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家賃収入の管理料を自分の法人に払う形は今も使えるか — 不動産管理会社の管理料の相場と否認の例、サブリース方式、建物を移す形との税の差

「管理会社を作って家賃の一部を法人に移せば、税金が安くなると聞いた」— そんな相談を、物件を数棟お持ちの大家の方から受けることがあります。この形は今も使えますが、法人に移せる額には実務上の上限があり、否認された例も公表されています(国税不服審判所 平成18年6月13日裁決・裁決事例集No.71)。その線引きがどこにあるのかを、国税不服審判所の公表事例と条文で整理しました。

この記事の要点

  • 管理料を自分の法人に払う形は、法人が実際に管理の仕事をしていることが前提。仕事の実態がなければ管理料の全額が必要経費にならず(所得税法37条1項)、実態があっても同業者の水準より高い部分は同族会社の行為計算の否認で削られる(所得税法157条1項)
  • 法令に「家賃の何%まで」という割合の定めはない。国税不服審判所の公表事例では、同族でない管理会社に委託している同業者の管理料の割合の平均と比べて判断されている
  • 物件を個人に残す形で法人に移るのは管理の対価だけで、家賃の全部を法人に移すには建物を法人に移す形になる。この違いが税の差の大きさを決める

まず結論 — 使えるのは「法人が本当にしている仕事の対価」の範囲だけ

家賃収入を法人に移す形には、大きく3つあります。1つ目は、物件を個人に残したまま管理の仕事を自分の法人に委託して管理料を払う形(管理委託方式)です。2つ目は、法人が物件を一括で借り上げて入居者に転貸し、入居者の家賃との差額を法人に残す形(サブリース方式・転貸方式)です。3つ目は、建物そのものを法人に移して家賃の全部を法人の収入にする形です。

3つの形の違い
形物件の名義法人に移る所得税務で問われる点
管理委託方式(管理料)個人のまま管理の仕事の対価だけ法人が管理の仕事を実際にしているか・管理料が同業者の水準か(所得税法37条1項・157条1項)
サブリース方式(転貸)個人のまま入居者の家賃と法人が個人に払う家賃の差額差額(管理料相当額)が同業者の管理料の割合と比べて過大でないか(所得税法157条1項)
建物を法人に移す形法人家賃の全部(個人には役員報酬などで戻す)建物を移すときの譲渡所得と一度きりの費用(所得税法33条1項・登録免許税法3条・地方税法73条の2第1項)

どの形でも、法人が受け取る額は、法人が引き受けている仕事やリスクの対価として説明できる範囲に収めておきましょう。管理委託方式で法人に移るのは管理の対価だけなので、家賃の全部を法人に移したいなら建物を移す形になります。建物を移す形の損得と一度きりの費用は、このサイトの家賃収入の法人化の専門ページに表でまとめています。ご自身の数字では、このサイトの家賃収入の法人化シミュレーターで試せます。

管理料の相場 — 法令に割合の定めはなく、審判所は「同業者の割合」と比べている

管理料の割合を定めた法令はありません。必要経費になるのは不動産所得を生ずべき業務について生じた費用で(所得税法37条1項)、同族会社との取引で所得税の負担を不当に減少させる結果になるときは、税務署長がその行為や計算にかかわらず所得を計算できます(所得税法157条1項)。国税不服審判所の公表事例では、同族でない管理会社に管理を委託している同業者の管理料の割合の平均を出し、それと比べて高すぎる部分を否認しています(国税不服審判所 平成12年1月31日裁決・裁決事例集No.59)。

では、審判所で示された数字を見てみましょう。平成12年1月31日の裁決では、同族会社が建物を借り上げて又貸ししていた事案で、又貸し料に占める差額(管理料相当額)の割合が44.91%から47.56%でした(国税不服審判所 平成12年1月31日裁決・裁決事例集No.59)。審判所が計算した同業者の平均管理料割合は8.88%から9.78%で、審判所はこの差を所得税の負担を不当に減少させるものと判断しています(国税不服審判所 平成12年1月31日裁決・裁決事例集No.59)。

