民泊の確定申告 — 不動産所得ではなく雑所得になる理由、事業所得との線、経費の家事按分、消費税は課税
「空き部屋を民泊に出した年の申告は、家賃と同じ書き方でよいのか」— 住宅宿泊事業法の届出をして民泊を始めた方に向けて、所得の区分、費用の家事按分、消費税の扱いを整理します。令和8年分(2027年2月16日から3月15日に申告する分)に使える形で書きます。
この記事の要点
- 住宅宿泊事業法の民泊で得る所得は、原則として雑所得。賃貸中の物件の空室を次の入居者が決まるまで一時的に使った分は不動産所得に含めてよく、専ら民泊で生計を立てるなど事業として行うことが明らかなら事業所得になる(国税庁の民泊のFAQ 問1)
- 雑所得の赤字は給与など他の所得と相殺できず(所得税法69条1項)、青色申告も使えない(所得税法143条)。生活と共用の費用は、民泊に使った部分を床面積や日数で分けた額だけが経費になる(所得税法施行令96条1号・国税庁の民泊のFAQ 問3)
- 宿泊料には消費税が課税され、住宅の家賃のような非課税にはならない(消費税法施行令16条の2・消費税法基本通達6-13-4)。ただし見る期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら、その年の納税義務は免除される。インボイス登録をした人は、1,000万円以下でも免除されない(消費税法基本通達1-4-1)
所得の区分 — 原則は雑所得。不動産所得や事業所得になるのは例外
民泊(住宅宿泊事業)は、都道府県などに届出をした人が、台所や浴室などのある住宅に、宿泊料を受けて年180日を超えない範囲で人を泊める事業です(住宅宿泊事業法2条1項・3項・4項)。家賃収入と同じ不動産所得だと思われがちですが、国税庁は民泊の所得を原則として雑所得としています(国税庁の民泊のFAQ 問1)。宿泊料には部屋の使用料のほか、寝具の賃貸料やクリーニング代、清掃費、観光案内などの役務の対価が含まれ、一般の不動産の貸付けとは違うというのが理由です。
不動産所得になるのは、賃貸中の物件の空室を、次の入居者が決まるまでのあいだ一時的に民泊に使った場合です。この所得は雑所得とせず、不動産所得に含めて差し支えないとされています(国税庁の民泊のFAQ 問1)。一方、専ら民泊の所得で生計を立てているなど、所得税法上の事業として行っていることが明らかな場合は事業所得です(国税庁の民泊のFAQ 問1)。事業と言えるかは、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかで判定します(所得税基本通達35-2)。
| 状況 | 区分 |
|---|---|
| 自宅や空き家で民泊を行う(原則) | 雑所得(業務に係る雑所得) |
| 賃貸中の物件の空室を、次の入居者が決まるまで一時的に民泊に使う | 不動産所得に含めてよい |
| 専ら民泊の所得で生計を立てるなど、事業として行うことが明らか | 事業所得 |
ご自身の民泊はどの行でしょうか。迷うのは、相続した空き家のように、賃貸用でも自宅でもない家で民泊を行う場合です。空き家は賃貸の契約の満了を待つ物件ではないので、不動産所得の例外には当たらず、原則どおり雑所得と見ています。
区分で変わること — 赤字の相殺、青色申告、帳簿
雑所得の赤字は、給与など他の所得から差し引けません。他の所得と通算できる損失は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の計算上生じたものに限られているためです(所得税法69条1項)。民泊の初年度に備品の購入や修繕で赤字になっても、給与の源泉徴収税額は戻ってきません。
青色申告も、雑所得では使えません。承認を受けられるのは、不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき業務を行う人だけだからです(所得税法143条)。青色申告特別控除も、青色申告をする人の不動産所得・事業所得・山林所得から引くものです。上の例外に当たり、不動産所得や事業所得として申告する場合に限って、青色申告の対象になります。
| 項目 | 雑所得(原則) | 不動産所得・事業所得(例外) |
