法人で収益物件を買うときの税金 — 居住用賃貸建物の消費税・土地と建物の区分・減価償却・均等割
「資産管理会社で次の物件を買おうと思うが、消費税はどうなるのか」— 法人で収益物件を買う前に、ここで一度立ち止まる方は多いのではないでしょうか。個人で買うときとは、消費税の扱いも減価償却の考え方も違います。買う前に押さえておきたい4点(消費税・土地と建物の区分・減価償却・均等割)を、原文の決まりに沿って整理しました。
この記事の要点
- 住宅として貸す建物で税抜1,000万円以上のものは「居住用賃貸建物」にあたり、法人が課税事業者でも仕入税額控除はできない。控除できなかった消費税は法人税で損金にできる
- 土地と建物の区分は、消費税(土地は非課税)と減価償却(土地は償却しない)の両方に効く。契約書に内訳が無いときは固定資産税評価額などの合理的な基準で分ける
- 法人の減価償却は損金経理した額が上限まで損金になり、中古の建物は簡便法で耐用年数を短くできる。均等割7万円は赤字の年もかかる
消費税 — 住宅用の建物は、課税事業者でも仕入税額控除ができない
土地の売買は消費税が非課税です(消費税法別表第二)。建物の売買は、事業者が行う資産の譲渡として課税の対象です(消費税法4条1項)。法人が課税事業者なら、買った建物の消費税は仕入税額控除の対象になりそうに見えます。ところが、住宅として貸す建物は違います。
住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物で、高額特定資産(税抜1,000万円以上のもの。消費税法12条の4第1項・消費税法施行令25条の5)にあたるものは「居住用賃貸建物」です。その課税仕入れの税額には、仕入税額控除の規定を適用しません(消費税法30条10項)。
法人が免税事業者なら、そもそも仕入税額控除の計算は出てきません。設立したばかりで基準期間のない法人は、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上だと免税になりません(消費税法12条の2第1項)。課税売上高5億円超の会社などに支配されて設立された法人も同じです(消費税法12条の3第1項)。裏返せば、資本金1,000万円未満でそうした親会社もなければ、設立1期目と2期目は免税から始まるのが原則だと考えています。
その後も、基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下で、課税事業者を選ぶ届出や適格請求書発行事業者の登録をしていなければ、免税のままです。住宅の家賃は非課税売上なので、住宅の賃貸だけをする法人は課税売上高が積み上がらず、免税のまま続くことが多いと考えています。免税事業者は税込経理方式によるので、建物の消費税は税込の金額のまま建物の取得価額に入り、減価償却を通じて損金になります(平成元年3月1日直法2-1 個別通達 5)。
原則
居住用賃貸建物の消費税は、法人が課税事業者であっても仕入税額控除の対象になりません。
消費税法30条10項
ただし
課税事業者のまま持っていて、買った日から3年目の課税期間の末日までに店舗や事務所として貸したり売ったりしたときは、その割合に応じた消費税額をその課税期間の仕入税額に加算します。
消費税法35条の2
控除できなかった消費税は、法人税では「資産に係る控除対象外消費税額等」として損金にできます。住宅の家賃は非課税売上なので課税売上割合が80%に届かないことが多く、その場合は20万円以上の額を60か月に分けて損金にし、初年度はその半分です。
法人税法施行令139条の4
1階が店舗で2階以上が住宅、という建物はどうでしょうか。構造や設備の状況で店舗の部分と住宅の部分を合理的に区分しているときは、住宅の部分の消費税だけが控除の対象外になります(消費税法施行令50条の2第1項)。合理的な区分とは、使用面積割合や使用面積に対する建設原価の割合など、その建物の実態に応じた合理的な基準で区分していることをいいます(消費税法基本通達11-7-3)。
店舗と住宅に共通して使う廊下やエントランスなどの共用部分も、同じ合理的な基準で分け、住宅の部分に区分された分の消費税が控除の対象外になります。区分した住宅の部分が税抜1,000万円未満になっても、その部分は控除の対象外のままです。
土地と建物の区分 — 契約書の内訳と、按分の方法
土地は消費税が非課税で減価償却もしない、建物は課税取引で減価償却する。だから同じ「1億円の物件」でも、土地と建物の内訳しだいで消費税も毎年の損金も動くと見ています。売買契約書に土地と建物の代金が分けて書かれていて、その内訳が合理的なものなら、それによってよいと考えています。
