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大家の消費税 — 住宅の家賃は非課税、駐車場・店舗の賃料で課税事業者になる線

「アパートの家賃は、消費税の対象なのか」— 住宅や店舗、駐車場を貸している大家さんに向けて、収入の種類ごとの課税・非課税の線と、1,000万円の判定に入る売上、申告の方式を整理しますので、ご自身の収入の内訳と照らしてみてください。令和8年分(2027年3月31日までに申告する分)に使える形で書きます。

この記事の要点

  • 住宅の家賃は非課税。共益費(住宅の貸付けに含まれない施設の費用の分を除く)や、返さない敷金・礼金も家賃に含まれて非課税(消費税法別表第二13号・消費税法基本通達6-13-9)
  • 課税になるのは、店舗・事務所の賃料、家賃と別に受け取る駐車場代、整備した月極駐車場、ひと月に満たない短期の貸付けや民泊(消費税法施行令8条・16条の2・消費税法基本通達6-13-3)
  • 見る期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると、その翌々年から課税事業者。住宅の家賃は課税売上高に入らないので、アパートだけの大家は超えにくい(消費税法2条1項9号・消費税法基本通達1-4-1)

結論 — 住宅の家賃は非課税、店舗と別建ての駐車場は課税

消費税は、事業者が事業として対価を得て行う資産の貸付けにも課税されます(消費税法4条1項・2条1項8号)。ただし、土地の貸付けと住宅の貸付けは非課税です(消費税法6条1項・別表第二1号・13号)。住宅とは人の居住の用に供する家屋かその部分で、契約で居住用と明らかなもの、または用途の定めがなくても状況から居住用と明らかなものが非課税になります(消費税法別表第二13号)。

大家の収入の種類と消費税
収入消費税根拠
住宅の家賃・共益費(住宅の貸付けに含まれない施設の費用の分を除く)非課税消費税法別表第二13号・消費税法基本通達6-13-9
返さない敷金・保証金・礼金(住宅)非課税(家賃に含まれる)消費税法基本通達6-13-9
住宅に付いた駐車場(入居者に1戸当たり1台分以上あり、車の保有の有無にかかわらず割り当て、家賃と別に使用料を取らない)非課税消費税法基本通達6-13-3
家賃と別に受け取る駐車場代・家具や倉庫の使用料課税消費税法基本通達6-13-1
月極駐車場(舗装・区画・フェンスなどの整備あり)課税消費税法施行令8条・消費税法基本通達6-1-5
更地のまま貸す駐車場(整備も車両の管理もなし)非課税(土地の貸付け)消費税法基本通達6-1-5
店舗・事務所の賃料課税消費税法別表第二13号(住宅でない)
店舗併設住宅の賃料住宅の部分だけ非課税消費税法基本通達6-13-5
ひと月に満たない貸付け・民泊・ウィークリーマンション課税消費税法施行令16条の2・消費税法基本通達6-13-4

店舗の賃料を建物の分と敷地の分に分けて書いても、合計が建物の賃料として課税されます(消費税法基本通達6-1-5)。逆に、契約を変えずに入居者が事務所として使っていても、大家の側は住宅の貸付けのままで非課税です(消費税法基本通達6-13-8)。契約書の用途の欄が、課税・非課税の出発点になります。

住宅とは別に貸し付けていると認められる施設や動産(家具など)の分とサービスの分は、一括の家賃として受け取っても、合理的に区分して課税になります。入居者から家賃と別に受け取る専有部分の電気・ガス・水道の利用料も、非課税の家賃には含まれません。

入居者に1戸当たり1台分以上を車の保有の有無にかかわらず割り当てる駐車場は、原則として、家賃と別に使用料を取らなければ住宅の貸付けに含まれ、非課税です(消費税法基本通達6-13-3)。ただし、家賃に含めて受け取っていても、契約書で家賃の明細として駐車場の利用料の金額を示すと、その金額は家賃とは別の名目で受け取るものとされ、課税になります。