|---|---|---|
| 赤字が出た年 | 他の所得と相殺できない(所得税法69条1項) | 給与など他の所得と相殺できる(所得税法69条1項) |
| 青色申告 | 使えない(所得税法143条) | 承認を受ければ使える(所得税法143条) |
| 帳簿・書類 | 前々年の収入が300万円を超えると、請求書や領収書などの保存が要る(所得税法232条2項) | 帳簿を備えて記録し、保存する(所得税法232条1項) |
事業所得で申告するには、帳簿の保存も実態も要ります。帳簿書類の保存がない場合は、収入が300万円を超えていて事業所得と認められる事実があるときを除き、業務に係る雑所得とされます(所得税基本通達35-2)。副業の所得区分の考え方は、別の記事「会社員の副業の確定申告」と同じです。
原則
民泊の所得は雑所得として申告し、赤字が出ても他の所得と相殺しません。
国税庁の民泊のFAQ 問1・所得税法69条1項
ただし
賃貸中の物件の空室を次の入居者が決まるまで一時的に民泊に使った分は、不動産所得に含めて差し支えありません(国税庁の民泊のFAQ 問1)。不動産所得は、不動産の貸付けによる所得をいいます。
所得税法26条1項
専ら民泊の所得で生計を立てているなど、事業として行っていることが明らかな場合は事業所得になり、青色申告や赤字の相殺が使えます。
所得税基本通達35-2・所得税法143条・69条1項
必要経費と家事按分 — 床面積と日数で分ける
経費になるのは、宿泊料を得るために直接かかった費用と、民泊の業務について生じた費用です(所得税法37条1項)。仲介サイトに払う手数料、管理会社に払う管理費用、宿泊者用の日用品、広告宣伝費のように民泊のためだけに払うものは、全額が経費です(国税庁の民泊のFAQ 問2)。一方、水道光熱費や固定資産税、家屋の減価償却費のように生活と民泊の両方に関わる費用は、民泊に必要な部分を明らかに区分できる場合に、その部分だけを経費にできます(所得税法45条1項1号・所得税法施行令96条1号)。
区分の仕方は、届出書に書いた民泊に使う部分の床面積が総床面積に占める割合や、実際に宿泊させた日数を基にするなど、合理的な方法によります(国税庁の民泊のFAQ 問3)。国税庁の計算例では、水道光熱費は民泊に利用している部分の床面積の割合に、実際に宿泊客を宿泊させた日数の割合を掛けています(国税庁の民泊のFAQ 問3)。家屋の減価償却費は、床面積の割合に住宅宿泊事業を行っていた月数(開業期間)の割合を掛けて計算しています(国税庁の民泊のFAQ 問4)。
生計を一にする配偶者や親族に払う家賃や地代は、経費になりません(国税庁の民泊のFAQ 問2・所得税法56条)。親の家の一室を借りて民泊を行い、親に家賃を払っていても、その家賃は引けないということです。
消費税 — 宿泊料は課税。1,000万円以下なら免税のまま(インボイス登録者を除く)
住宅の家賃は消費税が非課税ですが、民泊の宿泊料は課税されます。非課税になる住宅の貸付けから、貸付けの期間がひと月に満たない場合と、旅館業法の旅館業に当たる施設の貸付けが除かれているためです(消費税法6条1項・別表第二13号・消費税法施行令16条の2)。住宅宿泊事業は旅館業法の旅館業に当たるので、ひと月以上続けて泊めても非課税にはなりません(消費税法基本通達6-13-4)。
免税の線は、ほかの事業と同じです。見る期間(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下なら、その年の納税義務は免除されます(消費税法基本通達1-4-1)。個人の基準期間はその年の前々年なので、宿泊料が1,000万円を超えた年があれば、見る期間の翌々年から課税事業者です(消費税法2条1項14号・消費税法基本通達1-4-1)。ただし、適格請求書発行事業者(インボイス登録をした人)は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも納税義務は免除されません(消費税法基本通達1-4-1)。