否認の例 — 「実態がない」と「高すぎる」の2段階

否認には2つの段階があります。1つ目は、法人が管理の仕事をしていないとして管理料の全額を必要経費から外す段階です(所得税法37条1項)。2つ目は、仕事の実態はあるが管理料が同業者の水準より高いとして、超える部分を同族会社の行為計算の否認で削る段階です(所得税法157条1項)。

平成18年6月13日の裁決は1つ目に当たります(国税不服審判所 平成18年6月13日裁決・裁決事例集No.71)。原処分庁はアパートとマンションの管理料について、同族会社の行為計算の否認で過大な部分だけを否認していましたが、審判所は仕事の実態そのものを認めず、行為計算の否認を適用する余地はないとして全額を0円としました。

原則

同族会社に払った管理料は、法人がその物件の管理業務を実際に行っていれば、不動産所得の必要経費に入ります。

所得税法37条1項

ただし

仕事の実態があっても、管理料の額が所得税の負担を不当に減少させる結果になると認められるときは、税務署長がその行為や計算にかかわらず所得を計算し直せます。

所得税法157条1項

管理業務の実態が認められた公表事例もあります。平成23年6月7日の裁決では、法人が管理会社と修繕工事の協議をし、費用負担の承諾書に記名押印し、修繕費や保険料を法人名義で支払っていたことから、管理業務を実際に行っていると認められました(国税不服審判所 平成23年6月7日裁決)。その結果、管理費は不動産所得の必要経費に算入されています。契約書だけでなく、法人が判断し、連絡し、支払った記録が残っていたことが決め手だったと見ています。

サブリース方式 — 差額は「管理料相当額」として同じ物差しで見られる

法人が物件を一括で借り上げて入居者に転貸するサブリース方式では、入居者からの家賃と法人が個人に払う家賃の差額が法人に残ります。空室や滞納のリスクを法人が負う分、管理委託方式より大きな差額を法人に残せると説明されることが多いと見ています。

ただし、審判所は又貸しの差額を管理料相当額とみて、同族でない管理会社に委託している同業者の管理料の割合と比べて判断しています。平成12年1月31日の裁決では、法人が入居者に経営指導などの役務を提供しているので差額は管理料ではない、という主張が出されました(国税不服審判所 平成12年1月31日裁決・裁決事例集No.59)。契約書に対価の定めがなく、入居者もそう認識していなかったことから、この主張は退けられています。

建物を移す形との税の差 — 家賃の全部を法人に移すか、管理の対価だけか

管理委託方式やサブリース方式で法人に移るのは、管理の対価か転貸の差額だけです。家賃の全部を法人の収入にするには、建物そのものを法人に移す形になります。建物を売った個人には譲渡所得の税がかかり(所得税法33条1項)、買った法人には登録免許税と不動産取得税がかかります(登録免許税法3条・地方税法73条の2第1項)。

個人のままと建物を移した場合の年間の負担の差は、このサイトの家賃収入の法人化の専門ページの早見表にまとめています。年間の負担の差をご自身の数字で見るには、このサイトの家賃収入の法人化シミュレーターで確かめてみてください。管理料だけを法人に置く形の試算は、このサイトのマイクロ法人と資産管理会社の違いの記事に載せています。

どの形を選ぶかは、法人がどこまでの仕事とリスクを引き受けるかで決まります。管理料の割合から逆算して仕事を作るのではなく、法人がする仕事を決めてから対価を決める順番で考えてみてください。

※審判所の判断の中身は、国税不服審判所が公表している文書を読んで要約したもので、事案ごとの事実関係を前提にしたものです。管理料の割合の目安は同業の公開記事の読み取りで、法令や通達の定めではありません。

この記事のテーマで使える道具・専門ページ

試算家賃収入の法人化シミュレーション→ 専門ページ家賃収入の法人化 (いくらから・移し方)→
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※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。内容は執筆時点の法令等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

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