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簡易課税のみなし仕入率 — 第1種から第6種の事業区分の判定と、同じ売上660万円で納税額がいくら変わるか

「うちはサービス業だから第5種でいいはず」— 簡易課税を選ぶ個人事業主の方からよく聞く言葉ですが、事業区分は業種名でなく取引ごとに決まり、区分を1つ間違えるだけで納付額が年に数万円変わります。みなし仕入率の仕組みと判定の物差し、迷いやすい例を、弊所の試算とあわせて整理しました。

この記事の要点

  • みなし仕入率は第1種(卸売業)90%から第6種(不動産業)40%までの6段階。売上の消費税にこの率を掛けた額が「引ける額」になる
  • 判定は会社単位でなく、取引(課税資産の譲渡等)ごと。同じ商品でも事業者に売れば第1種、消費者に売れば第2種
  • 税込売上660万円の試算では、納付額は第1種6万円・第5種30万円・第6種36万円。区分が1つ違うと年6万円動く

みなし仕入率とは — 売上の消費税に掛ける「引ける割合」

簡易課税は、実際に払った消費税を集計する代わりに、売上の消費税に事業区分ごとの割合(みなし仕入率)を掛けた額を仕入控除税額とする方式です(消費税法37条)。区分と率は次の6段階で決まっています(消費税法施行令57条)。

簡易課税の事業区分とみなし仕入率
事業区分みなし仕入率該当する事業
第1種90%卸売業(仕入れた商品を性質・形状を変えずに他の事業者に売る)
第2種80%小売業(仕入れた商品を性質・形状を変えずに売る事業で第1種以外)・飲食料品を売る農業・林業・漁業
第3種70%農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡を除く)・鉱業・建設業・製造業(製造小売業を含む)・電気業・ガス業・熱供給業・水道業
第4種60%第1〜3種・第5種・第6種以外の事業(飲食店業など)。加工賃などを対価とする役務の提供もここ
第5種50%運輸通信業(情報通信業・運輸業・郵便業)・金融業・保険業・物品賃貸業・サービス業(宿泊業・専門技術サービス業・生活関連サービス業・教育・医療福祉など。飲食店業を除く)
第6種40%不動産業(物品賃貸業は第5種)

率が高いほど引ける額が大きく、納付額は小さくなります。同じ売上でも、第1種と第6種では引ける額に売上の消費税の50%分の差が出ます。

第3種・第5種・第6種の範囲は、おおむね日本標準産業分類の大分類を基礎に判定します。ただし、大分類が不動産業でも、他の者が建築した住宅を購入してそのまま販売する建売業は第1種または第2種、自ら建築した住宅を販売する建売業は第3種(建設業)に当たり、第6種にはなりません(消費税法基本通達13-2-4)。自ら施主となって建築業者に請け負わせて建てた住宅を売る場合も、自ら建築したものとして第3種です。物品賃貸業(第5種)でも、売買とされるリース取引は第1種または第2種になります。

判定は「取引ごと」— 業種名で決めない

事業区分の判定は、原則としてその事業者が行う課税資産の譲渡等ごと、つまり取引ごとに行います。会社の看板が「小売店」でも、事業者向けの販売が帳簿や書類で明らかなら、その取引は第1種(卸売業)です。

ご自身の売上を、この3つの物差しで1件ずつ仕分けてみましょう。飲食店とサービス業の線引きも迷いやすいところです。ホテル内のレストランのように宿泊者以外も利用でき、その場で精算する飲食物の提供は飲食店業(第4種)、「1泊2食付」のように食事代込みで宿泊料金が決まっているときは全額が第5種の対価になります。自分で使っていた固定資産(車や機械)を売ったときは、本業が何であれ第4種です。

2種類以上の事業がある人 — 区分して集計しないと最も低い率になる

デザイナーが物販もしている、飲食店がテイクアウトの商品も卸している、といった方は、事業ごとに課税売上高を区分して集計し、それぞれの率を当てはめます。区分していない売上には、その事業のうち最も低いみなし仕入率が適用されます。