1,000万円の線 — 住宅の家賃は数えない。店舗や駐車場の課税売上だけで判定する

消費税の納税義務は、原則として、見る期間(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えるかで決まります。個人の基準期間はその年の前々年で(消費税法2条1項14号)、その期間の課税売上高が1,000万円以下なら、その年の納税義務は免除されます(消費税法基本通達1-4-1)。超えていれば、見る期間の翌々年から課税事業者です。

ただし、課税事業者選択届出書を出した大家は、不適用届出書を出さない限り、見る期間の課税売上高が1,000万円以下の年も課税事業者です(消費税法基本通達1-4-11)。また、見る期間に免税事業者だった年の課税売上高は、受け取った金額を税抜きにせず、その全額で数えます(消費税法基本通達1-4-5)。相続で亡くなった方の事業を引き継いだ場合は、亡くなった方の基準期間に対応する期間の課税売上高が1,000万円を超えるときなど、自分の売上が1,000万円以下でも免税にならないことがあります。

課税売上高に入るのは課税資産の譲渡等、つまり非課税とされるもの以外の売上です(消費税法2条1項9号)。住宅の家賃は非課税なので、この判定に入りません。アパートの家賃だけなら、判定に入る売上はありません。

なお、家賃と別に受け取る専有部分の電気・ガス・水道の利用料は、非課税の家賃に含まれないので、判定に入る売上として数えます。ご自身の収入のうち、判定に入るのはどれでしょうか。

このほか、前年の1月1日から6月30日までを見る特定期間の判定もあります(消費税法9条の2第1項・4項1号)。ただし、国外事業者でない大家は、この判定を課税売上高の代わりに給与等の支払額で行うこともでき、どちらで判定するかを選べます(消費税法9条の2第3項)。給与等の支払額が1,000万円以下なら免税のままでいられるので、従業員のいない大家が上半期に1,000万円を超える給与を払うことはまれで、実質的にこの判定から外れます(消費税法9条の2第1項・3項)。

非居住者の大家(国外事業者)は給与等の支払額で判定できないので、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると、その翌年から課税事業者です(消費税法9条の2第1項・3項)。

会社員が副業で建物を貸していても、対価を得て反復・継続して行う貸付けは事業として行うものなので、消費税の事業者です(消費税法基本通達5-1-1)。そして、貸していた建物を売った年は、売却代金が課税売上高に入ります(消費税法基本通達5-1-7)。土地の代金は非課税なので入りません(消費税法別表第二1号)。

貸していた建物の売却代金が課税売上高に入る結果(消費税法基本通達5-1-7)、売った年を見る期間として、翌々年だけ課税事業者になる大家は珍しくありません。その年に店舗の賃料があれば申告と納税が要ります。簡易課税を使うなら、売った年の翌年のうちに届出を出すかを決めておきましょう。

課税事業者になったら — 本則、簡易課税(第六種)、特例の違い

線を超えて課税事業者になった大家が選べるのは、本則課税と簡易課税です。簡易課税は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間で使え、不動産業は第六種事業でみなし仕入率は40%です(消費税法37条1項・消費税法施行令57条1項5号・5項5号)。使うには原則として、その課税期間の初日の前日までに選択届出書を出しておく必要があります(消費税法37条1項)。ただし、課税期間の初日に恒久的施設を持たない国外事業者の大家は、簡易課税を使えません。

インボイス発行事業者になった人には、登録や課税事業者選択届出書の提出がなければ免税だった課税期間に限り、売上税額の100分の80を控除できる経過措置があります(平成28年改正法附則51条の2第1項・2項)。ただし、課税期間の初日に恒久的施設を持たない国外事業者は使えず、課税期間の特例で期間を短くしている期間も対象外です(平成28年改正法附則51条の2第1項)。個人事業主の令和9年分と10年分は、控除が売上税額の100分の70に変わります(平成28年改正法附則51条の3第2項)。前者は2割特例と呼ばれて個人事業主は令和8年分の申告が最後、後者は3割特例と呼ばれて個人事業主だけが使えます。

