の控除になります。
所得税法74条1項
国民年金の控除証明書は日本年金機構から届きます。令和8年分は、1月から9月までに納付した人には、電子データが10月16日から、書面が10月23日から11月上旬にかけて順次送られます。10月から12月に納付した人には、翌年1月下旬(電子データ)または2月上旬(書面)に送られる予定です。電子データはマイナポータルで受け取り、e-Taxの申告に使えます。
小規模企業共済等掛金控除 — 共済とiDeCoは同じ欄、社会保険料控除とは別
小規模企業共済の掛金と、iDeCoの個人型年金加入者掛金は、どちらも払った全額が小規模企業共済等掛金控除です(所得税法75条1項・2項1号・2号)。社会保険料控除と似ていますが、申告書の欄は別なので、国民年金と一緒に足し込まないように分けて集めます。掛金の証明書は、申告書に添付するか提出のときに提示します(所得税法施行令262条1項3号)。社会保険料控除と違い、配偶者や親族が加入者になっている共済やiDeCoの掛金は、本人が払っても本人の控除にはなりません。
小規模企業共済の掛金控除証明書は中小機構から届きます。その年の9月までに掛金の払込みがある人には11月に、その年に加入して10月から12月に払込みを始めた人には翌年2月に送られます。iDeCoの掛金の証明書は、加入している金融機関や運営管理機関の案内で、届く時期を確かめてみてください。
生命保険料控除と地震保険料控除 — 計算に区分がある
生命保険料控除は、新契約(平成24年1月1日以後の契約)の一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3区分ごとに計算し、区分ごとの上限は4万円です(所得税法76条1項〜3項・5項)。旧契約(平成23年12月31日以前の契約)は一般と個人年金の2区分で、上限は5万円ずつです(所得税法76条1項・3項・6項)。ただし、同じ区分で新契約と旧契約の両方の保険料を合わせて控除を受けるときは、上限は新契約と同じ額までになります(所得税法76条1項・3項)。区分を合わせた控除額には、12万円の上限があります(所得税法76条4項)。
新契約の一般の生命保険料は、年8万円を超えて払っていれば控除は上限の4万円です(所得税法76条1項)。国税庁の案内では、令和8年分から、23歳未満の扶養親族がいる人はこの上限が6万円になります。保険会社の証明書に書かれた年間の払込額を、そのまま申告書の第二表に写します。
1枚の控除証明書に新契約と旧契約の両方の保険料が書かれているときは、新契約だけ・旧契約だけ・両方の合計のうち有利な方を選んで、控除の対象にできます。契約者が配偶者の名義でも、保険料を払ったのが本人で、保険金の受取人が本人か配偶者・親族であれば、本人の生命保険料控除になります(所得税法76条5項・6項)。ただし、個人年金保険は、年金の受取人が本人か配偶者である契約に限られます(所得税法76条8項・9項)。地震保険料控除は、住んでいる家や家財にかけた地震保険の保険料が対象で、上限は5万円です(所得税法77条1項)。
申告書に書く場所と白色申告 — 第一表の控除の欄と、第二表の明細
確定申告書の第一表には「所得から差し引かれる金額」の区分があり、社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除の欄に、それぞれの控除額を書きます。第二表の「保険料控除等に関する事項」には保険料等の種類と支払った額を書き、国民年金と国民健康保険、共済とiDeCoを分けて並べます。
国税庁の案内では、令和8年分以後の申告書を令和9年1月1日以後に出すときは、国民年金の保険料と共済等の掛金の証明書の添付・提示に代えて、一定の事項を書いた明細書を添付できます。証明書そのものは、あとから求められることがあるので手元に残しておきましょう。
原則
控除証明書が要る控除は、証明書を申告書に添付するか、提出のときに提示します。
所得税法施行令262条1項
ただし
国民健康保険の保険料には証明書の添付・提示の決まりがなく、払った額を確かめて書けば足ります。
所得税法施行令262条1項2号
所得控除は、申告が青色か白色かに関係なく、同じ条文で同じ額を引けます(所得税法74条1項・75条1項・76条1項・77条1項)。青色と白色で違うのは青色申告特別控除のような事業所得の計算の側で、保険料や掛金の控除の側ではありません。白色申告の方も、同じ証明書を集めて同じ欄に書いてください。
証明書を11月から集め、欄を分けて書く。それだけで、2月の作業は数字の転記だけになります。国民健康保険料そのものの計算は、このサイトの国民健康保険の専門ページで確かめてみてください。
申告の準備がどこまで進んでいるかは、弊所の個人事業主の決算・確定申告準備診断ツールをお勧めします。申告を頼むときの料金と進め方は、このサイトの確定申告のページにまとめています。
※金額は令和8年分の所得税の定めによるものです。
出典
- e-Gov法令検索 所得税法74条(社会保険料控除)・75条(小規模企業共済等掛金控除)・76条(生命保険料控除)・77条(地震保険料控除)・120条(確定所得申告)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令262条(確定申告書に関する書類等の提出又は提示)
- 国税庁タックスアンサー No.1130 社会保険料控除
- 国税庁タックスアンサー No.1135 小規模企業共済等掛金控除
- 国税庁タックスアンサー No.1140 生命保険料控除
- 国税庁タックスアンサー No.1145 地震保険料控除
- 国税庁 質疑応答事例「1枚の生命保険料控除証明書に旧生命保険料と新生命保険料の記載がある場合」
- 国税庁 質疑応答事例「妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除」
- 国税庁 令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き
- 日本年金機構 令和8年分社会保険料(国民年金保険料)控除証明書の送付について
- 中小機構 小規模企業共済 掛金控除証明書
- 江東区 国民健康保険料の納付額の確認について(確定申告・年末調整等用)
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