日々の売上を区分ごとに分けて記帳しておくことが、簡易課税を有利に使う前提になります。会計システムの取引の摘要や税区分に、区分の番号を入れておくのが実務的です。

実額で比べる — 同じ売上660万円で、区分ごとに納付額はこう変わる

税込の年間売上660万円・消費税のかかる経費220万円の個人事業者について、簡易課税の納付額を区分ごとに並べました。

事業区分ごとの簡易課税の納付見込額(弊所試算・令和9年分・国税と地方消費税の合計・金額はすべて1年あたり)
事業区分(みなし仕入率)簡易課税の納付見込額(年額)本則課税(年額)
第1種(90%)6万円40万円
第2種(80%)12万円40万円
第3種(70%)18万円40万円
第4種(60%)24万円40万円
第5種(50%)30万円40万円
第6種(40%)36万円40万円

区分が1つ違うと、この売上では納付額が年6万円動きます。弊所試算のこの例(経費220万円)では、どの区分でも簡易課税のほうが本則課税より軽い結果です。本則課税は実際に払った消費税を引く方式なので(消費税法30条)、経費の割合がみなし仕入率を超える事業では本則課税のほうが軽くなります。分かれ目の考え方は別の記事にまとめています。

簡易課税が使える条件 — 売上5,000万円以下・届出・2年縛り・設備投資後の制限

  1. 基準期間(個人事業者は前々年)の課税売上高が5,000万円以下であること。超える年は届出を出していても使えない。なお課税事業者になる時期の判定も同じ前々年で見るため、売上が1,000万円を超えた年の翌々年から課税事業者になる(インボイス登録をした方は登録日から課税事業者)
  2. 使いたい年が始まる前(前年12月31日)までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出していること。ただし、事業を始めた年は、その年のうちに出せばその年から使える(消費税法37条1項・消費税法施行令56条)。免税事業者がインボイス登録を受けて登録日から課税事業者になった年も、登録日の属する課税期間中に出せばその年から使える(令和11年9月30日までの日の属する課税期間に登録した場合)。2割特例・3割特例を使った翌年に移るときは、令和8年分以後はその翌年の確定申告期限までに出せばその年から使える(2割特例は平成28年改正法附則51条の2・3割特例は同附則51条の3。翌課税期間が令和8年10月1日以後に終了する場合)。翌課税期間中(その年の12月31日まで)の届出で足りる特例は2割特例の創設時(令和5年度税制改正)からあり、令和8年度税制改正はその期限を確定申告期限まで延ばして3割特例にも広げたもの
  3. いったん選ぶと原則2年間はやめられないこと。翌年に設備投資があっても本則課税へは戻れず、還付も受けられない
  4. 本則課税のときに高額特定資産(税抜1,000万円以上)を仕入れた場合や、課税事業者選択届出書を出して課税事業者になった最初の2年間などに調整対象固定資産(税抜100万円以上の固定資産)を仕入れた場合は、その仕入れの年から3年間は届出書を出せない(消費税法37条3項)

令和9年分・10年分は、インボイス登録を機に課税事業者になった方なら届出なしの3割特例も並びます(平成28年改正法附則51条の3)。使えるのは、登録が無ければ免税事業者でいられる年に限られ、基準期間の売上が1,000万円を超える年や、調整対象固定資産などを仕入れて本則課税が続く年には使えません。3割特例は売上の消費税の3割を納める方式なので、みなし仕入率が70%未満の第4種〜第6種の方は簡易課税より3割特例のほうが軽く、第1種・第2種の方は簡易課税のほうが軽くなります。第3種(70%)は両方とも同じ額です。

まとめ — 区分を決めてから、率で比べる

みなし仕入率は「業種名」でなく「取引の中身」で決まります。あなたの売上の中に、事業者向けの販売や加工賃だけの仕事は混ざっていないでしょうか。まず取引ごとの区分を決め、そのうえで本則課税・3割特例と並べることをお勧めします。下のシミュレーションでは、事業の種類を切り替えるだけで納付額の違いをその場で確かめられます。

※本記事の金額は、個人事業者・標準税率10%の売上と経費だけで計算した概算です(国税7.8%と地方消費税2.2%の合計・百円未満切捨て)。軽減税率・売上の返品や値引き・年の途中の開業は反映していません。

出典

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