この経過措置を使った翌課税期間に簡易課税へ移るときの届出の期限は、創設時(令和5年度税制改正)の定めでは翌課税期間中(その課税期間の末日まで)でした。令和8年度の改正はその期限を翌課税期間の確定申告期限までに延ばし、令和9年分からの経過措置にも広げました。今の条文では、翌課税期間の確定申告書の提出期限までに選択届出書を出し、その課税期間から簡易課税を受ける旨を書いておけば、翌課税期間の初日の前日に出したものとみなされます(平成28年改正法附則51条の2第6項)。

延びた期限は、翌課税期間が令和8年10月1日以後に終わる場合に適用されます(令和8年改正法附則90条1項)。

本則課税では、住宅の貸付けに使う建物(居住用賃貸建物)のうち高額特定資産などに当たるものを買った年の消費税は、仕入税額控除の対象外です(消費税法30条10項)。建物の一部が店舗で、構造や設備などから居住用の部分と店舗の部分を合理的に区分しているときは、制限されるのは居住用の部分の税額だけです。アパートを建てた年に本則課税で消費税の還付を受ける、という形は今は取れません。

本則課税で仕入れの税額を全額引けるのは、課税売上高が5億円以下で、課税売上割合が95%以上の課税期間だけです(消費税法30条2項)。住宅の家賃は非課税の売上なので、家賃の多い大家ほど課税売上割合は下がり、引ける税額が減ります。

店舗の賃料がある大家が本則を選ぶ場面は、店舗部分の大きな修繕や設備投資がある年に限られると考えています。ただし、簡易課税から本則に戻るには、戻りたい課税期間の初日の前日までに不適用届出書を出します(消費税法37条5項・7項)。この届出書は、簡易課税を始めた課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ出せません(消費税法37条6項)。

本則課税の課税期間に建物などの高額特定資産を仕入れると、仕入れた課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日まで、簡易課税の選択届出書を出せません(消費税法37条3項3号)。仕入れの翌課税期間から一定の期間は、見る期間の課税売上高が免税の線を下回っても免税に戻れません。

インボイス — テナントが事業者なら求められる。住宅の入居者には要らない

インボイス発行事業者は、課税資産の譲渡等を受ける他の事業者から求められたときに、インボイスを交付する義務があります(消費税法57条の4第1項)。店舗や事務所のテナントが課税事業者なら、賃料のインボイスを求められるのが普通です。住宅の入居者は消費者で家賃も非課税なので、インボイスは要りません。

登録すると、登録日の属する課税期間以後は免税の規定が使えません(消費税法基本通達1-4-1の2)。免税の大家が年の途中で登録した場合は登録日から課税事業者になり、手続きは登録申請書だけで済みます(消費税法基本通達21-1-1)。登録した課税期間が令和5年10月1日を含まない場合、登録開始日から2年を経過する日の属する課税期間までは免税に戻れません(消費税法基本通達21-1-1)。

まとめ — 契約書の用途と、1,000万円の判定に入る売上の集計を先に整えましょう

令和8年の課税売上高が1,000万円を超えた大家

  1. 2026年12月31日令和8年(見る期間)の課税売上高が確定する
  2. 2027年12月31日令和10年分を簡易課税で申告するなら、選択届出書はこの日まで(消費税法37条1項)
  3. 2028年1月1日令和10年分から課税事業者(消費税法基本通達1-4-1)
  4. 2029年3月31日令和10年分の消費税の申告と納付の期限(租税特別措置法86条の4第1項)

見る期間から申告まで2年あります。店舗の賃料が1,000万円に近づいたら、その年のうちに方式を決めておきましょう。

どの方式が軽いかは、課税売上の額と経費の中身で変わると見ています。弊所の消費税の申告方式シミュレーションで4つの方式を並べてから、届出を出すかどうかを決めてみてください。

出典

※本記事は令和8年4月1日現在の法令等によります。2割特例は令和8年9月30日までの日の属する期間で終わり、個人事業主の令和9年分・10年分は3割特例になります。令和10年4月1日施行の改正で条文の一部の文言が変わりますが、住宅と土地の扱いと第六種の率は変わりません。

※3割特例の計算は、令和10年4月1日以後は特定少額資産の譲渡に係る分を除く形になります(令和8年改正法附則90条2項)。所得税の不動産所得の計算は、別の記事「家賃収入の確定申告のやり方」で扱っています。

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