前年の1月1日から6月30日までの売上で見る判定(特定期間)もありますが、この判定は給与等の支払額で行うこともでき、どちらで判定するかは事業者が選べます(消費税法9条の2第1項・3項・4項1号)。従業員に給与を払っていない人は、給与等の支払額が1,000万円以下なので、インボイス登録をしていないかぎり免税のままでいられます。インボイス登録には基準期間や特定期間のような時間差がなく、免税事業者が登録を受けると登録日から課税事業者になります(消費税法基本通達21-1-1)。
まとめ — 申告の形、住民税、申告までの手順
会社員で年末調整が済んでいる人は、民泊の所得(収入から経費を引いた額)が20万円以下で、ほかに所得がなければ、所得税の確定申告は要りません(所得税法121条1項1号・国税庁の民泊のFAQ 注2)。ただし住民税には20万円の線がなく、所得税の申告をしない年は、3月15日までに市区町村へ住民税の申告書を出します(地方税法317条の2第1項)。所得税の確定申告書を出した人は、住民税の申告書も出したものとみなされます(地方税法317条の3第1項)。
令和8年分の民泊の申告まで
届出書の控えと宿泊実績をそろえる
民泊に使う部分の床面積と、年間の宿泊日数・営業した月数を確かめる
収入を集計する
仲介サイトの年間の明細から、宿泊料の合計と手数料の合計を出す
経費を分ける
民泊のためだけの費用は全額、生活と共用の費用は床面積と日数で按分した額にする
所得を出して申告の要否を決める
会社員は所得20万円以下なら所得税の申告は不要(所得税法121条1項1号)。住民税の申告は市区町村へ(地方税法317条の2第1項)
申告書を作る
雑所得(業務)として申告書第一表・第二表に記入し、2027年3月15日までに提出する(所得税法120条1項)
令和8年分の民泊の申告
- 2027年2月16日令和8年分の申告の受付が始まる(所得税法120条1項)
- 2027年3月15日所得税の確定申告と納付の期限(所得税法120条1項・128条)。住民税の申告書の期限も同じ日(地方税法317条の2第1項)
所得税の申告が要らない年ほど、住民税の申告を忘れがちです。
民泊の申告で迷うのは、区分より按分の根拠づくりです。宿泊実績と床面積の資料を手元にそろえてから、申告書の作成に進んでみてください。
出典
- 国税庁 住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)(平成30年6月13日)
- 国税庁 タックスアンサー No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
- 国税庁 タックスアンサー No.1500 雑所得
- 国税庁 タックスアンサー No.2210 必要経費の知識
- 国税庁 タックスアンサー No.6226 住宅の貸付け
- 国税庁 消費税法基本通達 第6章第13節 住宅の貸付け関係
- 観光庁 民泊制度ポータルサイト 住宅宿泊事業法(民泊新法)とは
- e-Gov法令検索 所得税法26条(不動産所得)・27条(事業所得)・35条(雑所得)・37条(必要経費)・45条(家事関連費等の必要経費不算入等)・56条・69条(損益通算)・120条・121条・128条・143条(青色申告)・232条
- e-Gov法令検索 所得税法施行令96条(家事関連費)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法25条の2(青色申告特別控除)
- e-Gov法令検索 消費税法2条(定義)・6条(非課税)・別表第二・9条の2(特定期間)
- e-Gov法令検索 消費税法施行令16条の2(住宅の貸付けから除外される場合)
- e-Gov法令検索 住宅宿泊事業法2条(定義)
- e-Gov法令検索 地方税法317条の2(市町村民税の申告等)・317条の3
※本記事は令和8年4月1日現在の法令等と、国税庁が平成30年6月に公表した住宅宿泊事業の所得についての情報(FAQ)によります。旅館業法の許可を取った簡易宿所の営業、住宅ローン控除や居住用財産の3,000万円の特別控除との関係、宿泊税は扱っていません。消費税の申告の方式の選び方は、別の記事「個人事業主の消費税はいくらから」で扱っています。
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