法人1期目の年間スケジュール — 設立から決算までの流れ
「会社を作ったあと、1年目はいつ何をすればいいのか」— 設立1期目の社長の方に向けて、設立直後の届出から毎月の納付、年末の手続き、決算後の申告までを、時期の順に1本の流れで整理します。設立直後の届出の一覧は別の記事にあるので、この記事は「そのあとの12か月」に重きを置きます。
この記事の要点
- 設立直後は、法人設立届出書(2か月以内)・給与支払事務所等の開設届出書(1か月以内)・青色申告の承認申請書(3か月以内か期末の前日の早い方)・社会保険の新規適用届(5日以内)の4つが期限つき
- 年の途中は、毎月10日の源泉所得税の納付(給与と一定の報酬の分は、納期の特例なら7月10日と翌年1月20日)、12月の年末調整、1月31日までの法定調書・給与支払報告書・償却資産申告
- 決算後は2か月以内に法人税・法人住民税・法人事業税の申告と納付。消費税は1期目・2期目は原則免税だが、資本金1,000万円以上とインボイス登録は例外
まず全体像 — 12か月を4つの時期で見る
1期目の手続きは、設立直後・毎月・年末から1月・決算後の4つの時期に分かれます。時期ごとに「何を・いつまでに」を先に押さえておくと、期限の短いものから順に片付けられます。
| 時期 | すること | 期限 |
|---|---|---|
| 設立直後 | 社会保険の新規適用届・被保険者資格取得届 | 事実の発生から5日以内 |
| 設立直後 | 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設から1か月以内(所得税法230条) |
| 設立直後 | 法人設立届出書(税務署)・法人設立届(都道府県・市区町村) | 設立から2か月以内(法人税法148条)。都道府県は東京都で15日以内 |
| 設立直後 | 青色申告の承認申請書 | 設立から3か月と1期目の終わりのいずれか早い日の前日(法人税法122条) |
| 毎月 | 源泉所得税の納付 | 支払った月の翌月10日(所得税法183条) |
| 12月 | 年末調整 | その年最後の給与の支払いのとき(所得税法190条) |
| 1月 | 法定調書・給与支払報告書・償却資産申告 | 1月31日まで(所得税法226条・地方税法317条の6・383条) |
| 決算後 | 法人税・法人住民税・法人事業税の申告と納付 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内(法人税法74条) |
ご自身の会社は、設立から何か月目で、次の期限はどれでしょうか。設立の月によって、年末調整と決算が近い会社もあれば、遠い会社もあります。
設立直後 — 期限の短い順に4つ
設立登記が終わった直後は、期限の短い順に、社会保険・給与支払事務所・法人設立届出書・青色申告の承認申請の4つを片付けます。
設立直後の届出(期限の短い順)
社会保険の新規適用届
法人は社長1人でも強制適用。事実の発生から5日以内に、登記事項証明書を添えて年金事務所へ
給与支払事務所等の開設届出書
役員報酬を払う事務所を開設してから1か月以内に税務署へ(所得税法230条)
法人設立届出書
設立の日から2か月以内に、定款の写しを添えて税務署へ(法人税法148条)。都道府県・市区町村にも設立の届出を出す
青色申告の承認申請書
設立の日から3か月を経過した日と1期目の終わりの日のいずれか早い日の前日まで(法人税法122条)
原則
給与の支払を受ける人が常時10人未満の会社は、申請すれば源泉所得税を年2回(7月10日と翌年1月20日)にまとめて納められます。
所得税法216条
ただし
納期の特例は、申請した月の翌月末日に承認があったものとみなされ、それより前の月に徴収した分は、翌月10日までに毎月納めます。
所得税法217条5項
年2回にまとめられるのは、給与・退職金と、税理士・弁護士・司法書士などの一定の報酬から源泉徴収した所得税に限られ、それ以外の源泉所得税は原則どおり翌月10日までに納めます。
所得税法216条
役員報酬を決める時期(設立から3か月以内)と、事前確定届出給与の届出(設立から2か月以内)も、この時期に重なります。届出書の一覧と書き方は、設立後の届出の記事にまとめています。
毎月・年の途中 — 源泉所得税と、消費税の判定
役員報酬を払い始めると、会社は源泉徴収義務者になり、天引きした所得税を翌月10日までに納めます(所得税法183条1項)。納期の特例を受けていれば、給与と一定の報酬の分は7月10日と翌年1月20日の年2回です。
消費税は、設立1期目と2期目は基準期間(2期前)が無いので原則として免税です。ただし、主な例外が3つあります。
| 場合 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 資本金1,000万円以上 | 事業年度の開始の日の資本金が1,000万円以上の法人は、基準期間が無くても課税事業者 | 消費税法12条の2 |
| インボイス登録 | 適格請求書発行事業者の登録を受けた日以後は、基準期間の売上にかかわらず課税事業者 | 消費税法基本通達1-4-1の2 |
| 特定期間の売上か給与が1,000万円超 | 2期目は、1期目の最初の6か月(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額がどちらも1,000万円を超えると課税事業者。1期目が7か月以下なら、この6か月は特定期間にならない | 消費税法9条の2 |
原則
新たに設立された法人のように基準期間がない場合は、消費税の納税義務が免除されます。
消費税法基本通達1-4-6
ただし
資本金1,000万円未満で設立しても、1期目の途中で増資して2期目の開始の日に資本金が1,000万円以上になると、2期目は課税事業者になります。
消費税法12条の2第1項
株式の50%超を持つ株主やその特殊関係法人に、課税売上高が5億円(総収入金額なら50億円)を超える者がいる法人は、資本金1,000万円未満でも基準期間がない期の納税義務が免除されません。