書かれていないときは、買う側でも支払った代金を土地と建物に合理的に区分する必要があります(消費税法基本通達11-4-2)。時価の比率で按分する方法、相続税評価額や固定資産税評価額を基にする方法、原価を基にする方法が、国税庁の示す区分の例です。
| 項目 | 土地 | 建物 |
|---|---|---|
| 消費税 | 非課税 | 課税(住宅用で税抜1,000万円以上なら控除できない) |
| 減価償却 | しない | する(定額法) |
| 登録免許税(売買の移転登記) | 不動産の価額の1,000分の15(令和11年3月31日までの登記) | 不動産の価額の1,000分の20 |
| 不動産取得税 | 3%(令和9年3月31日までの取得) | 住宅は3%・住宅以外は4% |
仲介手数料は土地と建物それぞれの取得価額に入れ、分け方は土地と建物の代金の比によるのが自然だと考えています。一方、登録免許税・不動産取得税・登記のための司法書士報酬は、取得価額に入れずにその事業年度の損金にすることができます(法人税基本通達7-3-3の2)。
法人で物件を買うときに、契約の前後で確かめる3段階
契約の前
売買契約書に土地と建物の内訳と、建物の消費税額を書いてもらう。法人が免税か課税か、課税なら高額特定資産の3年の縛りが加わるかを確かめる
決済のとき
仲介手数料は土地と建物の代金の割合で分ける。登録免許税・不動産取得税・司法書士報酬はその期の損金にできる
最初の決算
建物と附属設備の耐用年数(中古なら簡便法)を決め、控除できなかった消費税の損金算入と均等割の申告をする
減価償却 — 法人は損金経理した額まで・中古は簡便法で短くできる
法人の減価償却費は、その事業年度に償却費として損金経理した金額のうち、償却限度額に達するまでの金額が損金になります(法人税法31条1項)。建物の償却方法は定額法です(法人税法施行令48条の2第1項1号)。取得価額を耐用年数で割った額が毎年の上限で、上限まで償却するかどうかは法人が決めます。
中古の建物を買ったときは、法定耐用年数ではなく、事業に使い始めてからの使用可能期間を見積もった年数によることができ、見積もりが難しいときは簡便法で計算します。法定耐用年数を全部経過した建物はその20%、一部を経過した建物は残りの年数に経過年数の20%を足した年数です。1年未満の端数は切り捨て、2年に満たないときは2年とします(減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項・5項)。ただし、買った建物を事業に使うために行った資本的支出の額が、その建物の取得価額の50%を超えるときは、簡便法の年数は使えません(減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項ただし書)。
均等割と法人税等 — 赤字の年も7万円・利益800万円までは軽い税率
法人には、利益がゼロや赤字の年も法人住民税の均等割がかかります(地方税法52条・312条)。東京23区の資本金1,000万円以下・従業者50人以下の法人なら、年7万円です。物件を買った年は、登録免許税や不動産取得税で赤字になりやすいと見ていますが、その年も均等割は納めます。
法人税の税率は23.2%で、資本金1億円以下の法人は年800万円以下の所得の部分が19%です(法人税法66条1項・2項)。令和9年3月31日までに開始する事業年度は、適用除外事業者や通算法人を除き、この部分が15%(その事業年度の所得が年10億円を超えるときは17%)に軽減されています(租税特別措置法42条の3の2第1項)。これに地方法人税・法人住民税の法人税割・法人事業税・特別法人事業税と、令和8年4月1日以後に開始する事業年度の防衛特別法人税が加わります。家賃収入から経費を引いた利益に対する法人税等の合計は、次の表のとおりです。
※この表の試算年度: 所得税は令和8年分、保険料は令和8年度の計算前提(個人の住民税のうち給与・事業所得分は翌年度の見込み額)。
| 家賃収入(年) | 経費(年) | 法人の所得 | 法人税等(年額) |
|---|---|---|---|
| 600万円 | 240万円 | 360万円 | 約83.9万円 |
| 1,000万円 | 400万円 | 600万円 | 約138.8万円 |
| 1,500万円 | 600万円 | 900万円 | 約218.7万円 |
| 2,000万円 | 800万円 | 1,200万円 | 約319.5万円 |
※法人税等は、法人税・地方法人税・法人住民税(均等割7万円を含む)・法人事業税・特別法人事業税・防衛特別法人税の合計です。