消費税法12条の3第1項
事業を始めた期の末日までに、その期の初日から登録を受けたい旨を書いてインボイスの登録を申請し登録されると、その期の初日から登録を受けたものとみなされ、免除されません。
消費税法施行令70条の4・消費税法基本通達1-4-1の2
1期目が7か月以下の短期事業年度のときは、1期目の最初の6か月は特定期間になりません。
消費税法9条の2第4項
免税の2期を使うか、設立の直後から登録するかは、売上先を見て決めることをお勧めします。売上先が課税事業者中心でインボイスを求められる会社は、設立の段階で登録の時期を決めておきましょう。
年末から1月 — 年末調整と3つの提出
12月は、その年最後の役員報酬の支払いのときに年末調整をします(所得税法190条)。扶養控除等申告書を出している役員・使用人が対象で、給与が2,000万円を超える人は対象外です。
1月には、提出が3つ続きます。
- 源泉徴収票と法定調書合計表を税務署へ、翌年1月31日まで(所得税法226条1項)
- 給与支払報告書を、役員・従業員の1月1日現在の住所の市区町村へ、1月31日まで(地方税法317条の6)
- 償却資産申告書を、1月1日現在の償却資産の所在地の市区町村へ、1月31日まで(地方税法383条)
役員・従業員の住民税の天引き(特別徴収)の流れと1年目の扱いは、このサイトの一人社長の給与計算の記事にまとめています。令和9年1月1日以後は、市区町村に給与支払報告書を出せば、税務署への源泉徴収票の提出は要らなくなります。パソコンや備品を1期目に買った会社は、償却資産申告の対象になるものが無いか、固定資産台帳を確かめてみましょう。
決算後 — 2か月以内に申告と納付
事業年度が終わったら、翌日から2か月以内に、確定した決算に基づいて法人税の申告書を出します(法人税法74条1項)。法人住民税のうち都道府県民税は法人税の申告書の提出期限まで、法人事業税は事業年度終了の日から2か月以内に、都道府県へ申告して納めます(地方税法53条1項・72条の25第1項)。課税事業者なら消費税の申告も同じ2か月以内です(消費税法45条1項)。
法人住民税のうち市町村民税は、都道府県分とは別に、市役所・町村役場へ申告して納めます。東京23区内の法人は、市町村民税の分もあわせて都民税として都税事務所に申告して納めます。
決算から申告までの4段階
帳簿を締める
期末の預金・売掛金・買掛金・在庫・未払金を確かめ、1期目の役員報酬と社会保険料の仕訳をそろえる
決算書を作る
貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・勘定科目内訳明細書
申告書を作って出す
法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税(課税事業者は消費税)。e-Taxとeltaxで提出
納付する
申告期限と同じ日まで。赤字でも法人住民税の均等割はかかる
1期目は前期の実績が無いので、法人税の中間申告はありません(法人税法71条)。2期目からは、前期の法人税額によって中間申告と納付が加わります。
まとめ — 期限の短い順に、暦を先に
1期目の手続きは、設立直後の4つの届出、毎月の源泉所得税、12月の年末調整と1月の3つの提出、決算後2か月以内の申告の順に来ます。消費税は原則免税ですが、資本金・インボイス登録・特定期間の3つの例外は、設立の段階で確かめておきましょう。
決算に向けて何が残っているかを確かめるには、弊所の法人の決算準備診断ツールをお勧めします。1期目の暦づくりから、弊所でも一緒に進めています。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5100 新設法人の届出書類
- 国税庁 タックスアンサー No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例
- 国税庁 タックスアンサー No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
- 国税庁 タックスアンサー No.7400 法定調書の提出義務者
- 国税庁 質疑応答事例 特定新規設立法人の納税義務免除の特例
- 国税庁 質疑応答事例 給与等の支払を受ける者が常時10人未満であるかどうかの判定
- 日本年金機構 新規適用の手続き
- 東京都主税局 法人事業税・法人都民税
- e-Gov法令検索 法人税法71条(中間申告)・74条(確定申告)・122条(青色申告の承認の申請)・148条(内国普通法人等の設立の届出)
- e-Gov法令検索 所得税法183条(源泉徴収義務)・190条(年末調整)・216条(源泉徴収に係る所得税の納期の特例)・217条(納期の特例の承認申請)・226条(源泉徴収票)・230条(給与支払事務所等の開設等の届出)
- e-Gov法令検索 消費税法9条(小規模事業者に係る納税義務の免除)・9条の2(特定期間)・12条の2(新設法人の納税義務の免除の特例)・12条の3(特定新規設立法人の納税義務の免除の特例)・45条(課税資産の譲渡等についての確定申告)・57条の2(適格請求書発行事業者の登録等)
- e-Gov法令検索 消費税法施行令70条の4(登録の時期等に関する特例)
- 国税庁 消費税法基本通達 第4節 納税義務の免除(1-4-1の2・1-4-6)
- e-Gov法令検索 地方税法53条(法人の道府県民税の申告納付)・72条の25(事業税の申告納付)・317条の6(給与支払報告書等の提出義務)・383条(固定資産の申告)
※本記事は令和8年4月1日現在の法令等によります。都道府県・市区町村への設立の届出の期限は自治体で異なります(東京都は15日以内)。社会保険・労働保険の手続きの期限は日本年金機構・厚生労働省の案内で確かめてください。
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