物件を個人で買うか法人で買うかは、この法人税等と、個人で持ったときの所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険料を並べて比べることになります。家賃収入と経費を入れると、このサイトの家賃収入の法人化シミュレーションでその場で見比べられます。
出典
- 国税庁 質疑応答事例 居住用賃貸建物に係る控除対象外消費税額等について
- 国税庁 質疑応答事例 建物の一部が店舗用となっている居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除の制限
- 国税庁 質疑応答事例 土地付建物の仲介手数料の仕入税額控除(土地と建物の代金を区分する方法)
- 国税庁 質疑応答事例 高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例
- 国税庁タックスアンサー No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
- 国税庁タックスアンサー No.6201 非課税となる取引(土地の譲渡・住宅の貸付け)
- 国税庁タックスアンサー No.5404 中古資産の耐用年数
- 国税庁タックスアンサー No.5759 法人税の税率
- 国税庁タックスアンサー No.7191 登録免許税の税額表
- 国税庁 法人税基本通達7-3-3の2 固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示
- 国税庁 法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告
- 国税庁 消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて(平成元年3月1日直法2-1・5 免税事業者の消費税等の処理)
- 国税庁 消費税法基本通達11-7-3 合理的区分の方法
- 国税庁 消費税法基本通達11-4-2 建物と土地等とを同一の者から同時に譲り受けた場合の取扱い
- 東京都主税局 法人事業税・法人都民税(法人住民税は法人税割と均等割からなる)
- e-Gov法令検索 消費税法4条(課税の対象)・6条・別表第二(非課税)・9条(小規模事業者に係る納税義務の免除)・12条の2(新設法人の納税義務の免除の特例)・12条の3(特定新規設立法人の納税義務の免除の特例)・12条の4(高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除の特例)・30条10項(仕入れに係る消費税額の控除)・35条の2(居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した場合等の仕入れに係る消費税額の調整)・37条3項
- e-Gov法令検索 消費税法施行令25条の5(高額特定資産の範囲等)・50条の2(仕入れに係る消費税額の控除の対象外となる居住用賃貸建物の範囲)
- e-Gov法令検索 減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条(中古資産の耐用年数等)
- e-Gov法令検索 法人税法31条(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)・66条(各事業年度の所得に対する法人税の税率)
- e-Gov法令検索 法人税法施行令48条の2(減価償却資産の償却の方法)・139条の4(資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法42条の3の2(中小企業者等の法人税率の特例)・72条(土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減)
- e-Gov法令検索 地方税法52条・312条(法人住民税の均等割は道府県2万円+市町村5万円)・73条の15(不動産取得税の税率)
- 東京都主税局 不動産取得税(税率・令和9年3月31日までの土地と住宅の特例)
- e-Gov法令検索 登録免許税法 別表第一
※本記事の金額は、東京23区の資本金1,000万円以下の法人・役員報酬0円・令和8年度の税率での概算です。法人税等には法人税・地方法人税・法人住民税(均等割7万円を含む)・法人事業税・特別法人事業税・防衛特別法人税を含みます。
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